皮膚の科学
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18 巻, 6 号
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症例
  • 梅田 真希 , 峠岡 理沙 , 加藤 則人 , 末廣 晃宏
    2019 年 18 巻 6 号 p. 331-336
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/04
    ジャーナル 認証あり

    症例は50歳代,女性。足白癬に対し,ルリコンR 軟膏を外用後,両手足に多数の小水疱が生じた。 ルリコンR 軟膏の成分別パッチテストにてルリコナゾールが陽性となり,ルリコナゾールによる接触皮膚炎と診断した。ルリコナゾールはビニルイミダゾール系抗真菌薬であり,同系統間で交叉反応を起こすことがある。Over the counter 医薬品の増加に伴い,感作の機会が多くなるため注意が必要である。 (皮膚の科学,18 : 331-336, 2019)

  • 奥平 尚子 , 山本 有紀 , 三木田 直哉 , 金澤 伸雄 , 神人 正寿
    2019 年 18 巻 6 号 p. 337-343
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/04
    ジャーナル 認証あり

    症例は64歳,男性。左頸部の腫脹を自覚し当院耳鼻科を受診。部分生検にて上皮系悪性腫瘍を示唆され当科紹介となった。病理組織学的所見は,異型細胞が索状,充実性配列を呈し脂肪組織や筋組織へ浸潤性に増殖していた。免疫染色では CD31diffuse positive),CD34partial positive),Factor VIIInegative),cytokeratin AE1/AE3weakpartial positive)であり,類上皮血管肉腫と診断した。PET-CT では両側頸部から鎖骨上,左鎖骨下から腋窩,縦隔リンパ節への転移が疑われ,ドセタキセルを開始したところ,著効した。類上皮血管肉腫は,血管内皮細胞由来の稀な悪性腫瘍で,血管肉腫のバリアントである。異型の強い上皮様内皮細胞が充実性ないし胞巣状に集簇し,通常の血管肉腫よりも悪性度が高いとされる。本邦では調べ得た限り28例しか報告がなく,文献的考察を加えて,報告する。 (皮膚の科学,18 : 337-343, 2019)

  • 筧 祐未 , 光井 康博 , 小川 浩平 , 宮川 史 , 橋本 隆 , 浅田 秀夫
    2019 年 18 巻 6 号 p. 344-348
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/04
    ジャーナル 認証あり

    59歳,女性。初診の約 7 ヶ月前より,頸部や両手掌に紅斑と小水疱が出現した。その後も水疱の新生が続くため当科を紹介受診した。当科初診時,頬粘膜や体幹・四肢に緊満性水疱を認めた。病理組織学的所見では,表皮下水疱と真皮浅層に軽度のリンパ球浸潤を認めた。蛍光抗体直接法では表皮基底膜部に IgG C3 が線状に沈着し,1M 食塩水剥離皮膚を基質とした蛍光抗体間接法では IgG 抗体が真皮側に反応,Ⅶ型コラーゲンリコンビナント蛋白の IgG enzyme-linked immunosorbent assay が陽性であったため,後天性表皮水疱症(epidermolysis bullosa acquisita)と診断した。プレドニゾロン 15 mg0.3 mg/kg)/日の内服にて皮疹はコントロール良好であった。またⅣ型コラーゲンの免疫染色は,水疱の真皮側に染色されており,本症例では炎症によって lamina lucida で剥離していると考えた。 (皮膚の科学,18 : 344-348, 2019)

  • 西平 守明 , 太田 朝子 , 竹原 友貴
    2019 年 18 巻 6 号 p. 349-352
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/04
    ジャーナル 認証あり

    84歳,男性。 1 週間前から両下腿に有痛性皮下結節が出現した。結節性紅斑を疑い同部の皮膚生検を行った。病理組織学検査で ghost-like cell を認め,皮下結節性脂肪壊死症と診断した。膵疾患の関連を疑い精査を行った。膵系酵素高値(血清アミラーゼ 2,244 IU/l,血清リパーゼ 306 U/l)に加えて,腹部超音波と MRCP で嚢胞性病変と主膵管の拡張を認め,膵管内乳頭粘液腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasmIPMN)と診断した。本症例では皮下結節性脂肪壊死症の診断を契機に IPMN の診断に至った。皮下結節性脂肪壊死症は膵疾患の臨床症状に先行する場合があり,本症の早期診断は膵疾患の早期発見のために重要である。 (皮膚の科学,18 : 349-352, 2019)

  • ―紫外線療法が奏効した 1 例―
    中田 千華 , 谷崎 英昭 , 鄭 韓英 , 黒川 晃夫 , 森脇 真一
    2019 年 18 巻 6 号 p. 353-359
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/04
    ジャーナル 認証あり

    78歳,男性。当科初診の 5 年前に膀胱癌と診断され,左腎尿管膀胱全摘術およびゲムシタビン・シスプラチンによる化学療法が施行された。その後両側閉鎖リンパ節が腫大したため,初診 1 年前より抗 PD-1 抗体薬の 1 つであるペムブロリズマブが投与された。初診 2 週間前から全身に紅斑が出現したため当科紹介となった。初診時,全身に鱗屑を有する境界明瞭な紅斑が多発し瘙痒を伴っていた。 病理組織学的には角層は肥厚し,一部で錯角化がみられた。表皮は表皮突起の延長を伴って肥厚し顆粒層は菲薄化していた。また角層から表皮上層にかけて多数の好中球浸潤が認められた。真皮上層から中層にかけて好酸球を含む炎症細胞浸潤がみられた。以上より,本症例をペムブロリズマブにより生じた乾癬様皮膚炎と診断した。一旦同剤を休薬とし,副腎皮質ステロイド,ビタミン D3 外用および抗ヒスタミン薬内服を開始したが紅斑はさらに拡大した。ナローバンド UVB による紫外線療法を併用したところ,紅斑,瘙痒ともに改善傾向を示した。その後ペムブロリズマブを再開したが,再開後 3 ヶ月経過した現在,乾癬様皮疹の再燃はみられず経過良好である。抗 PD-1 抗体薬による乾癬様皮膚炎には紫外線療法も治療の一つの選択肢である可能性が示唆された。 (皮膚の科学,18 : 353-359, 2019)

  • 草壁 みのり , 夏秋 優 , 高田 洋子 , 東山 眞里 , 山西 清文
    2019 年 18 巻 6 号 p. 360-365
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/04
    ジャーナル 認証あり

    症例は33歳,男性。某年 8 月にフランスの山岳地域で山歩きをして, 4 日後に帰国した際,軽度の倦怠感があり,腰部右側の瘙痒と同部位に付着するマダニ虫体に気付いた。日本生命病院皮膚科受診時,腰部右側に吸着するマダニ虫体を認めたが,同部に遊走性紅斑はみられなかった。血液検査では肝酵素と CRP の軽度上昇を認めた。直ちに局所麻酔下で皮膚と共に虫体が除去され,テトラサイクリン塩酸塩 750 mg/日が14日間投与された。同年10月に,虫体の同定,マダニ媒介性感染症の精査目的で兵庫医科大学病院皮膚科を紹介された。マダニは Ixodes ricinus の雌と同定され,患者血清のライム病ボレリアに対する IgM 抗体が陽性であったことから,自験例をフランスでのマダニ刺症で感染したライム病と診断した。この症例では予防的抗菌薬治療によってライム病が早期に治癒したと考えられる。海外旅行の際,アジアからヨーロッパ,あるいは北米でマダニ属のマダニに刺された場合,ライム病に感染する可能性があり,皮膚科医として注意が必要である。 (皮膚の科学,18 : 360-365, 2019)

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