皮膚の科学
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11 巻, 5 号
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症例
  • ―非色素沈着型固定薬疹の報告例の集計―
    五木田 麻里, 高橋 阿起子, 仲田 かおり, 堀川 達弥
    2012 年 11 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/28
    ジャーナル 認証あり
    非色素沈着型固定薬疹の1例を報告した。28歳,女性。2009年7月,クリンダマイシンとベタメタゾンの点滴を1回施行され,数日後より,頸部や左上腕,腰部,左大腿にそう痒を伴う紅斑が出現し,数日で色素沈着を残さずに消失した。2010年11月,再びクリンダマイシンとベタメサゾンの点滴を受け,同様の皮疹が出現した。クリンダマイシンの点滴注射の誘発テストで同様の皮疹が再現され,パッチテストではクリンダマイシンで陽性であり,クリンダマイシン製剤による多発性非色素沈着型固定薬疹と診断した。クリンダマイシン製剤による薬疹の報告は少ない。また,非色素沈着型固定薬疹は国内外で50例報告されているが,クリンダマイシン製剤による報告は自験例以外にはなかった。(皮膚の科学,11: 403-408, 2012)
  • 古川 紗綾佳, 夏秋 優, 山西 清文
    2012 年 11 巻 5 号 p. 409-412
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/28
    ジャーナル 認証あり
    29歳,女性。26歳時に歯科治療を受けた際,および29歳時の下顎縫合を受けた際に,キシロカイン®での局所麻酔を施行された数分後にアナフィラキシー症状が出現したため,精査目的で当科を受診した。皮膚テストではリドカイン塩酸塩とメピバカイン塩酸塩が陽性,ジブカイン塩酸塩とプロカイン塩酸塩,アミノ安息香酸エチル,そして防腐剤であるメチルパラベンは陰性であったため,本症例をリドカイン塩酸塩によるアナフィラキシーと診断した。局所麻酔薬を使用した際にアナフィラキシー様症状を訴える患者を少なからず経験するが,実際に,皮膚テストでリドカイン塩酸塩に対する即時型アレルギーが証明される例は稀である。(皮膚の科学,11: 409-412, 2012)
  • 清水 博子, 黒川 晃夫, 上田 英一郎, 森脇 真一
    2012 年 11 巻 5 号 p. 413-417
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/28
    ジャーナル 認証あり
    22歳,男性。初診の2ヶ月前より四肢の関節痛および開口障害が出現した。その後,両側前腕伸側に多数の皮下結節が出現し,顔面紅斑や筋肉痛も生じたため当院を受診した。初診時,前腕伸側に母指頭大までの皮下結節を認めた。また両側頬部には左右対称性の浮腫性紅斑がみられた。全身エリテマトーデス (SLE) の診断基準を満たしたため自験例を SLE と診断した。また前腕皮下結節を生検したところ,組織学的には膠原線維間にヒアルロン酸を主体とする酸性ムコ多糖体の沈着を認めた。以上より,この皮疹を結節性皮膚ループスムチン症 (NCLM) と診断した。ステロイドパルス療法を施行したところ皮疹は速やかに消退した。その後プレドニゾロンの経口投与を 75mg/日より開始し徐々に減量し,またタクロリムスの経口投与を 1mg/日より開始してこれは徐々に増量した。6ヶ月後の現在プレドニゾロン 20mg/日,タクロリムス 4mg/日を継続投与中であるが,皮疹の再燃はみられていない。本症は SLE に最も多く合併するとされ,SLE の疾患活動性との相関が強く示唆されている。よってステロイド全身投与にて消退しても,今後原疾患の急性増悪に伴い皮疹の再燃の可能性があり注意深い観察が必要であると考えられる。(皮膚の科学,11: 413-417, 2012)
  • 西村 景子, 廣川 景子, 菅谷 直樹, 鈴木 加余子, 泉 美貴, 松永 佳世子
    2012 年 11 巻 5 号 p. 418-422
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/28
    ジャーナル 認証あり
    79歳,女性。既往に糖尿病はない。初診の2年前より両下腿前面に軽い痛み,痺れを伴う小紅斑が多発し,局面を形成した。その後同部位に潰瘍が出現したため当院を受診した。初診の皮膚生検では診断がつかず,2回目の皮膚生検にて,病理組織学的に柵状肉芽腫と多核巨細胞,組織球を認め,リポイド類壊死症と診断した。6ヶ月後よりトラニラスト 300mg/日の内服を開始し,9ヶ月後よりクロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏の外用を行ったところ,病変部辺縁部の隆起は平坦化し,紅斑も消退し軽快した。様々な治療が試みられているリポイド類壊死症において,本症例はトラニラスト内服とクロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏外用治療が有効であった。(皮膚の科学,11: 418-422, 2012)
  • 兪 明寿, 黒川 晃夫, 上田 英一郎, 森脇 真一, 大谷 一弘, 辻 求
    2012 年 11 巻 5 号 p. 423-427
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/28
    ジャーナル 認証あり
    54歳,女性。母,従妹に同症がある。初診の4年前より前頭部に小丘疹を自覚し,徐々に増大してきたため当科を受診した。初診時,前頭部に 19×16mm の暗赤色の皮膚腫瘤が存在した。組織像では硝子様膜で囲まれた腫瘍胞巣の増殖を認め,各胞巣は辺縁部の濃染した核を有する細胞と中央部の淡染した核を有する細胞で構成されており,皮膚円柱腫と診断した。切除2ヶ月後,前頭部の他の部位に皮膚腫瘤が出現し同様の組織像を呈したため,多発型皮膚円柱腫と最終診断した。本邦では皮膚円柱腫は稀であり,今回我々は家族歴を有する多発型皮膚円柱腫の1例を経験したので,CYLD 遺伝子と同腫瘍の発生メカニズムとの関連について考察した。(皮膚の科学,11: 423-427, 2012)
  • 奥村 えりな, 辻岡 馨, 大橋 理加, 辻花 光次郎, 小谷 槇一, 小野 一雄
    2012 年 11 巻 5 号 p. 428-435
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/28
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    マントル細胞リンパ腫は非 Hodgkin リンパ腫の約3~10%を占める比較的稀なB細胞性リンパ腫である。典型的にはリンパ節病変を形成するが,骨髄や脾臓,消化管,Waldeyer 輪に節外病変を形成することもある。今回われわれは皮膚に生じた多発腫瘤により診断に至ったマントル細胞リンパ腫の1例を経験した。症例は67歳,男性。下肢の多発性腫瘤を主訴に来院した。CT にて全身のリンパ節腫大を認め,皮膚生検でマントル細胞リンパ腫と診断した。リンパ節生検においても病理組織学的,免疫組織学的に同様の所見が得られ,FISH 法にて染色体転座t(11;14)(q13;q32) を認めた。皮膚病変を伴うマントル細胞リンパ腫はまれであるため若干の文献的考察を加え報告した。(皮膚の科学,11: 428-435, 2012)
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