今回我々は,標準治療(ステロイド外用剤,タクロリムス外用剤,保湿剤,経口抗ヒスタミン剤)により加療中のアトピー性皮膚炎 (AD) 患者54例に漢方薬である十味敗毒湯を併用した結果,全体で特に問題となる副作用もなく,12週間の投与を終了したもののうち43例が有効性の解析対象となった。皮疹重症度点数は4週後より有意に低下し (p<0.001),皮疹改善度は投与終了時の12週後45.8±23.1%であった。十味敗毒湯は皮疹の3要素および面積に対し,いずれも有意な抑制効果を示した。中でも湿潤・痂皮が最も改善しており,面積に対して有意に高く,次いで紅斑・急性期丘疹であった。また,治療前の各皮疹要素が占める割合で表した要素別比率と皮疹改善度との相関性についても検討した結果,慢性丘疹・結節・苔癬化の比率と皮疹改善度とが負の相関性を示し (p<0.05),慢性丘疹・結節・苔癬化の比率が高いと治療に抵抗性であることが示唆された。以上の結果から,AD 治療における十味敗毒湯の使用目標を西洋医学的に観察した皮膚症状により判断し,治療の選択肢の1つとして十味敗毒湯を用いることができると思われた。(皮膚の科学,10: 34-40, 2011)
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