皮膚の科学
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8 巻, Suppl.11 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 白方 裕司, 楊 旅軍, 橋本 公二
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A1-A6
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    今回我々はbasic fibroblast growth factor(bFGF)の三次元培養皮膚に与える影響について検討した。三次元培養皮膚作製時にbFGFを30ng/mlの濃度で培養液に添加しておくと真皮成分の厚さが保たれ,4週後においても真皮の菲薄化は抑制された。表皮成分について免疫染色を施行したところ,ケラチン1,ケラチン10は表皮上層に発現しており,増殖型ケラチンのケラチン6とケラチン16の発現はbFGF非添加群と比較すると抑制されていた。真皮相当部におけるalpha smooth muscle actin (αSMA)は,非添加群では表皮真皮境界部に強く発現していたが,bFGF添加群では発現がほとんど抑制されていた。以上の所見より,三次元培養皮膚作製時にbFGFを添加しておくことにより,三次元培養皮膚の品質の向上が期待される。
  • 斎藤 佑希, 長谷川 稔, 藤本 学, 竹原 和彦
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A7-A13
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    2つの円盤状磁石で皮膚を外から挟みこむ虚血再潅流傷害マウスモデルにおいて,虚血再潅流が褥瘡の形成をきたす機序について検討した。マクロファージの浸潤に引き続いて潰瘍が形成され,その過程でMCP-1,TNF-α,iNOSの発現が亢進した。MCP-1の欠損マウスでは,マクロファージの浸潤が減少,TNF-αとiNOSの発現は低下し,皮膚の傷害が軽減した。またMCP-1は虚血より再潅流期の組織傷害に関与することが示された。褥瘡発生機序の一つとして,虚血再潅流によりMCP-1が産生され,誘導されたマクロファージによるTNF-αを主体としたサイトカイン産生やiNOSの発現が組織傷害を誘導することが示唆された。
  • 小泉 尚子, 宮永 亨, 川上 重彦, 島崎 都, 上田 善道
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A14-A20
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    弾性軟骨の軟骨膜細胞に対する塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の効果を検討する目的から以下の実験を行った。ウサギ耳介皮下にbFGFを注入し,注入1日目,7日目,14日目,30日目,90日目に注入耳介組織を採取した。それぞれ,組織染色(HE染色,EVG染色),免疫染色(S-100タンパク,PCNA)を行い,光学顕微鏡で観察した。注入群では,注入7日目に軟骨膜細胞の増殖を認め,14日目には軟骨基質の形成を認めた。30日目,90日目には新生軟骨細胞増殖を認めた。以上から,bFGFは軟骨膜細胞の増殖を刺激し,その結果として軟骨組織を新生させていると考えられた。
  • 田中 伸吾, 高田 温行, 森口 隆彦, 濃野 勉
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A21-A24
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    Myostatin(MSTN)は骨格筋形成の過程で一過性に出現し,筋芽細胞の増殖と分化を負に調節し,その機能欠失変異によって過剰な筋肉が形成される。近年,このMSTNがWnt4を抑制し,それにより筋芽細胞の増殖と分化を負に調節している可能性が示唆された。今回,Wnt4をニワトリ胚の肢芽に過剰発現させ,筋分化,特に速筋に対しWnt4が促進的に作用することを確認した。また,C2C12を用いたin vitroでのWnt4過剰発現でも同様の結果を得た。このことはMSTNの機能欠失による表現形と同様であり,Wnt4が,MSTNの下流シグナルである可能性が強く示唆される結果となった。
  • 安田 正人, 石川 治, 高橋 健造, 宮地 良樹
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A25-A30
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    これまで,我々は体の部位によらず,ほぼ同一の細胞形態を呈する真皮線維芽細胞が,ヒトの体の部位特異的な形質を有することについて検討を行ってきた。今回,躯幹・掌蹠・口腔粘膜から確立した線維芽細胞の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)に対する反応性の違いについて,各種細胞外基質遺伝子の発現の観点から解析した。
    bFGF(フィブラスト®スプレー)添加によっても,躯幹の線維芽細胞に優位にフィブロネクチンが発現するという部位特異的な形質は維持されていた。フィブロネクチンの発現はbFGF添加により抑制されるが,増殖初期においてより強い抑制がみられた。他方,bFGF添加により,I 型およびIII型コラーゲン,MMP2の遺伝子発現は抑制され,MMP1およびTIMP1の遺伝子発現は増強した。特に口腔粘膜の線維芽細胞におけるMMP1の発現誘導は顕著であり,bFGFへの反応性において,他の部位の線維芽細胞と形質が異なっていることが示唆された。
  • 牧野 貴充, 伊方 敏勝, 藤澤 明彦, Faith Muchemwa, 鍬田 伸好, 神人 正寿, 井上 雄二, 尹 浩信
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A31-A34
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    basic fibroblast growth factor(bFGF,FGF-2)は線維芽細胞のほか,表皮細胞,血管内皮細胞での細胞増殖や分化誘導,炎症細胞,マクロファージの活性化などの作用を有する。創傷治癒において肉芽形成,血管新生,再上皮化など重要な役割を担っている。2001年遺伝子組み換えヒトbFGFが皮膚潰瘍治療薬として保険適応され,今後,骨組織再生,歯槽骨再生などの分野においても応用が期待されている。今回我々はin vitroでbFGFによるヒト皮膚線維芽細胞の増殖刺激試験を行った。bFGFは無血清培養液と比較し,1%ウシ血清培養液において有意に高い増殖刺激活性を示した。
  • 安部 正敏, 周東 朋子, 横山 洋子, 石川 治
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A35-A41
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    近年,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は,難治性皮膚潰瘍において治癒を促進するのみではなく,創傷治癒の質的改善いわゆるscarless wound healingをもたらすことが臨床的に明らかとなりつつある。今回我々は,創傷治癒成熟期のモデルとして筋線維芽細胞含有コラーゲンゲルを用いて,創傷治癒の質的変化に関する基礎的検討を行った。その結果,bFGFはTransforming Growth Factor(TGF)-β1による線維芽細胞のα-smooth muscle actin発現誘導を遅延させた。また,筋線維芽細胞含有コラーゲンゲルは無刺激では収縮するが,bFGF添加によりゲル収縮が抑制された。さらに筋線維芽細胞において,bFGFはRhoとRho Kinaseを活性化させたが,ミオシン軽鎖のリン酸化には影響を及ぼさなかった。一方,bFGFは線維芽細胞に比較して筋線維芽細胞で高率にアポトーシス誘導した。この機序として,PI3K→Aktのシグナル伝達系抑制効果の関与が示唆された。
    本研究結果より,bFGFは創傷治癒過程成熟期における筋線維芽細胞に対して,TGFβ1による筋線維芽細胞誘導を阻害し,さらにアポトーシスを誘導することで創傷治癒の質的変化をもたらす可能性が示唆された。
  • 小宮根 真弓, 玉置 邦彦
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A42-A45
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    顆粒変性を来たす代表的な疾患である水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(BCIE),およびVörner型掌蹠角化症(PPK)の浸潤細胞を検討した結果多数のマスト細胞を認めた。マスト細胞の走化因子であるbasic fibroblast growth factor(basic FGF)の発現を検討した結果,健常人皮膚では有棘層上層に強く発現しているのに対し,これらの疾患では基底層に発現を認めた。basic FGFは,血管および表皮細胞増殖促進作用も報告がある。これらの疾患患者で認められる著明な過角化を伴う表皮増殖,毛細血管の増生,マスト細胞浸潤は,basic FGFが誘導因子の一つである可能性が示唆された。
  • 前田 龍郎, 山本 俊幸, 坪井 良治
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A46-A51
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    ブレオマイシン(BLM)50μg/日を1ヵ月間マウス背部皮内に反復注射することにより皮膚硬化が誘導される。この皮膚硬化部位に作製した直径6mmの全層皮膚欠損創は,正常皮膚欠損創に比較して創閉鎖が有意に遅延した。本研究において我々は,この創傷治癒遅延モデルを用いてbasic fibroblast growth factor(bFGF)の創傷治癒促進効果を検討した。bFGF(1.0μg/cm2)を創作製後に単回投与して被覆すると,対照群に比較して統計学的有意差はないものの,創閉鎖が促進された。また,TGFβ1とI 型コラーゲン(Col 1A1)遺伝子の発現量を定量的PCR法によって測定すると,TGFβ1の発現量にほとんど差はないが,Col1A1の発現量は約100倍増加していた。今回の実験により,フィブラスト®スプレーの臨床的有効性がマウス皮膚潰瘍モデルにおいて確認された。
  • 岩田 洋平, 吉崎 歩, 小村 一浩, 小川 文秀, 清水 和宏, 佐藤 伸一
    2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A52-A57
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/18
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    創傷治癒過程において,炎症期に浸潤してくる好中球,マクロファージなどの免疫細胞は様々なサイトカインや細胞増殖因子を産生することで創傷治癒を促進させる。B細胞シグナル伝達分子であるCD19を欠損したマウスにおける創傷治癒過程の解析により,B細胞もサイトカインや細胞増殖因子を産生することで創傷治癒に関与していることが示された。このCD19ノックアウトマウスにおける創傷治癒遅延はbasic fibroblast growth factorの投与により正常化されたことから,basic fibroblast growth factorが創傷治癒に重要かつ強力な作用を有していることが明らかにされた。
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