皮膚の科学
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16 巻, 4 号
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
  • 村田 洋三
    2017 年 16 巻 4 号 p. 241-247
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル 認証あり
    乳房外 Paget 病は腫瘍細胞の起源や病因が不明なだけでなく,手術治療においても謎の多い疾患である。それでも,いくつかの論点においては,その議論のコアとなる論文がある。それらは内容を疑うこともなく,教科書やガイドラインで引用され議論の根拠とされ続けている。しかし,批判的な目で読み直すと,実はそれらの論文は到底受け入れられないものであることが分かる。
    第1は Chanda による論文で,「乳房外 Paget 病では内臓悪性腫瘍の合併率が高い」としている。しかし,その集計の元データである36本の引用論文をすべてチェックすると,その内の16本が1例報告であり,合併率の検討には不適切なものであることが分かった。第2は Gunn による論文で,「手術標本を準連続切片で検討した結果,乳房外 Paget 病では肉眼的境界を遥かに越えて,病理組織学的に腫瘍細胞が存在することを4例中4例で証明した」という内容である。しかし,研究方法を精読すると,「肉眼的境界としているものが,単にコピー紙上で推測したものに過ぎず,実際の手術医の把握とは大きく異なっている」ことが判明した。
    教科書,コアジャーナルの内容を無批判に受け入れるのではなく,自らの経験と照合して相違点を吟味することの必要性を,これらの論文は教えてくれる。(皮膚の科学,16: 241-247, 2017)
症例
  • 西田 麻里奈, 山中 美佳, 深井 和吉, 鶴田 大輔
    2017 年 16 巻 4 号 p. 248-253
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル 認証あり
    20歳代,男性。初診10年前に眉間部にヒアルロン酸注射を行った。2ヶ月前より眉間から眉弓の腫脹を自覚し,異物肉芽腫が疑われ当科受診となった。初診時,眉間から眉弓にびまん性の腫脹があり,その腫脹は眼の周囲や頬部まで拡がっていた。眉間部から皮膚生検を行ったが,確定診断には至らなかった。3週間後の再診時に,両頬部や鼻尖部,鎖骨部に暗紫色局面がみられ,病歴から同性愛者であることが判明し,HIV 抗原抗体検査は陽性であった。鎖骨部の皮膚生検では,Kaposi 肉腫(KS)の診断であった。KS と Koebner 現象の関連性は過去に報告されており,自験例では眉間部へのヒアルロン酸注射が KS の発症に関連した可能性が考えられる。本邦において AIDS 患者は年々増加傾向であり,早期発見において皮膚科医の果たす役割は大きい。皮疹に先行して浮腫や腫脹がみられる KS があること,そして HIV 陽性の場合は外的刺激によって KS 発症のリスクになりうることに留意しておく必要がある。(皮膚の科学,16: 248-253, 2017)
  • 岡村 玲子, 峠岡 理沙, 北村 佳美, 大狩 慶治, 若林 祐輔, 服部 淳子, 益田 浩司, 加藤 則人, 立石 千晴, 鶴田 大輔
    2017 年 16 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル 認証あり
    60歳代,女性。初診1ヶ月前より両手足の爪甲下に水疱が出現し,次いで口腔内にもびらんが出現した。手背の紅斑および水疱の病理組織像では表皮真皮境界部に水疱を認め,真皮浅層にはリンパ球を主体とする炎症細胞の浸潤を認めた。蛍光抗体直接法では表皮基底膜部に IgG と IgA の線状沈着が認められ,正常ヒト皮膚切片を基質とした蛍光抗体間接法は IgG,IgA ともに陰性であった。正常ヒト表皮抽出液を用いた免疫ブロット法で 180kDa に IgG が陽性であった。そして BP180 のC末端部位リコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法で患者 IgG はこの蛋白に反応したが,BP180 の NC16a 部位リコンビナント蛋白,BP230,ラミニン332には反応しなかった。以上の所見より抗 BP180 型粘膜類天疱瘡と診断した。ニコチン酸アミド,ドキシサイクリンおよびステロイドの全身投与で症状は改善した。粘膜類天疱瘡は標的抗原や重症度に応じて多彩な臨床症状を呈す。皮疹が口腔内などに限局している症例や逆に皮膚症状が広範囲に及ぶ症例では,他の疾患と考えられて治療されていることも多いと考えられる。見過ごさないように疑わしい場合には同疾患を鑑別に挙げることが重要で,また診断技術の向上と普及も待たれると考えた。(皮膚の科学,16: 254-259, 2017)
  • 高藤 円香, 高田 洋子, 壽 順久, 種村 篤, 惠谷 悠紀, 田中 啓之, 片山 一朗
    2017 年 16 巻 4 号 p. 260-265
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル 認証あり
    40歳代,男性。左手手背の水疱を主訴に当科を受診した。既往歴として,パーキンソン病のため当院外来通院中であったが,夜間にオフ状態となり,左手から前腕にかけて紫斑と緊満性水疱が出現した。採血上 CK,LDH 値が高値を示し,前腕筋群の区画内圧の上昇がみられ,急性コンパートメント症候群と診断し,入院当日に緊急減張切開術を行った。受診後手術に至る間,緊満性水疱は急速に増加,拡大した。このような水疱は,抗精神病薬を内服した後の昏睡状態などにおいての出現報告が多いため,coma blister と呼ばれる。Coma blister は水疱症の他,褥瘡と鑑別が必要である。コンパートメント症候群の症状として水疱の出現は重度のサインとされており,迅速な診断および適切な加療が必要である。(皮膚の科学,16: 260-265, 2017)
使用試験
  • 越智 沙織, 寺前 彩子, 進藤 翔子, 田原 真由子, 高橋 彩, 深井 和吉, 鶴田 大輔, 片山 一朗
    2017 年 16 巻 4 号 p. 266-273
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/06
    ジャーナル 認証あり
    乾燥性皮膚疾患に対して,肌着が皮膚病変・自覚症状・生活の質に与える影響を主観・客観的に解析した。乾燥性皮膚疾患を有する20歳以上の患者33名を対象とし,被験試料はグンゼ株式会社が販売している完全無縫製の肌着(メディキュア®)を使用し,開始後14日後および28日後に評価した。紅斑・乾燥・掻破痕は14日および28日後共に有意な改善が認められた。結節・苔癬化は28日後に有意な改善が認められた。経表皮水分蒸散量は28日後に有意に減少した。そう痒による VAS score は14日および28日後に,疼痛による VAS score は28日後に有意に減少した。DLQI score は14日後・28日後に有意に減少した。研究終了まで明らかな有害事象は認められなかった。本研究品の肌着を着用後,各皮膚病変はいずれも有意に改善し,また,経表皮水分蒸散量・VAS・DLQI score も有意に低下した。以上の結果より,本研究品の肌着が,皮膚との摩擦を軽減することで,バリア機能を改善させ,その結果,乾燥によるそう痒や疼痛・皮膚病変も軽快し,患者の日常生活の満足度が高くなったと考える。よって,乾燥を有する皮膚には,日常のスキンケアに加え,縫い目や肌着の素材などを考慮し,刺激の少ない肌着を選ぶことが重要であることが示唆された。(皮膚の科学,16: 266-273, 2017)
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