皮膚の科学
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14 巻, Suppl.23 号
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  • 江畑 俊哉
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S1-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
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    アトピー性皮膚炎(AD)のコントロール不良例では強いかゆみによりQOL が著しく低下している。かゆみの制御は重要であり,治療効果を判定するためにかゆみを正しく評価することは欠かせない。かゆみの評価尺度として,verbal rating scale (VRS),visual analogue scale (VAS),numerical rating scale (NRS) が,日常診療,臨床研究,治験等で使用されるが,近年,これらの尺度の信頼性,妥当性の検討が行われている。一方,これらはかゆみの1つの側面である「強さ」しか評価できないという指摘もある。5D Itch Scale(5D) は,かゆみを5つの構成要素(持続時間,強度,経過,QOL 障害,分布)から評価し点数化する尺度で2009年に米国で開発された。今回,5D 日本語版(5D-J)を作成し,成人型AD 患者のかゆみの評価に用いた。169例に試みた結果,かゆみのVAS,皮膚病変のSCORAD,QOL 尺度であるDLQI の各スコアと5D-J スコアとの間に有意な相関を得た。5D-J の構成要素別の検討では,VAS とはかゆみの強度との間,SCORAD とはかゆみの強度,分布との間,DLQI とはかゆみの強度とQOL 障害との間に強い相関があった。患者からは,設問は簡便で数分以内に回答でき,VAS よりもかゆみの程度を表現しやすいという評価が得られた。(皮膚の科学,増23:1-6, 2015)
  • 青木 敏之
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S7-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
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    かゆみの問診には時間がかかる。しかも患者ごとにすべての質問をもらさずすることは困難である。そこで痒みをおこす疾患に適応できる質問表を作ってみることにした。そうすれば疾患によって生じる痒みの違い、また経過によって生じる痒みの変化を捉えるのに有用と考えた。痒みが起こりやすい生活に根ざした状況を、多数の患者から問診によりあつめ、その中から10を選んでどのような強さの痒みが生じるか尋ねる質問表をつくった。
    それを50人のアトピー性皮膚炎患者に答えてもらった。1日全体の痒みの強さをグローバル値としてもとめそれとの相関を見た。また10項目の質問相互間の相関も見た。その結果、グローバル値と良く相関する質問とそうでない質問とがあった。また10の質問相互間にも、よく相関する質問同士とそうで内質問同士があった。違った疾患では異なる回答が得られることがあった。また経過によってよく改善する質問とそうでない質問とがあった。
    さらに工夫することによって、そう痒性皮膚疾患の痒みの経過追跡に役立つ質問表を完成したい。(皮膚の科学,増23:7-8, 2015)
  • 上出 良一
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S9-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
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  • 竹原 和彦
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S10-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎は「痒み」を伴う慢性皮膚疾患であり、その治療の根幹はステロイド外用薬の適切な使用である。大部分の患者は、ステロイド外用薬の使用により、日本皮膚科学会の診療ガイドラインに記載されている治療の目標(1)症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない。(2)軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化しても遷延することはない。を達成しうる。しかしながら、一部には外用のアドヒアランスが不良などの理由で、重症あるいは重症の一歩手前のまま改善が得られない患者に困惑することも稀ではない。本講演においては、2008年にアトピー性皮膚炎の適応承認を得たネオーラルRの使用経験につき、自験例を整理して紹介したい。なお、シクロスポリン治療研究会より、使用指針が公表されているが、使用指針と私の個人的な方針とも対比させて、論じたい。ネオーラルRは、アトピー性皮膚炎のファーストラインの治療薬ではないが、標準治療の一員として確かな足場を築いていることを強調したい。(皮膚の科学,増23:7-8, 2015)
  • 片岡 葉子
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S13-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
    演者の施設では2009年から患者教育システムを確立し重症患者に対するtight control に取り組んできた。その方法はすべての皮膚炎を早期に自他覚症状、血清TARC 値ともに正常レベルまでステロイド外用薬によって寛解導入し、寛解を維持しながら外用回数を漸減する厳密なproactive 療法である。その結果乳児、成人ともに重症患者の予後を大きく改善させることを確認している。特に乳児については1990年代に比し、遷延化例は著減し、血清総IgE、食物特異IgE も低下傾向となり、皮膚炎およびアトピー素因の予後を改善する可能性が強く示唆された。アトピー性皮膚炎の外用薬物療法は単なる症状緩和の対症療法ではなく、tight control の遂行によって遷延化・重症化を防ぐdisease-modifying strategy となりうる。(皮膚の科学,増23: 13-18, 2015)
  • 成田 雅美, 堀向 健太, 森田 久美子, 近藤 麻伊, 世間瀬 基樹, 齋藤 博久, 大矢 幸弘
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S19-22
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
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    乳幼児期のアトピー性皮膚炎(AD)や遺伝的な皮膚バリア機能異常はその後の抗原感作や他のアレルギー疾患発症のリスク因子になる。ではAD への早期介入や発症前からのスキンケアによりアレルギーマーチの進展を抑制できるのだろうか?
    当院に入院を要した1歳未満の重症AD 患者を後方視的に検討した結果、治療開始時の月齢が4ヶ月以下の早期介入群では5-11ヶ月の群と比べ、1歳6ヶ月時点での食物アレルゲンへの感作率や食物除去の割合が有意に低かった。また中等症から重症AD 小児患者を対象とした別の検討では、寛解維持期にプロアクティブ療法を実施した群では治療開始2年後の血清総IgE 値はリアクティ療法群と比較して有意に低く、卵白、牛乳特異的IgE 抗体値も有意に減少していた。AD に対する治療を早期に、または確実に行うことにより、皮膚のバリア障害が修復され経皮感作の進展を予防できた可能性がある。
    さらに我々は新生児期からのスキンケアによるAD 発症の予防効果を、ランダム化比較試験により検証した。当院で出生したADの家族歴があるハイリスク新生児118人を、毎日入浴後に保湿剤を全身塗布する介入群と悪化時のみに塗布する対照群に割り付け、生後32週までの湿疹の累積発症率を比較した。その結果、かゆみ伴う湿疹が2週間以上続き皮膚科専門医によりAD/ 湿疹と診断された乳児は介入群で約3割減少した。
    新生児期からのスキンケアによるハイリスク児のAD 発症予防や、AD への早期治療やプロアクティブ療法による経皮感作予防により、アレルギーマーチの進展を抑制できる可能性がある。(皮膚の科学,増23: 19-22, 2015)
  • 井上 祐三朗
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S23-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
    近年、乳児期早期のスキンケアによる介入で経皮感作を予防することが、食物アレルギーを含めた様々なアレルギー疾患の予防につながり、アレルギーマーチを抑制することが期待されている。そこで、当教室で行っている出生コホート研究における様々なアレルゲン感作に関わる要因の検討から、早期スキンケアが本当にアレルギーマーチを予防しうるのかについて論じてみたい。1歳時の卵白感作の検討では、乳児期早期の顔面の湿疹以外に、母乳栄養・顔面のブドウ球菌の保菌・母のアレルギー歴などの他の要因も関連していた。したがって、乳児期早期までの顔面の湿疹を抑制できるような適切な早期スキンケアであれば、卵白感作を予防しうる可能性がある。一方、1歳時のダニ感作と乳児期早期の顔面の湿疹の関連を検討したところ、ダニ抗原量が多い環境の児では湿疹と1歳のダニ感作は関連しないが、ダニ抗原量が少ない環境の児では有意に関連していた。すなわち、ダニ抗原量が少ない環境では、早期スキンケアがダニ感作の予防になる可能性があるが、ダニ抗原量が多い環境では環境整備を優先しないと、そもそもダニ感作は予防できない可能性が考えられた。以上のように、乳幼児期のアレルゲン感作に対する早期スキンケアの効果の検討には、アレルゲンの種類・湿疹やアトピー性皮膚炎の場所・栄養法・環境中のアレルゲン量・皮膚以外の感作経路など様々な要因を合わせて考えていく必要がある。(皮膚の科学,増23: 23-24, 2015)
  • 横関 博雄
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S25-28
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
    近年、スギ花粉症患者に呼吸器症状、消化器症状、咽頭症状、発熱なども見られることが良く知られスギ花粉症は全身性疾患の一つと考えられている。また、スギ花粉症の患者に合併してスギ花粉が皮膚に接触することが原因と思われるスギ花粉皮膚炎と呼ばれている皮膚症状が見られることがある。このスギ花粉皮膚炎は飛散するスギ花粉抗原の皮膚への接触による空気伝搬性接触皮膚炎(airborne contact dermatitis)の一つと考えられてきている。花粉皮膚炎はスギの飛散する2月から4月までだけではなく10月から12月までの秋にも発症する。秋に発症する花粉皮膚炎はスギ花粉による皮膚炎とブタクサ、ヨモギ花粉による秋花粉皮膚炎である。今回、スギ花粉皮膚炎の臨床的特徴、発症機序、治療法、予防法、他のアレルギー性接触皮膚炎などとの鑑別方法に関して述べたい。治療はマスク、眼鏡、マフラーなどでスギ花粉が皮膚に接触することを予防するとともに、スギ花粉症に準じて非鎮静性の第2世代の抗ヒスタミン薬の内服が必要である。また、スギ抗原が皮膚内に入るのを予防するために、角層のバリア機能を保つスキンケアも必要不可欠である。春先に生じる顔が赤くなる皮膚炎には化粧、洗剤、毛染めなどによるアレルギー性接触皮膚炎以外にスギ花粉皮膚炎があることを念頭に置いて診療する必要がある。(皮膚の科学,増23: 25-28, 2015)
  • 藤澤 隆夫
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S29-29
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
  • 古江 増隆, 中原 剛士, 中原 真希子
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S30-32
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)にとって痒みは最も重要な症状の一つである。痒みによる掻破は皮疹の増悪を招き、痒みによる睡眠障害は患者のみならず保護者の生活の質を低下させる。しかしながら痒みに対する治療薬の開発は遅々として進んでいない。本稿では、痒みに対する標準治療の効果をまとめ、あわせて将来臨床の場に登場しそうな新規治療法についても文献的に言及したい。(皮膚の科学,増23: 30-32, 2015)
  • 田原 真由子, 室田 浩之, 片山 一朗
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S33-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
    日常診療においてステロイド外用薬などを用いた一般的な治療に抵抗性を示すアトピー性皮膚炎の症例をしばしば経験する。代替治療として308nm エキシマライト光線療法の有効性が報告されており、当該施設でも難治例に対して適用してきた。アトピー性皮膚炎17例に対するエキシマライトの治療効果を後方集積した結果を報告する。効果発現までの時間に差はあるものの、アトピー性皮膚炎でみられる多彩な皮膚病変に改善を認めた。寛解導入維持の困難な症例に対しエキシマライト光線療法が有用な治療選択肢の1つになりうると考える。(皮膚の科学,増23: 33-34, 2015)
  • 片桐 一元
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S35-35
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
  • 山中 恵一, 水谷 仁
    2015 年 14 巻 Suppl.23 号 p. S36-38
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/16
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎を含めた炎症性皮膚疾患に対する治療に際しては、掻痒を適切にコントロールし皮膚炎を早期に収束させる事は大変重要であり、そのためには効果的な抗ヒスタミン剤の使用が肝要である。先ずは抗ヒスタミン剤の内服により重症または中等症のアトピー性皮膚炎患者において実際に掻破行動が軽減することを説明する。また長期間にわたりコントロール不良な皮膚炎が持続すると全身性の臓器病変がもたらされる可能性も詳説する。(皮膚の科学,増23: 36-38, 2015)
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