皮膚の科学
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3 巻, 6 号
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研究
  • 中川 登, 夏秋 優, 荒木 徹也
    2004 年 3 巻 6 号 p. 541-545
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    市立伊丹病院における1993年~2003年の毛虫皮膚炎患者数を調査した。その結果, 2003年が最も多く95名,次に1993年が46名,1994年は34名で,その他の年は25名以下であった。
    また,2003年の毛虫皮膚炎患者95名について検討したところ,男女比は49:46であり年齢分布では9歳以下の小児と50歳以上の中高年に多い傾向があった。これらの患者の皮疹の好発部位は上肢であった。
    月別患者数では6月と8~9月に多く,チャドクガの幼虫が出現する時期に一致していることから,その原因の多くはチャドクガの幼虫であろうと推察された。
    次に毛虫皮膚炎の患者数と気候との関連を調べるため,神戸における月別降水量と平均気温について調べた。その結果,1993年と2003年は長雨,冷夏であったことが判明した。このことから気象条件が毛虫の発生,及び毛虫皮膚炎患者数に影響を与える可能性が示唆された。
症例
  • 青木 奈津子, 庄司 昭伸, 加藤 敦子, 壬生 寿一
    2004 年 3 巻 6 号 p. 546-550
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    66歳,男性。2003年5月6日前立腺癌のため前立腺全摘出術を施行した。その後DICを発症したため,5月13日よりメシル酸ガベキサート(以下FOY)を2.5%溶液として8日間左前腕より点滴静注した。5月28日に同部位に発赤,腫脹などを認め,4日後には潰瘍を形成した。初診時の紅斑出現時期より潰瘍拡大時期まで連日ステロイド局注を試み,保存的治療のみで皮膚潰瘍を上皮化させることができた。早期の紅斑出現時や潰瘍拡大時のステロイド局注はFOYによる難治性皮膚潰瘍の保存療法の一つとして極めて有効であると考えた。
  • 吉崎 仁胤, 清水 秀樹, 原田 晋
    2004 年 3 巻 6 号 p. 551-554
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    22歳,女性。近医でスルピリン(メチロン®)筋注を受けたところ約5分後より全身に膨疹および軽度呼吸困難を生じたため,当院救急外来受診。ステロイドの点滴により諸症状はすみやかに消退した。スルピリンの皮内テストで陽性を示し,自験例をスルピリンによるアナフィラキシー型薬疹と診断した。ピリン系薬剤はその強力な解熱鎮痛作用から20世紀半ばまで頻用されていたが,1960年代を中心にピリン系薬剤による死亡事故が相次いだ。このような背景から近年ピリン系薬剤の使用頻度は減少しているものの,未だ解熱目的でピリン系薬剤の注射薬剤が使用されることは多く,アナフィラキシーショックの発症のリスクも念頭におく必要があると考える。
  • 古田 未征, 尾本 光祥, 林 進, 段野 貴一郎
    2004 年 3 巻 6 号 p. 555-558
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    67歳,女性。2002年7月頃より右膝蓋部にステロイド剤外用で軽快しない自覚症状のない紅色結節が出現した。その後四肢,体幹に皮下硬結が多発し,当科を受診した。初診時,両膝に紅褐色の結節を伴った弾性硬の板状の皮下硬結,右前腕,両下腿に皮下硬結,右大腿部から臀部にかけて紅褐色の結節を認めた。皮膚生検にて乾酪壊死のない肉芽腫性結節の集簇を認め,皮下型サルコイドーシスと診断した。眼,心病変を認めないためステロイド全身投与をせず経過を観察し,5ヵ月後には皮下硬結はほぼ消失した。またHbA1Cは正常値上限であったが,75g経口ブドウ糖負荷試験では境界型糖尿病と診断された。
  • 上埜 剣吾, 荒金 兆典, 山崎 文恵, 弓立 達夫, 前田 晃, 川田 暁, 手塚 正
    2004 年 3 巻 6 号 p. 559-562
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    46歳女性。初診の約3ヵ月前に,季肋部に拇指頭大,ドーム状の黒褐色の腫瘤が出現した。病理組織学的に,真皮内にtrichilemmal keratinizationを示す細胞からなる多房性嚢腫が存在し,内腔には角質物質が充満していた。臨床症状及び病理組織学的にproliferating trichilemmal cystと診断した。さらに一部の角質塊の内部と結合織の一部にコレステリンの針状結晶や石灰沈着および異物型巨細胞を含む異物肉芽腫の形成を認めた。
  • 熊本 貴之, 杉原 和子, 山田 秀和, 岡嶋 馨
    2004 年 3 巻 6 号 p. 563-566
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    85歳,男性。平成13年9月頃より左側頭部にそう痒を伴う紅斑が出現した。その後,紅斑の一部に糜爛と痂皮を伴ってきたため,平成14年10月26日当科初診となった。初診時,左側頭部に角化性局面と痂皮を伴う6.7×4.2cmの紅斑が存在した。生検の結果,日光角化症と診断した。治療は高齢であること,心筋梗塞の既往があること,心不全の合併等の因子を考慮した結果,手術のリスクが高いと判断し電子線療法を選択した。電子線を計45Gy(3.0Gy×15回)照射したところ重篤な副作用も無く,腫瘍は消失した。治療終了19ヵ月後の現在も再発は見られていない。
  • 牧之段 恵里, 佐々木 祥人, 倉田 晴子, 田中 将貴, 堀 啓一郎
    2004 年 3 巻 6 号 p. 567-571
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    81歳,女性。1947年から1年間美白のために,砒素(詳細不明)を1年間内服していた。1990年頃より鱗屑を伴う紅褐色皮疹の増加を認めていた。2001年8月1日,当科紹介受診となった。計30ヵ所切除行い、組織学的に,右手掌の砒素性角化症以外は,すべてBowen病と診断した。また,過去10年間の砒素が誘因と考えられる多発性Bowen病の13症例の発病までの期間は,平均39年であった。
  • 大江 秀一, 為政 大幾, 河本 慶子, 大貫 雅子, 堀尾 修, 幾井 宣行, 堀尾 武
    2004 年 3 巻 6 号 p. 572-575
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    症例は65歳,男性。初診の14年前より,右鼡径部に痒みを伴う鶏卵大の紅斑局面が出現し,約2年前より急速に増大してきた。初診時,右鼡径部から下腹部にかけて黒灰色調の痂皮を付着した15×14cm大の扁平隆起局面を認めた。また局面内には直径8cm大のドーム状紅色腫瘤を伴っていた。皮膚生検にてBowen癌およびエクリン汗器官癌が疑われたため,術前化学療法を施行した後,腫瘍切除術,遊離植皮術,右鼡径リンパ節郭清術を施行し,術後さらに化学療法を2クール行った。病理組織学的にはBowen癌であり,右鼡径リンパ節転移も認めた。以後,経過観察していたが,手術の約1年7ヵ月後より,右腰部,左胸部に紅褐色斑が出現し,さらにその後右腰部,背部にも直径2~5cmの褐色斑が出現した。局所麻酔下に切除したが,全ての皮疹が病理組織学的にBowen病であった。現在までのところ,内臓悪性腫瘍の合併は認めていない。本症例は巨大な腫瘤を呈し,その後もBowen病が多発するという,珍しい臨床経過をたどっている。
  • 遠藤 由紀子, 草壁 秀成, 清金 公裕, 大場 創介
    2004 年 3 巻 6 号 p. 576-581
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    66歳 男性。平成10年11月頃より下顎部に腫瘤をみとめるも放置。平成11年2月,他院にて皮膚生検術施行され,悪性像を認めたため,同年3月当科受診。病理組織学的には真皮深層から筋層にかけて腫瘍細胞が篩状,腺管腔状,一部充実性に増殖する像を認めた。全身検索にて他の部位に腫瘍の存在を示唆する異常所見は認めなかったため,皮膚原発のadenoid cystic carcinomaと診断した。今回検索しえた限りでは皮膚原発のadenoid cystic carcinomaの本邦報告例は自験例を含めて13例であった。
  • 吉田 佐保, 櫻根 純子, 松本 千穂, 伊藤 裕啓, 大和谷 淑子
    2004 年 3 巻 6 号 p. 582-585
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    76歳,男性。初診の3年ほど前から左鎖骨上部にドーム状の結節があり,衣服が擦れると痛いということで受診。病変は10×5mm大の表面平滑で柔らかい紫紅色結節で,臨床像から血管腫を疑い切除した。組織所見では真皮内に嚢胞様に不規則に拡張した血管腔を多数認め,1層の内皮細胞よりなる血管壁の外側に数層の柵状に配列する円形の細胞を認めた。これらの円形の細胞はビメンチンとα-smooth muscle actin陽性でケラチン,CEA,デスミン,S-100蛋白は陰性であった。HE染色と免疫組織染色をあわせて本症例をglomangiomaと診断した。glomangiomaが体幹に単発で生じるのは珍しい。
  • 當間 由子, 西山 千秋
    2004 年 3 巻 6 号 p. 586-590
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    症例1は68歳,女。右手の皮下結節よりSporothrix schenckiiを分離した。イトラコナゾ—ル内服にて皮疹は縮小傾向を示したが消退しなかった。ヨウ化カリウム内服に変更したところ,2ヵ月で皮疹は瘢痕治癒した。症例2は85歳,女。初診の2年前より近医にて右前腕皮疹の治療を受けたが軽快しなかったという。スポロトリコーシスを疑ったが初診時の皮膚生検・培養で菌要素は確認できなかった。3ヵ月後,皮疹は拡大するとともに前腕中枢側に皮下結節が新生した。皮下結節の培養にてSporothrix schenckiiを分離した。ヨウ化カリウム内服にて治癒。ヨウ化カリウムは高齢者のスポロトリコーシス治療において,第一選択薬として有用であると考えた。
  • 桑原 理充, 萬木 聡, 飯岡 弘至, 新妻 克宜, 安田 由紀子
    2004 年 3 巻 6 号 p. 591-596
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    神経線維腫症1型は様々な臓器に多彩な症状を呈して進行する。Quality of life (以下QOL)の観点から約9%が社会生活に困難を認めることとなり,治療の開始が遅いとそのような状態になる可能性が高いことが示されている7)。治療の着手が早いと,よりよいQOLが得られると考えられる。皮膚病変についても,確実な治療が早期に行われるべきである。我々の経験した神経線維腫症1型17名の患者の腫瘍の大きさと年齢との関係,個々の問題点について検討した。患者は腫瘍が目立つ部位でなければ,大きくなるまで切除を希望しない傾向にあると考えられた。初回の手術に満足していない患者は,腫瘍を放置する可能性があり,機能障害を伴って初めて,治療を求める傾向があると思われた。患者教育の重要性と医療者の啓蒙が必要であると考えられた。
使用試験
第3~4回 これからの皮膚科診療を考える会
  • 西嶋 攝子
    2004 年 3 巻 6 号 p. 622-627
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    薬物療法ではクリンダマイシンの外用剤と合成レチノイド剤であるアダパレンについて解説した。理学療法ではケミカルピーリングについて我々の実験成績を中心にニキビに対する効果を検討した。
    今回の講演内容の多くはすでに「皮膚の科学」にトピックスとして掲載ずみである。
  • 小坂 正明
    2004 年 3 巻 6 号 p. 628-636
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    ケロイド・肥厚性瘢痕の保存的治療について最近の動向を解説した。
    圧迫療法:ケロイド・肥厚性瘢痕治療の第1選択と考える。速やかに装着を開始する,操作が簡便,コンパクトである,などが重要である。
    ステロイド療法:隆起の強い瘢痕に用いるが,皮下組織の萎縮,毛細血管拡張症など副作用を認めればシリコンゲルシート療法に切り替える。
    Tranilast内服療法:若年者,新鮮例,隆起・赤みが強い例で有効性が期待される。頻尿などの膀胱刺激症状が数%に見られるが重篤例はない。効果発現まで2~4週を要する。
    放射線療法:ケロイド切除後に電子線を照射することで再発抑制効果は高い。しかし,ケロイド抑制効果は100%ではないこと,色素沈着が生ずる可能性があること,発癌性が否定できないことを事前に説明しなければならない。
    シリコンゲルシート療法:作用機序は明確ではないが肥厚性瘢痕の予防効果は注目に値する。装着後,数ヵ月間で瘢痕の軟化,色調,厚みの順に効果が発現する。開始時期は早いほど良く,筆者は創が上皮化した直後から使用している。欠点として湿疹の発生のほか,小児では脱落しやすく経済面の問題がある。
  • 鈴木 晴恵
    2004 年 3 巻 6 号 p. 637-651
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    Facial Rejuvenationの方法にはスキンケア指導など非侵襲的なものから手術までさまざまな方法があり,それぞれの患者によりそのニーズは異なる。どのようなニーズに対しても最高水準の治療を提供することを目標に行ってきた,メディカルエステの提唱,しみ治療の系統的な治療方法の考案,スキンケアに必要なアイテムの考案,イオン導入器など美容器具の開発,ケミカルピーリング・ボツリヌス菌外毒素注射・フィラー・脂肪溶解注射・スレッドリフトなどの日本人への適応の工夫,アジア人に適したレーザー・IPL照射方法の工夫,外科手術での工夫などにつき要点をまとめた。
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