10歳,女児。初診の2ヶ月前より頭部に脱毛が出現し,近医数ヶ所にて円形脱毛症の診断でステロイド外用の治療を開始された。その後脱毛が拡大し,びらん・膿疱・結節を認めたため当科を初診。患部の毛髪の直接検鏡にて菌糸と胞子を確認した。巨大培養で放射状に拡大したクリーム色コロニーを確認し,さらにスライドカルチャーにて細胞壁の肥厚した紡錘形の大分生子を認めた。Ribosomal DNA の internal transcribed spacer 1領域の遺伝子配列を polymerase chain reaction で増幅し,ダイレクトシークエンスで解析した。Microsporum canis,Arthroderma otae 系統株の遺伝子配列と100%の相同性を認めた。以上の臨床像・真菌培養同定・真菌の遺伝子解析結果から Microsporum canis によるケルスス禿瘡と診断した。イトラコナゾールのパルス療法(5mg/kg/日を7日間)を3クール施行し皮疹は略治した。小児の頭部白癬における内服抗真菌剤の投与量や投与期間については,本邦では明確な指針がなく,その効果や安全性については今後の症例の集積が望まれる。(皮膚の科学,13: 431-434, 2014)
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