皮膚の科学
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15 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
症例
  • 安池 理紗, 峠岡 理沙, 竹中 秀也, 加藤 則人
    2016 年 15 巻 6 号 p. 466-469
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル 認証あり
    20歳代,女性。当科初診の約1ヶ月前に,顔面にパックを使用したところ口周囲に紅斑が出現した。近医にて接触皮膚炎を疑われ,ステロイド外用や抗ヒスタミン剤内服により加療されたが,改善しなかったため当科を受診した。口周囲に浸潤を伴う紅斑を認めたが,明らかな毛細血管拡張や毛孔一致性丘疹はなかった。接触皮膚炎を疑い使用していた化粧品や外用剤を中止し,パッチテストを施行したが,口周囲に接触する物質に陽性反応を認めなかった。皮膚生検を施行したところ,真皮に壊死を伴わない肉芽腫が多発していた。酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)と診断し,クリンダマイシン外用とミノサイクリン内服にて加療したところ皮疹は軽快した。丘疹や毛細血管拡張など臨床上典型的な所見を認めない場合でも,本症例のように酒さ様皮膚炎である可能性が考えられるため,治療に反応しない顔面の紅斑をみた場合は積極的に皮膚生検を考慮することが重要である。(皮膚の科学,15: 466-469, 2016)
  • 中内 恵美, 鷲尾 健, 三木 康子, 正木 太朗, 錦織 千佳子
    2016 年 15 巻 6 号 p. 470-475
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル 認証あり
    50歳代,男性。糖尿病性腎症による腎不全にて10年来血液透析を施行されていた。2015年春頃より左第2,3指,右第1,4趾に壊死の付着した潰瘍が出現し,悪化したため前医より当科に紹介受診となり,同年6月に精査加療目的に入院した。単純X線検査などからカルシフィラキシスを疑い,Ca・P 値の内科的調整を行った上で局所のデブリドマンを行ったところ指趾潰瘍が改善したため同年8月に退院し外来加療を継続した。しかし,同年冬頃から再度右第4趾の壊死の悪化,および第3趾潰瘍が新生したため2016年初頭に再入院となった。入院時,足趾の壊死に加えて両下腿伸側にそう痒性の角化を伴った粟粒大から大豆大までの紅色丘疹ないし小結節が多発していた。右第3趾からの生検による病理組織学的所見からカルシフィラキシスと診断した。また両下腿伸側の結節からは変性した弾性線維の経表皮的排出像があり,長年の糖尿病や透析に伴う acquired perforating dermatosis と考えた。カルシフィラキシスの治療に対してチオ硫酸ナトリウムの点滴静注を行ったところ,両下腿の角化性局面も平坦化して改善を認めた。チオ硫酸ナトリウムは組織に沈着している不溶物を可溶化し,さらに炎症を抑制することで acquired perforating dermatosis をも改善させたと考えた。(皮膚の科学,15: 470-475, 2016)
  • 福永 真未, 本田 真一朗, 寺村 和也, 藤本 徳毅, 山田 英二
    2016 年 15 巻 6 号 p. 476-480
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル 認証あり
    30歳代,女性。妊娠後期より両乳頭および乳輪の黒色変化と肥厚を自覚した。出産後も症状が改善せず,そう痒と滲出液を伴ったため,当院を受診した。ステロイド外用剤でそう痒と滲出液は改善したが,疣状の角化性局面は不変であった。乳輪部の皮膚生検で角栓を伴う乳頭腫症を認め,Hyperkeratosis of the nipple and areola と診断した。各種外用治療は奏効しなかったが,月経の再開により急速に角化が消退した。本疾患は良性の経過をたどるが,整容的に問題となるため,外科的手術を含めた多種の治療が試みられている。しかし,近年では性ホルモンの不均衡が病態に関与している可能性が指摘されており,自験例を含め自然軽快する症例が散見される。そのため,侵襲的治療を避け経過観察することも選択肢の一つとなりえると考えた。(皮膚の科学,15: 476-480, 2016)
  • 細見 由佳子, 金田 一真, 伊原 梓, 穀内 康人, 谷崎 英昭, 黒川 晃夫, 森脇 真一
    2016 年 15 巻 6 号 p. 481-485
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル 認証あり
    60歳代,女性。初診1週間前より発熱,咽頭痛があり,解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン,ロキソプロフェンナトリウム水和物),抗菌薬(セフジトレンピボキシル)が処方されたが,同剤内服開始後より体幹部に皮疹が出現し当科を受診した。初診時,顔面,体幹に紅斑,口腔粘膜にびらんを伴っていた。腹部の紅斑は病理組織学的に表皮基底層の空胞変性,個細胞壊死の像を呈していたことから,本症例を Stevens-Johnson 症候群(SJS)と診断した。ステロイド投与開始翌日より血清ヘモグロビン値が急速に低下し,内視鏡検査を施行したところ,胃,十二指腸に多発性潰瘍が確認された。SJS で消化管出血をきたす症例が稀に報告されており,消化管粘膜障害が疑われる場合は粘膜の炎症所見や潰瘍の有無を調べる必要があると考えた。(皮膚の科学,15: 481-485, 2016)
使用試験
  • 堤 敦子, 田中 宏樹, 小野 雄治, 梅田(戸上) 久美, 梅田 幸嗣, 磯田 憲一, 波部 幸司, 西川 政勝, 水谷 仁
    2016 年 15 巻 6 号 p. 486-492
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル 認証あり
    乾燥肌成人女性ボランティアを対象に,新規低刺激性全身洗浄料(nachu 高保湿ボディソープ:ダスキン)と従来品(うるおいボディソープ:ダスキン)を用い,各群15名の二重盲検による4週間の二群並行試験を行った。前腕皮膚の角層水分量,経表皮水分蒸散量に加え,使用感のアンケートと皮膚科専門医による問診・視診で評価した。結果:角層水分量にて両手共に改善傾向が認められ,統計学的には全被験者では左前腕,支給タオル使用者のみでは右前腕で有意な改善が確認され,角層水分量変化量の群間比較も改善をみた。なお,試験期間中に両洗浄剤に起因する有害事象は確認されなかった。以上より,新規洗浄剤が従来品に比し高い保湿性を持つことが考えられた。(皮膚の科学,15: 486-492, 2016)
  • 山本 晴代, 髙田 文香, 川田 暁
    2016 年 15 巻 6 号 p. 493-501
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/23
    ジャーナル 認証あり
    尋常性ざ瘡に対しては薬物治療に加えて,医師の指導のもとにスキンケアやメイクアップを行うことは極めて重要である。しかし,スキンケアやメイクアップが実際にどの程度患者の満足度や QOL に影響を与えるかを検討した報告は少ない。本研究では,尋常性ざ瘡の女性患者に対してざ瘡治療に加えて,スキンケアとメイクアップの指導をおこない,その患者満足度と QOL に与える影響について検討を行った。Visual Analog Scale(VAS)による満足度は,指導直後および1ヶ月経過後も開始時と比較して有意に向上し,QOL の改善も認めた。指導後患者のコンプライアンス向上が認められた。以上より,尋常性ざ瘡の診療においてスキンケアとメイクアップの指導が患者満足度を高め QOL を向上させることが示唆された。(皮膚の科学,15: 493-501, 2016)
  • 伊藤 泰介, 戸倉 新樹, 前島 英樹, 天羽 康之, 乾 重樹, 板見 智
    2016 年 15 巻 6 号 p. 502-512
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/23
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    女性における男性型脱毛症(Female pattern hair loss[FPHL])に対する外用医薬部外品は様々あるが,女性ホルモンに着目したものについての検討は少ない。我々は FPHL 患者に対するエチニルエストラジオールを有効成分とする育毛剤の安全性と有効性を評価した。30例の FPHL 患者を対象とし,育毛剤を頭皮に1日2回,24週間使用させた。結果,脱落例を除く22例中2例に副作用(そう痒,紅斑)が生じたが育毛剤の使用の中止により軽快した。24週間連用した20例では,臨床所見の「脱毛の程度」ならびに自覚症状の「抜け毛の程度」で高い改善傾向を認めた。また「抜け毛の量」の有意な減少が自覚症状では4週後から,アンケート評価(VAS)では8週後から確認され,臨床所見の「脱毛の程度」が12週後から有意に改善しており,有効性を早期から実感出来ることが示唆された。以上から,本育毛剤は軽症の FPHL 患者に対して使用可能であると考えられた。(皮膚の科学,15: 502-512, 2016)
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