乳幼児期のアトピー性皮膚炎(AD)や遺伝的な皮膚バリア機能異常はその後の抗原感作や他のアレルギー疾患発症のリスク因子になる。ではAD への早期介入や発症前からのスキンケアによりアレルギーマーチの進展を抑制できるのだろうか?
当院に入院を要した1歳未満の重症AD 患者を後方視的に検討した結果、治療開始時の月齢が4ヶ月以下の早期介入群では5-11ヶ月の群と比べ、1歳6ヶ月時点での食物アレルゲンへの感作率や食物除去の割合が有意に低かった。また中等症から重症AD 小児患者を対象とした別の検討では、寛解維持期にプロアクティブ療法を実施した群では治療開始2年後の血清総IgE 値はリアクティ療法群と比較して有意に低く、卵白、牛乳特異的IgE 抗体値も有意に減少していた。AD に対する治療を早期に、または確実に行うことにより、皮膚のバリア障害が修復され経皮感作の進展を予防できた可能性がある。
さらに我々は新生児期からのスキンケアによるAD 発症の予防効果を、ランダム化比較試験により検証した。当院で出生したADの家族歴があるハイリスク新生児118人を、毎日入浴後に保湿剤を全身塗布する介入群と悪化時のみに塗布する対照群に割り付け、生後32週までの湿疹の累積発症率を比較した。その結果、かゆみ伴う湿疹が2週間以上続き皮膚科専門医によりAD/ 湿疹と診断された乳児は介入群で約3割減少した。
新生児期からのスキンケアによるハイリスク児のAD 発症予防や、AD への早期治療やプロアクティブ療法による経皮感作予防により、アレルギーマーチの進展を抑制できる可能性がある。(皮膚の科学,増23: 19-22, 2015)
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