皮膚の科学
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10 巻, 1 号
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研究
  • ―皮疹要素別の検討―
    羽白 誠, 松本 千穂, 滝尻 珍重, 北場 俊, 室田 浩之, 片山 一朗
    2011 年 10 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    今回我々は,標準治療(ステロイド外用剤,タクロリムス外用剤,保湿剤,経口抗ヒスタミン剤)により加療中のアトピー性皮膚炎 (AD) 患者54例に漢方薬である十味敗毒湯を併用した結果,全体で特に問題となる副作用もなく,12週間の投与を終了したもののうち43例が有効性の解析対象となった。皮疹重症度点数は4週後より有意に低下し (p<0.001),皮疹改善度は投与終了時の12週後45.8±23.1%であった。十味敗毒湯は皮疹の3要素および面積に対し,いずれも有意な抑制効果を示した。中でも湿潤・痂皮が最も改善しており,面積に対して有意に高く,次いで紅斑・急性期丘疹であった。また,治療前の各皮疹要素が占める割合で表した要素別比率と皮疹改善度との相関性についても検討した結果,慢性丘疹・結節・苔癬化の比率と皮疹改善度とが負の相関性を示し (p<0.05),慢性丘疹・結節・苔癬化の比率が高いと治療に抵抗性であることが示唆された。以上の結果から,AD 治療における十味敗毒湯の使用目標を西洋医学的に観察した皮膚症状により判断し,治療の選択肢の1つとして十味敗毒湯を用いることができると思われた。(皮膚の科学,10: 34-40, 2011)
症例
  • 竹下 芳裕, 山口 絢子, 山根 裕美子, 高橋 一夫, 相原 道子, 池澤 善郎
    2011 年 10 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    IgG2,IgG4 欠損と低 IgE を伴う IgA 欠損症患者に生じたアトピー性皮膚炎様皮疹を経験した。32歳,女性。小児期より原発性免疫不全症。19歳以降低 IgAγ グロブリンの定期補充を受けている。31歳時全身にそう痒伴う皮疹出現し当科受診。落屑性紅斑,丘疹,色素沈着あり,アトピー性皮膚炎疑うも,IgE 低値。ステロイド内服開始したが難治性であった。γ グロブリン点滴時にそう痒悪化したため γ グロブリン補充間隔を長くしたところ,次回補充前に皮疹悪化。易感染性の助長が皮疹の悪化をきたすと推察。補充間隔を戻しステロイド内服は漸減中止したところ皮疹は改善した。γ グロブリン点滴時のそう痒は点滴に伴うストレスの影響を考えた。(皮膚の科学,10: 41-45, 2011)
  • 園山 悦子, 水野 麻衣, 坂井 浩志, 調 裕次
    2011 年 10 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    26歳,女性。2007年3月よりロングパルスアレキサンドライトレーザーによる脱毛治療をしていた。2008年2月,5回目のレーザー照射を下腿に施行後,左下腿屈側の“網状の皮疹”に気づいた。レーザー脱毛後色素沈着は毛包に一致した“毛包中心の皮疹”,照射径に一致した“円形の皮疹”,先端のリングの形状に一致した“三日月状の皮疹”などが経験されるが,自験例の皮疹はいずれにも合致せず,レーザー照射後に生じた“網状の皮疹”と考えた。この様な皮疹の報告はこれまでのところ本邦ではないが,見過ごされている可能性がある。レーザー脱毛後色素斑のタイプ別の発症機序について検討し,過去の報告とあわせ“網状の皮疹”について考察した(皮膚の科学,10: 46-49, 2011)。
  • 佐野 晶代, 秋田 浩孝, 清水 善徳, 鈴木 加余子, 吉川 哲史, 松永 佳世子
    2011 年 10 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
     2歳,女児。39°C 台の発熱,全身の不定形発疹,頸部リンパ節腫脹,眼球結膜充血,口唇の潮紅を認め川崎病と診断された。アスピリン 30mg/kg/day 内服,γグロブリン 2g/kg/day により治療を行い,川崎病は治癒した。その後,掌蹠に皮疹が出現した。膝周囲を中心とした四肢に角化性毛孔一致性の丘疹と掌蹠に落屑を認めた。皮膚生検組織像では,表皮突起の規則的な延長と真皮乳頭層における血管拡張,浮腫を認め,滴状乾癬と診断した。吉草酸酢酸プレドニゾロン含有軟膏を外用し当科初診から2ヶ月後に皮疹は消退した。滴状乾癬と川崎病の共通の病因として細菌感染のスーパー抗原が考えられており,両者の合併は興味深いと考え報告した。(皮膚の科学,10: 50-54, 2011)
  • 佐々木 良輔, 清水 善徳, 松永 佳世子, 鈴木 加代子, 佐藤 禎
    2011 年 10 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    34歳,男性。職業は競輪選手。5年前より四肢,躯幹に皮下結節が多発していることを自覚していたが放置していた。周囲に指摘されるようになり当科を受診した。当科受診時,両前腕,両大腿,腹部,背部に計11個の皮下結節を認めた。病理組織学的には,結合組織性の被膜に包まれた脂肪塊を認め,内部の脂肪細胞は変性し壊死に陥っており蜂巣状構造を形成していた。以上より結節性嚢胞性脂肪壊死症 (Nodular-cystic fat necrosis; NCFN) の中期病変と診断した。本邦では四肢,体幹に多発した NCFN の報告はなく,本例は競輪選手という職業により外傷が多いことが発症要因と考えた。(皮膚の科学,9: 55-59, 2010)
  • 酒井 美佐子, 西山 智司, 藤川 義明
    2011 年 10 巻 1 号 p. 60-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は74歳,男性。約1ヶ月前より左膝外側上方に移動する皮下腫瘤を認め当科受診。仕事は大工で膝を屈曲させた姿勢を頻回にとっており同部は繰り返し外力を受けていた。病理組織学的所見では薄い線維性の被膜に覆われたほぼ正常に近い蜂巣状構造をなす脂肪組織を認めたため nodular cystic fat necrosis の初期と診断した。本症に類似した疾患が様々な名称で報告されているが,脂肪変性の程度や時期の違いで名称が異なるにすぎず同一疾患との認識がされており,nodular cystic fat necrosis の名称で統一されるのが望ましい。(皮膚の科学,10: 60-62, 2011)
  • 和田 珠恵, 吉田 益喜, 吉永 英司, 大磯 直毅, 川原 繁, 川田 暁
    2011 年 10 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    60歳,女性。2003年に肛門管癌で腹会陰式直腸切断術を施行された。その後右鼠径部リンパ節・肺・肝などに転移がみられ,化学療法と放射線療法が行われた。2007年より下腹部に丘疹が出現,増加したため当科を初診した。下腹部から両鼠径部に光沢のある淡紅色丘疹が多発集簇していた。病理検査では,拡張したリンパ管内に原発巣と類似の腫瘍胞巣を認め,肛門管癌の皮膚転移と診断した。臨床像と組織所見から逆行性リンパ行性転移が考えられた。化学療法を継続したが,4ヶ月後に死亡した。肛門管癌の皮膚転移は通常 Pagetoid spread の形が多いが,自験例は逆行性リンパ行性転移という稀な転移様式をとったと考えられた。(皮膚の科学,10: 63-66, 2011)
  • 藤原 美智子, 黒川 晃夫, 森脇 真一
    2011 年 10 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    症例1は46歳,男性。約4ヶ月前より,右大腿内側に径 3.5mm 大,角化を伴う赤褐色の小結節が存在した。病理組織学的に,真皮の拡張した血管内の血栓形成と内皮細胞の乳頭状増生を認めた。症例2は67歳,男性。約2ヶ月前より,右手掌の第4指 MP 関節基部に,下床との癒着のない灰青色の径 7mm 大の皮下硬結が存在した。病理組織学的に真皮血管内に,内皮細胞が乳頭状に増殖する像がみられた。以上より,両症例を Intravascular Papillary Endothelial Hyperplasia (IPEH) と診断した。IPEH 本邦報告119例の集計から症例1は稀な部位,症例2は好発部位に生じた IPEH と思われる。(皮膚の科学,10: 67-70, 2011)
  • 小川 浩平, 長島 千佳, 北村 華奈, 横井 祥子, 野口 隆一, 増谷 剛, 淺井 英樹, 川井 廉之, 小林 信彦, 浅田 秀夫
    2011 年 10 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    40歳,男性。11歳時に発症した潰瘍性大腸炎に対して,約10年間プレドニゾロンを内服していた。顔面,上半身に多発する小水疱と発熱,腰痛を主訴に来院し,白血球増多と著明な肝機能障害を伴っていたため緊急入院した。Tzanck 試験で巨細胞を認め,PCR で水疱内容と末梢血から水痘帯状疱疹ウイルス DNA を検出し,成人水痘と診断した。急性肝炎と DIC を合併し,アシクロビル点滴静注に加え,ステロイドパルス療法や血漿交換療法などの集中治療を行ったが,入院4日目に永眠された。リスクファクターを有する水痘患者は重症化しやすく,注意を要すると考えた。(皮膚の科学,10: 71-75, 2011)
  • 三宅 宗晴, 川原 繁, 川田 暁, 望月 隆, 比留間 政太郎
    2011 年 10 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/10/12
    ジャーナル 認証あり
    症例1:8歳,女児。柔道教室に通っている。後頭部に円形の膿疱を伴う紅色局面があり,中央では脱毛あり。症例2:9歳,男児。症例1と同じ柔道教室に通っている。側頭部から後頭部にかけて広汎に鱗屑がみられ,一部に脱毛巣あり。症例3:5歳,女児。症例2の妹。両頬部に類円形の落屑性紅色局面が2ヶ所あり。3例とも,真菌の巨大培養,スライドカルチャー,および PCR-RFLP 法等により Trichophyton tonsurans 感染症と診断した。症例1はケルズス禿瘡型,症例2は脂漏性皮膚炎型,症例3は体部白癬型と考えられた。3例ともイトラコナゾール 1.7~2.8mg/kg/日の4週間内服により略治した。(皮膚の科学,10: 76-80, 2011)
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