非イオン性ヨード造影剤による多発性固定薬疹の3例を経験した。患者1は慢性腎不全で透析中の80歳代,男性。イオメプロール投与毎に口唇,陰部にびらんが出現し,イオヘキソールでも同様皮疹を認めた。スクラッチパッチテスト,DLST は陰性であったが,病歴と特徴的な病理組織所見より診断した。患者2は中等度腎機能障害のある60歳代,女性。肝細胞癌治療の際,血管造影にイオベルソールが使用され,下肢を中心に境界明瞭な類円形紅斑が多発した。イオヘキソール,イオメプロールでも交叉反応を示した。患者3は IgA 腎症で透析中の40歳代,男性。イオヘキソール投与後に口唇のびらん,手指の紅斑が出現し,薬疹が疑われるも,約1年半後の急性心筋梗塞時にイオヘキソールが再投与され,同部位に同様の皮疹が出現した。非イオン性ヨード造影剤による薬疹は,播種状紅斑丘疹型あるいは多形紅斑型が多いが,多発性固定薬疹も比較的稀な発疹型として報告されている。透析患者がそのほとんどを占め,さらに繰り返し非イオン性ヨード造影剤の使用を必要とする基礎疾患を持つ例が多く,これらがリスクファクターになっていると考えられる。また非イオン性ヨード造影剤は,交叉反応を起こしやすく,他剤でも再燃を繰り返すうちに重症型薬疹に移行する可能性がある。我々は個々の症例に応じて慎重に診療に当たりながら,他科医師にもこのリスクを周知徹底させる必要がある。(皮膚の科学,14: 252-258, 2015)
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