皮膚の科学
Online ISSN : 1883-9614
Print ISSN : 1347-1813
ISSN-L : 1347-1813
3 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
カラーライブラリー
綜説
  • 吉益 隆, 西出 武司, 古川 福実
    2004 年 3 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    ループスエリテマトーデス(LE)の光線過敏は,長波長紫外線(UVA:波長 320nm以上)及び中波長紫外線(UVB:波長 280~320nm) の両者によって引き起こされる皮疹の誘発・増悪もしくは関節症状などの皮膚以外の症状の誘発・増悪をいう。しかし,臨床的症状と光線テストもしくは血清中の抗SS-A/Ro抗体の相関については,必ずしも諸家の報告は一定しない。本稿では,そのような現状を我々の最近のデータを含めて紹介する。次に,近年話題となっているlupus erythematosus tumidusの光線過敏に関連した病態や独立性に関して論ずる。最後に,薬剤性ループスエリテマトーデスと光線過敏に関してモデルマウスの有用性について簡単に触れる。
研究
症例
  • 竹田 公信, 渡辺 晴二, 阿部 真也, 田邉 洋, 望月 隆, 柳原 誠, 石崎 宏
    2004 年 3 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    61歳,男性。初診4日前,38°C以上の弛張熱とそう痒性の淡紅色紅斑が躯幹・四肢に出現。近医でのセフェム系抗生剤は無効で,紅斑は拡大し,右肩関節痛も出現。初診時,前胸部,腰部,両上腕および左大腿に淡紅色の軽度浸潤がある蕁麻疹様紅斑が地図状にあり,また線状の淡紅色紅斑,色素沈着も存在。血液検査でフェリチン,CRP高値。プレドニゾロン(PSL)60mg/日で無効。ステロイドパルス療法で躯幹・四肢の紅斑は速やかに軽快し,PSLを漸減できたが,25mg/日でフェリチン値,CRP値は再上昇。メソトレキサート(MTX)5.0mgを2週に1回,計5回の併用で,フェリチン値,CRP値は正常化。PSLを漸減,7ヵ月後に治癒した。
  • 荒木 絵里, 森 亮子, 田中 敦俊, 谷崎 英昭, 是枝 哲, 高橋 健造, 立花 隆夫, 宮地 良樹, 白方 裕司, 橋本 公二
    2004 年 3 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    2例の劣性栄養障害型先天性表皮水疱症患者の潰瘍面に対し,培養表皮シートを用いた治療を行った。患者の健常部および母親から採取した皮膚片より愛媛大学皮膚科にて培養表皮シートを作製し,逐次冷凍宅配便にて京都大学病院に発送,解凍して使用した。この培養表皮シートを用い2~3日に1回のペースで処置を行った。使用開始2ヵ月後,培養表皮シート使用部位は潰瘍面の上皮化が有意に促進され,潰瘍面積が縮小した。また,上皮化した部位では水疱の新生が抑制された。本人の細胞を用いた自家移植に加え,母由来の細胞を用いて作製された培養表皮シートにても良好な治療効果が得られた。
  • 松本 晴子, 夏秋 優, 小倉 千香, 冨士原 裕子, 橋本 尚明, 佐野 統, 橋本 武則
    2004 年 3 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    36歳,女性。17歳時にSLEと診断された。皮膚科初診の約6ヵ月前より背部,上肢,顔面などに皮下結節が多発してきた。初診時,背部・上肢・頬部などに直径1cm大までの皮下結節が多発していた。病理組織学的所見では,真皮全層に膠原線維束が解離し,コロイド鉄染色にてムチンの沈着をみとめたため,結節性皮膚ループスムチン症と診断した。ステロイドの内服・外用にて皮下結節は消褪した。
  • 小倉 千香, 夏秋 優, 宮田 明子, 林 義明, 南 祥一郎, 伊藤 孝明
    2004 年 3 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    37歳,男性。4歳時にレックリングハウゼン病と診断され,5歳頃より腰部右側の腫瘤は徐々に増大していたが,初診の3日前から急激に腫瘤が増大したため,当科に入院した。CTにて腫瘤の内部に不均一な血腫像を認め,貧血が進行したためpachydermatocele内の出血と診断した。入院の翌日に全身麻酔下に腰部右側のpachydermatoceleを摘出した。摘出した腫瘤の重さは2.2kgであり,出血量は4010mlで800mlの輸血を必要とした。レックリングハウゼン病にみられるpachydermatoceleは,切除時に大量に出血することが知られており,積極的な手術は行われていないのが現状であるが,増大傾向の強いものでは早期の手術加療を考慮すべきであると考えた。
  • 柳下 晃一, 吉田 益喜, 磯貝 理恵子, 荒金 兆典, 川田 暁, 手塚 正
    2004 年 3 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    症例は17歳男性。約1年前,陰茎部の嚢腫に気付いた。嚢腫は冠状溝に沿って陰茎縫線に接してみられた。陰茎縫線嚢腫を疑い全切除術を施行した。組織学的に嚢腫壁は多列円柱上皮で構成されており,一部で断頭分泌様所見を認めた。免疫組織染色ではCEAのみ陽性で,パンケラチン,α-SMA,EMA,GCDFP-15は陰性であり,アポクリン腺由来である可能性は少ないと思われた。臨床像と組織像から自験例を陰茎縫線嚢腫と診断した。陰茎縫線嚢腫は傍尿道口嚢腫と傍尿道口嚢腫以外の縫線嚢腫があるが,自験例はその発生部位から傍尿道口嚢腫と考えられた。
  • 飯田 秀之, 小林 信彦, 梅川 俊樹, 樋口 昌則, 田中 文, 波床 光男, 浅田 秀夫, 宮川 幸子
    2004 年 3 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    65歳,女性。27年前に子宮頸癌の既往がある。3年前より外陰部に米粒大の丘疹が出現し,徐々に拡大した。当科初診時,両小陰唇から大陰唇やや外側,会陰部,肛門周囲にかけて浸潤を伴い扁平に隆起する赤褐色の局面を認め,腟前庭から腟壁にかけても赤褐色の局面がみられた。外陰部Paget病を疑い生検を施行したところ,表皮突起のつぼみ状の延長,棍棒状の肥大がみられ,細胞配列の乱れ,核分裂像,不全角化を伴う異型ケラチノサイトの増殖を認めた。基底層は保たれており,Bowen病と診断した。全身麻酔下にて腫瘍切除術・筋皮弁移植術を施行した。切除した腟壁の擦過細胞から,PCR法と制限酵素による切断により,HPV16のDNAの存在を確認した。一方,以前の子宮頸癌の組織切片からはHPV-DNAは検出されなかった。
  • 山本 亜偉策, 北見 周, 秋山 正基, 末木 博彦, 飯島 正文, 大塚 尚治
    2004 年 3 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    38歳,男性。1歳時に掘炬燵で両足底に熱傷を負い3ヵ月後に瘢痕治癒した。37歳時,左足底の熱傷瘢痕上にびらんを生じ軽快しないため,10ヵ月後に当科を受診した。現症:両足底から足縁に熱傷瘢痕が認められ,左踵部に鶏卵大と拇指頭大のいずれも表面顆粒状の結節を伴う暗紅褐色の紅斑・びらん局面が隣接して認められた。熱傷瘢痕癌を疑い2カ所より生検した。病理組織所見:びらん部では辺縁に表皮内癌の所見を伴い,これと連続性に腫瘍胞巣が認められ,結節部では癌真珠を伴う胞巣が浸潤性に増殖していた。有棘細胞癌と診断し,瘢痕部を含め拡大切除・分層植皮術を施行した。術後3年を経過するが再発はない。
  • 竹村 典子, 山本 文平, 古田 未征, 桐山 貴至, 杉浦 久嗣, 上原 正巳, 岡部 英俊
    2004 年 3 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    55歳,女性。50歳頃より右第2指基部橈側に結節が存在した。疼痛などの自覚症状はなかった。結節は直径7mm大で半球状に隆起し,弾性硬で境界明瞭であった。2002年1月,局所麻酔下に切除し,単純縫合した。病理組織検査の結果,HE染色では,紡錘形の細胞の増殖からなる境界明瞭な腫瘍塊を表皮直下に認めた。一部花むしろ様配列を示した。悪性所見はなかった。免疫組織化学検査にて,epithelial membrane antigen陽性,S-100蛋白陰性,IV型collagen陽性,α-smooth muscle actin陰性であり,perineuriomaと診断した。現在,切除後約2年が経過したが,再発していない。
  • 石田 勝英, 塩入 有子, 石坂 泰三, 岩崎 博道, 藤田 博己, 高田 伸弘
    2004 年 3 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    症例は88歳,女性。約2日前に自宅近くの草むらに入り,全身を多数のマダニに咬着され,平成15年5月19日に当科を受診した。当科で229匹の虫体を摘除したが,すでに脱落した虫体も含めるとさらに多くの寄生を受けていたものと思われた。虫体はタカサゴキララマダニ幼虫と同定された。塩酸ミノサイクリンを予防投与したが虫体摘除2日後に発熱・全身関節痛・両腋窩リンパ節腫脹などの全身症状が出現した。塩酸ミノサイクリンは効果がなく中止し,多種の抗生剤を用いてようやく症状は軽快した。日本系および欧州系紅斑熱やライム病など,およそマダニが媒介し得るだけの各種感染症の血清抗体検査では陰性だった。全身症状の明らかな原因は特定できなかった。
使用試験
  • 船坂 陽子, 尾藤 利憲, 山本 麻由, 錦織 千佳子, 市橋 正光, 中村 正, 石田 耕一, 佐藤 広隆, 芋川 玄爾
    2004 年 3 巻 1 号 p. 62-72
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    2003年1月から4月までの4ヵ月間に神戸大学医学部附属病院皮膚科外来を受診したアトピー性皮膚炎,光線過敏症患者およびケミカルピーリング治療中患者47例に対し,「キュレル®UVミルク」と「キュレル®UVクリーム」の使用試験を実施した。
    本剤はいずれも紫外線吸収剤を含まず,紫外線散乱剤として微粒子酸化チタンを,角層のバリア機能および保湿機能改善剤として合成擬似セラミドを配合したSPF25,PA++のサンスクリーン剤である。
    4週間以上の使用試験において,46例中45例(98%)に有用性を認めた。また,副作用例はなく,有害事象例として1例に刺激感等をみたが,本剤使用との因果関係は不明であった。
    これらの結果から,本試験品はバリア機能が低下し乾燥した皮膚に対するサンスクリーン剤として安全かつ有用な製剤であると考えられる。
  • 松中 浩, 阿部 淑子, 大江 昌彦, 錦織 千佳子, 宮地 良樹
    2004 年 3 巻 1 号 p. 73-83
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル 認証あり
    アトピックドライスキンを有するアトピー性皮膚炎患者および既往者44例に対し,オリゴマリン®(濃縮海水ミネラル成分)配合ローションを乾燥部位に2ヵ月間塗布し,その安全性と有用性を評価した。
    オリゴマリン®は海水からナトリウムやカルシウムを減量濃縮して得られる微量元素を多く含む新規化粧品(医薬部外品)原料である。2ヵ月間の使用試験において副作用例はなく,皮膚所見,角層水分量などの機器測定,被験者自身の痒みに対する自己評価およびPOMS(Profile of Mood States)の結果を総合した有用性評価において,44例中36例(82%)に有用性を認めた。
    これらのことから,オリゴマリン®はアトピックドライスキンの患者に対し,安全性と保湿効果をはじめとする有用性の高い外用剤原料であり,さらにオリゴマリン®の使用によって皮膚症状が改善し被験者のQOL(Quality of Life)も向上することが明らかとなった。
feedback
Top