悪性神経膠腫は,積極的な集学的治療を駆使しても,いまだ治癒に至らぬきわめて予後不良の疾患である.悪性神経膠腫(WHO classification grade 3/4)は,脳内白質に浸潤性に発育する傾向が強く,可及的腫瘍全摘出術,さらには術後の補助療法としての局所照射を用いた放射線療法を行っても予後不良である.特に,Grade 4の膠芽腫は神経膠腫の32%を占め,5年生存割合はわずか6%である.しかし,近年,この治療法にテモゾロミド(temozolomide:TMZ)(本邦での商品名:テモダール^[○!R])の化学療法を組み合わせることにより,有意な生命予後の延長が報告され,悪性神経膠腫の治療に化学療法の新たな展開が示された.さらに,前記臨床試験登録症例の5年間に及ぶ追跡調査結果の結果,5年以上の長期間に及ぶ生命予後の改善も認められるに至った.現在,新規分子標的薬の開発や新たな薬剤の組み合わせによる治療効果の向上が検討されつつある.例えば,本邦ではJCOG脳腫瘍グループにてIFN-βとTMZを併用した第II相臨床試験(INTEGRA study:JCOG0911)が開始されるなど,悪性神経膠腫の化学療法に新たな挑戦が精力的に試みられている.
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