皮膚の科学
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17 巻, 2 号
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
  • 村田 洋三
    2018 年 17 巻 2 号 p. 45-56
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル 認証あり
     悪性腫瘍の重要な生物学的特徴として,局所での脈管浸潤がある。脈管浸潤は全身への腫瘍の播種への始まりであり,悪性細胞の能動的な運動能,脈管浸潤能に由来するものと通常は考えられている。しかし,そこには,「悪性細胞だからこそ,その様な能力がある。」あるいは,「こうした異常な性状を持つからこそ悪性腫瘍細胞なのだ」という,一種の思い込みがあるのかもしれない。
     3例の特異な組織像から,「リンパ管が能動的に腫瘍細胞を腔内に取り込むことができる」可能性を考えた。その3例は,1)Pigmented eccrine porocarcinoma のリンパ節転移に見られたリンパ節内の melanocyte colonization,2)Intralymphatic histiocytosis で見られる組織球塊が実はリンパ管の外側に位置する例,3)色素性母斑でリンパ管内に存在する母斑細胞塊,である。(皮膚の科学,17: 45-56, 2018)
症例
  • 出口 彩香, 水野 麻衣, 壽 順久, 吉良 正浩, 大橋 寛嗣
    2018 年 17 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル 認証あり
     60歳代,男性。スルファメトキサゾール・トリメトプリム内服開始より13日後に,頸部から大腿部にかけて 1~2mm 大の融合傾向のある紅色丘疹,紅斑が出現した。発熱・リンパ節腫脹あり,肝機能異常・異型リンパ球上昇を認めた。経過中に抗 HHV-6 IgG 抗体価の上昇を認め,薬剤性過敏症症候群(DIHS)と診断した。皮疹出現より20日後,ステロイド加療中に急激な血糖上昇・ケトン体上昇・代謝性アシドーシス進行を認め,劇症1型糖尿病・糖尿病性ケトアシドーシスと診断した。皮疹は消褪傾向にあり,ステロイドを漸減したが,皮疹出現より192日後に皮疹の再燃を確認した。また同時期にいずれも正常であった TSH の上昇,FT4 の低下,抗 TPO 抗体の陽転化を認め,橋本病と診断した。DIHS の再燃と並行して橋本病を新規発症する可能性があることを念頭に置く必要がある。(皮膚の科学,17: 57-61, 2018)
  • 太田 朝子, 青山 礼華, 種村 篤, 壽 順久, 角田 渓太, 辻本 孝平, 田中 敏郎, 鈴木 重明, 片山 一朗
    2018 年 17 巻 2 号 p. 62-69
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル 認証あり
     50歳代,女性。併存症は重症筋無力症,関節リウマチ,全身性エリテマトーデス。肛門部悪性黒色腫(Stage I T1bN0M0)に対して拡大切除術および人工肛門造設術を施行した。その後,外来で経過観察していたが再発は認めなかった。3年後,外陰部の出血および疼痛を自覚した。大陰唇に隆起する黒色変化を認め,Field cell からの悪性黒色腫の再発を疑った。画像上,尿道および直腸に浸潤が認められ,放射線治療およびニボルマブを導入した。コントロール不良の重症筋無力症,全身性エリテマトーデス,関節リウマチと複数の自己免疫疾患を有する悪性黒色腫に対して免疫グロブリン大量療法でコントロールし,ニボルマブと放射線の併用療法を行い,著明な腫瘍縮小効果を得た1例を経験した。抗腫瘍機序として,ニボルマブと放射線を併用することでアブスコパル効果が認められていることや,PD-L1 発現が上昇し,ニボルマブ投与時に相乗効果がみられることなどが言われている。しかし,日本でのニボルマブと放射線治療を併用した報告は未だ少なくここで報告する。(皮膚の科学,17: 62-69, 2018)
  • 鈴木 緑, 立林 めぐ美, 三宅 雅子, 加藤 麻衣子, 栁原 茂人, 大磯 直毅, 川田 暁, 松尾 仁子
    2018 年 17 巻 2 号 p. 70-74
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル 認証あり
     80歳代,男性。初診の2ヶ月前より四肢屈側に紅色丘疹と紅褐色斑が出現し,生検の病理組織所見から皮膚サルコイドと考えた。ステロイド外用で加療していたところ,初診の1年半後より皮疹の拡大と潰瘍化を認めた。再度生検を施行し,necrobiotic xanthogranuloma と診断した。同時期に単クローン性免疫グロブリン血症も併発していた。プレドニゾロン内服にて皮疹は略治した。自験例の初発病変の病理組織で異物型巨細胞を伴う naked granuloma が見られ,皮膚サルコイドに類似していたことから,本症の発症機序にマクロファージが重要な役割を担っていることが示唆されると考えた。(皮膚の科学,17: 70-74, 2018)
  • 中尾 有衣子, 大塚 俊宏, 谷崎 英昭, 黒川 晃夫, 森脇 真一
    2018 年 17 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル 認証あり
     50歳代,女性。以前より,鼻アレルギー症状による右鼻出血に対し,ホスホマイシンナトリウム,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム含有ネブライザー療法が度々行われていた。セフメノキシム塩酸塩が追加されたネブライザー吸引が施行されてから,6回すべての吸引において,吸引後に発熱をきたしたという既往あり。初診6日前,近医耳鼻咽喉科にてセフメノキシム塩酸塩,ホスホマイシンナトリウム,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム含有ネブライザー療法が実施された。施行翌日より 37.5°C の発熱と全身に紅斑・丘疹が出現したため同院を再診した。同院にてベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマイシン酸塩4日間内服,ベタメタゾン点滴1回投与が行われ,皮疹の改善を認めたが,精査目的に当科紹介となった。初診時発熱はなく,四肢に比較的境界明瞭な赤褐色斑が散在していた。セフメノキシム塩酸塩またはホスホマイシンナトリウムによる薬疹を疑い,2剤について薬剤誘発性リンパ球刺激試験(DLST)を施行したところ,ホスホマイシンナトリウム陽性,セフメノキシム塩酸塩陰性であった。DLST の結果からは,被疑薬としてホスホマイシンナトリウムを疑うが,2剤ともに被疑薬である可能性は否定できず,多剤感作の可能性も考えた。ネブライザー療法は,鼻粘膜症状に対する代表的な治療法である。使用頻度の割には薬疹の報告例は少ないが,薬疹が疑われた際にはネブライザーの使用歴も確認する必要があると考えられた。(皮膚の科学,17: 75-78, 2018)
  • 河合 修三
    2018 年 17 巻 2 号 p. 79-97
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル 認証あり
     2012年2月から2017年3月までに当院を受診し,従来の治療法では難治性と判断した顔面ざ瘡の23例に,イトラコナゾール 100mg/日を14日間,1から3クールの内服投与を行った。1例を除く22例で著効した。従来より,成人のざ瘡で,最も治りにくい部位である顎,フェイスラインのざ瘡に特に有効であった。本結果は,難治性ざ瘡の主要な原因菌は,ざ瘡桿菌だけでなく,マラセチアが関与している可能性を示唆する治療成績と考えた。(皮膚の科学,17: 79-97, 2018)
  • ―本邦報告例の集計からみた LE tumidus の診断の手引き(石橋)の検証―
    窪田 茶月, 飯島 正文
    2018 年 17 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル 認証あり
     40歳代,男性。初診時,両前額部の境界鮮明な暗紅褐色浸潤性紅斑を認めた。一般検査に著変無く,抗核抗体・抗 DNA 抗体・抗 SS-A/SS-B 抗体はすべて陰性であった。病理組織:表皮基底層に液状変性無く,真皮乳頭層の血管周囲性,一部附属器周囲性のリンパ球主体の細胞浸潤を認めた。コロイド鉄染色では真皮全層に陽性,特に膠原線維間が強陽性であった。経過中日光暴露による皮膚症状の悪化を認め,Lupus erythematosus tumidus(以下,LE tumidus と略)と診断した。LE tumidus は1930年 Gougerout & Burnier らによって最初に報告されたが長年注目されておらず,2000年 Kuhn らが40例を報告後に再注目された。2007年 LE tumidus の診断の手引き(石橋)によれば,LE tumidus は露光部に好発し,光線過敏を認めることが多い表皮の変化を伴わない蕁麻疹様紅斑局面で,真皮の血管周囲性・附属器周囲性のリンパ球浸潤と真皮全層のムチン沈着を認め,Lupus band test は通常陰性,免疫学的異常は陰性,抗核抗体は陰性あるいは低力価で陽性,全身症状は認めないことが多い。自験例を含めた31例の本邦報告例の集計を機に,皮膚 LE の一型として注目される本症の特徴を検討すべく,2010年 Shumitt & Kuhn らの報告と比較し,LE tumidus の診断の手引き(石橋)の各項目について検証を試みた。我々の検証では,LE tumidus は SLE の診断基準を満たさないとは限らず,Lupus band testも必ずしも陰性であるとは言い切れず,免疫学的異常を伴う例も少なからずみられることから,当該診断のてびきは修正が必要であると考えられた。(皮膚の科学,17: 98-104, 2018)
  • 三宅 雅子, 志賀 久里子, 柳原 茂人, 遠藤 英樹, 大磯 直毅, 川田 暁
    2018 年 17 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル 認証あり
     80歳代,男性。以前より糖尿病があり,インスリン治療を行っていた。初診の2ヶ月前から左下腹部に皮下硬結が出現したため近医皮膚科を受診し,精査目的で当科に紹介された。当科初診時,左下腹部に 4~5cm 大の自覚症状のない皮下硬結を認めた。臨床経過,臨床所見,病理組織所見からインスリンボールであると診断した。インスリンボールはインスリン由来のアミロイドがインスリン注射部位に沈着することにより生じる皮下腫瘤である。インスリンボールは他部位と比べつまみやすく,注射時の痛みを感じにくいためインスリン使用患者は腫瘤部を好んでインスリン注射部位に選ぶ傾向にある。しかしながらインスリンボールは他部位と比べインスリンの吸収が阻害されるため,患者の血糖コントロールの悪化につながる。糖尿病患者を診察する際はインスリン注射部位を観察し,インスリンの注射手技を定期的に確認・指導することが望ましいと考える。(皮膚の科学,17: 105-109, 2018)
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