皮膚の科学
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6 巻, 5 号
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総説
  • 長谷川 稔
    2007 年 6 巻 5 号 p. 444-451
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
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    CD4陽性のエフェクターT細胞は,従来よりTヘルパー1型(Th1)とTヘルパー2型(Th2)に分類されてきた。近年,これらとは独立したinterleukin(IL)-17産生性のT細胞サブセットが発見され,Th17と呼ばれるようになった。ナイーブT細胞は,IL-6とtransforming growth factor-βの存在下でTh17サブセットに分化し,IL-23は分化したTh17 の増殖・維持に働く。Th17細胞は,IL-17A,IL-17F, IL-22などのサイトカインを産生することにより,皮膚を含めた多様な臓器の炎症に関与していることが示されている。乾癬における表皮肥厚のメカニズムは明らかでないが,IL-23がTh17を増殖させ,これに由来するIL-22が角化細胞のsignal transduction and activators of transcription(STAT) 3を活性化させることにより生じる可能性が指摘されている。Th17と関連したサイトカインは,乾癬などの皮膚の炎症性疾患の治療のターゲットとなる可能性が期待される。
研究
  • 生駒 裕妃子, 細木 美和, 福岡 美友紀, 宮地 良樹, 生駒 晃彦
    2007 年 6 巻 5 号 p. 452-457
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    レーザードップラー式血流画像化装置を用いて、 健常被験者10名の皮膚におけるヒスタミン・イオントフォレーシスで生じる紅斑の面積を測定した。膨疹面積とかゆみ強度は従来通りそれぞれ、 定規を用いた目視による方法、 被験者自身の評価法で計測した。また、 ヒスタミンH1受容体拮抗薬である塩酸オロパタジン5mg錠を1回内服もしくは12時間間隔で2回内服させ、 初回内服24時間後におけるヒスタミン誘発皮膚反応に対する抑制効果をプラセボと比較して検討した。その結果、 塩酸オロパタジンの1回内服群、 2回内服群ともにプラセボと比較して紅斑面積と膨疹面積、かゆみ強度のいずれも有意に抑制された。レーザードップラー式血流画像化装置は、 不整形で不鮮明な辺縁のために従来の目視による評価が難しかった紅斑の測定を正確にでき、抗ヒスタミン薬の効果判定にも有用であることが示された。
症例
  • 飯田 秀之, 岡崎 愛子, 前田 真紀, 横井 祥子, 浅田 秀夫, 宮川 幸子
    2007 年 6 巻 5 号 p. 458-464
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    38歳,女性。15歳頃に近医で光線過敏症を指摘された。35歳頃からレイノー症状,白血球減少,血小板減少,抗核抗体高値,関節痛を認め,当院内科で全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された。口腔乾燥症状,ガムテスト陽性,唾液腺造影の異常もあり二次性シェーグレン症候群も伴っていた。同時期に左側頭部に鱗屑を付着する紅斑が持続していた。SLEの治療として内服していたステロイドを漸減されたところ,皮疹は四肢,体幹にも出現してきた。病理組織にて尋常性乾癬と診断した。現在シクロスポリンA 150~200mg/dayの内服にて皮疹のコントロールは良好である。
  • 黄原 久美子, 森原 潔
    2007 年 6 巻 5 号 p. 465-467
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    49歳,女性。約5年前より頭部に脱毛斑が出現した。近医にて塩酸カルプロニウム(フロジン液®)を処方され外用していたが,軽快せず当院皮膚科を受診した。初診時,頭頂部に脱毛を伴う茶褐色局面があった。生検で円板状エリテマトーデスと診断した。病理学的に真皮の線維化が著明で,萎縮した毛包も見られたが,0.05%酪酸プロピオン酸ベタメタゾン(アンテベートローション®)外用を開始したところ2ヵ月で発毛をみた。
  • 小田 香織, 澤本 学, 熊本 貴之, 磯貝 理恵子, 山田 秀和
    2007 年 6 巻 5 号 p. 468-472
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    64歳,男性。初診より,約1ヵ月前に右口角上部に紅色の腫瘤が出現したため,当科を紹介された。初診時は周囲に浸潤を認める直径1cm大のドーム状の紅色結節を認めた。皮膚生検の結果,真皮上層から皮下脂肪組織にかけて,N/C比の大きい小円形腫瘍細胞が索状や胞巣状に分布し,多数の核分裂像を伴っていた。免疫染色では,NSE(+),chromogranin(+),CK20(Ks20.8)(+),CK5,6,8,17(MNF116)(+),CD20(-),TTF-1(-)でありMerkel細胞癌と診断した。所属リンパ節転移,遠隔転移は認められなかった。切除術を予定したが,生検約3週間後頃より腫瘤の退縮が認められ,3ヵ月後には皮膚腫瘍はすべて消失し,生検の瘢痕を残すのみとなった。
  • 中川 浩一, 梶本 敦子, 岸田 大, 宮坂 昌世, 小島 澄恵, 清原 祥夫
    2007 年 6 巻 5 号 p. 473-478
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    56歳,男性。約15年から,右踵部に黒色斑があるが,放置していた。初診時,5×6cmの濃淡不正の黒色斑が観察され,一部に黒色結節を生じていた。膝窩のリンパ節を触知しなかったが,超音波検査では,底エコーのいびつな形の皮下腫瘤が認められた。原発巣の拡大切除時,センチネルリンパ節生検術を行ったところ,膝窩部に青染するリンパ節を認めた。組織学的に腫瘍細胞陽性であった。膝窩部ならびに鼠径部のリンパ節郭清術を追加し,踵には全層植皮術を行った。下肢の悪性黒色腫で,膝窩部にセンチネルリンパ節を同定した症例の報告は少なく,症例の詳細を記載するとともに,文献的考察を加えた。また,超音波検査の有用性についても強調した。
  • 川嶋 佳奈, 高木 肇, 別所 愛彦, 宮田 和可奈, 山崎 隆治
    2007 年 6 巻 5 号 p. 479-484
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
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    血管肉腫(Angiosarcoma)は,高齢者の頭部に発症し,高率に肺転移をおこす極めて予後の悪い,稀な疾患である。最近10年間に当科で経験した血管肉腫の4例を報告する。結節型3例は,手術及びrIL-2局注・静注,放射線療法,タキサン系抗悪性腫瘍剤による化学療法など集学的治療を行い,そのうち化学療法を施行した2例では,原発巣及び肺転移巣の縮小を認めた。手術後の結節型血管肉腫の再発や拡大,転移に対し化学療法は有効であり,化学療法を優先させることで生命予後が改善すると考えられる。斑状型はrIL-2治療が有効とされているが,経験した症例は全身状態悪化のため治療効果判定は困難であった。
  • 菊池 麻衣子, 矢島 智子, 大畑 千佳, 牧 一郎
    2007 年 6 巻 5 号 p. 485-489
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    9ヵ月, 男児。生後4ヵ月で左上腕にBCG接種を受けたところ, その3ヵ月後から左鎖骨下部に皮下結節が生じてきた。経過観察していたところ自壊し, 皮下より白色塊が排出された。その白色塊の病理組織像は乾酪壊死を伴う肉芽腫であり, 皮膚結核が疑われた。病変部皮膚組織の結核菌群同定polymerase chain reaction(PCR)にて結核菌群陽性であり, 肺など他臓器に活動性結核病変を認めなかったためBCGによる真性皮膚結核と診断した。クォンティフェロン®TB-2Gを施行して診断の参考とした。
  • 貞政 裕子, 二瓶 望, 康井 真帆, 矢口 均, 比留間 政太郎, 小原 宏之
    2007 年 6 巻 5 号 p. 490-493
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    Bierは,1898年,不整形な貧血斑が上肢に多発性に認められ,これらが上肢挙上によって消失する病変を報告した。今回我々は同様の皮疹を有する症例を経験した。患者は28歳,男性,ピアニスト。約10年前から上肢を下垂すると1センチ大の不整形な貧血斑が出現し,挙上すると消退するという。下肢も同様に立位で貧血斑が出現し,座位で消失する。駆血,機械的刺激,温熱刺激,寒冷刺激による増悪,軽快はない。触覚の異常もない。トフィソパム(グランダキシン®)内服をしたが効果は認めなかった。報告は少ないがこのような患者は多いと推察される。
治験
  • 川島 眞, 原田 昭太郎, Janusz Czernielewski, 宮地 良樹
    2007 年 6 巻 5 号 p. 494-503
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    日本人の尋常性ざ瘡患者に対するアダパレンゲル0.1%及びアダパレンゲル0.03%の有効性及び安全性をゲル基剤を対照として評価する目的で,多施設共同,ランダム化,評価者盲検,並行群間比較試験を実施した。被験者は,アダパレンゲル0.1%,アダパレンゲル0.03%,又はゲル基剤の1日1回外用12週間のいずれかの投与群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は最終観察日の総皮疹数,副次評価項目は炎症性皮疹,非炎症性皮疹数とした。安全性は有害事象,皮膚所見,及び臨床検査値異常により評価した。合計238例の尋常性ざ瘡患者が組み入れられ,その内87%の被験者が試験を完了した。いずれの濃度のアダパレンゲルもゲル基剤と比較して高い有効性を示し,また安全性,忍容性については投与群間に差は認められなかった。主要評価項目(総皮疹数)については,アダパレンゲル0.1%群,0.03%群間に統計的有意差を認めなかった(最終観察日の総皮疹数の中央値は,0.1%群が19,0.03%群が20,ゲル基剤群が33)が,ゲル基剤群との比較では両濃度群ともに有意であった(いずれもP‹0.01)。しかし,アダパレンゲル0.1%群(4週後)はアダパレンゲル0.03%群(6週後)より早期の効果発現を示し,また炎症性皮疹数に対する効果も優れていた(最終観察日の炎症性皮疹数の減少率の中央値は,0.1%群が54%,0.03%群が48%,ゲル基剤群が30%)。アダパレンゲル0.1%とアダパレンゲル0.03%群の有害事象及び皮膚所見の発現率は同等で,いずれも高い忍容性を示した。以上より,日本人の尋常性ざ瘡患者の炎症性皮疹及び非炎症性皮疹の治療におけるアダパレンゲルの至適濃度は0.1%であることが示唆された。
  • 川島 眞, 原田 昭太郎, Philippe Andres, 宮地 良樹
    2007 年 6 巻 5 号 p. 504-512
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
    ジャーナル 認証あり
    尋常性ざ瘡は慢性疾患であるため,短期的な治療効果を維持するとともに,患者の期待に応える効果を得るためには長期間の治療を要する場合が多い。本試験は,日本人の尋常性ざ瘡患者に対し,アダパレンゲル0.1%を1日1回,最長12ヵ月間投与した場合の安全性及び有効性の評価を目的として実施した。446例の男女の被験者が組み入れられ,404例(91%)が6ヵ月間以上の投与を受け,357例(80%)が12ヵ月間の試験期間を完了した。尋常性ざ瘡患者に対する,最長12ヵ月間のアダパレン治療は高い安全性及び忍容性を示した。有害事象のほとんどが試験開始後2週間以内に生じた軽度又は中等度の一過性のものであった。9例(2.0%),13件の重篤な有害事象が発現したものの,いずれも被験薬との因果関係はなしと評価された。8例(1.8%)に試験中止につながる有害事象が発現し,被験薬との因果関係ありと評価された。総皮疹数,炎症性皮疹数及び非炎症性皮疹数の減少率(中央値)により評価されたアダパレンゲル0.1%の治療効果は,いずれの皮疹数についても試験開始3ヵ月後以降も認められ,その後6ヵ月後,さらに12ヵ月後まで継続した。このことから,アダパレンによる尋常性ざ瘡の治療期間として推奨される3ヵ月間の治療後にも継続投与することの臨床的意義が示唆された。また,被験者は試験終了時に実施した調査において,治療に対する高い満足度を示した。この満足度は,12ヵ月の試験中,経時的に増加した。以上より,日本人の尋常性ざ瘡患者にアダパレンを12ヵ月にわたり長期に使用することは,安全かつ有効な治療であることが支持された。
  • 大日 輝記, 室田 浩之, 片山 一朗, 神戸 直智, 宮地 良樹, 今福 信一, 寺尾 浩, 古江 増隆
    2007 年 6 巻 5 号 p. 513-518
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/12/06
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    ベシル酸ベポタスチンは抗アレルギー薬の中でも最高血中濃度到達時間が短く,蕁麻疹患者に対する投与での効果発現時間も短いことが知られている。ベシル酸ベポタスチンによる慢性蕁麻疹の治療効果を評価するために,慢性蕁麻疹と診断された患者46例に対して,初診時及び再診時に,医師による対面アンケートで,痒みの頻度,効果発現時間を調査した。また,visual analogue scale(VAS)で,痒み,眠気,生活への支障度を評価した。患者の70%で,服用後1時間以内に治療効果を実感できた。また,VASによる評価で,痒みが有意に軽減し,生活支障度が有意に低下した。眠気は治療開始前後で同程度であった。ベシル酸ベポタスチンは慢性蕁麻疹の治療においても,対症的即効性及び予防的症状改善効果が示された。以上より,ベシル酸ベポタスチンは慢性蕁麻疹の治療に有用であると考えた。
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