62歳,男性。肛門部~陰茎に融合する黒褐色局面をみとめ Bowen 病の診断のもと,2006年(57歳時)以降前医にて計5回の外科的切除が繰り返されたが,組織上毎回断端陽性であった。2010年11月当科紹介受診時,肛門全周性の色素沈着,色素脱失を混じた淡紅色局面および,陰嚢から右陰股部の色素沈着,色素脱失を混じた多発性黒褐色丘疹を認めた。臨床像および組織所見より Bowen 病と診断し,肛門周囲皮膚および肛門粘膜の拡大切除に加え,多発病変を切除した。この腫瘍検体からの抽出 DNA を用い,まず HPV 遺伝子の multiplex PCR (polymerase chain reaction) を施行し,HPV16 遺伝子の増幅を確認した。さらに,HPV ウイルスの integration の有無を APOT (amplification of papillomavirus oncogene transcript) 法にて検討したところ,メッセンジャー RNA の integration が確認されず,最終的に episomal form の HPV16 感染を認めた Bowen 病と診断した。腫瘍内でのウイルス DNA の宿主ゲノムへの取り込みは確認できなかったものの,本症の発症に HPV 感染が関与した可能性が示唆された。(皮膚の科学,13: 263-268, 2014)
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