皮膚の科学
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6 巻, Suppl.9 号
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  • 片山 一朗
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B1-B5
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
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    紫外線療法は難治性のアトピー性皮膚炎の治療法としてヨーロッパを中心に臨床応用されている。本邦ではPUVA療法が,欧米ではUVA-1療法のなどの有効性が報告されており,最近はナローバンドUVBの試みが開始されている。本講演ではアトピー性皮膚炎の病因論から考える光線療法の作用機序として以下のキーワードに関して最近の知見を概説し,紫外線療法の位置付けと今後の展望を考察した。
  • 戸倉 新樹
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B6-B10
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    Narrowband UVB(NB-UVB)とPUVA療法はどちらもアトピー性皮膚炎の治療に用いられる。ターゲットとなる細胞には,ケラチノサイト,Langerhans細胞(LC)・真皮樹状細胞(dDC),T細胞,肥満細胞,C線維があるがケラチノサイトは最も重要なものである。NB-UVBはケラチノサイトの前炎症性サイトカイン産生をあまり高めずに,Th2ケモカイン産生を抑制し,ADに適した治療ということができる。また酸化的損傷の程度も低く,安全性にも優れる。PUVA療法は前炎症性サイトカインの産生を抑制し,さらに言えば全てのサイトカイン・ケモカイン産生を抑制すると推察される。
  • 長谷川 稔
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B11-B15
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)は複雑な背景をもとに生じる慢性のそう痒性炎症性皮膚疾患である。その病態には,疾患感受性遺伝子,環境,皮膚バリアー機能異常などの関与が指摘されている。また,免疫学的には,皮膚炎症を増幅するループの形成が想定されている。近年,アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法が普及してきている。その作用機序は不明であるが,制御性T細胞や制御性サイトカインを誘導することにより,本疾患の炎症増幅ループを抑制する可能性が考えられる。本稿では,アトピー性皮膚炎の病態に関して,特にサイトカインの役割と紫外線治療の機序を中心に概説する。
  • 吉池 高志
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B16
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    紫外線を用いる光線療法のアトピー性皮膚炎治療における位置づけは,わが国では長らく特殊療法の域を出なかった。しかし,中波長および長波長紫外線治療が保険適応となったのを受けて,標準治療における選択肢としての道が拡大していくと思われる。
    アトピー性皮膚炎に対する有効性と一定の安全性が立証され,かつ手技的にも簡便であるUVA-1やNB-UVBといった紫外線単独照射は今後ますます汎用されていく趨勢にある。一方,メトキサレンを用いる光化学療法(PUVA)は,今後それらに道を譲る方向にあろうし,メトキサレン自体がいまだに保険適応外であることに問題を残している。
    アトピー性皮膚炎に対するPUVA療法の意義を見出すとすれば,乾癬などに対する治療の歴史が長く,有効かつ安全に実施する手技や長期安全性に関するデータが蓄積されていることであると考える。ことに海外で主流であった内服PUVAの知見は豊富であり,今後主流となるであろうNB-UVBなど単独照射法の参考とされていることはいうまでもなく,概括しておきたい。
    われわれ自身は,本邦で頻用されてきた外用PUVAを中心とした経験を長らく有し,効果の増大と副作用の軽減をめざしたステロイド短期内服法を内服PUVAに対しても適用してきたが,有効性は外用法と比較して大差なかった。ただ,刺激反応は外用PUVAに,色素沈着は内服PUVAに多く観察された。これらの結果についても付記する。
  • 川原 繁, 川田 暁
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B17-B20
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎に対して内服PUVA療法と同様にbath-PUVA療法を含む外用PUVA療法は有効である。特に成人型アトピー性皮膚炎の重症例,や痒疹型の皮疹に対してステロイド外用に抵抗性を示す場合に有効性が高い。アトピー性皮膚炎に対して外用PUVA療法で治療を行った場合の発癌リスクに関してはほとんどデータがないが,今後他の紫外線療法と同様にガイドライン作成を視野に入れて,外用PUVA療法の有効性と安全性をさらに検討することが必要と考えられる。
  • 根本 治
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B21-B25
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    最近,紫外線療法はPUVA療法からnarrowband UVB療法へ移行されつつあり,この波長がいろいろな疾患に有効であることは一致した意見になりつつある。アトピー性皮膚炎にも紫外線療法の保険が適応になり,紫外線は有力な治療手段となるであろう。本症において,重症例で皮疹が広範囲であったり,外用がうまくできなかったりした例にnarrowband UVB療法が多く用いられることが予想されるが,UVA1療法によって苔癬化の強い例,紅皮症,痒疹の混在した例などで治療の幅が広がることを供覧したい。当院では8年の治療経験があるが,副作用として注目しなければならない皮膚癌の発症は経験していない。
  • 森田 明理, 山本 あい, 澤田 啓生
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B26-B31
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎の治療では,光線療法はファーストラインとして行われるステロイド外用治療でコントロールが難しい場合や副作用発現時などに用いられ,セカンドラインもしくはサードラインに位置する治療と考えられる。新しい光線療法であるナローバンドUVB(311nm)療法の治療の実際を紹介するとともに,照射プロトコールの提案を含めた。ナローバンドUVBは,その安全性と有効性からPUVA療法に代わり,乾癬,白斑,アトピー性皮膚炎などの難治性皮膚疾患に広く用いられるようになった。今後,アトピー性皮膚炎対して,薬物療法とあわせ光線療法の有用性が本邦でも明らかにされるだろう。名古屋市立大学病院での教育入院を含めたナローバンドUVB療法の経験も報告する。
  • 義澤 雄介
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B32-B37
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)患者3例に低量BB-UVBの低頻度照射を年単位で行い,週2-5回の頻回照射でなくても長期的治療には有用である可能性を示唆した。一方,医院や一般病院にアンケート調査を行ったところ,ADのUV治療を行っていたのは34施設中5施設(15%)のみであった。その理由は「診療スペースの問題」31%,「資金の問題」24%,「頻回照射が困難」17%,「発癌性が心配」14%で,UV治療を希望しても行えない状況が推察された。本邦の医院や一般病院におけるUV治療の流布には,狭い空間でも治療が可能(例えば立位式部分照射用機器など)で安価な機種や,実際的な照射法の考案が必要ではないかと考えた。
  • 大磯 直毅, 川原 繁, 川田 暁
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B38-B42
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法のコンセンサスの基盤を提供する目的で,全国の医学部および医科大学附属病院に「アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法に関するアンケート」を実施した。国内医学部および医科大学附属病院88施設のうち,63施設からアンケートを回収した(回収率71.2%)。本稿ではアンケート集計結果を報告するとともに,アトピー性皮膚炎患者に対する紫外線療法の現在の状況,将来にわたって疫学調査すべき項目,将来の推定される状況を推測した。
  • 上出 良一
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B43
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎に対する紫外線の影響は功罪両面がある。紫外線の免疫抑制作用により太陽光や人工光源のUVB照射,あるいはPUVAで治療効果がある一方,過剰な紫外線照射による悪化(photo-Koebner現象),あるいはさほどの紫外線照射でなくても一部の患者では光線過敏症状を呈することがある。若年者でchronic actinic dermatitisの症状を呈する例もまれではあるが見られる。しかし,患者が日光曝露により皮疹が悪化したと訴えても,詳細に検討してみると,日光による熱作用や発汗による増悪であることが多いので,安易に日光過敏と診断して制限を加えないよう慎重に行った方がよい。従って,原則的には健常人と同じように,過剰な日光曝露を避けるよう,紫外線の強い時期には日傘,衣類などによる防御にサンスクリーン剤を併用して,急性・慢性紫外線障害を予防する。サンスクリーン剤を塗布した場合の皮疹への影響も考慮する必要があるが,一般的には保湿剤,ステロイド外用剤などを塗布した上にサンスクリーン剤を塗布すればよい。タクロリムス外用薬を塗布した際には,発癌を促進する可能性が考えられるので,特に紫外線防御に留意するが,あまり神経質になる必要はなく,一般的な紫外線対策を励行していればよい。
  • 山田 秀和, 熊本 貴之, 澤本 学, 小田 香織
    2007 年 6 巻 Suppl.9 号 p. B44-B49
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    重症アトピー性皮膚炎患者の睡眠障害は痒みによる覚醒だけでなく概日リズム障害の1つである睡眠相後退症候群の可能性があることがわかった。文献的検討では,DSPSの治療には光治療やメラトニン投与が有効である可能性が示された。アトピー性皮膚炎の睡眠障害の生活指導に,早寝,早起き,日光浴(光治療を含む),朝食をとることが有用である。
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