皮膚の科学
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6 巻, 6 号
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研究
  • 三宅 明子, 奥村 達也, 岡本 亨
    2007 年 6 巻 6 号 p. 560-566
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
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    トラネキサム酸は肝斑の内服薬として知られている。また,最近では外用での肝斑や肌荒れへの有効性も注目されている。本研究ではトラネキサム酸の皮膚透過性を促進することによって薬物の有効性を高めることを目的にイオン導入を試みた。トラネキサム酸は両性電解質であることから,pHによって解離状態が変化するため透過挙動は複雑になることが予想される。そこで,トラネキサム酸を配合した基剤のpHと導入する極性について最適な条件を検討したところ,トラネキサム酸の濃度を最大限高めるには,(1)基剤のpHを弱酸性にする,(2)プラス極からの導入が好ましいことがわかった。
症例
  • 佐々木 祥人, 足立 厚子, 下浦 真一, 八尾 昭久, 小池 隆史
    2007 年 6 巻 6 号 p. 567-571
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    24歳男性。精巣上体炎で初発し,2週間後に下腿有痛性結節と口腔内アフタが出現。結節部の病理組織では,脂肪織炎と血栓性静脈炎がみられた。臨床症状と合わせてベーチェット病と診断した。ヨウ化カリウムとコルヒチンの内服で有痛性結節と精巣上体炎は軽快したが,下痢が出現した。大腸ファイバーにて回盲部多発性穿掘性潰瘍がみられたため,腸管ベーチェット病と診断し,プレドニゾロン30mg/日を開始したところ軽快した。精巣上体炎がベーチェット病の初発症状であることは稀であるが重症型のサインとされている。腸管ベーチェット病は再燃も多く,今後も注意深く経過観察する必要性があると考えた。
  • 宇野 維華, 遠藤 由紀子, 森脇 真一, 清金 公裕, 森田 英次郎, 村野 実之, 井上 徹, 芦田 明
    2007 年 6 巻 6 号 p. 572-576
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    17歳,女性。初診の1ヵ月前に前駆症状なく下肢に紫斑が出現し,徐々に増悪した。腹痛,関節症状も伴うようになり近医を受診し,Henoch-Schönlein紫斑が疑われたため当科を紹介された。病理組織学的に白血球の核破砕を伴う血管炎の像を認め,血液検査では凝固第XIII因子活性が著明に低下していた。ステロイド全身投与を開始したが治療に抵抗性であり,腹部症状や蛋白尿は軽快せず紫斑はさらに増悪したため,凝固XIII因子製剤を併用投与したところ諸症状に改善がみられた。尚,腎生検にて半月体形成性の紫斑病性腎症を認めたためステロイドパルス療法が追加された。本症と凝固第XIII因子活性との関連について考察を加えた。
  • 吉田 有紀, 前川 直輝, 山中 一星, 國行 秀一
    2007 年 6 巻 6 号 p. 577-581
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    ポケットを有する難治性皮膚潰瘍の治療,および滲出液の多い潰瘍における植皮術の2症例に対して陰圧閉鎖療法を用いて,それぞれ良好な結果を得ることができた。本法の効果として皮膚潰瘍の治療においては,確実な滲出液のドレナージと適切な湿潤環境の保持が得られて潰瘍の治癒を促すことができた。植皮片の固定に際しては,前述の内容に加えて植皮片を確実に密着させることができた。
  • 清水 裕希, 森本 茂文, 小阪 博
    2007 年 6 巻 6 号 p. 582-586
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    オキサリプラチンによるものと考えられる過敏反応を2例経験したので報告する。
    症例1は52歳女性。大腸癌と診断され,FOLFOX4療法を開始された。第7クール初日,点滴開始数分後に手のそう痒感,呼吸苦が出現した。皮内テストにてオキサリプラチンで膨疹,紅斑が見られた。デキサメサゾン,セチリジン,ヒドロキシジンの前投与を加えオキサリプラチン再投与を試みたところ,前回の症状出現は50分まで遅らせたが,その25分後にアナフィラキシー様症状に陥った。症例2は46歳女性。大腸癌と診断されFOLFOX4療法を開始された。第9クール初日の点滴開始数分で全身に膨疹が出現した。皮内テストではオキサリプラチンで紅斑が見られた。
  • 山本 真有子, 中島 喜美子, 小玉 肇, 佐野 栄紀
    2007 年 6 巻 6 号 p. 587-589
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
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    82歳,男性。狭心症および不整脈のためメチルジゴキシンの内服を始めて4ヵ月後に全身に紫紅色丘疹が出現した。組織学的に苔癬型組織反応を呈した。内服薬の中止により皮疹は早期に消退した。メチルジゴキシンの貼付試験は陰性であったが,内服誘発試験が陽性であった。
  • 平田 結衣, 遠藤 由紀子, 森脇 真一, 高橋 健造, 清金 公裕
    2007 年 6 巻 6 号 p. 590-594
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    42歳,女性。家族歴に特記事項なし。初診の6ヵ月前より後頭部に自覚症状のない紅斑が出現した。近医で膿痂疹と診断され抗生剤の内服および外用加療を受けたが改善せず,当科を受診した。初診時,後頭部に痂皮を付着する径2.5cm大の紅斑を認め,背部には紅色丘疹および径5mm大までの小紅斑が多発していた。頭部皮疹の病理組織学的検索において,表皮下層に棘融解を認めた。蛍光抗体直接法は陰性であった。以上より本症例をtransient acantholytic dermatosisと診断した。ステロイド外用剤には抵抗性であったが,プレドニゾロン(40mg/日)を1ヵ月内服したところ皮疹は軽快傾向を示した。
  • 松尾 智央, 堀尾 武, 堀口 裕治
    2007 年 6 巻 6 号 p. 595-599
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    67歳男性。平成13年5月頃より下肢にそう痒を伴う皮疹が出現し,近医にてステロイド外用(ベリーストロングクラス)と内服(プレドニン®5mg/日)にて加療されたが全身に拡大して紅皮症状態となった。皮疹は四肢屈側に赤褐色の扁平充実性丘疹が存在し,敷石状に融合していた。前胸部,腹部は局面を形成し,大きな皺の部分に一致して皮疹が欠如していた。
    ブロードバンドUVBは無効で,ステロイドの持続的内服が必要な状態であった。平成17年1月入院の上,内服PUVAを施行した。数回照射後より痒みは著しく軽快し,10回程度の照射で皮疹も消失し,ステロイド内服を中止した。20回照射後退院となった。その後,現在に至るまで再燃は認められていない。丘疹-紅皮症に対して内服PUVA療法はきわめて有効な治療法と思われる。
  • 中村 貴之, 古田 淳一, 伊藤 周作, 川内 康弘, 大塚 藤男
    2007 年 6 巻 6 号 p. 600-604
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    77歳女性。独居で,家族と疎遠。2ヵ月前に両手背,足背の境界明瞭な浸潤性紅斑が出現。近医でステロイド薬を外用するが増悪し,10日前には認知症様症状,両下肢のしびれによる歩行障害,食欲低下も出現。精査でニコチン酸アミドを含む数種類の血中ビタミン,微量元素およびトリプトファンの低下が判明し,ペラグラと診断。ニコチン酸アミドを含む総合ビタミン薬を点滴投与し,食欲低下はペラグラの腹部症状に加え,義歯の不適合による繰り返す誤嚥が一因と考えペースト食へ食事形態を変更した。その後,速やかに皮疹,しびれ,認知症様症状および食事摂取が改善。自験例は高齢と特別な家族環境を背景とした食餌性欠乏が原因と考えられた。
  • 涌田 あすか, 笹橋 真紀子, 杉 相広, 戸田 憲一
    2007 年 6 巻 6 号 p. 605-609
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    63歳,女性。1993年頃より胃潰瘍で各種抗潰瘍治療を内科にて受けていたが難治性であった。ヘリコバクター陰性,糖尿病には罹患していない。
    1992年頃より両下腿伸側に辺縁が隆起し,自覚症状がなく光沢を伴う紅斑局面が出現し,放置していたが,病変が拡大したため,1999年他病院で皮膚生検を受けたが確診にいたらず,ステロイド外用とトラニラスト内服にて経過観察するも軽快をみなかった。2001年,再度当院を受診,左下腿に直径5cm,右に直径15cm程度の紅斑局面を認め,生検にて真皮に非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫性変化を認め,散在性にLanghans型巨細胞,一部にアステロイド小体を有していた。臨床像と総合して,リポイド類壊死症が考えられた。皮膚症状の増悪をみたため,ステロイド剤の内服を開始したところ,皮膚症状は著明に改善し,同時に胃潰瘍も治癒した。胃潰瘍病変の生検病理所見では肉芽腫性変化を認めなかった。ステロイド剤に対する両病変の反応性から,今後,サルコイドーシスとの鑑別が最も考慮されるべきと考えられた。
  • 飯田 秀之, 小林 信彦, 萬木 聡, 浅田 秀夫, 宮川 幸子
    2007 年 6 巻 6 号 p. 610-613
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    74歳,男性。約20年前より前胸部に角化性紅褐色局面を認め,徐々に増大してきたため当科を紹介受診した。初診時,腫瘍の大きさは12×10cmであった。生検により脂漏性角化症,clonal typeと診断し,入院の上,腫瘍切除・分層植皮術を施行した。直径が3cmを超える巨大脂漏性角化症は,報告例は少ないものの,悪性腫瘍の発生率がやや高い可能性があり,注意が必要である。
  • 吉良 正浩, 西田 陽子, 松本 千穂
    2007 年 6 巻 6 号 p. 614-617
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    42歳女性。左下腹部痛を主訴として当院救急外科を受診。腹部CTにて皮下結節を指摘され,当科を紹介受診した。腹部エコー検査では帝王切開瘢痕部皮下に径約1cm大の内部不均一な低エコー結節を認めた。局所麻酔下にて皮下の結節を切除した。病理組織学的に,正常子宮内膜の像に類似する1層の立方ないし円柱上皮細胞よりなる管腔を認め,帝王切開瘢痕部に生じた異所性子宮内膜症と診断した。帝王切開瘢痕部に疼痛を伴う皮膚結節を認めた場合は,異所性子宮内膜症を念頭に置くべきと思われた。
  • 宮本 園子, 夏秋 優, 中山 由美, 南 祥一郎, 中川 登, 藤本 朋子, 伊藤 孝明, 山西 清文
    2007 年 6 巻 6 号 p. 618-622
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    症例は10歳,男児。6歳頃より尾骨部の違和感を感じるようになった。9歳頃より尾骨部の腫瘤に気付き,徐々に増大したため当科を受診した。初診時,尾骨部に4×2cm大の皮下腫瘤を触知した。骨盤CT所見で脊髄との交通はなく,全身麻酔下で腫瘍を完全に摘出できた。H-Eで偽ロゼット形成がみられ,腫瘍細胞はGFAP,vimentin陽性,S-100で一部が陽性であり,myxopapillary ependymomaと診断した。手術後,1年経過しているが再発はない。
  • 内田 敦子, 渡辺 愛子, 對川 智絵, 土居 敏明, 川村 尚久
    2007 年 6 巻 6 号 p. 623-627
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    3ヵ月,男児。1ヵ月前より顔面などに皮膚腫瘤が生じ,ステロイド薬を外用するも腰部や背部にも増大していった。皮膚生検により乳幼児筋線維腫症と診断した。多中心型であるため内臓病変の検索を行ったところ,肺,腎臓に数個の腫瘤がみられた。乳幼児筋線維腫症は自然退縮することもあるが,多中心型は予後が悪いこともあり化学療法を考慮したが,自覚症状がなく血液検査にても異常を認めず,経過観察とした。
  • 細川 宏, 細川 佳代
    2007 年 6 巻 6 号 p. 628-631
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    尋常性狼瘡の65歳男性例を報告した。自験例では結核菌培養は陰性であったが,本症に典型的な病歴と臨床および病理所見を示し,抗結核療法も奏効した。本症では結核菌培養の判定に数週間を要し,しかも陰性のことが少なくない。したがって,自験例のような典型的な本症では,培養結果を待ちつつ,臨床診断を優先し診断的治療を行なうのが実際的である。
―第9~10回 これからの皮膚科診療を考える会より―
  • 幸野 健
    2007 年 6 巻 6 号 p. 632-634
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    高齢化社会を迎え,皮膚科領域においても高齢者医療,特に在宅医療は重要な問題となっている。高齢者医療施設入所者と在宅患者に関するエビデンスについて概説する。高齢者施設入所者と在宅高齢者の皮膚疾患の有病率は,いずれも70%以上であった。またアンケート調査によると46%の高齢者施設が皮膚科と連携していた。さらに在宅高齢者の実態を把握している訪問看護師に対するアンケート調査で「皮膚科往診が必要」と答えた者は80%以上であった。高齢者医療・在宅医療に関して,皮膚科に対するニーズとディマンドは高いものと考えられる。
  • 小内 亨
    2007 年 6 巻 6 号 p. 635-642
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    この10年間に日本においてサプリメントは急速に普及した。これは行政の規制緩和によるところが大きい。しかし,一般の人たちが入手しうる情報のほとんどはマスメディアを通したものであり,その情報のほとんどは広告情報である。したがって,サプリメントのよい面ばかりを伝えリスクなどの問題点を伝えていない。このため,消費者はサプリメントに過大な期待を抱いている。行政のサプリメントに対する対応は不十分であり,現状のサプリメントには,不十分な効果や安全性の科学的検証,品質のばらつき,規格化の欠如など,多くの問題をはらんでいる。消費者はその問題点を十分知った上で本当にサプリメントが必要なのかどうかを考えていく必要がある。
  • 山田 秀和
    2007 年 6 巻 6 号 p. 643-648
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    高齢化社会における皮膚科の対応策を提案した。近畿大学医学部奈良病院でおこなっているアンチエイジングドックの計測方法,測定項目,について詳細を述べた。まず,血管年齢,神経年齢,筋肉年齢,骨年齢,皮膚年齢,抗酸化力,ホルモン値を測定する。全体の老化からみた抗老化の方法について,食事指導,運動指導をおこない,場合によってはさらにサプリメント指導をおこなっている。今後の皮膚科では予防医学の立場から,皮膚老化を外的老化と内的老化にわけ,対応する必要がある。
  • 東 禹彦
    2007 年 6 巻 6 号 p. 649-652
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    第1回目はトラネキサム酸5%含有クリームとトラネキサム酸0.5%含有クリームの肝斑に対する効果を二重盲検,群間比較試験で行なった。やや有用以上の有用率は両群とも70%以上であった。第2回目はトラネキサム酸5%含有クリームとその基剤を対照として,肝斑に対する効果を二重盲検,群間比較試験で行なった。やや有用以上の有効率はトラネキサム酸5%含有クリームが54%,対照のクリーム基剤が48%で両群間に差はなかった。しかし,重症度による層別解析を行ったところ重症例ではトラネキサム酸5%クリーム外用群(7例)の改善率が85.7%で,対照クリーム外用群(10例)の改善率は30.0%であった。U検定を行ったところ有意差を認めた。
  • 根本 治
    2007 年 6 巻 6 号 p. 653-658
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    最近の紫外線療法においてnarrowband UVB療法が注目を浴びている。この治療法はアトピー性皮膚炎にも有効であり,広範囲に症状をもつ重症型のアトピー性皮膚炎の治療に用いられるようになった。このUVBの波長は皮膚の浅い部分を中心に効果が発揮されるが,UVA1は更に深い部分に効果が期待でき,この2つの波長の選択によってアトピー性皮膚炎の治療の幅が広がった。この2波長をアトピー性皮膚炎の全身療法のひとつとしての位置付けで用い,いろいろな症状の改善が得られたが,重篤な副作用は見られなかった。
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