皮膚の科学
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4 巻, 1 号
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症例
カラーライブラリー
綜説
研究
  • 原田 晋, 吉崎 仁胤, 福永 淳, 永井 宏, 堀川 達弥, 清水 秀樹, 足立 厚子, 鷲尾 文郎
    2005 年 4 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
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    魚類摂食後に発症する蕁麻疹の原因として,近年魚類の体内に潜むアニサキスに対するアレルギ-反応に基づくとの考え方が主流となりつつあるが,その発症機序や臨床経過には未解明な部分が多いのが現状である。具体的には,1)アニサキスと回虫との間には交叉反応性は存在しているのか?,2)魚類摂食を契機に発症してアニサキスによる蕁麻疹と診断され,その後魚の摂取を控えても漫然と蕁麻疹が持続する症例の発症機序は?,等といった疑問点が存在する。後者に対して我々は,トロポミオシンを共通抗原とする交叉反応性やアスピリン蕁麻疹との合併等といった機序の関与を推測したが,未だ確定的とは言い難く今後のさらなる検討が必要である。
症例
  • 貝田(大島) さやか, 池上 隆太, 猿喰 浩子, 小笠原 延行, 玉井 正光
    2005 年 4 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    62歳女性。約30年前より四肢に有痛性紅斑が出現していた。2003年3月,高血圧,心雑音,頚部リンパ節腫脹を指摘され,心エコーにて大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症と診断。下腿の有痛性紅斑の組織像は,リンパ球や類上皮細胞性肉芽腫性変化や線維化を伴った脂肪織隔壁の炎症であった。頚部リンパ節の組織像は,乾酪壊死を伴わない大小の類上皮細胞性肉芽腫で,その中央に硝子化した線維化巣があった。CRP値の上昇や赤沈の亢進,画像上では,大血管の壁肥厚や狭窄,閉塞がみられた。高安病とそれに伴う結節性紅斑として,プレドニゾロン30mgの内服が開始され,皮疹は速やかに消退した。
  • 八杉 由美, 宮田 明子, 平野 愛, 南 祥一郎, 伊藤 孝明, 夏秋 優, 山西 清文
    2005 年 4 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    37歳,男性。パモ酸ヒドロキシジン(アタラックス®P)の内服後に,38℃台の発熱と全身の小膿疱を伴うび慢性の紅斑が出現した。血液検査では白血球19,800/μl,CRP9.0mg/dlと上昇していた。組織所見では角層下膿疱,真皮上層の好中球,リンパ球,好酸球浸潤を認めた。アタラックス®Pを用いたパッチテスト,皮内テストは陽性,DLSTは陰性であった。また,アタラックス®Pの内服により,全身の紅斑が誘発された。以上より,アタラックス®PによるAcute generalized exanthematous pustulosis(AGEP)と診断した。
  • 鈴木 敬子, 樽谷 勝仁, 横見 明典, 乾 重樹, 小澤 健太郎, 吉良 正浩, 板見 智, 吉川 邦彦
    2005 年 4 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    60歳,女性。昭和55年より特発性血小板減少性紫斑病あり。平成7年8月,子宮体癌手術にそなえた血小板増加目的にてγグロブリン大量療法を施行され,開始4日後に両手掌・足底に痒みを伴う小水疱が多発した。平成14年11月内視鏡下胃粘膜切除術施行前にγグロブリン大量療法を5日間施行し,開始6日後に両手掌,足底に同様の皮疹が出現。同年12月にもγグロブリン大量療法を3日間施行し,同様の皮疹の再燃を認めた。組織学的に表皮の海綿状態と水疱形成を認め,蛍光抗体直接法にて表皮細胞間にIgG沈着を認めた。
  • 阿曽沼 由香, 堀尾 武
    2005 年 4 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    86歳女性。2003年2月頃より,右腰部に圧痛を伴う爪甲大の褐色を呈した扁平隆起性局面が出現した。接触痛も伴ったため7月3日当科受診。生検にて基底層直上の裂隙と棘隔解像を認め,臨床像とあわせてtransient acantholytic dermatosisと診断し,ステロイドにて治療を開始したところ,外用2週間後には皮疹は縮小した。自験例は皮疹が単発で大型である点が典型例と異なる。
  • 白井 輝, 澤田 由佳, 宮島 進, 岡田 奈津子, 金澤 成行, 山本 崇, 松下 哲也
    2005 年 4 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳の男性,1995年より陰嚢の腫瘤を自覚したが放置していた。2001年頃より増大。初診時,陰嚢右側に径約5cm大の淡紅色の有茎性の腫瘤を認めた。病理組織学的には表皮は乳頭状増殖を示し,表皮突起は下方へ向かって不規則な腫瘍性の増殖像を示したが,真皮との境界が明瞭で細胞配列の乱れはなく,核の異型性もほとんどなかった。一部の細胞は核周囲に空胞化を認めた。全身検索にて内臓への転移はみられなかった。verrucous carcinomaの診断にて外科的に切除した。HPVとの関連を調べたがtype6,11を含めすべて陰性であった。
  • 中野 一仁, 前川 直輝, 國行 秀一, 鈴木 伸典
    2005 年 4 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    90歳男性に発生し,2度の再発を繰り返した皮膚平滑筋肉腫の症例を報告した。82歳時に右前腕部皮膚に暗赤色の腫瘤が出現.近医で切除を受けたが再発を繰り返した。肉眼所見では,5×6cm大,高さ4cmのドーム状に隆起した暗赤色の弾性硬の腫瘤であった。入院後,同部腫瘤の切除を行った。病理組織学的に紡錘形の細胞質と異型性の強い大型の核を有する細胞が表皮直下から皮下脂肪組織にかけて索状に密に増殖していた。免疫組織学的には抗α-smooth muscle actin抗体,抗desmin抗体,抗myoglobin抗体陽性であった。以上より皮膚型の平滑筋肉腫と診断した。本症は再発することが多く,広範囲に外科的切除を施行することが必要と思われた。
  • 岡 昌宏, 錦織 千佳子, 林 伸英
    2005 年 4 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    55歳女性および74歳男性に生じた水痘再罹患の2例を報告した。2例とも基礎疾患を有し,ステロイドの全身投与を受けている間に小水疱ないしは水疱が少数散在性に出現した。臨床像,病理組織像および水痘-帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus,VZV)-IgG抗体高値より,水痘の再罹患と診断した。健常高齢者群,高齢帯状疱疹患者群,および高齢水痘再罹患患者群について,enzyme immunoassay(EIA)法により測定され,国際単位で表されたVZV-IgG抗体値を比較したところ,3群ともVZV-IgG抗体値は陽性であるが,健常高齢者群はほとんどが1万以下の値であるのに対し,高齢帯状疱疹患者群,および高齢水痘再罹患患者群では数万の値をとることが示され,EIA法によるVZV-IgG抗体値測定は臨床診断が困難になりがちな高齢者の水痘再罹患の診断に有用であると考えられた。
  • 東 禹彦, 望月 隆
    2005 年 4 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    16歳,男子,高等学校レスリング部員に生じたTrichophyton tonsuransによるケルスス禿瘡に体部白癬を伴った1例を報告した。部員の1人がイランから帰国1週間後に,部員全員に痒みを伴う紅斑を生じた。患者は頭部にケルスス禿瘡を,左腕に体部白癬を生じて受診した。直接鏡検で毛内性大胞子菌性寄生を認め,培養によりTrichophyton tonsuransを分離した。テルビナフィンを1日125mgの内服を2ヵ月間行い,完治した。その半年後,再び顎部に体部白癬を生じて受診した。部員全員の治療の必要性を痛感した。
  • 白木 祐美, 金子 千尋, 阿部 澄乃, 比留間 政太郎
    2005 年 4 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    平成15年2月から平成16年5月までの約1年間に,Trichophyton tonsurans感染症5例を経験した。年齢は20-32歳,男2女3で全員柔道選手,頭部白癬と体部白癬の両方を認めたのは3例,体部白癬のみが2例であった。頭部白癬の症例は3例ともhairbrush法陽性,1例はケルスス禿瘡,2例はBlack dot ringworm(BDR)であった。治療は,頭部白癬にたいしては抗真菌剤内服,体部白癬は抗真菌剤外用を行った。治療においての患者の意識は,体部白癬は外用治療を懸命にするのに対して,自覚症状の乏しい頭部白癬には,重要視しない傾向があり指示通りの内服治療が困難であった。また生毛部の体部白癬でも生毛内に真菌が侵入した1例では,外用のみでは治癒せず抗真菌剤内服併用で治療した。今回経験したT.tonsurans感染症の治療経験から,本感染症制御に当たっては,柔道関係者への情報提供,啓蒙が非常に重要で,各集団の責任者(監督など)の理解を得て集団検診,治療,予防対策を行うのが最善の方法と考える。
  • 菅谷 直樹, 鈴木 加余子, 溝口 良順, 堤 寛, 大谷 道廣, 松永 佳世子
    2005 年 4 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/17
    ジャーナル 認証あり
    51歳男性。1年前にブラジルで現地女性と性的接触があった。半年前より頚部リンパ節腫脹を自覚し,1週間前より掌蹠,陰部,口腔内,頚部に自覚症状を伴わない皮疹が出現したため,当科を受診した。掌蹠には東南アジア,ラテンアメリカなどの風土性トレポネーマ症である熱帯フランベジアに類似し境界明瞭に隆起した皮疹と,乾癬に類似した鱗屑を伴う皮疹を認めた。初診時TPLA 19,800T.U.,ガラス板法64倍であった。熱帯フランベジアとの鑑別診断を要したが,問診から推測した感染経路,発症年齢などからブラジルで感染した梅毒と診断した。アモキシシリン(1000mg/day)で治療し,皮疹は約3週間で消褪した。
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