今回我々は,ケモカインによるリンパ球の遊走に対してロキシスロマイシン (RXM) が Th1,Th2,抑制性T細胞それぞれにどのような影響を与えるのかを,各細胞を 10mM RXM 添加したメジウムで18時間培養後,FACSCalibur
TM や細胞走化性測定装置 EZ-TAXIScan
TM を用いてケモカイン受容体発現,T細胞の形態変化や方向性など走化性を観察した。健常人由来 Th1 細胞上の CXCR3 や Th2 細胞,抑制性T細胞上の CCR4 発現には影響を与えなかった。RXM 無添加 RPMI で培養した Th1 細胞,Th2 細胞,抑制性T細胞はそれぞれに IP-10,TARC を添加した側に一定に遊走するが,10mM RXM 添加 RPMI で18時間培養した Th 細胞はその方向性が乱れ遊走性が阻害された。一方,抑制性T細胞の走化性には影響を与えなかった。クラリスロマイシン (CAM) やエリスロマイシン (EM) にはそのような特徴は観察されなかった。RXM はケモカイン受容体の発現には影響を与えないが,Th1,Th2 細胞のケモカインによる走化性を抑制することによって Th1 優位,Th2 優位それぞれの疾患に対して治療効果を示すものと考えられた。(皮膚の科学,増19: 16-21, 2012)
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