皮膚の科学
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13 巻, 3 号
皮膚の科学
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
症例
  • 椿本 和加, 加藤 晴久
    2014 年 13 巻 3 号 p. 167-171
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル 認証あり
    31歳の男性が脊髄損傷による難治性褥瘡のため当科に入院した。15年間創廓清・皮弁などの外科処置が行われてきたが完治しなかった。難治性褥瘡のため MRI を行ったところ骨髄炎の合併が疑われた。起炎菌同定のため骨生検を行った。起炎菌は Streptococcus agalatiae で,ベンジルペニシリンカリウム 300万単位,1日6回投与を6週間,イソジン®シュガーパスタ軟膏の外用と,リファンピシンおよびトリメトプリム・スルファメトキサゾール製剤の内服を継続し,約10ヶ月かかったが褥瘡は治癒し再発は認めていない。難治性の褥瘡を診た場合,MRI などで骨髄炎の有無の評価を早期に行い,骨髄炎が疑われた時は骨生検により起炎菌を同定することが重要である。(皮膚の科学,13: 167-171, 2014)
  • 加藤 麻衣子, 三宅 宗晴, 大磯 直毅, 川田 暁, 露口 一成
    2014 年 13 巻 3 号 p. 172-175
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル 認証あり
    82歳,女性。数年前より右頬部に軽度そう痒を伴う皮疹が出現し,徐々に拡大してきた。初診時,右頬部に鱗屑と痂皮が付着する直径 6×4cm 大の境界比較的明瞭な紅斑局面を認めた。生検標本の病理組織検査で,乾酪壊死はなかったがリンパ球浸潤を伴った類上皮細胞肉芽腫を認めた。クオンティフェロン® TB ゴールドは陽性を示した。病理組織の Ziehl-Neelsen 染色で抗酸菌を認めなかった。生検皮膚からの結核菌 DNA の PCR は陰性であった。しかし生検皮膚から Mycobacterium tuberculosis が分離培養され,尋常性狼瘡と診断した。喀痰培養,胸部 CT を施行したが活動性の肺病変はなかった。臨床症状や病理所見より尋常性狼瘡の可能性を考えた際には,さまざまな検査法を用いて抗酸菌の存在を証明する必要があると考えた。(皮膚の科学,13: 172-175, 2014)
  • 貫野 賢, 宮下 文
    2014 年 13 巻 3 号 p. 176-179
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル 認証あり
    10ヶ月,女児。生下時より後頭部正中に皮膚結節を認めていた。徐々に増大するために2011年10月に当科を受診した。初診時,後頭部に 10×10mm 大の淡紅色結節を認めた。頭部 CT では明らかな頭蓋内との交通はなかったが,一部に骨欠損を伴っていた。局所麻酔下に生検を施行したところ皮膚髄膜腫が疑われたため,2012年3月に全身麻酔下に腫瘍を切除した。病理組織像では卵円形から紡錘形の核と好酸性細胞質を有する細胞が,一部渦巻様配列を示しながら増生しており,皮膚髄膜腫と診断した。自験例のように骨欠損を伴う症例では,術後に神経症状や髄膜炎を併発する可能性があるため,注意深い経過観察が必要であると考えた。(皮膚の科学,13: 176-179, 2014)
  • 外村 香子, 日野上 はるな, 坂井 浩志, 調 裕次, 竹内 英二
    2014 年 13 巻 3 号 p. 180-184
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル 認証あり
    76歳,男性。多発性モルフェアの既往あり。数ヶ月前に右上腕屈側の膨隆に気づき,徐々に目立ってきたため平成22年6月当科を受診した。肘関節屈曲時膨隆はより明らかとなり,伸展時に目立たなくなる。脂肪腫,深在性モルフェア,筋ヘルニアなどを疑い MRI を撮像したところ,膨隆部は筋組織と等信号であり,特徴的な臨床像とあわせて上腕二頭筋長頭腱断裂と診断した。疼痛や機能障害がないため保存的に経過観察とした。上腕二頭筋長頭腱断裂は,退行性変性を基盤として外的刺激が加わった際に生じる疾患で,主として整形外科で扱われるが,自験例のように皮下腫瘍を疑われ皮膚科を受診する場合もあり,皮膚科医も認知しておくべき疾患と思われる。(皮膚の科学,13: 180-184, 2014)
  • 藤田 美幸, 川田 暁, 中野 創
    2014 年 13 巻 3 号 p. 185-188
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル 認証あり
    35歳女性。数年前から時々腹痛,嘔気があり,さらに両手背にびらんが多発して出現し前医を受診した。天疱瘡を疑われたが自己抗体は陰性であった。病歴から光線過敏もありポルフィリン症を疑われ,当科を紹介され受診した。初診時両手背に痂皮を伴う丘疹が数ヶ所あり,色素沈着と瘢痕が混在していた。検査では尿中コプロポルフィリン値,尿中ウロポルフィリン値が高値であった。患者末梢血 DNA の遺伝子解析でプロトポルフィリンノーゲン酸化酵素 (protoporphyrinogen oxidase: PPOX) 遺伝子の exon 7 に c.779T>C の変異を同定し,異型ポルフィリン症 (variegate porphyria: VP) と診断した。経過中右頬部に日光角化症を併発し切除術を施行し,現在まで再発は認めていない。我々が開発したプロトポルフィリンIXの吸収波長の最大のピークを含む 405~450nm の波長域の光を吸収する2種類(リキッド+パウダー)のファンデーション剤の組み合わせを使用し光線過敏症状を予防できた。(皮膚の科学,13: 185-188, 2014)
  • 南部 昌之, 小島 清登, 八田 順子, 竹田 公信, 藤井 俊樹, 田邉 洋, 望月 隆
    2014 年 13 巻 3 号 p. 189-193
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル 認証あり
    78歳,女性。関節リウマチで半年前まで抗リウマチ剤を服用していた。現在は胃癌の術後化学療法中である。初診2,3ヶ月前より頭頂部に痂皮が付着するびらんが生じ,徐々に拡大するとともに脱毛を伴ってきた。初診時,頭頂部の広範囲に(手掌大の大きさ)浸潤を触れ脱毛を伴う紅斑を認め,同部には島状に黄色の厚い痂皮が付着していた。痂皮付着部位を圧すると黄色の膿汁が排出され,この膿汁の培養から黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が検出された。毛髪,痂皮の真菌検査は陰性であった。当初細菌感染症を疑い抗生剤を投与したが皮疹は改善しなかった。病理組織学的には,非特異的な炎症を伴った瘢痕組織であり,病変部には毛包は認められなかった。特異な臨床像,臨床経過より erosive pustular dermatosis of the scalp と診断した。ステロイド薬外用により膿汁と痂皮は消退し,びらんは上皮化し,紅斑は縮小した。病変辺縁部には発毛の回復がみられた。本症は瘢痕性脱毛を生じるが,毛包残存部ではステロイド外用治療により発毛する可能性があると考えた。(皮膚の科学,13: 189-193, 2014)
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