皮膚の科学
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21 巻, 2 号
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研究
  • 大嶋 雄一郎 , 石黒 和守 , 渡辺 大輔
    2022 年 21 巻 2 号 p. 79-85
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    Hyperhidrosis disease severity scaleHDSS)が 3 または 4 の原発性腋窩多汗症患者46例を対象に,実臨床でのソフピロニウム臭化物(本剤)の有効性,安全性および患者満足度を調査した。本剤での治療前,治療開始後 4 週時に,HDSS,発汗 visual analogue scaleVAS)および dermatology life quality indexDLQI)合計スコアの評価,患者アンケートを実施した。治療開始後 4 週時にHDSS 1 または 2 に改善した患者割合は82.6%で,本剤の第 3 相検証的試験でのプラセボ群の 4 週時の HDSS 1 または 2 に改善した患者割合41.2%よりも有意に多かった。平均発汗 VAS(±標準偏差)は治療前が 7.3±1.74 週時が 4.2±2.5,平均 DLQI 合計スコアは治療前が 6.5±5.44 週時が 2.3±2.9 であり,いずれも有意に改善した。全体の95.7%(44/46例)が外用を継続することができた。患者満足度は「非常に満足」,「比較的満足」が全体の58.7%と半数以上であった。治療効果を実感した時期は治療開始後 1 週間以内が67.4%と早期であり,治療を受けて良かった点は「塗るだけで手軽に治療ができる」と60.9%が回答した。早期に治療効果が実感できる点や治療の簡便さが患者の満足感に寄与した可能性がある。 (皮膚の科学,21 : 79-85, 2022)

症例
  • 四十万谷 貴子 , 寺井 沙也加 , 中丸 聖, 槇村 馨 , 清原 隆宏
    2022 年 21 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    75歳,女性。約 1 年前より右腰部に紅斑を認めていた。前医の皮膚生検では,肥厚した表皮上層に限局して明るい胞体をもつ腫瘍細胞の増殖を認め,軽度の錯角化を伴っていたため,乳房外 Paget 病を疑われた。当科で再生検を施行したところ,表皮全層性に極性が失われ,異型な角化細胞が増殖し,異常角化細胞が散在していた。また,表皮中層から上層に明るい胞体を有する異型な pagetoid cell がみられた。腫瘍細胞は,PAS 陽性(ジアスターゼ消化性),alcian blue 陰性,CK5/6 陽性,CAM5.2 陰性,CEA 陰性,GCDFP15 陰性,S-100 蛋白陰性であることから,pagetoid Bowen 病と診断した。Pagetoid Bowen 病の確定診断に,組織化学染色と免疫組織化学染色が有効であった。 (皮膚の科学,21 : 86-90, 2022)

  • 園村 真美 , 奥野 愛香 , 古川 福実
    2022 年 21 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    13歳,男児。 X 1 月に両頬部に白色面皰,紅色丘疹が出現し,X 3 月に近医皮膚科を受診した。抗菌薬の外用・内服やアダパレンゲル外用で加療をされるも前額部,両頬部全面に膿疱性の病変が急速に拡大し増悪したため X 5 月に当科紹介となった。当科初診時,額部,両頬部,鼻部に膿疱性で触診にてやや硬な病変が癒合し,口周囲は紅色の丘疹を認めた。体幹には皮疹を認めなかった。 臨床所見から嚢腫性痤瘡と診断した。抗菌薬の外用・内服に加え,シクロスポリンの内服,排膿散及湯や柴苓湯の内服,排膿処置,嚢腫内へのケナコルト局所注射を併用することにより新生膿疱の出現は抑制され膿疱性の結節の大部分は平坦化を認めた。嚢腫性痤瘡は尋常性痤瘡の重症型で強い炎症を伴う深在性の炎症性皮疹と考えられており,一般的な痤瘡治療では治療に難渋することが多い。自験例では強い炎症を伴う深在性の炎症性皮疹に対して免疫抑制剤を投与するとともに積極的に排膿処置を行うことで炎症反応が軽減した。また,漢方薬を追加することにより新生痤瘡の増殖が抑制でき免疫抑制剤を減量する際に有効であった。 (皮膚の科学,21 : 91-97, 2022)

  • 林 秀樹 , 南 祥一郎 , 木村 勇人 , 廣瀬 隆則
    2022 年 21 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    症例は63歳,男性。当院受診の10年前に,背部左側に 2cm程度の皮下結節に気が付いた。 5 年前より圧痛を伴うようになり,徐々に増大したため当院を受診した。局所麻酔下に皮下組織に存在した腫瘍を摘出したが,腫瘍の境界は比較的明瞭で,黄色調の充実性腫瘍であった。病理組織学的所見では,異型がやや目立つ紡錘形細胞や多形細胞,脂肪芽細胞,成熟した脂肪細胞が病変部内において様々な分布を示し,間質は線維性や粘液様であったり多様であった。また,免疫組織化学染色で腫瘍細胞は CDK4 陽性,MDM2 陰性,RB1 陰性であった。以上の所見より atypical spindle cell/pleomorphic lipomatous tumor と診断した。本症は良性の脂肪細胞性腫瘍として,2020年の WHO 分類から新しく概念が変更された比較的稀な疾患であり,今後の症例の蓄積が必要と思われる。 (皮膚の科学,21 : 98-102, 2022)

  • 山根 菜々子 , 鈴木 緑, 加藤 麻衣子 , 柳原 茂人 , 大磯 直毅 , 川田 暁 , 大塚 篤司
    2022 年 21 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    71歳,男性。初診の 2 ヶ月前より顔面に皮疹が出現し,当科初診時には顔面と四肢体幹に鱗屑を伴う紅斑,小膿疱を認めた。臨床症状および病理学的所見より毛孔性紅色粃糠疹と診断し,ステロイドと活性型ビタミン D3 の外用を開始したが改善が乏しく,エトレチナートとシクロスポリンの内服を併用した。その後皮疹の改善を認め,両剤を中止したところ再燃を認めた為,エトレチナートを再開した。しかしエトレチナート再開後爪甲剥離や口唇炎が生じた為,アプレミラストの内服を開始した。アプレミラスト開始後皮疹の改善を認め 5 週間後には皮疹は概ね消退した。毛孔性紅色粃糠疹は一部に難治例が存在するが,自験例ではアプレミラスト内服が有効であったため報告する。 (皮膚の科学,21 : 103-107, 2022)

  • 岩津 理世 , 佐藤 雅子 , 加藤 麻衣子 , 柳原 茂人 , 大磯 直毅 , 川田 暁 , 大塚 篤司
    2022 年 21 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    52歳,男性。 7 年前に尋常性天疱瘡と診断され当科に通院していたが,背部の皮膚と両側頬粘膜のびらんが徐々に増悪したため入院となった。入院時の Pemphigus Disease Area IndexPDAI)は皮膚10点,粘膜 2 点と中等症であったが難治であり,入院後激しい咽頭痛,呼吸困難感が生じ上部消化管内視鏡検査を施行したところ,食道全長にわたって粘膜びらん・潰瘍・裂創を認めた。抗デスモグレイン 1 抗体 630 U/mL,抗デスモグレイン 3 抗体 2,540 U/mL と上昇を認め,さらに粘膜びらんと潰瘍が食道全体に散発していたため,尋常性天疱瘡の食道粘膜病変と考え,ステロイドパルス療法,全身投与,免疫抑制剤内服,血漿交換療法,免疫グロブリン大量静注療法を行ったところ,皮膚症状と口腔内粘膜症状は改善した。上部消化管内視鏡検査にて食道全長に生じた粘膜病変の改善も確認し,治療効果判定もおこなった。自験例では入院時のは皮膚10点,粘膜 2 点と中等症であったが難治であり,重度の食道粘膜症状もきたした。口腔粘膜病変を伴う場合,上部消化管内視鏡検査で食道粘膜病変の観察を行うこと,重症例においては積極的に初期治療を行うことが重要であると考える。 (皮膚の科学,21 : 108-113, 2022)

  • 来田 英伸 , 菊澤 千秋 , 文 省太 , 出野 りか子 , 池田 彩 , 小澤 健太郎 , 北村 三和
    2022 年 21 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    74歳男性。 6 年前より生じた左第 1 趾腹の有痛性腫瘤を主訴に当科を紹介受診した。左第 1 趾腹に6×5mmの表面が紅色調で軽度の圧痛を伴う弾性硬の下床との可動性良好な腫瘤を認めた。皮膚超音波検査では低エコー性腫瘤が存在し,血流信号は認めず,グロムス腫瘍を疑い全切除した。病理組織学的には真皮から皮下組織にかけて境界明瞭な結節性病変を認め,核の濃染や大小不同が目立つ好酸性胞体を持つ円形細胞のシート状の増殖を認めたが,核分裂像増加や異常核分裂は認めなかった。 一部には核異型のない典型的なグロムス腫瘍の所見も認めた。免疫組織化学では α-SMA がびまん性に陽性で,Ki-67mib-1)陽性細胞は 1 %以下であった。以上より,グロムス腫瘍の特殊型であるsymplastic glomus tumor と診断した。symplastic glomus tumor は強い核異型を認めるが,浅在性かつ小型の境界明瞭な病変で,核分裂像増加や異常核分裂像を示さない良性腫瘍である。非常に稀な腫瘍であるが,本腫瘍の存在を認識して適切に診断する必要がある。 (皮膚の科学,21 : 114-118, 2022)

  • 八木 洋輔 , 阪口 友里 , 角南 志保 , 高瀬 早和子, 西村 陽一 , 太田 深雪 , 藤田 真文 , 小西 宏樹 , 瀬戸山 健 ...
    2022 年 21 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    72歳男性。 2 ヶ月間持続する右前腕の腫脹を主訴に当科紹介受診となった。MRI 検査により STIR 像で高信号を示す筋肉のびまん性変化がみられたため整形外科を受診した。筋生検を予定していたところ左側腹部に直径 3cm,高さ 1.5cmの発赤と圧痛を伴う,辺縁はなだらかに隆起した表面平滑な,表皮と癒着し下床と可動性良好な弾性硬の腫瘤が出現していたため,筋肉と同時に生検を施行した。病理組織学的検査の結果,低分化腺癌の転移であったため全身検索を行ったところ,胃癌の筋肉内転移と判明した。悪性腫瘍の筋肉内転移は稀であり,過去の報告から原発腫瘍は肺癌,乳癌が多い。原発巣を胃癌に限定した場合,筋肉内転移は男性に多く,転移巣は体幹,特に傍脊柱の筋肉への転移が多い傾向があった。また,筋肉への転移巣は通常腫瘤性病変となることが多いが,自験例ではびまん性の病変であったため原発・転移性腫瘍以外も鑑別に挙げる必要があった。 (皮膚の科学,21 : 119-125, 2022)

  • 岩津 理世 , 佐藤 雅子 , 加藤 麻衣子 , 柳原 茂人, 大磯 直毅 , 立石 千晴 , 橋本 隆 , 鶴田 大輔 , 川田 暁 , ...
    2022 年 21 巻 2 号 p. 126-132
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    77歳,男性。初診の 1 週間前から手足に紅斑と水疱を認めた。その後皮疹が全身に拡大し,粘膜にもびらんを認めたため,精査加療目的で当科に紹介された。初診時,体幹・四肢に紅斑と水疱が多発しており,口唇・口腔内・陰茎にびらんを認めた。抗 BP180-NC16A 部位抗体,抗デスモグレイン 1 3 抗体は陰性であった。病理組織にて好酸球浸潤を伴う表皮下水疱,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部に C3 の線状沈着を認めた。1M 食塩水剥離皮膚を基質とした蛍光抗体間接法では,IgG 抗体が真皮側に反応した。正常ヒト真皮抽出液を用いた免疫ブロット法にて患者血清 IgG 抗体は 200 kDa ラミニン γ1p200)に反応し,ラミニン332リコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法で 165 kDa ラミニン α3 に反応した。臨床症状と病理所見,蛍光抗体直接法,蛍光抗体間接法,免疫ブロット法の結果より,抗ラミニン γ1 類天疱瘡と抗ラミニン332型粘膜類天疱瘡の合併と診断した。プレドニゾロン 1 mg/kg/日点滴を行ったところ,新生水疱を認めなくなり,紅斑は退色,びらんは上皮化した。その後,プレドニゾロンを漸減したが,皮膚・粘膜症状は再燃しなかった。自験例では皮膚・粘膜症状は重篤であったが,ステロイド全身投与が速やかに奏効した。 (皮膚の科学,21 : 126-132, 2022)

  • 田原 純平 , 笹橋 真紀子
    2022 年 21 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    48歳男性。小児期よりアトピー性皮膚炎で皮膚科を受診していたが,20歳代になると無加療で症状が安定していた。30歳代になり躯幹・四肢に瘙痒のない赤褐色丘疹が出現し35歳で受診した。アトピー性皮膚炎としてベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏やクロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏で治療されていたが,改善と再発を繰り返していたため,通院開始から13年後に背部の赤褐色丘疹から生検をおこなった。組織では真皮浅層にリンパ球が中心であるものの多数の形質細胞浸潤を認めたが,花筵状の線維化や閉塞性静脈炎は認めなかった。M蛋白やベンス・ジョーンズ蛋白(BJP)は陰性で組織での軽鎖制限はなかった。血清 IgG4 185 mg/dl と上昇していた。免疫組織化学染色では IgG4/IgG 0.40.6 であり IgG4 陽性形質細胞の絶対数は 40/HPF だった。臨床所見と病理組織学的所見からは皮膚形質細胞増多症と偽リンパ腫,IgG4 関連疾患が鑑別に挙がった。 自験例は IgG4 関連疾患の特徴を有しているものの IgG4 関連疾患の国際的な病理コンセンサスの基準は満たさなかった。皮膚に関する病理コンセンサスの根拠には疑問点があり,IgG4 関連皮膚疾患の診断については種々の議論がある。近年,皮膚形質細胞増多症や偽リンパ腫と IgG4 関連疾患の関連が指摘されており,IgG4 関連皮膚疾患の疾患概念の確立が望まれる。 (皮膚の科学,21 : 133-137, 2022)

  • 花本 眞未 , 北嶋 友紀 , 四十万谷 貴子, 寺井 沙也加 , 中丸 聖 , 槇村 馨, 金田 浩由紀, 笠井 健史 , 清原 隆宏
    2022 年 21 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/06
    ジャーナル 認証あり

    73歳男性,左上口唇の 7mm大の淡紅色結節。真皮全層に紡錘形あるいは類上皮様の異型細胞が線維化を伴い錯綜しながら増殖していた。所々に dPAS および alcian blue 陽性のシアロムチンを含む印環細胞を伴っていた。免疫染色で CK7CK20CDX2 陽性,TTF-1napsin A 陰性であった。消化管内視鏡検査では病変はなく,画像検査では右肺底部に腫瘤が確認された。患者は63歳時に食道癌を発症し食道亜全摘および胃管再建術を施行されていた。67歳時に胃管癌摘出を受け,その時胃管は右胸腔に挙上されており,最終病理診断は低分化型腺癌で漿膜浸潤を伴っていた。免疫染色から原発性肺癌は否定的で,胃管癌が肺に直接浸潤し,血行性に皮膚転移を生じたと考えた。 (皮膚の科学,21 : 138-143, 2022)

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