悪性腫瘍の重要な生物学的特徴として,局所での脈管浸潤がある。脈管浸潤は全身への腫瘍の播種への始まりであり,悪性細胞の能動的な運動能,脈管浸潤能に由来するものと通常は考えられている。しかし,そこには,「悪性細胞だからこそ,その様な能力がある。」あるいは,「こうした異常な性状を持つからこそ悪性腫瘍細胞なのだ」という,一種の思い込みがあるのかもしれない。
3例の特異な組織像から,「リンパ管が能動的に腫瘍細胞を腔内に取り込むことができる」可能性を考えた。その3例は,1)Pigmented eccrine porocarcinoma のリンパ節転移に見られたリンパ節内の melanocyte colonization,2)Intralymphatic histiocytosis で見られる組織球塊が実はリンパ管の外側に位置する例,3)色素性母斑でリンパ管内に存在する母斑細胞塊,である。(皮膚の科学,17: 45-56, 2018)
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