皮膚の科学
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5 巻, 1 号
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綜説
  • 笹川 征雄
    2006 年 5 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
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    シックハウス症候群の問題解決に必須である,医学,建築,化学の学際的問題解決フローチャートと,診断に必要な建築学と測定の知識を解説した。VOCs測定は,症状誘発因子となる最高濃度値を知る標準測定法を優先するが,長期慢性曝露影響を知る24時間・平均濃度値も測定するのがよい。費用対効果を考慮したVOCs測定物質を検証した。室内VOCs汚染の即効対策は有効な換気である。新築住宅のホルムアルデヒド・VOCsは低減傾向にあるが,人体へのリスクアセスメントが未解明である法的規制外の代替化学物質による健康影響が懸念される。情報バイアスによる心因性患者が増加して,シックハウス症候群の診断はより難しく,潜行すると思われる。
研究
症例
  • 西村 幸秀, 奈良 武史, 末廣 晃宏, 竹中 秀也, 加藤 則人, 岸本 三郎, 永田 一洋
    2006 年 5 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    69歳,女性。約3年前に陳旧性腹部,肺及び胸膜結核を指摘され経過観察中であった。約10ヵ月前より微熱,右上胸背部痛が出現。胸部CTにて右第9肋骨周囲の胸腔内外に拡がる3×2cm大の腫瘤を指摘され,CTガイド下生検の結果,胸壁結核と診断された。抗結核剤3者併用療法を開始したが,内服5ヵ月後に5×3cm大と腫瘤の増大を認めたため当科を紹介された。右背部から側腹部に手掌大で熱感を伴わない波動を触れる皮下腫瘤を認めた。切開,排膿処置を施行。膿の抗酸菌培養は陰性,塗抹抗酸菌染色はZiehl-Neelsen染色で陽性,さらにPCR法でM.tuberculosisを検出した。連日の洗浄にて,約2週間後にはPCR法で陰性となり,約1ヵ月後には創は閉鎖した。現在までのところ,膿瘍の再発は認めていない。
  • 山中 滋木, 橋本 洋子, 岡本 祐之, 堀尾 武
    2006 年 5 巻 1 号 p. 19-21
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
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    48歳女性。不正性器出血に対し,近医にて卵胞ホルモン剤を静注して帰宅後,卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤(ノアルテン®D)を内服した。その20分後頃より全身性蕁麻疹,咽頭違和感,呼吸困難等の症状が出現してきたため,当院を受診し,薬剤性アナフィラキシーと診断された。点滴加療にて症状消退後,施行した上記配合剤と黄体ホルモン成分(ノルエチステロン)のスクラッチテストは陽性を示し,卵胞ホルモンやその他の成分は陰性であった。黄体ホルモン成分が原因と考えられたが,問診によれば過去に同成分を含む製剤の投与歴はないとのことで,女性ホルモンに対する自己免疫反応の関与が示唆された。
  • 中川 真人, 田邉 洋, 柳原 誠, 石崎 宏, 望月 隆
    2006 年 5 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    23歳男性。初診2ヵ月前に右踵に靴ずれが生じ,初診時には右踵に径17mm大の深い潰瘍を形成していた。同部には痛覚の低下があり,詳しい問診を行ったところ,患者は生後間もない時期に脊髄髄膜瘤で閉鎖手術を受け,以後も両下肢に軽度の神経障害を残していたことが明らかになった。神経学的に精査を行ったところ,両側S1以下の領域に知覚低下があり,X線撮影で第5腰椎の二分脊椎を認めた。以上の所見より,足穿孔症を契機に発見された脊髄髄膜瘤の1例と診断した。安静,下肢挙上,および外用療法で潰瘍は上皮化した。難治性の足潰瘍を見た場合,背景に脊髄・脊椎疾患がないか留意する必要がある。
  • 梅田 二郎, 岡田 明子, 西野 洋, 森田 博子, 片岡 葉子
    2006 年 5 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
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    50歳,男性。1986年,当科にてベーチェット病と診断。コルヒチン,ヨウ化カリウムなどの内服にて病勢はコントロールされていた。2004年4月,結節性紅斑の新生がみられたため,同年5月初めよりコルヒチンを増量後,筋力低下を自覚するようになった。5月21日,CK 13396IU/Lと高値で,横紋筋融解症の診断にて緊急入院した。内服薬剤をすべて中止し,大量輸液を開始して利尿及び尿のアルカリ化をはかった。甲状腺機能低下も認めたため補充療法を開始した。筋症状は徐々に軽快し,治療開始2週間でCK値は正常化した。コルヒチンを除いた内服薬の再投与を行ったが症状の再発は認めなかった。横紋筋融解症の主因はコルヒチンと考えられるが,ヨウ化カリウムの内服が原因と考えられる甲状腺機能低下も発症の背景となったと考えた。
  • 英 真希子, 中西 健史, 鶴田 大輔, 石井 正光
    2006 年 5 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
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    66歳,男性。1988年に尋常性乾癬発症。2002年10月に発熱,全身の潮紅,浮腫,膿疱が出現し,膿疱性乾癬と診断された。入院し,エトレチナート75mgの治療を受け皮疹は改善したが,緊満性の水疱が出現した。通常の正常ヒト皮膚切片基質の蛍光抗体間接法(IIF)にて抗表皮基底膜部抗体が陽性であった。1M食塩水剥離皮膚基質のIIFにて表皮側陽性,BP180のNC16a部位リコンビナントタンパクの免疫ブロット法陽性,BP180リコンビナントELISA陽性より,膿疱性乾癬に合併した水疱性類天疱瘡と診断した。エトレチナート20mg,シクロスポリン75mgにて水疱は消失した。現在乾癬のコントロールは良好であり,水疱の再燃を認めない。
  • 長島 千佳, 矢上 晶子, 松永 佳世子, 古閑 寛, 安積 輝夫
    2006 年 5 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
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    7歳女児,シェーグレン症候群を伴った小児皮膚筋炎(juvenile dermatomyositis;JDM)の1例を報告する。1歳時,下肢に皮疹が出現し,よく転ぶ,力が入らない,動作が止まるなどの筋力低下の症状が出現した。2歳時,他院で皮膚病理所見,筋原性酵素の上昇からJDMと診断され,ステロイド剤内服を開始した。3歳時に当科を紹介され受診した際には筋力低下,ヘリオトロープ疹,Gottron徴候を認めた。4歳時にシェーグレン症候群を併発した。4歳時以後,筋炎症状は消失し,7歳時にステロイド剤を中止した。一時耳下腺腫脹を認めたが,筋炎の再燃は認めなかった。
  • 升田 貴子, 羽尾 貴子, 鎌田 英明, 原 弘之
    2006 年 5 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    37歳,女。約2年前より右第2趾背に径5mmほどの褐色色素斑を認め,半年前より急速に拡大,隆起してきた。初診時,右第2趾背に径8mmの境界明瞭なドーム状の褐色結節を認めた。組織は表皮から真皮浅層にかけて左右対称性に,核異型の少ない,紡錘形の核を持つ細胞が境界明瞭な胞巣を形成していた。腫瘍細胞はS-100陽性,NK1C3陽性,HMB-45陰性であり,Spitz nevusと診断した。腫瘍中央部では,腫瘍細胞巣の経表皮的排泄が見られた。趾背に生じるSpitz nevusはまれであり,経表皮排泄を伴う例はきわめてまれであると考えた。
  • 杉村 亮平, 黛 暢恭, 杉村 知美, 高木 敦, 平澤 祐輔, 池田 志斈
    2006 年 5 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    肺癌の皮膚転移の1例を経験したので報告する。症例は71歳男。腹部,背部,臀部,鼠径部に計5ヵ所の皮膚転移巣が出現。皮膚転移後7ヵ月で死亡した。当科において,過去10年で内臓悪性腫瘍の皮膚転移症例を14例経験した。原発巣は肺癌が最も多く,乳癌がそれに次いでいた。このうち組織型は腺癌が最多であった。また,皮膚転移発覚後の平均生存期間は13.7ヵ月であった。
  • 小西 朝子, 青島 敏行
    2006 年 5 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    44歳,男性。6歳頃より背部や頭部,手足の関節部などに腫瘤が多発してきた。徐々に関節の拘縮が進行し、数年前より寝たきりの状態となった。腫瘤の病理組織所見では真皮中層から均一に染まるヒアリン様物質の沈着を大量に認めた。これらは正常なコラーゲンや脈管を包み込むように存在し,アルシアンブルー染色,PAS染色,ジアスターゼ消化PAS染色で陽性であった。特徴的な臨床症状,病理組織所見よりjuvenile hyaline fibromatosisと診断した。世界で50例程しか報告がなく,貴重な症例と考える。
  • 渡邉 晴二, 田邉 洋, 望月 隆, 柳原 誠, 石崎 宏
    2006 年 5 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    55歳男性(症例1),73歳男性(症例2)に生じたtoe web infection例を経験した。2例とも前医で真菌のKOH直接鏡検を受けず,視診のみで足白癬と診断され外用抗真菌剤を処方されていた。来科時,ともに趾間に悪臭と緑色の浸出液を伴う糜爛を認め,疼痛のため歩行は困難であった。糖尿病はなかった。病変部辺縁の角質からのKOH直接鏡検法は真菌陰性で,培養ではPseudomonas aeruginosaが分離された。症例1は局所洗浄,デブリートメントに加え抗菌剤含有軟膏や抗潰瘍剤による外用療法は無効であったが,抗菌剤の点滴で速やかに軽快した。症例2は初診時より抗菌剤の点滴,スルファジアジン銀の外用を行い治癒した。
    自験例は抗真菌剤外用を含む各種局所療法では難治であり,早期からの抗菌剤の全身投与による原因菌の除去を契機に治癒したと考えた。
  • 梶本 敦子, 大磯 直毅, 中川 浩一
    2006 年 5 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    症例1:患者,45歳女性。初診,2004年8月27日。初診の約20日前に感冒症状を呈していた。初診の2日前より顔面,上肢に無症候性皮疹が出現し,翌日より下肢にも同様の皮疹が出現してきたため当科受診した。症例2:患者,53歳女性。初診,2004年8月30日。初診の5日前より発熱および頭痛を認めていた。体幹,四肢に無症候性皮疹が出現してきたため当科受診した。症例3:患者,45歳女性。初診,2004年9月9日。初診の1週間前より発熱を伴う感冒症状を呈していた。初診の2日前より体幹,四肢にそう痒性皮疹が出現してきたため当科受診した。いずれもHPV-B19 IgM抗体が上昇しており,伝染性紅斑の初感染と診断した。
  • 石川 千香, 夏秋 優, 宮田 明子, 山西 清文
    2006 年 5 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    ペットの飼い犬に脱毛を伴う皮疹が認められ,その犬と共に生活する家族内にそう痒性皮疹が出現した3例を報告した。症例1は68歳,女性で,室内で病犬と最も密に接触していた。臨床的には体幹を中心に紅色丘疹と掻破痕が多発し,手関節部や手掌に疥癬トンネルを認め,鏡検で虫体と虫卵を検出した。症例2は71歳,女性。体幹に丘疹が散在し,疥癬トンネルは認めなかった。症例3は49歳,男性。飼い犬との接触後,以前より両下腿にあった湿疹病変の悪化と全身への拡大が認められた。病犬の治療を行うと共に,クロタミトンまたはステロイドの外用により皮疹は3名とも軽快した。
治療
使用試験
  • 坪井 良治, 伊藤 正俊, 伊藤 裕喜, 田崎 美弥子, 大城 喜美子, 青木 和香恵, 八木 克彦, 小川 克基, 伊藤 明, 提橋 義則
    2006 年 5 巻 1 号 p. 72-80
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    尋常性白斑患者23名(男性6名,女性17名)に,株式会社資生堂で開発された白斑カバー専用ファンデーション“パーフェクトカバーVV”を継続的に使用させ,顔面の白斑部位をカバーしたときのQOL変化を検討した。疾患別QOL尺度としてはSkindex-16及びDLQIを,包括的QOL尺度としてはWHO QOL26を用いた。メーキャップの満足度はVAS(Visual Analogue Scale)により評価した。また,皮膚色調の確認のためカバー部位の色調を測定した。メーキャップ前と患者自身によるメーキャップ2週間継続後のQOL調査の結果,Skindex-16,DLQI及びWHO QOL26のスコアは統計学的に有意に改善し(それぞれ,p<0.0001,p=0.0012及びp=0.0003),メーキャップにより外見に関わる心理的不安が取り除かれ,社会関係までも改善することが明らかになった。患者自身によるメーキャップの満足度は男女とも同程度に高かった。また,皮膚の色調測定により,カバー部位は健常皮膚と同等の色調に補正されたことが確認された。副作用の発現及び中止・脱落例はなく,安全に継続使用できた。本ファンデーションによる白斑部位のカバーは,明らかに患者のQOLを向上させると考えられた。
  • 錦織 千佳子, 尾藤 利憲, André Rougier, Alain Richard
    2006 年 5 巻 1 号 p. 81-90
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル 認証あり
    薬剤性光線過敏の原因波長は多くの場合UVAである。したがって光毒性を有す薬剤を服用する場合にはUVBだけでなくUVAも幅広く遮光できるサンスクリーン剤の使用が求められる。今回,光毒性を有す薬剤を内服中の患者に対してUVAにも防御効果のあるサンスクリーン剤の評価を行う機会を得た。アンテリオスXLとその基剤ならびに3種類のサンスリーン剤を用いて単純塗布盲検試験を行い,目視と色彩計により光毒性の防御能の評価を行った。全製品において基剤と比べ有意に抑制効果がみられた。特にアンテリオスXLの高い防御効果が明らかとなった。しかし,各製品のPA表示と評価試験による光毒性抑制効果は必ずしも一致しなかった。
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