皮膚の科学
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10 巻, 2 号
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症例
  • 山本 篤志, 姜 朱美, 大野 健太郎, 小幡 有史, 鬼木 俊太郎, 神吉 晴久, 伴 政雄
    2011 年 10 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    85歳,女性。仙骨部に生じた放射線皮膚潰瘍に対して,臀部穿通枝皮弁を用いて再建を行った。通常,臀部穿通枝皮弁は知覚皮弁ではないため,術後に知覚脱失や感覚異常などが問題となる。術中,穿通枝の周囲に伴走していた神経様組織を皮弁に含めたところ,知覚を温存でき,術後の合併症も認めなかった。我々が温存した皮神経は解剖学的位置から上臀皮神経あるいは中臀皮神経の分枝であったと考える。臀部穿通枝皮弁を用いる際には,術中に皮神経の走行にも留意し,穿通枝の周辺組織をできる限り温存することで知覚皮弁とすることができる可能性がある。(皮膚の科学,10: 128-132, 2011)
  • 田中 えり子, 尾藤 利憲, 舛岡 恵律子, 小野 竜輔, 清水 秀樹, 山田 陽三, 岡 昌宏, 錦織 千佳子, 池村 志麻乃
    2011 年 10 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    アンジオテンシンII受容体拮抗薬とチアジド系降圧利尿薬であるヒドロクロロチアジドの合剤によると考えられた光線過敏型薬疹の6症例を報告する。内服開始から皮疹発症までの期間は6週間~1年と様々であった。紫外線照射テストでは,いずれも UVA に対する光線過敏を認めた。光貼布試験を施行しえた5例中4例で陽性反応を認めた。治療については,全例で,内服中止と遮光およびステロイド外用で症状は軽快した。以前は,チアジド系降圧利尿薬は光線過敏型薬疹を頻発することでよく知られていたが単剤での使用頻度が激減したため,薬疹はほとんどみられなくなっていた。ところが,合剤として再び処方量が増すに伴い,単剤使用時と同様にヒドロクロロチアジドによる光線過敏型薬疹が急増している。(皮膚の科学,10: 133-140, 2011)
  • 丸山 希実子, 岡本 勝行, 米井 希, 貴志 知生, 山本 有紀, 古川 福実, 仲 禎二
    2011 年 10 巻 2 号 p. 141-143
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    56歳,女性。生下時から外的刺激により水疱,びらんが現れやすく,しばしば瘢痕を形成していた。すでにVII型コラーゲン遺伝子領域の遺伝子検索を受け,劣性栄養障害型先天性表皮水疱症と診断されている。近年,おもに外用療法により対症的に加療されていたが,経過中,嚥下困難を訴えたため精査したところ食道狭窄が確認された。バルーンカテーテルによる拡張術で症状は改善した。内視鏡による確認中に胃癌が発見され,外科的切除術が行われ,その後の経過は良好であった。劣性栄養障害型先天性表皮水疱症患者の食道狭窄,およびバルーンカテーテル法による食道拡張術について考察した。(皮膚の科学,10: 141-143, 2011)
  • 佐藤 真美, 松村 由美, 宮地 良樹
    2011 年 10 巻 2 号 p. 144-148
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    60歳,女性。数ヶ月来,ステロイド外用薬や抗生剤内服に反応しない紅斑を繰り返し,当科を受診した。初診時,顔面にそう痒を伴い湿潤傾向のある紅斑を複数認めた。膿疱や中心治癒傾向はなかった。皮膚生検では毛包漏斗部の角層下膿疱と毛包の海綿状態,好酸球の浸潤,毛包周囲および血管周囲・脂腺へのリンパ球と好酸球の浸潤を認めた。インドメタシン 50mg/日の内服とタクロリムス軟膏の外用を開始し,1週間後には皮疹は軽快した。その後も再発を繰り返すが,同様の治療にて数日で軽快している。臨床像は非典型的であるが,組織像と臨床経過から好酸球性膿疱性毛包炎と診断した。好酸球性膿疱性毛包炎はときに非典型症状を来たすことがあり注意を要する。(皮膚の科学,10: 144-148, 2011)
  • 村本 睦子, 坂元 花景, 小西 啓介, 沼尻 敏明
    2011 年 10 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    48歳,女性。30年前より尾骨部の腫瘤を自覚し,徐々に増大したため切除希望で受診した。臨床的には尾骨部正中に軽度の角化を伴う淡紅色広基性の腫瘤を認めた。仙尾部単純X線所見で尾骨の前方屈曲偏位は軽度であった。臨床所見と切除した腫瘤の組織学的所見より coccygeal pad と診断した。また MRI 検査で皮膚腫瘤直下の後直腸部に二房性の嚢胞性病変を認め,tailgut cyst と診断した。本症例は tailgut cyst を合併した coccygeal pad であり,稀な症例と考えた。(皮膚の科学,10: 149-153, 2011)
  • 清原 英司, 種村 篤, 寺尾 美香, 片山 一朗
    2011 年 10 巻 2 号 p. 154-158
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    症例1:58歳,女性。右乳頭部および乳輪を中心として直径約 5cm の白苔の付着したびらんを認めた。組織ではびらん部と正常部との境界部位に Paget 細胞を認めたが,主乳管と乳管外に浸潤を認めなかった。びらん面から 2cm 離して乳腺の部分切除術を行った。症例2:62歳,女性。右乳頭に限局した 1cm のびらんがあり,組織学的に Paget 細胞は表皮内のみでなく,主乳管にまで浸潤していた。腫瘍全摘術を行ったが深部乳管まで浸潤していたため,全乳房摘出手術をおこなった。このように臨床像の外観と組織深達度が解離していることがあるため,臨床像の印象にとらわれず,正確に腫瘍の浸潤を評価することが重要である。(皮膚の科学,10: 154-158, 2011)
  • 東森 倫子, 吉田 益喜, 大磯 直毅, 川原 繁, 川田 暁
    2011 年 10 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    66歳,女性。全身性エリテマトーデスとループス腎炎にてプレドニゾロンや免疫抑制剤の内服治療中に,左下腿後面に 2.5×4cm 大の皮下結節が出現した。病理組織所見では真皮上層から皮下脂肪組織にかけて無数の類円形菌体がび慢性に増殖していた。菌体は PAS 染色や Grocott 染色,Fontana-Masson 染色で染色された。さらに髄液の培養で Cryptococcus neoformans が同定されたため,続発性皮膚クリプトコッカス症と診断した。フルコナゾールを投与したところ症状は改善した。基礎疾患を有し,ステロイド剤の内服などで免疫抑制状態にある患者にこのような病変が見られた場合には,本症も念頭に置き精査することが必要であると思われた。(皮膚の科学,10: 159-163, 2011)
治療
  • ―3年間のまとめ―
    加藤 真弓, 谷岡 未樹, 宮地 良樹
    2011 年 10 巻 2 号 p. 164-169
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    京都大学皮膚科では2007年10月より白斑専門外来に付属したメイクアップケア外来を開設した。開設当初は白斑のカモフラージュメイクを目的とした外来であった。次第に対象疾患を広げて,現在では色素異常症のみならず,術後瘢痕や膠原病の皮膚症状などへもメイクアップ指導を行っている。2010年9月までの3年間に105名の患者がメイクアップケア外来を受診した。患者は男性18人,女性87人であり,男女比は1:4.8であった。年齢は1~81歳まで分布し,平均年齢は48.6歳であった。疾患の内訳は尋常性白斑(78人)が74.3%を占めた。カモフラージュメイクを施した部位は顔面78人(74.3%), 手24人(22.9%),頸部16人(15.2%),体幹4人(3.8%),下肢3人(2.9%)であった。なお,105人の患者のうち10名は2回以上メイクアップケア外来を受診していた。これまでに,接触皮膚炎なのどの有害事象は生じていない。本稿では,3年間にわたる京都大学皮膚科のメイクアップケア外来での取り組みについて報告する。(皮膚の科学,10: 164-169, 2011)
使用試験
  • 谷岡 未樹, 松永 佳世子, 秋田 浩孝, 片山 一朗, 乾 重樹, 石井 正光, 小林 裕美, 相場 節也, 菊地 克子, 石川 治, 永 ...
    2011 年 10 巻 2 号 p. 170-182
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル 認証あり
    顔面に尋常性ざ瘡のある女性患者を対象に,低刺激性・低アレルギー性メーキャップ化粧品dプログラム®スムースアップファンデーション(パウダリー),スムースアップファンデーション(リキッド),スムースアップフェースパウダー(おしろい)の安全性を評価することを目的とする4週間の使用試験を実施した。解析対象例(85例)における副作用発現率はパウダリー2.1%,リキッド0%,おしろい0%で,副作用の症状は軽微であった。試験開始時と比較した終了時におけるざ瘡の炎症性皮疹(紅色丘疹,膿疱)および非炎症性皮疹(面皰)数は有意に減少した。Dermatology Life Quality Index を用いた生活の質の評価は「総合」「症状・感情」「レジャー」のスコアが有意に改善された。Visual Analogue Scal (VAS) による顔面の皮膚状態に関する満足度も有意に上昇した。以上の結果より,本試験試料の低刺激性・低アレルギー性メーキャップ化粧品は女性の尋常性ざ瘡患者が安全にかつざ瘡を悪化させることなく使用することができるだけでなく,生活の質を改善すると結論した。(皮膚の科学,10: 170-182, 2011)
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