皮膚の科学
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17 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
症例
  • 山本 容子 , 大原 裕士郎 , 西崎 絵里奈 , 細本 宜志, 吉岡 希 , 磯貝 理恵子 , 山田 秀和
    2018 年 17 巻 5 号 p. 239-244
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル 認証あり

    60歳代,男性。約 4 ヶ月前から痒みを伴う全身の紅斑が出現し, 1 ヶ月前から嗄声が出現した為に近医を受診したところ,胸部レントゲンで左上肺野に結節影を認めたために当院に紹介となった。初診時の皮膚所見は,顔面の紅斑,多形皮膚萎縮,ゴットロン徴候があったが,筋症状なく,クレアチニンキナーゼ・アルドラーゼの上昇はなかった。左手指背側の紫紅色斑からの皮膚病理組織では HE 染色で軽度の液状変性があり,抗 TIF1-γ 抗体が陽性であったために,無筋症性皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis ; ADM)と診断した。左上肺野の結節影は気管支鏡で肺扁平上皮癌と診断された。2015年に我が国の多発性筋炎/皮膚筋炎の診断基準が改訂された。これに伴い,皮膚症状のみでも皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは ADM と診断することが可能となった。しかし,皮膚筋炎の病理組織はごく軽度の変化のみを示すものもあることから,ADMの確定診断に難渋するが,治療が遅れないようにするのが皮膚科の役目である。近年,多発性筋炎/皮膚筋炎に特異性の高い新たな筋炎特異的自己抗体の同定がすすんだ。筋炎特異的自己抗体は筋炎の病型,病態,臨床経過,治療反応性と密接に関連しており,ADM に対しても病態の把握・治療方針の決定に有用であると考える。 (皮膚の科学,17 : 239-244, 2018)

  • 山口 麻里 , 山本 彩乃 , 安富 陽平, 長尾 洋 , 大野 貴司 , 森 英樹
    2018 年 17 巻 5 号 p. 245-249
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル 認証あり

    症例は70歳代,男性。眼の違和感に対し市販の点眼薬を使用開始したところ,眼囲に瘙痒を伴う紅斑,腫脹が出現した。点眼薬の使用を中止の上,ステロイド軟膏の外用を行い,数日間で症状は軽快した。パッチテストでは,点眼薬で陽性。成分パッチテストではアミノカプロン酸で陽性だった。アミノカプロン酸はかつては止血剤として使用されていた抗プラスミン剤だが,現在医療用剤は販売終了している。しかし,止血,抗アレルギー,抗炎症作用と様々な作用を有するため,現在でも医薬品や医薬部外品の成分・添加物として汎用されている。日常生活品にも多岐にわたって使用されており,アミノカプロン酸に対しアレルギーを有する患者は注意が必要である。 (皮膚の科学,17 : 245-249, 2018)

  • 白鳥 隆宏 , 前川 直輝 , 今西 明子, 石井 真美 , 井上 健 , 深井 和吉
    2018 年 17 巻 5 号 p. 250-254
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル 認証あり

    80歳代,女性。20年前に非ホジキンリンパ腫に対して化学療法を受け,その後寛解していた。さらに14年前,急性前骨髄性白血病を発症し all-trans retinoic acidATRA)内服と化学療法を受けた。 10年前に左足底に紅色の皮膚結節が生じ,当科で切除したところ汗孔腫であった。 3 年前に左下腿に紅色の皮膚結節を自覚し経過をみていたが,他肢にも増加してきたため再度当科へ紹介となった。 顔,四肢に 3mm10 mm の紅色でドーム状の皮膚結節を 6 ヶ所認めた。切除生検を施行したところ, 6 ヶ所すべての皮膚結節は病理組織学的に汗孔腫と診断した。汗孔腫の多発例は比較的稀であり,文献報告は24例が確認できた。2000年以降は造血器悪性腫瘍の治療後に生じた報告が増えている。多発性汗孔腫の発生のメカニズムとして造血器腫瘍治療にともなった血管内の腫瘍細胞の大量死滅によるリン酸カルシウムの表皮内汗管への沈着を推測した。 (皮膚の科学,17 : 250-254, 2018)

  • 浅岡 優美 , 加賀 麻弥 , 小川 祐美 , 比留間 政太郎 , 池田 志斈
    2018 年 17 巻 5 号 p. 255-259
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル 認証あり

    20歳代,女性,柔道部員。後頭部に生じた多発性毛包炎を主訴に当院紹介受診した。皮膚生検組織の真菌培養は陽性,培養された菌株は遺伝子検索で Trichophyton tonsurans と同定され,頭部白癬と診断した。所属する柔道部員の検診で陽性者が検出された。自験例は前医にて抗真菌薬が投与されていたため,臨床症状が軽快しつつあり,診断に苦慮した。T. tonsurans 感染症は症状が多彩で無症候性キャリヤーも存在するため,常に真菌症を疑い真菌培養を施行することが大切である。さらに,感染拡大を防ぐために,キャリヤーを探し治療をすることも不可欠である。 (皮膚の科学,17 : 255-259, 2018)

  • 清水 友理 , 種村 篤 , 壽 順久, 沖田 朋憲 , 向井 康祐 , 片山 一朗
    2018 年 17 巻 5 号 p. 260-264
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル 認証あり

    70歳代,男性。悪性黒色腫 Stage 4 に対してイピリムマブ投与中。来院 3 週間前に 3 投目のイピリムマブを投与し,投与数日後から嘔気,食欲不振,全身倦怠感が出現した。近医で補液されるも改善なく当科を受診された。来院時,低血圧,低血糖,低ナトリウム血症をみとめ,副腎不全を疑いコルチゾールを測定したところ低値であった。内分泌学的検査の結果,ACTH 分泌不全による副腎不全と診断した。症状出現時に撮像していた頭部 MRI では下垂体の腫大をみとめ,イピリムマブによる下垂体炎と考えた。ヒドロコルチゾン補充により症状は消失し,イピリムマブ投与を再開した。投与後症状の再燃はみとめずイピリムマブ投与を完遂した。イピリムマブによる下垂体炎の機序について若干の文献的考察を踏まえ報告する。 (皮膚の科学,17 : 260-264, 2018)

  • 鈴木 緑 , 立林 めぐ美 , 加藤 麻衣子, 栁原 茂人 , 大磯 直毅 , 川田 暁
    2018 年 17 巻 5 号 p. 265-269
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル 認証あり

    80歳代,男性。初診の数ヶ月前より頭部に紅斑とその周囲に脱毛斑,背部に紅色局面,上肢に淡紅色丘疹が出現し,生検の病理組織所見から follicular mucinosisFM)と考えた。ステロイド外用で加療していたところ,初診の 2 年後より側頭部と後頭部に結節を認め,上背部に新生の紅斑が出現した。再度生検を施行し,folliculotropic mycosis fungoidesFMF)と診断した。内服 PUVA,外用PUVA の治療によって皮疹は改善傾向を示した。本症は PUVA 法による治療は奏功しないことが多いが,自験例では寛解し,また外用 PUVA を選択したことで外来での加療が可能であった。以上から高齢者の FMF では外用 PUVA も治療の選択肢になり得ると考えられた。 (皮膚の科学,17 : 265-269, 2018)

  • 有馬 亜衣 , 晋山 真知 , 伊東 由美子, 小川 浩平 , 小豆澤 宏明 , 浅田 秀夫
    2018 年 17 巻 5 号 p. 270-273
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル 認証あり

    症例,60歳代,女性。初診 7 ヶ月前より肺腺癌に対しエルロチニブ 100 mg/日を内服開始し, 2 ヶ月後より下腿に皮疹を認めた。ステロイドを外用するも皮疹が悪化し当科を受診した。両下腿と右大腿の一部に数 mm 大の紅色丘疹が多発し,丘疹の一部には膿疱や痂皮を伴っていた。膿疱を伴った丘疹を生検したところ,角層下から表皮内に好中球性膿疱を認め,角層下膿疱と毛包との連続性はなかった。エルロチニブは継続したまま,ステロイド外用にミノサイクリンの内服を併用したところ 2 週間後には皮疹は消退傾向を呈した。その後もエルロチニブは継続されているが,再発はみられない。痤瘡様皮疹の報告の中に少なからず角層下膿疱を呈する症例が含まれる可能性が示唆された。 (皮膚の科学,17 : 270-273, 2018)

使用試験
  • 越智 沙織 , 髙橋 彩 , 片山 一朗
    2018 年 17 巻 5 号 p. 274-283
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル 認証あり

    高齢者の乾皮症に対する化粧品保湿剤の影響を解析した。20172 月から 4 月の間,大阪大学医学部附属病院を受診した60歳以上の乾皮症患者30例を対象とし,常盤薬品工業株式会社が販売しているノブR スキンクリームD(以下,保湿クリーム),コントロールとして白色ワセリン(以下,ワセリン)を使用した。左右の下腿に,保湿クリームとワセリンを塗り分け,外用開始前および 4 週間外用後に評価した。 4 週間外用継続できた29例は明らかな有害事象を認めなかった。外用 4 週後の皮膚病変スコア・瘙痒 VAS は外用前と比較して,両群ともに全項目で有意に低下した。外用 4 週後の角層水分量は保湿クリーム・ワセリン群ともに外用前と比較し有意に増加し,ワセリン群と比較し保湿クリーム群で有意に高値であった。外用 4 週後の経表皮水分蒸散量は保湿クリーム群のみ有意に低下した。次に 250 Hz および 5Hzの経皮的電気刺激に対する知覚応答性閾値は保湿クリーム群がワセリン群と比較して有意に高値であった。さらに角層における SH 基染色強度と重層剥離度は保湿クリーム群のみ有意に減少した。以上より,保湿クリームは皮膚病変・瘙痒だけでなく,バリア機能・角層機能を有意に改善させた。保湿剤は多様化しているが,医薬品だけでなくノブR スキンクリームDのような化粧品も保湿効果が高く,使用感が良ければ,乾皮症の治療効果を高めることが示唆された。 (皮膚の科学,17 : 274-283, 2018)

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