皮膚の科学
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6 巻, 2 号
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カラーライブラリー
研究
  • 島田 英幹, 笹田 昌宏
    2007 年 6 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    西日本におけるアトピー性皮膚炎専門外来の設置状況を調べたところ,専門外来を設置していたのは,大学病院では,36施設中21施設,総合病院では,40施設中5施設,開業医では,40施設中1施設であった。
    2005年10月から,当院ではアトピー性皮膚炎専門外来を開設した。開設以前は,患者の疾患に対する不十分な知識・薬剤の不適切な使用・スキンケアなどの生活環境の知識不足などにより治療効果が得られていないケースが散見されていた。特に,ステロイド外用剤に対する抵抗感を持つ患者が一定の割合で認められていた。しかし,専門外来を開設し十分な説明などを行うことにより,疾患に対する理解を深めるという点において一定の成果を収めることができた。今回のアトピー性皮膚炎専門外来での患者アンケート調査においても,専門外来開設により患者の満足度,知識の獲得度が高まることが明らかになった。
    また,専門外来設置が一般外来受診者数の増加を促した可能性が示唆された。
症例
  • 中山 由美, 夏秋 優, 山西 清文
    2007 年 6 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    33歳,女性。複数の医療機関でアトピー性皮膚炎と診断され,種々の外用剤を使用していた。某皮膚科でヒルドイド®ソフトを処方され外用していたところ約2週間後から塗布部にそう痒を伴う紅斑が出現し,使用を中止。その後,別の医院でもヒルドイド®ソフトを処方され塗布したところ,翌日から塗布部にそう痒を伴う紅斑が出現して次第に悪化した。皮疹はステロイド外用により軽快したが,原因検索を希望して当科を受診した。初診時,頸部から上肢,前胸部に比較的境界鮮明な紅褐色斑を認め,上腕の上方や前胸部の一部に正常皮膚が残存していた。パッチテストの結果,ヒルドイド®ソフトが陽性,成分パッチテストでは,グリセリン脂肪酸エステルが陽性であった。以上より自験例をヒルドイド®ソフトに含まれるグリセリン脂肪酸エステルによる接触皮膚炎と診断した。
  • 井本 恭子, 宮川 幸子
    2007 年 6 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    19歳,女性。幼少時に,アトピー性皮膚炎と診断され,平成8年5月22日より当科に通院していた。平成9年9月中旬より皮疹が悪化し,同年10月15日よりツムラ加味逍遥散エキス顆粒®とツムラ越婢加朮湯エキス顆粒®を投与した。11月20日より顔面,下腿に浮腫が出現し,血漿レニン活性,血中アルドステロン濃度の低下を認めたことから,両漢方製剤に含まれる甘草による偽アルドステロン症と診断した。両漢方製剤の中止と利尿薬,ステロイドの投与により,浮腫,皮疹は軽快し,検査値も正常範囲内に回復した。
  • 武曽 有美, 城村 拓也, 坂井 浩志, 調 裕次, 高木 圭一
    2007 年 6 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    治療に難渋した皮膚潰瘍に対して,炭酸ガスレーザーが有効であった2例を経験した。
    炭酸ガスレーザーの利点を利用することにより,難治性皮膚潰瘍を効果的に治療できた。炭酸ガスレーザーは難治性皮膚潰瘍の創傷治癒過程を改善し,その縮小に効果があると思われる。
  • 中村 年伸, 瀧本 玲子, 河井 正晶, 阿部 澄乃, 高森 建二
    2007 年 6 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    症例:53歳,女性。初診:平成12年11月1日。主訴:両下腿の緊満性水疱と潰瘍。10月24日,自殺目的で向精神薬と睡眠剤を多量に服用し,自宅で意識消失した。翌10月25日意識消失状態で娘に発見され,同日救急車で当院救急外来を受診し,昏睡状態のため入院となった。入院時に,両下腿に緊満性水疱と潰瘍がみられ,coma blisterと診断した。潰瘍治療は長期間を要した。
    Coma blisterの発症メカニズムは,いまだに不明な点が多く,時に重篤な合併症の報告がある。昏睡後の水疱性皮疹をみた場合は,coma blisterを念頭におき,合併症を見落とさないように注意をして治療を行う必要があると考えた。
  • 川崎 加織, 夏秋 優, 宮田 明子, 山西 清文
    2007 年 6 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
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    63歳,男性。平成17年7月に感冒のためPL®とフロモックス®を内服した翌日に陰部,体幹,四肢など7ヵ所に自覚症状を欠く円形の紅斑が出現し,10日程で消退した。平成18年1月と3月にも同様のエピソードがあった。アセトアミノフェン200mgの内服テストでは内服5時間後より左下腿の茶褐色斑上に紅斑が出現し,24時間後には陰部,体幹,四肢などの前回皮疹出現部位7ヵ所にも紅斑が出現した。1週間後には左下腿の茶褐色斑以外は消退した。以上よりアセトアミノフェンによる多発性固定薬疹(pigmenting typeとnon-pigmenting typeの混在例)と診断した。
  • 宮田 あゆみ, 伊藤 孝一, 幸野 健, 谷口 佳孝, 北村 龍二
    2007 年 6 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    テガフールは我が国を中心として繁用される腫瘍用薬であるが,まれな副作用として強皮症様症状が報告されている。今回,テガフールの合剤TS-1®内服により急速に強皮症様症状を発症した症例を経験したので報告する。症例は81歳男性。口腔底癌再発に対しTS-1®内服が開始されたが,10日目頃より手指のこわばり,14日目には顔面に発疹が出現したため当科に紹介された。初診時,顔面の紅斑と両前腕から手指の皮膚硬化と手指の屈曲拘縮を認めた。組織学的所見は,真皮中-下層に膠原線維の膨化増生を認めた。TS-1®を中止し,硬化が急速進行性であったためプレドニゾロンの内服を開始したところ,症状は速やかに改善した。硬化症状の進展とTS-1®使用状況に関連がみられたことより,本例をTS-1®により誘発された強皮症様症状と考えた。TS-1®は我が国とアジアだけでなく.欧米でも使用機会が増加しつつある。今後同様の症例報告が増加する可能性がある。また,皮膚科医以外の医師には皮膚硬化の早期診断は難しく,今後啓蒙の必要があると考えられる。
  • 井上 織部, 杉本 恭子
    2007 年 6 巻 2 号 p. 116-119
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    23歳男。約5年前より体幹・四肢に無症候性の色素斑が出現し,徐々に増加した。初診時,顔面,手掌足底を除く全身にわずかに角化を伴う色素斑を散在性に認めた。生検にて,皮疹辺縁部にcornoid lamellaを認めた。本疾患は高発癌性であることが知られており,長期にわたる注意深い経過観察が必要である。現在のところ,将来の発癌を抑制する治療は知られていない。日光性表在播種型汗孔角化症の原因遺伝子の検索が進められており,原因解明,治療法開発につながることが期待される。
  • 川上 倫子, 曽和 順子, 小林 裕美, 原田 輝一, 石井 正光
    2007 年 6 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    42歳,女性。2005年4月頃より顔面に腫脹,硬結が出現した。皮膚生検にて皮下脂肪組織内に大小の空隙と肉芽腫形成が認められ,異物肉芽腫と診断した。約15年前に海外の非医療機関にて美容目的で顔面に異物注入を施行しており,異物の内容は,シリコンの可能性が高いと考えられた。異物の除去が困難であったことから,抗菌作用のみならず,抗炎症作用,免疫調整機能,及び肉芽腫形成抑制作用が報告されているミノサイクリン100mg/dayの投与を開始した。腫脹,硬結は著明に改善し,約3ヵ月後に投与を終了した。その後4か月間症状の再発はみられていない。
  • 落合 宏司, 古賀 宣江, 幾井 宣行, 大津 詩子, 森脇 真一, 清金 公裕, 加茂田 麻依子, 瀬戸 英伸
    2007 年 6 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    52歳,女性。平成17年6月頃より,右鼠径部のしこりと右大腿部前面の皮膚腫瘍を自覚していた。同年10月愛仁会高槻病院外科にて右鼠径リンパ節生検術が施行され,有棘細胞癌のリンパ節転移と診断された。皮膚原発が疑われたため,同年11月,同院皮膚科にて右大腿部皮膚腫瘍の切除生検術が施行された。その結果,有棘細胞癌が強く疑われたため,精査・加療目的にて大阪医科大学皮膚科に紹介となった。病理組織標本を再検討したところ,皮膚腫瘍はmalignant trichilemmoma(悪性外毛根鞘腫,以後MTと略す),リンパ節はmalignant proliferating trichilemmal tumor(悪性増殖性外毛根鞘性腫瘍,以後MPTTと略す)の組織像を呈していた。両者の組織像が異なるため,皮膚腫瘍部の組織のパラフィンブロックの切り出しを再度行い詳細に検討したところ,本症例をリンパ節転移を伴ったMTと診断した。
  • 菅谷 直樹, 有馬 豪, 河合 成海, 山北 高志, 香西 伸彦, 清水 善徳, 溝口 良順, 酒井 良憲, 松永 佳世子
    2007 年 6 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    88歳,男性。初診の約3年前に,陰部に湿疹様病変が出現したが自覚症状がないため放置していた。2006年3月に当科に紹介され受診した。初診時,陰部にびらん,結節を伴った57×42mmの浸潤性紅斑を認めた。乳房外Paget病との鑑別を要したが,結節部直下に断頭分泌を伴う高分化型の腺癌を認めたことから,アポクリン腺癌とそのPaget現象と診断した。治療は広範囲切除術を予定したが,高齢で認知症を合併していたため家族は積極的な治療は望まず,原発巣の単純切除のみを施行した。自験例は高齢者における悪性腫瘍の治療の難しさを再認識させられる1例であった。
  • 上田 亜紀子, 永田 誠
    2007 年 6 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    43歳,女性。2003年秋頃より右前額部に米粒大の腫瘤を認めた。腫瘤が急速に増大し自発痛や圧痛を伴うようになったため,2004年2月に当科を受診した。初診時,右前額部に12×10mmの表面は淡紅色で隆起し,皮下に広がる硬い腫瘤を認めた。病理組織像では真皮浅層から皮下脂肪織にかけて大小の胞巣よりなる腫瘍塊が存在し,篩状構造や管腔構造を呈する部分がみられた。神経周囲への浸潤も認められた。以上よりadenoid cystic carcinomaと診断した。全身検索において明らかな原発巣は確認されず,皮膚原発であると考えられた。辺縁より7 mm離して拡大切除を行い,現在のところ再発は認めていない。
  • 小泉 直人, 森原 潔, 若森 健, 竹中 秀也, 岸本 三郎
    2007 年 6 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    66歳,男性。2004年春頃から,生下時より存在していた右頬部の色素斑上に黒色調を呈する隆起性病変が出現し,徐々に増大した。臨床的に悪性腫瘍を疑い切除したところ,病理組織学的に真皮内に無色素性紡錘形細胞の充満と間質での膠原線維の増生(desmoplasia)が認められた。また,S-100蛋白(+),Vimentin(+),HMB-45(-)という免疫組織学的所見から,1971年に,Conleyらが提唱したdesmoplastic malignant melanomaと一致するものと考え,若干の文献的考察を加え報告する。
  • 此枝 央人, 伊東 大, 越智 正和, 佐々木 健司
    2007 年 6 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    術前画像診断にて悪性腫瘍との鑑別に難渋した線維脂肪腫を2例経験したので報告する。症例1:59歳,男性。後頚部に4×4cm大のしこりを認めた。MRIにて低信号,脂肪信号を含む腫瘍を認めた。病理組織学的所見より線維脂肪腫と診断された。術後経過は良好で,術後13ヵ月が経過したが再発は認めていない。症例2:59歳,男性。頚部に緩徐に増大するしこりを認めた。術前に施行したCT上,5.3×2.6cm大,低信号,脂肪信号を含む腫瘍を認めた。術後の病理組織学的所見より線維脂肪腫と診断された。術後14ヵ月が経過したが再発は認めていない。後頚部に生じ,緩徐な増大傾向を認める,MRI,CT上,低信号,脂肪信号を含む腫瘍に遭遇した場合,線維脂肪腫も鑑別診断に考慮すべきと思われた。
  • 山下 史記, 植木 理恵, 池田 志斈
    2007 年 6 巻 2 号 p. 150-153
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    94歳,男。約3年前より,右膝頭に自発痛はないがわずかに触れただけで激痛のある1cm大の結節が出現した。大変痛がるため,日常の介護に支障を来たしていた。平成17年1月当科に受診した際,右膝頭に表面平滑,暗紫紅色,弾性軟の結節が見られた。皮膚平滑筋腫などを疑い全切除術を施行し,病理学的にグロームス腫瘍と診断した。切除後は疼痛が消失し,介護に支障を来たさなくなった。
  • 村江 美保, 為政 大幾, 堀尾 武, 梅原 英人, 岡崎 和一
    2007 年 6 巻 2 号 p. 154-158
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    46歳男性,初診2ヵ月前に近医で胃病変を指摘された。初診5ヵ月前から右前額部,左頚部に皮膚結節が出現した。切除生検病理組織像で異型な紡錘形の腫瘍細胞の集塊がみられ,免疫染色ではSMA陽性,CD34とKITは陰性であった。画像検査で内臓に多発転移があり,胃,腸,腎臓の生検から平滑筋肉腫と診断された。その後も皮膚腫瘍が新生し,これらを切除し皮膚転移と診断した。11ヵ月後には転移と思われる38ヵ所の皮膚,皮下腫瘍が出現し,その1ヵ月後永眠された。剖検の結果,左腎原発の平滑筋肉腫と全身転移が確認された。平滑筋肉腫の皮膚転移はまれであるが,自験例では内臓原発の平滑筋肉腫から40ヵ所近くの転移が見られた。
  • 落合 宏司, 松木 勇人, 大津 詩子, 森脇 真一, 清金 公裕
    2007 年 6 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    平滑筋肉腫が皮膚や皮下組織に発生することは稀である。今回我々は,皮膚原発の平滑筋肉腫の2例を経験した。
    症例1:85歳,女性。初診の約3ヵ月前に左頬部に隆起性の皮膚病変が出現した。皮疹が徐々に増大してきたため当科を受診した。
    症例2:63歳,女性。初診の約1ヵ月前に左肩外側前方の隆起性病変に気付いた。病変が徐々に増大してきたため当科を受診した。
    症例1は皮膚生検術を行い,症例2は皮膚腫瘍全切除生検術を施行した。免疫染色,特殊染色の所見もふまえて病理組織学的に詳細に検討し,2症例いずれも皮膚平滑筋肉腫と診断した。症例1は腫瘤辺縁より3cm離して,また,症例2は手術瘢痕より3cm離して皮膚腫瘍拡大切除術を行った。
  • 赤堀 亘, 黛 暢恭, 平澤 祐輔, 池田 志斈
    2007 年 6 巻 2 号 p. 164-168
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    66歳男性。左耳介後部の結節を主訴として来院した。生検の結果,CD20およびBcl-2陽性のcentrocyteとcentroblastに相当するB細胞系の異型リンパ球が多数見られたため,follicular lymphomaと診断した。CT画像上,腹部大動脈の分岐部近傍,腸間膜に腫瘤が見られ,follicular lymphomaの浸潤が疑われた。放射線治療単独にて腫瘤は縮小した。follicular lymphomaの特徴と治療法についてまとめた。
  • 新熊 悟, 小林 信彦, 前田 真紀, 森戸 啓統, 北村 華奈, 浅田 秀夫, 宮川 幸子
    2007 年 6 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    57歳,女性。解離性障害による昏迷状態のため経口摂取が不可能となり,当院精神科に入院中,顔面にびまん性の紅斑・浮腫が出現した。その後,口囲に鱗屑が付着するようになり,びらん・膜様鱗屑を伴う紅斑が急速に全身に拡大した。Nikolsky 現象陽性。迅速凍結切片により表皮浅層での裂隙形成を確認し,staphylococcal scalded skin syndrome(SSSS)と診断した。起炎菌はMRSAであった。アルベカシンの点滴静注により皮疹は速やかに治癒した。成人SSSSの鑑別診断として最も重要な疾患は中毒性表皮壊死剥離症型薬疹であり,両疾患を病理組織学的に鑑別する迅速診断法に習熟する必要がある。
  • 熊本 貴之, 澤本 学, 松下 記代美, 山田 秀和
    2007 年 6 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    47歳,女性。2003年4月頃より左下腿内側に有痛性の発赤が出現した。近医を受診し静脈炎と診断され,消炎剤と抗血小板薬にての加療を行ったが増悪を認めたため,2003年8月当科を紹介され受診した。初診時,左下腿内側に大伏在静脈に一致した疼痛と発赤を伴う硬結を認めたため消炎剤と抗生剤の内服を開始したが改善ないため2003年8月末入院した。安静と抗生剤の点滴にて,10日程で軽快傾向を認め,退院となったが,退院後再度病変が出現し,硬結は遠心性に移動してゆき移動性血栓性静脈炎と診断した1)。2003年10月中旬より抗凝固療法にて加療を続けたが緩解と増悪を繰り返した。その後2004年4月中旬より経過観察していたところ,2004年12月初旬に自然軽快を認めた。
  • 濱 雅世, 小塚 雄民
    2007 年 6 巻 2 号 p. 180-182
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    平成17年8月より57歳妻の前胸部と腹部に,10月中旬には62歳夫の体幹にもかゆみを伴う丘疹が出現してきた。初診時,妻の前胸部と腹部に強いそう痒を伴う紅色丘疹が散在しており,夫の体幹にも軽いそう痒をともなう紅色丘疹を認めた。ヒト疥癬を疑ったが,皮疹からはヒゼンダニは検出されなかった。問診より脱毛,痂皮のある犬を飼っているということが分かった。飼い犬の皮疹を鏡検したところ,多数のヒゼンダニを検出した。犬との接触部位に症状を認めたこと,夫婦に同じような症状が出現したこと,犬の皮疹からイヌヒゼンダニを検出したことより夫婦の皮疹をイヌヒゼンダニによる動物疥癬(犬疥癬)と診断した。飼い犬は獣医科に治療を依頼しイベルメクチンで治療した。夫婦については,ステロイド剤外用と抗アレルギー剤内服にて症状は治癒した。その後,夫婦に皮疹の再燃は認めなかった。
  • 平野 愛, 夏秋 優, 今田 微香, 伊藤 孝明, 山西 清文
    2007 年 6 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    66歳,女性。そう痒を伴う顔面の丘疹と下肢の関節痛を主訴に受診した。血液検査所見に異常は無く,梅毒血清反応も陰性であったが,患者は自分が梅毒に感染しており,症状は梅毒によるものだと信じていた。患者は整形外科や内科も受診したが,皮疹と関節痛の原因は明らかにならず,症状の改善もなかった。その後,皮膚から虫が出たと訴えて再度当科を受診したが,患者が持参したものは実際にはゴミや鱗屑であった。このことから,自験例を梅毒罹患に関する妄想が先行した皮膚寄生虫症妄想と診断した。ピモジドを投与したところ,症状は改善傾向を示した。皮膚寄生虫症妄想は精神科領域の疾患であるが,ほとんどの患者は皮膚科を受診し,精神科の受診を拒否する。したがって,皮膚科医が受け入れて,治療することが望ましい疾患である。
  • 石田 祐哉, 松吉 徳久, 石田 智子, 十一 英子, 佐々木 義行, 宮地 良樹
    2007 年 6 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    30歳代,男性。2ヵ月前より咽頭痛があり,その後,顔,胸,腕に鱗屑を伴った紅色丘疹および結節が出現し徐々に増大するとともに多発してきたため当科を受診した。初診時の採血で梅毒血清反応は高値を示し,またHIV陽性が判明した。上肢の丘疹の病理組織像では真皮上層から下層にかけて形質細胞の目立つ,密な炎症細胞浸潤を認めた。またリンパ球の著明な表皮内浸潤も認めた。HIV陽性の第2期梅毒と診断し,amoxicillin 1.0g/dayの内服を8週間行い,皮疹の消退を認めた。
治療
  • 武曽 有美, 城村 拓也, 坂井 浩志, 調 裕次, 高木 圭一
    2007 年 6 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    近年,高齢者が介護施設で集団生活をする機会が増えたことに伴って疥癬の流行が認められる。
    また疥癬の治療薬にはさまざまなものがあり,最近,内服薬も保険適応となった。しかし,必要時にこれら薬剤の入手が容易とは限らず,副作用の問題から妊婦や小児には使用しにくいものも多い。そこでわれわれはイオウを含有し,安価で多くの施設で採用されているイオウ・カンフルローションを,計7名の疥癬患者に用いることを試みた。イオウ・カンフルローションにオイラックス®またはサリチル酸ワセリンを併用したところ,2~4週間で全例治癒し,副作用も認められなかった。
使用試験
臨床研究
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