日本口腔腫瘍学会誌
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33 巻, 1 号
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症例報告
  • 村山 敦, 黒田 卓, 首藤 敦史, 姜 良順
    2021 年 33 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
    ジャーナル フリー
    超高齢者の下顎骨に発生したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の1例を報告する。患者は転倒後の顔面痛を主訴に来院した98歳の男性。CT画像で右側下顎の頰側皮質骨に欠損を認め,同部からの生検を行った。その結果,H-E染色では中型から大型の異型リンパ球のびまん性増殖像を認め,免疫染色でCD20,CD79a,BCL-2が陽性であった。FDG-PETでは,下顎骨以外に異常集積は認めなかった。よって,下顎骨のDLBCLと診断した。患者は超高齢者であり,患者とその家族が治療を希望されず,best supportive careとした。しかし,下顎骨の腫瘍は経時的に増大しQOLが低下してきたので,30Gyの姑息的な放射線照射を行った。その結果,腫瘍は縮小し放射線治療後1年8か月の生存期間が得られたが,他病死した。
  • 秋森 俊行, 宮脇 昭彦, 志渡澤 和佳, 上田 大佑, 髙田 まゆこ, 大矢 亮一
    2021 年 33 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは硬口蓋部に発生した明細胞癌の1例を経験したので報告する。
    患者は67歳男性で右側硬口蓋部の腫瘤を主訴に受診した。腫瘤は粘膜下にあり,大きさは20×15mm大で中央に潰瘍を認めた。生検の病理診断は明細胞癌であった。頸部リンパ節に転移は認めなかった。全身麻酔下に上顎部分切除術および頰脂肪体移植を施行した。術後に鼻口腔瘻が残存した。
    上顎義歯では瘻孔を封鎖することはできず,開鼻声で飲水は困難であった。術後2年で残存した鼻口腔瘻孔に対して舌弁による閉鎖術を施行した。閉鎖後は開鼻声が改善し,飲水も問題なかった。術後60か月経過するも,再発や転移を認めず,発音・飲水に支障はない。
  • 吉澤 泰昌, 北村 直也, 山本 哲也
    2021 年 33 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
    ジャーナル フリー
    治療関連骨髄異形成症候群(t-MDS)は悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療後に赤血球,白血球および血小板に量的および質的異常を来たす病態である。今回われわれは,t-MDSを発症した頰粘膜癌の1例を経験したので報告する。
    患者は57歳の男性で,左側頰粘膜の有痛性の腫脹および潰瘍に気付き当科を受診した。術前検査にて胃癌と下咽頭癌が認められ,胃癌に対しては内視鏡的粘膜下層剥離術が行われた。また,頰粘膜の生検の結果,中分化型扁平上皮癌と診断された。臨床診断は頰粘膜癌(T4aN2bM0,Stage Ⅳa)であった。S-1を2週間投与後,機能的全頸部郭清術,頰粘膜腫瘍切除術および前腕皮弁による再建術を施行した。病理組織検査の結果,腫瘍切除断端は陰性であったが,4つのリンパ節転移が認められた。そこで,頰粘膜癌の術後補助療法および下咽頭癌の化学放射線療法としてCDDP,DTXおよびS-1による多剤併用化学療法,S-1とX線による化学放射線療法を施行した。術後補助療法終了から4年後,発熱および汎血球減少を認め,末梢血中の骨髄芽球およびWT1 mRNAコピー数の増加が明らかになった。骨髄検査の結果,CD13,CD33およびCD34 陽性細胞が認められ,t-MDSと診断された。その後,化学療法としてアザシチジンの投与を11コース施行し,一時寛解するも汎血球減少が進行し死亡した。
  • 吉川 恭平, 野口 一馬, 山根木 康嗣, 吉田 和功, 森寺 邦康, 高岡 一樹, 岸本 裕充
    2021 年 33 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
    ジャーナル フリー
    エーラスダンロス症候群(以下EDS)は,関節の過可動性,皮膚の過伸展性,血管の脆弱性などを特徴とするまれな遺伝性疾患であり,現在13の病型に分類されている。なかでも血管型EDSは,動脈解離や動脈瘤破裂,腸管破裂などのリスクがある最も重篤な病型である。渉猟し得た限り,これまでにEDS患者に発生した口腔癌の報告はない。われわれは,血管型EDS患者に発生した極めてまれな舌癌の1例を経験したので概要を報告する。患者は48歳女性で左側舌縁に悪性腫瘍を疑う白色病変を認め,当科を受診した。全身麻酔による循環変動で生じ得る重篤な合併症を回避するために,静脈鎮静下にて切除生検を施行した。術中の循環動態は安定し,全身的合併症や異常出血は生じなかった。病理組織検査の結果,高分化型扁平上皮癌の診断を得た(pT1N0M0,stageⅠ)。創部治癒遅延を認めたが,術後13か月経過した現在再発なく経過している。
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