皮膚の科学
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17 巻, 6 号
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
  • 村田 洋三
    2018 年 17 巻 6 号 p. 299-312
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    乳房外 Paget 病において臨床・病理相関を議論することは,通常ない。しかし,これを考えることによって,乳房外 Paget 病の臨床像をより深く理解することになるだろう。紅斑では,「臨床的紅斑の境界」と「組織学的炎症像の境界」とが一致する。そして後者は,「組織学的腫瘍境界」とも一致する。その結果,「臨床的紅斑の境界」と「組織学的腫瘍境界」とが一致する。同じ三段論法が,乳房外 Paget 病の白斑についても成立する。 この単純な事実が,現在見えなくなっている。その結果,mapping 生検という苦行を患者に強いる施設が本邦で増加している。紅斑と白斑との重層的関係,白斑部の melanocyte の挙動,色素沈着部の melanocyte Paget 細胞との特異な関係について述べる。また,孤立性に存在するとされるPaget 細胞は,実は細胞突起で繋がりあっている可能性を示した。 (皮膚の科学,17 : 299-312, 2018)

症例
  • 小嶌 綾子 , 辰巳 和奈 , 夏秋 優 , 大日 輝記 , 椛島 健治
    2018 年 17 巻 6 号 p. 313-316
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    10歳代後半,男性。約 1 ヶ月間,中南米ベリーズ国のプレイセンシアへ渡航し,森林や海で蚊などによく刺された。帰国 4 日前より左側胸部に痒みを伴う皮疹を認め,その後も腫脹が持続した。 2 週間後の数日間,皮疹部に激痛があり,皮疹中央部に瘻孔が出現し,浸出液を認めた。皮疹の出現から約 5 週間後,浸出液の増加があり周囲を圧迫したところ瘻孔から虫が排出され,翌日当科を受診した。持参した虫体をヒトヒフバエと同定し,自験例を皮膚蠅症と診断した。幼虫は形態や大きさから 2 齢幼虫の可能性が高いものと推定した。ヒトヒフバエは中南米に限局して棲息する昆虫で,哺乳動物の皮膚に寄生して成長し一定期間を経て自然に排出され創は治癒するが,寄生している時期は痛みを伴うため一般的な治療法として,圧出,外科的な摘出,または現地でよく行われることとして呼吸のための孔を塞ぎ虫を誘い出す方法などがある。今後,海外旅行の機会の増加や渡航先の多様化はさらに加速すると考えられる。難治性の様結節をみた際には本症の可能性も念頭において,海外渡航歴についての問診を行うことも重要と考える。 (皮膚の科学,17 : 313-316, 2018)

  • 山本 容子 , 大原 裕士郎 , 西崎 絵里奈, 細本 宜志 , 吉岡 希 , 磯貝 理恵子, 湯川 真生 , 綿谷 正弘 , 山田 秀和
    2018 年 17 巻 6 号 p. 317-323
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    肉芽腫性乳腺炎に伴う結節性紅斑と診断した 2 症例を経験したので報告する。症例 1 30歳代,女性。左乳房に疼痛を伴う皮下硬結が出現し,その 4 日後から両下腿,両肘伸側に圧痛を伴う紅斑が出現し,当科紹介となった。右下腿紅斑からの皮膚病理組織は,真皮血管周囲にリンパ球・好中球の浸潤があり,リンパ球浸潤が脂肪隔壁から小葉内に及ぶ septal panniculitis であった。左乳房皮下硬結部分からの病理組織では類上皮細胞が主体に浸潤した肉芽腫があったために臨床経過と併せて,肉芽腫性乳腺炎に伴う結節性紅斑と診断した。症例 2 は,40歳代,女性。当科初診の約 2 週間前から左乳房に有痛性の紅斑,皮下硬結が出現し,当科初診前日に右足内果付近に疼痛を伴う紅斑が出現した。 肉芽腫性乳腺炎の約20%に結節性紅斑を合併すると報告されている。結節性紅斑の一因として,肉芽腫性乳腺炎も考慮する必要がある。 (皮膚の科学,17 : 317-323, 2018)

  • 藤森 なぎさ , 小林 佑佳, 加賀野井 朱里, 小澤 健太郎
    2018 年 17 巻 6 号 p. 324-327
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    80歳代,男性。 2 年前より右こめかみに茶褐色斑を自覚していた。徐々に増大し一部が隆起したため,気になって掻破を繰り返し,出血を伴ったため受診した。右こめかみに 17×10 mm の痂皮を伴う黒色腫瘤を認めた。病理組織学的に病変辺縁部では脂漏性角化症,その他の部分ではボーエン病の所見を呈していた。以上から,自験例を脂漏性角化症とボーエン病の合併と診断した。一般に脂漏性角化症は良性腫瘍であり,必ずしも治療の必要はないが,稀ながら皮膚悪性腫瘍を合併することが報告されており,痂疲やびらんを伴った場合には,皮膚悪性腫瘍との合併も念頭に置き診療に当たる必要がある。 (皮膚の科学,17 : 324-327, 2018)

  • 堀口 亜有未 , 山本 喜啓 , 桜井 健晴 , 宮地 良樹 , 藤井 弘子
    2018 年 17 巻 6 号 p. 328-332
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    70歳代,女性。日常生活動作は自立していた。初診の約 1 年前から尿失禁があり,尿パッド代わりに生理用ナプキンを使用していた。陰部の皮膚炎を認め近医にて外用薬で加療されていたが改善せず,皮膚潰瘍に至ったため当科を紹介された。軟膏やパッドによる接触皮膚炎を疑い行ったパッチテストは陰性だった。びらん・潰瘍の範囲と失禁による汚染範囲が一致しており,失禁関連皮膚炎と診断した。生理用ナプキンを尿パッドに変更し,膀胱留置カテーテルと骨盤底筋体操,酸化亜鉛軟膏による撥水と尿パッドを頻回に交換することでびらん・潰瘍は改善した。失禁関連皮膚炎は,尿や便の失禁とおむつや尿パッドによる湿潤環境・摩擦が複合的に関与して生じる。患者は生理用ナプキンを使用していたため溢れた尿が皮膚表面に長時間接触し,皮膚の浸軟が過度に生じ潰瘍に至った可能性を考えた。生理用ナプキンと尿パッドでは吸水量に差があり注意が必要である。日常生活動作が自立していても失禁を認める患者では,失禁関連皮膚炎に留意する必要がある。 (皮膚の科学,17 : 328-332, 2018)

  • 山下 千佳紗 , 田中 文 , 白井 洋彦 , 園延 尚子
    2018 年 17 巻 6 号 p. 333-336
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    ラムシルマブはヒト型抗血管内皮増殖因子受容体-2VEGFR-2)モノクローナル抗体で VEGF による腫瘍内血管新生を抑制する。ラムシルマブの主な副作用として高血圧,下痢などの消化器症状,静脈塞栓症が見られるが,我々は皮膚に多発性の血管腫を生じたまれな症例を経験したので報告する。症例は60歳代,女性。病期Ⅳの肺腺癌に対し,セカンドラインとしてドセタキセルとラムシルマブの併用療法を開始した後に全身に血管腫様の紅色丘疹,小結節を生じた。血管腫様病変は徐々に増加,増大し一部で易出血性となった。病理組織学的には真皮内に毛細血管の増生,拡張を認めcapillary hemangioma の像を示した。臨床的に化膿性肉芽腫様の経過を示したため,小結節はすべて切除した。ラムシルマブ投与中止後は血管腫様病変の増大や新生はみられなかった。一般的に化膿性肉芽腫は外傷やウイルス感染の他に,薬剤性に生じるとされる。過去の報告ではラムシルマブ投与後の血管腫形成に遺伝子変異の関与が示唆されており,その発症機序には今後さらなる検討が必要である。 (皮膚の科学,17 : 333-336, 2018)

  • 原 真理子 , 加藤 陽一 , 大橋 理加 , 辻岡 馨 , 山崎 文夫
    2018 年 17 巻 6 号 p. 337-342
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    70歳代,男性。関節リウマチに対して 1 年半前よりメトトレキサート(MTX)で治療されていた。 4 ヶ月前に顔面に紅色丘疹が多発し,細菌性毛包炎として抗菌薬を投与されたが,無効だった。 2 ヶ月前から伝染性軟属腫としてヨクイニンの内服や物理的摘除,凍結療法による加療を受けたが効果が上がらず,10日前には MTX の投与を中止された。初診時,顔面に瘙痒を伴う100個以上の半米粒大までの紅色ないし常色の丘疹が集簇性ないし散在性に拡がり,膿疱,痂皮を伴う皮疹もあった。頸部,上肢にも紅色丘疹が散見された。HIV 抗原および抗体,HTLV-I/II 抗体は陰性だった。病理組織学的には,真皮内に角化細胞の結節状の増殖病変が存在し,細胞質内に楕円形の好酸性封入体を含む大型角化細胞が多数認められ,周囲に著明な炎症細胞浸潤を伴っていた。イミキモド 1 1 回週 3 日の外用を 4 週間継続したところ皮疹は消褪傾向を示し,その 4 週間後にはほぼ消失した。その後再発していない。MTX による免疫抑制を背景に発症した成人例であるが,炎症性伝染性軟属腫の皮疹が優位を占め,髭剃りによりウイルスが播種されたため尋常性毛瘡を思わせる特異な臨床像を呈したと推測した。MTX 投与中止の効果が徐々に現れてきた,あるいは自然消退が起こる時期に差し掛かっていた可能性はあるが,イミキモドの外用は有用だったと考えた。 (皮膚の科学,17 : 337-342, 2018)

  • 松田 智子 , 神戸 直智 , 中谷 佳保里 , 合田 遥香, 野村 祐輝 , 山﨑 文和 , 堀内 孝彦 , 岡本 祐之
    2018 年 17 巻 6 号 p. 343-346
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    30歳代,女性。 8 歳頃から四肢に浮腫が生じ, 3 4 日で自然軽快するエピソードを繰り返していた。補体 C4 の低下と C1 インヒビター(C1-INH)活性の低下を認め,遺伝性血管性浮腫の診断で経過をみられていたが,本人が C1-INH 補充療法をためらい,腹痛発作時にはステロイド投与で対応されていた。出産に伴う転居を機に当院に紹介となった。産後 2 週間目に嘔気と嘔吐を伴う激しい腹痛発作を認め,当院を緊急受診した。腹部 CT では腹水貯留と著明な腸管浮腫がみられた。症状が強かったため,本人の同意を得て C1-INH 製剤を投与したところ,症状は30分程度で劇的に改善した。 孤発例であったため遺伝子解析を行ったところ,C1-INH 遺伝子の変異(M470K)を確認した。遺伝性血管性浮腫は,急性腹症として医療機関を受診するケースも多く,発作時の緊急対応が迅速に行えるよう,施設内での徹底した情報共有が重要である。 (皮膚の科学,17 : 343-346, 2018)

使用試験
  • 横井 彩, 眞鍋 求, 能登 舞, 蓮沼 直子 , 野澤 一美 , 川口 尚子, 情野 治良 , 奥田 誠 , 吉田 康弘
    2018 年 17 巻 6 号 p. 347-353
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル 認証あり

    乾皮症に対して,保湿剤によるスキンケアが有用であることは広く周知されている。そこで今回,我々は同一分子内に両荷電を有する両親媒性キトサン誘導体である部分ミリストイル化カルボシキシメチルキトサン(以下 PMCMC)を配合した O/W 型乳液を開発し,乾皮症を有する被験者19名に対する保湿効果を検討した。 4 週間の使用試験の結果,皮膚所見(乾燥・落屑)・角層水分量・経皮水分蒸散量・痒みのいずれの項目も,試験開始時に比べ有意な改善が認められ,対照として用いたW/O 型乳化製剤のヘパリン類似物質製剤(医薬品)と同等であった。また,興味深いことに,被験者による使用感評価は対照よりも高く評価された。これらの所見は,PMCMC 配合乳液が医薬品と同等の保湿効果と高い使用感特性を有することを示唆するものである。よって,本製品はアドヒアランスやスキンケアの継続性を高め,また QOL の向上に寄与することが期待される。 (皮膚の科学,17 : 347-353, 2018)

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