皮膚の科学
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7 巻, 2 号
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カラーライブラリー
症例
  • 杉浦 啓二, 杉浦 真理子
    2008 年 7 巻 2 号 p. 120-125
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    17歳,高校生。アトピー性皮膚炎で通院加療中,皮疹の悪化を繰り返していた。昼食に唐揚げを摂取した後の体育授業中に蕁麻疹を生じ,痒みのため掻破し,アトピー性皮膚炎が悪化していた。血液検査,経過,誘発試験より,唐揚げ粉による食物依存性運動誘発アナフイラキシー(FDEIA)と診断した。唐揚げ摂取後2時間は運動しないよう指導したところ,蕁麻疹は消失し皮疹は軽快した。その後,調理実習の際,両手の皮疹とアトピー性皮膚炎の悪化を生じていた。パッチテスト結果より遅延型ラテックスアレルギーと診断した。調理の際,ゴム手袋の使用を中止するよう指導し,両手の皮疹及びアトピー性皮膚炎は軽快した。
  • 佐多賀 英吏子, 西田 陽子, 松本 千穂
    2008 年 7 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    1歳,女児。初診の2ヶ月前より四肢体幹に紅色丘疹,鱗屑を伴う紅斑が多発。全身状態良好。経過中一部の紅斑の中央に黒色壊死を認め,軽快傾向を示しつつも1年以上にわたり,皮疹の新生および色素沈着や色素脱失を残しての治癒を繰り返した。3ヶ月,男児。初診の1ヶ月前より四肢体幹に紅色丘疹,鱗屑を伴う紅斑が多発。全身状態良好。皮疹の新生はあるが全体には1ヶ月半で軽快傾向あり。いずれも臨床所見,病理組織所見から苔癬状粃糠疹と診断。急性痘瘡状苔癬状粃糠疹と慢性苔癬状粃糠疹(従来の滴状類乾癬)の中間に位置する病態と考えられた。ともにステロイド外用剤は無効であり,経過観察のみ行ったところ,軽快傾向を認めた。
  • 寺田 麻衣子, 長谷井 麻希, 渡邊 晴二, 藤井 俊樹, 田邉 洋, 望月 隆
    2008 年 7 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    72歳,女性。2005年11月,肺腺癌にてゲフィチニブ(イレッサ®)250mg/日の内服を開始した。7ヵ月後,両下肢の紫斑と膿疱が多発し,当科に入院となった。病理組織学的に真皮浅層の血管,汗管周囲に炎症性の細胞浸潤と赤血球血管外漏出,核破砕像を認めた。それに加えて,エクリン汗管の表皮側末端と連続した角層下膿疱の底面に棘融解細胞を認めた。ゲフィチニブの投与を中止し,皮疹は消退した。退院後,同剤の投与再開により皮疹は再燃したが,吉草酸ベタメタゾン外用が奏功した。臨床的に紫斑・膿疱を呈し,病理組織上,汗管と連続した膿疱内に棘融解の見られたゲフィチニブの薬疹の報告例は少なく,考察を加え報告した。
  • 野口 史人, 小澤 健太郎, 池田 彩, 岡田 明子, 田所 丈嗣
    2008 年 7 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    57歳,女性。近医にて高血圧,高尿酸血症を指摘され2006年11月15日よりアラセプリル(商品名:セタプリル®),11月16日より,アロプリノール(商品名:サロベール®),ニフェジピン(商品名:セパミットR®),クエン酸カリウム・ナトリウム(商品名:ウラリットU®)を処方され内服を開始した。12月5日より38°C台の発熱,全身に疼痛を伴う紅斑が出現し,同時に口唇,口腔内にびらんが生じ拡大してきたため,12月8日に当院当科へ紹介受診となった。初診時には全身皮膚にflat atypical targetと粘膜疹を認めた。病理組織学的に表皮の壊死性変化を認め,Stevens-Johnson syndromeと診断した。プレドニゾロン1.0mg/kg/dayの投与を開始したところ軽快を認め,ステロイドを漸減中止した以後も再燃を認めなかった。原因薬剤の検索としてパッチテスト,DLSTを施行したところアラセプリルのみが陽性であった。文献的に検索し得た限りでは世界で初めてのアラセプリルによるStevens-Johnson syndromeと考えられた。
  • 市川 竜太郎, 伊藤 絵里子, 寺尾 浩
    2008 年 7 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    65歳,女性。1994年2月,真性多血症の診断。1996年,ハイドロキシウレア(HU)の内服による治療を開始した。初診の約1ヵ月前より左足関節外顆部の潰瘍に気づいた。自己にて創処置を行うも増悪したため当科を受診した。初診時,左足関節外顆部に35×13mmの有痛性の皮膚潰瘍を認めた。過去にも2度右足関節外顆部に皮膚潰瘍の既往があった。臨床所見,既往歴,経過からHUによる皮膚潰瘍と診断した。HUの内服を中止し保存的加療を行い約3ヵ月で皮膚潰瘍は上皮化した。
  • 野田 智子, 稲垣 千絵, 柴垣 亮, 池田 佳弘, 西藤 由美, 岸本 三郎
    2008 年 7 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    32歳,女性。初診の1年8ヵ月前の第2子妊娠時,近医にて疱疹状膿痂疹と診断された。今回,第3子妊娠約8ヵ月頃より体幹,四肢に紅斑,膿疱が出現。疱疹状膿痂疹の再発と診断し,活性型ビタミンD3軟膏及びステロイド外用剤を行い,出産後皮疹は軽快した。発熱等全身症状はなかった。
  • 村井 真由美, 原 弘之, 清水 秀直, 照井 正
    2008 年 7 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    74歳,女性。既往歴・家族歴はとくにない。初診の約半年前から外陰部に白色の局面が出現し,ステロイド外用で軽快しない。外陰部の陰核から両側小陰唇にかけて白色線状の角化病巣がみられ,病理組織で表皮内に基底層直上2-3層から有棘層上層までのHailey-Hailey病様の棘融解,異常角化とepidermolytic hyperkeratosisがみられた。CooperやChorzelskiらが報告した陰部に限局したacantholytic dermatosisにepidermolytic hyperkeratosisの変化を伴ったと考えた。エトレチナート内服及びステロイド外用で約1ヵ月後に皮疹は改善した。
  • 平尾 文香, 大磯 直毅, 川原 繁, 川田 暁
    2008 年 7 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    71歳,男性。約2週間前から体幹・四肢にそう痒を伴う紅斑が生じ,急速に拡大し,紅皮症状態で受診した。生検組織像より乾癬性紅皮症と診断し,ステロイド外用により軽快したが,narrow band ultraviolet B(NB-UVB)照射療法を併用した後,発熱と全身倦怠感を伴って全身に紅斑と膿疱が出現した。自験例ではNB-UVB照射療法が膿疱性乾癬の誘発因子と推測された。
  • 永野 弓枝, 中島 喜美子, 高橋 正人, 佐野 栄紀, 石井 文人, 橋本 隆
    2008 年 7 巻 2 号 p. 161-164
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    74歳,男性。口唇,口腔内のびらん,潰瘍に引き続き,全身に母指頭大までの水疱とびらんを伴なった紅斑が出現した。病理組織所見は基底細胞の液状変性,基底層近辺部のCivatte小体,および表皮下水疱を認めた。1M食塩水剥離皮膚切片を用いた蛍光抗体間接法は抗表皮基底膜部抗体が表皮側に検出された。免疫ブロット法でBP230,BP180,デスモグレイン3,デスモグレイン1,エンボプラキン,ペリプラキンは陰性であった。プレドニゾロン60mg/日の内服を開始したところ,水疱と紅斑は消退し,紫紅色斑が残った。以上の所見よりlichen planus pemphigoidesと診断し,鑑別が必要になる疾患について考察した。
  • 平田 央, 中西 健史, 石井 正光
    2008 年 7 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    73歳,女性。20年来の糖尿病歴がある。約3年前から右足足底外側部に胼胝をくり返し,角化結節が出現したため当科紹介受診となった。初診時,右足底外側部に巨大な黒色の角化結節を認め,糖尿病性腎症,糖尿病性網膜症,糖尿病性神経障害を合併していた。インスリン導入による血糖コントロールと2週間に1回の角質除去にて,初診3ヵ月後には皮疹は消退した。しかし胼胝や潰瘍を繰り返すため,足底板の作製と定期的な角質除去を行っている。臨床像および経過よりverrucous skin lesions on the feet in diabetic neuropathy(VSLDN)と考えた。
  • 辻 真紀, 高橋 祐史, 今中 愛子, 井上 千津子
    2008 年 7 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
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    76歳,女性。初診の3年前から右肩甲下部の皮下腫瘤に気付いていた。初診時,直径7cm大の弾性硬の皮下腫瘤を認めた。皮膚との癒着はなく,下床との可動性も認めなかった。MRIにて広背筋と胸郭の間に筋肉と同程度の信号を示す10×17×4cm大の腫瘍を認め,内部は索状に脂肪組織と同程度の高信号を呈していた。全摘目的で全身麻酔下に手術施行したが,腫瘍底面と肋骨との癒着が強く全摘困難のため,部分切除に変更した。病理組織像では線維性結合組織の中に脂肪組織の介在を認めた。またHE染色では好酸性の硝子様物質を多数認め,elastica van Gieson染色で黒褐色に濃染されたことより弾性線維腫と診断した。
  • 西村 由佳理, 室田 浩之, 金田 真理, 片山 一朗
    2008 年 7 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    66才,女性。1年前より両手背に浮腫性紅斑が出現し,その後顔面にも拡大,抗核抗体高値で関節痛や眼違和感をともなってきたため,SLEや皮膚筋炎を疑われ当科紹介受診した。顔面と手背の皮膚生検から類上皮肉芽腫の増生を認め,両側肺門リンパ節腫張,肺小結節影を認めたためサルコイドーシスと診断した。皮膚サルコイドの病型は瀰慢浸潤型(lupus pernio)であった。心サルコイドーシスと眼サルコイドーシスの確定診断には至らなかった。一方、抗核抗体が2560倍と高値で,抗SS-A抗体陽性,ガムテスト陽性,シルマーテスト陽性であったためシェーグレン症候群と診断した。本邦では比較的珍しい瀰慢浸潤型(lupus pernio)の臨床像を呈しシェーグレン症候群を合併したサルコイドーシスの1例を報告した。最近,膠原病とサルコイドーシスの合併の報告が散見され1~3),本症例でも引き続き経過観察していくが必要があると考えている。
  • 山本 維人, 澄川 靖之, 倉知 貴志郎
    2008 年 7 巻 2 号 p. 179-182
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    85歳,男性。前立腺がんの治療目的で,2000年5月より酢酸リュープロレリン1ヵ月徐放剤の皮下注射を受けていた。2002年11月から同3ヵ月徐放剤の皮下注射に変更したところ,皮下注射部位に一致して皮下結節が出現,徐々に拡大してくるため当科を受診。摘出したところ病理組織像は異物肉芽腫の像を呈しており,酢酸リュープロレリンによる異物肉芽腫と診断した。1ヵ月製剤では肉芽腫の形成を認めず3ヵ月製剤でそれが見られた理由については,薬剤の濃度の違いや基剤の違いが理由に挙げられているがいまだ明確な結論は出ていない。
  • 佐々木 絵里子, 尾藤 利憲
    2008 年 7 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    脂腺母斑は,頭頚部に出現することが多いが,今回、腕や体幹の広範囲に脂腺母斑を有する32歳の男性を経験した。生下時より左胸部から背部にかけて列序性,帯状,一部は敷石状に常色から淡褐色局面が存在している。幼少時に脂腺母斑と診断され,左肩周囲にレーザー治療を施された経験がある。数年前より,レーザー治療部位の再隆起,また局面上には黒褐色結節の発生を認めている。発生した二次性腫瘍は組織学的検査にてtrichoblastomaと診断した。脂腺母斑は基本的に切除するのが望ましいと考えられているが,本症例に関しては広範囲であるため単純切除は困難であり,治療方針の決定に苦慮した。今回,文献的な検討を加え,治療経過等について報告する。
  • 貞政 裕子, 池上 望, 康井 真帆, 矢口 均, 比留間 政太郎, 小原 宏之, 木村 鉄宣
    2008 年 7 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    35歳,男性。20歳頃より顔面,頚部などに丘疹が多発してきた。初診時の現症は顔面,頚部に常色ないし淡褐色調,径1-3mm程度の表面が平滑な充実性丘疹が多発していた。また,頚部にacrochordonを多数認めた。病理診断はfibrofolliculomaとtrichodiscomaであった。胸部CTで肺多発性嚢胞を認めた。Birt-Hogg-Dubé症候群(以下BHD症候群)と診断した。BHD症候群は常染色体優性遺伝でfibrofolliculoma,trichodiscoma,acrochordonを3徴とする。また,さまざまな内臓疾患を合併するため,定期的な検診が必要と考えられる。
  • 吉木 竜太郎, 緒方 真貴子, 椛島 健治, 戸倉 新樹
    2008 年 7 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    症例1,72歳女性。子宮体癌,結腸癌,尿管癌,基底細胞癌の既往歴がある。2007年初めより背部に結節性病変を自覚し,病理学的検索の結果,脂腺癌であった。症例2,63歳男性。既往歴として1996年より食道癌で加療中。2005年3月,鼻部に増大する紅色の腫瘤が出現。当初食道癌の皮膚転移を疑い,病理学的検査を行ったところ脂腺癌であった。いずれも内臓悪性腫瘍と脂腺系皮膚腫瘍の合併からMuir-Torre症候群と診断した。これら2例に加え,当科における過去の脂腺系皮膚腫瘍と内臓悪性腫瘍との関連を検討したところ,脂腺癌4例中2例が内臓悪性腫瘍を伴っており,Muir-Torre症候群であることが示唆された。
  • 西村 由佳理, 金田 眞理, 室田 浩之, 片山 一朗
    2008 年 7 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    70歳,男性。平成18年2月頃から両側耳前部周囲の表面の発赤を伴う皮下硬結が出現し再燃・自然消退を繰り返していた。耳前部周囲の皮下硬結部からの皮膚生検にて,真皮全層に非乾酪性類上皮細胞肉芽種を認めた。画像検査上両側耳下腺腫脹を認め唾液腺由来アミラーゼと可溶性IL-2受容体が高値であった。Aangiotensin converting enzyme(ACE)は正常範囲内,両側肺門リンパ節腫脹やブドウ膜炎は認めなかったが,両側耳下腺腫脹と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めたことより本症例をサルコイド病変を伴うミクリッツ病と考えた。ミクリッツ病に関する最近の知見と両側唾液腺腫脹を呈する疾患の鑑別について若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 加藤 典子, 爲政 大幾, 大貫 雅子, 松村 康洋, 岡本 祐之, 堀尾 武
    2008 年 7 巻 2 号 p. 205-208
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    皮膚子宮内膜症の2例を報告した。症例1:31歳,女性。妊娠,手術歴なし。初診の1週間前より左鼠径部に疼痛を伴う腫瘤を自覚した。産婦人科を受診し子宮,卵巣に異常なく,当科へ来院した。CTで同部皮下に腫瘤を認め,局所麻酔下に腫瘤を切除した。病理組織HE像にて皮膚子宮内膜症と診断した。症例2:48歳,女性。経膣分娩歴2回。手術歴なし。初診の約2年前より,臍部に月経時の疼痛を伴う腫瘤を自覚し徐々に増大したため,当科へ来院した。初診時,臍部に径3cmの茶褐色腫瘤を認めた。生検病理組織HE像にて,皮膚子宮内膜症と診断した。外科治療は希望されず,子宮腺筋症の合併がみられたため,以後は婦人科を定期受診している。
  • 小林 めぐみ, 早出 恵里, 高橋 栄里, 助川 のぞみ, 鐵田 ゆう子, 清 佳浩
    2008 年 7 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    我々は慢性砒素中毒が疑われた1例を報告する。患者は77歳,男性。58歳時に腹部の多発性Bowen病を切除。72歳時より体幹および下肢に再発を認め,75歳時には肺癌の発生をみた。初診時,肛囲には乳房外Paget病を合併しており,手掌,足底には角化性小結節が散在していた。明らかな砒素摂取歴はないが,原因として出生時~22歳まで広島県内で使用していた井戸水(飲料水)が砒素により汚染されていた可能性が疑われた。
  • 酒井 利恵, 伊東 詩織, 政次 朝子, 太田 深雪, 新宅 雅幸, 露木 茂, 堀口 裕治
    2008 年 7 巻 2 号 p. 213-216
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    48歳,女性。半年前から右乳房下に赤褐色の結節が生じた。病理組織学的には真皮から皮下組織に異型性のある細胞が腺様の構造で増殖していた。転移癌と考えたが,全身精査で原発となる腫瘍は見いだされず,腫瘍から1cm離して切除した。腫瘍の下床に異型性のない乳線組織を認めたため,副乳から生じた乳癌と診断した。免疫組織化学的にエストロゲン受容体,プロゲステロン受容体,HER2(ヒトEGFR関連物質2)が陽性であった。拡大手術時のセンチネル生検が陽性であり,リンパ節郭清を行った。放射線療法後,化学療法中である。現在,局所再発はない。ミルクライン上の皮下腫瘍をみた場合は副乳から生じた乳癌も考える必要がある。
  • 池田 香織, 小田 香織, 澤本 学, 熊本 貴之, 磯貝 理恵子, 山田 秀和
    2008 年 7 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    69歳,男性。61歳の時に右腎細胞癌で右腎摘出術をうけた。7年後の経過観察中のCTで前縦隔部に腫瘤を指摘され,腫瘍摘出術をうけた。摘出組織所見から胸腺癌と診断された。診断の1ヵ月後には肺に多発性の陰影が見つかり,肺転移と考えられた。同時期に右頚部に腫瘤を認めたため当科を紹介された。腫瘤は直径15mm,弾性硬,周囲は堤防状で中心部に潰瘍を呈していた。組織所見では大型の核小体を持ち,明るい核を有する異型細胞が充実性胞巣を形成した扁平上皮癌であった。原発巣と非常に類似していたため胸腺原発扁平上皮癌の皮膚転移と診断した。
  • 澤本 学, 池田 香織, 小田 香織, 熊本 貴之, 磯貝 理恵子, 中山 剛之, 山田 秀和
    2008 年 7 巻 2 号 p. 222-225
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    50歳,女性。約10年前から,腹部に皮下腫瘍が出現。徐々に大きくなってきたため,当院受診。受診時,腹部に直径7cmの皮下腫瘍を触知し,下床との可動性は無く,弾性硬。CT上,臍部やや右寄りに長径7cmのhigh densityな腫瘍性病変を認め,腹直筋部は肥厚していた。生検を施行し,顆粒細胞腫と診断した。腫瘍摘出術を施行した。術中,腹膜への浸潤を認めたが,肉眼上,腹腔内臓器との癒着は無かったため,腹膜まででの切除とした。病理組織上,腹膜の全層が腫瘍細胞で置き換わっている部位も認めた。術後10ヵ月で再発を認めた。Fanburg-Smithらの組織学的悪性の診断基準を満たさないため組織学的異型であるが,腹膜への浸潤を認めることや,術後に再発していることから臨床的悪性と診断した。
  • 加藤 典子, 爲政 大幾, 山本 典雅, 大貫 雅子, 岡本 祐之, 堀尾 武
    2008 年 7 巻 2 号 p. 226-229
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    52歳,女性。左側頭部の悪性黒色腫の広範囲切除術と遊離植皮術を行った(ClarkレベルV,Breslow’s tumor thickness 4mm)。左頚部リンパ節郭清で,1個に微小転移を認めた。術後にDAV-Feron療法を施行後,IFN-βの創部への局注を行っていた。術後4年3ヵ月後に皮膚転移を生じ,5年6ヵ月後に肉眼的血尿にて泌尿器科を受診した。膀胱鏡,CTにて膀胱に腫瘤を認め,生検にて膀胱転移と診断された。免疫療法,Dac-Tam療法を試みたが無効で,骨,脳転移が出現し,初診より6年5ヵ月後に永眠した。悪性黒色腫の膀胱転移は比較的稀であるが血尿や下腹部痛のために患者のQOLを低下させる要因となり得る。これらの症状を認めた際には,転移を念頭に置き診察にあたる必要があると考える。
  • 前川 直輝, 國行 秀一, 平田 央, 石井 正光
    2008 年 7 巻 2 号 p. 230-233
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    35歳,男性。平成10年3月に腰部の黒色腫瘍を切除され悪性黒色腫と診断された。平成12年10月に肝転移と診断され,化学療法目的で紹介,入院となった。入院時の白血球数は35,400/μlであった。血中顆粒球コロニー刺激因子(以下G-CSFと略す)は58pg/mlと上昇していた。骨髄生検では骨髄内に異型性のある胞体の明るい細胞の浸潤を認め悪性黒色腫の転移と診断した。腫瘍細胞は抗G-CSFポリクロナル抗体で陽性であった。G-CSFを産生した進行期悪性黒色腫と診断した。白血球数は最大で113,000/μlとなり,血中G-CSFは最大710pg/mlまで上昇した。
  • 山本 維人, 澄川 靖之, 倉知 貴志郎
    2008 年 7 巻 2 号 p. 234-237
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    71歳,男性。初診の数ヵ月前からある鼻尖部の径2mm大の小黒色斑を主訴に当科を受診した。全切除バイオプシーの結果,悪性黒色腫と判明し拡大切除およびセンチネルリンパ節バイオプシーを行った。センチネルリンパ節には転移は見られなかった。この症例においては,術前に原発巣周囲への造影剤(イオパミロン370)の局注と,その後の3D-CT撮影によりセンチネルリンパ節のおおよその位置を同定しえたのでその方法についても合わせて報告する。
  • 鈴木 理永, 西澤 千尋, 阿部 澄乃, 山崎 滋孝, 池田 志斈
    2008 年 7 巻 2 号 p. 238-242
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    48歳,男性。初診1ヵ月前から下口唇左内側に黒褐色の色素斑が出現した。病理組織学的所見では海綿状態を伴う粘膜上皮の肥厚を認め,上皮全層にわたりメラニンを産生するメラノサイトの増殖を認めた。免疫組織学的所見では上皮全層に散在する細胞はHMB-45染色陽性かつMIB-1染色陰性であり,良性のメラノサイトの増殖病変と考えられた。Oral Melanoacanthomaと診断した。1978年以降,我々が調べた限り海外では現在まで52例の報告があるが,本邦では報告されていない。初診後9ヵ月経過観察したところで一部自然消退傾向を認めている。
  • 高松 紘子, 猿喰 浩子, 池上 隆太
    2008 年 7 巻 2 号 p. 243-248
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    50歳,女性。2006年9月25日から26日に鳥羽・伊勢へ旅行した。10月3日より頭痛,5日より弛張熱あり,6日より皮疹を生じた。顔面および手掌足底を除く全身に米粒大までの辺縁不整の紅色丘疹あり,右上腕の腋窩付近に黒色痂皮が付着した紅色硬結を認めた。体温38.0°C,リンパ節腫脹なし。病理組織学的に刺し口では潰瘍形成と真皮の楔状の変性あり,ばら疹では真皮血管周囲性の軽度小円形細胞浸潤を認めた。塩酸ミノサイクリン200mg/日点滴投与し即日解熱。皮疹は3日間で消失した。日本紅斑熱の血清特異抗体価の上昇を認めた。また,生検組織を対象とした酵素抗体法染色(免疫染色)を行い陽性所見を得た。日本紅斑熱は近年発生数が増加傾向にあるが発生地に偏りがあり,近畿地方では平成17年までの過去5年間で感染患者が発生しているのは兵庫県,和歌山県,三重県のみであった。近畿での発生状況をあわせて報告する。
  • 貞政 裕子, 池上 望, 康井 真帆, 矢口 均, 比留間 政太郎, 鶴野 寿一, 篠永 哲
    2008 年 7 巻 2 号 p. 249-252
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    69歳,女性。平成19年2月に中米のコスタリカ共和国へ旅行し,帰国後より左側腹部に小結節が出現し徐々に大きくなった。4月3日近医で粉瘤の診断のもと切開術を施行され,翌日同部からハエ幼虫が圧出された。幼虫はヒトヒフバエ(Dermatobia hominis)と同定された。中南米からの帰国者に粉瘤様の紅色結節をみた場合は本症も考慮する必要があると思われる。
  • 峯垣 裕介, 辻岡 馨, 大利 昌久
    2008 年 7 巻 2 号 p. 253-256
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    48歳,女性。和歌山県有田川町在住。自宅で横臥していたとき左上腕内側にチクンとした痛みを覚え,すぐ近くに褐色のクモを見つけた。約4時間後その部分が痛んで腫れだしたため近医で加療されたが改善せず,6日目に当科受診した。左上腕内側は圧痛が著明で,紫紅色の板状硬結として触れ,さらに左上腕全体が紅色に腫脹し,紅斑は前腕にも及んでいた。徐々に周囲の紅斑,浮腫性腫脹は軽減したが,硬結部は20日目には7×4cm大の限局性黒色壊死病変となった。和歌山県はイトグモ(Loxosceles rufescens)の生息地であり,本症例の経過が典型的であること,他に本症状を説明しうる原因がないことより,イトグモ刺咬症と診断した。
研究
  • 石田 浩彦, 長幡 由起, 引地 規, 鈴木 加余子
    2008 年 7 巻 2 号 p. 257-262
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    粉瘤の粥状の内容物は処置時に特有の悪臭を発する。そこで内容物の悪臭成分を調べ,市販消臭剤3種(A~C)を用いた消臭の可能性について検討した。その結果,匂いの特徴成分は酪酸,イソ吉草酸等の低級脂肪酸,メルカプタン,インドールであった。また各悪臭成分に対する化学消臭効果は,有効分に緑茶エキス,両性界面活性剤を含む消臭剤Bが低級脂肪酸に関して優れた効果を示した一方,メルカプタンに関しては効果が低かった。モデル粉瘤臭に対する感覚消臭効果は消臭剤Bが最も高い効果を示したことから,1)低級脂肪酸に対する化学消臭効果,2)メルカプタンに対する感覚消臭効果,に基づき効果が発揮されていると考えられた。
使用試験
  • 谷岡 未樹, 相場 節也, 菊地 克子, 石川 治, 永井 弥生, 照井 正, 清水 秀直, 伊藤 正俊, 関東 裕美, 松永 佳世子, 矢 ...
    2008 年 7 巻 2 号 p. 263-272
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    安全性を調べる目的で,アトピー性皮膚炎または接触皮膚炎の既往のある女性97例に対し,敏感肌用化粧品(dプログラムバイタライジングローションI®,dプログラムバイタライジングローションII®,dプログラムバイタライジングエマルジョン®,dプログラムバイタライジングクリーム®)の4週間の使用試験を行った。副作用の発現率はそれぞれ,9.6%,6.7%,8.2%,6.5%であった。副作用としてそう痒感,刺激感,ざ瘡,紅斑を認めたが重篤なものはなかった。4週間使用継続できた症例の割合は,すべての試験試料において95%以上であった。また,乾燥および落屑が「改善」もしくは「やや改善」と回答した女性の割合は86.6%であった。Visual Analog Scaleによる調査で,被験者自身の皮膚への満足度は有意に上昇していた。以上より本試験試料は,アトピー性皮膚炎または接触皮膚炎の既往のある女性にとって有用であると考えられた。
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