脳神経外科ジャーナル
Online ISSN : 2187-3100
Print ISSN : 0917-950X
ISSN-L : 0917-950X
22 巻, 9 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集 虚血性疾患の課題と展望
  • 豊田 一則
    2013 年 22 巻 9 号 p. 666-670
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
     各種ガイドラインで, 頚動脈狭窄への内膜剥離手術や経皮的血管形成術・ステント留置術が強く推奨されているが, エビデンスの根拠となった臨床試験の発表年の古さや, 近年の内科治療 (薬物治療) の進歩を考えれば, 最良の内科治療こそ頚動脈狭窄治療の基本といえる. このうちスタチンは, 内中膜複合の肥厚の抑止やプラークの安定化を期待して, 用いられることが多い. 脳梗塞の一次予防のみでなく, 高用量スタチンが再発予防にも有効であることが証明された. 抗血小板療法は, 頚動脈プラークの破綻やびらんによって生じた微小塞栓が塞栓子として末梢側へ飛ぶのを防ぐために重要である. 脳梗塞再発予防としての抗血小板療法はルーチンには単剤治療が勧められるが, 頚動脈狭窄例の亜急性期 (たとえば発症後3カ月まで) には2剤併用が有用な場合もある.
  • 間瀬 光人, 片野 広之, 西川 祐介, 山田 和雄
    2013 年 22 巻 9 号 p. 671-677
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
     頚動脈狭窄症に対する頚動脈内膜剥離術と頚動脈ステント留置術について, 大規模臨床比較試験に基づくエビデンスをレビューし, 今後の課題について検討した. どちらの治療を選択するかは, 現時点では個々の症例において, よりlow riskのほうを選択すべきと考えられる. また内科治療の進歩は目覚ましく, 特に無症候性頚動脈狭窄症の外科治療については妥当性を含め再検討が必要である. 無症候性頚動脈狭窄症の自然歴や症候化に関与する因子を明らかにすることも重要である.
  • 包括的脳卒中センターの整備に向けて
    飯原 弘二, 西村 邦宏, 嘉田 晃子, 中川原 譲二, 小笠原 邦昭, 小野 純一, 塩川 芳昭, 有賀 徹, 宮地 茂, 豊田 一則, ...
    2013 年 22 巻 9 号 p. 678-687
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
     厚生労働科学研究費補助金事業「包括的脳卒中センターの整備に向けた脳卒中の救急医療に関する研究」 (研究代表者 飯原弘二) の中で, 日本脳神経外科学会, 日本神経学会および日本脳卒中学会教育訓練施設を対象に, 1) 米国ブレインアタック連合が推奨する脳卒中センターの推奨要件 (専門医, 診断機器, 専門的治療, インフラ, 教育研究) に関する施設調査を施行し, 749病院から回答を得て, 施設ごとの推奨要件の充足率に歴然とした格差が存在すること, 2) 脳卒中診療に従事する専門医の約半数が, 疲労やストレスなどが原因で仕事への意欲が大幅に低下する「燃え尽き症候群」の恐れがあることを明らかとした. 3) 2011年度にはDPC参加病院256施設において2010年度に加療した急性期脳卒中症例53,170例を登録し, 本邦における単年度の調査としては過去最大規模の横断調査を施行し, 死亡率に影響する施設要因, 人的要因について解析を行っている.
  • 吉村 紳一, 榎本 由貴子, 江頭 裕介, 渡會 祐隆, 岩間 亨
    2013 年 22 巻 9 号 p. 688-694
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
     組織プラスミノーゲンアクチベーター (rt-PA) 静注療法は広く普及したが, 適応外例・無効例が多いことが明らかとなり, 血管内治療の必要性が認識されている. しかしMerciリトリーバーやPenumbraシステムはランダム化試験において有効性が示されなかったため, ステント型リトリーバーなどの次世代型デバイスに期待がかかっている. 一方, 急性期バイパスやCEAについては安全であるとする報告が多いが, 治療成績が不良であるとする報告もあり, 質の高い比較試験が期待される.
  • 藤村 幹, 冨永 悌二
    2013 年 22 巻 9 号 p. 695-698
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
     もやもや病は両側内頚動脈終末部と周囲の動脈が進行性に狭窄・閉塞し, 付近に異常血管網を認める原因不明の疾患である. 近年, 分子生物学・遺伝学の進歩により病態解明が飛躍的に進んでいる. 一方, 動的疾患としてのもやもや病の本態はいまだ不明である. 本疾患が提唱された原点に戻ると, 鈴木分類として知られる脳血管撮影上の経過は, いわば本疾患特有の代償機構による脳血管像の生理学的自然経過とも呼べるものであり, われわれはこの内頚動脈系から外頚動脈系への緩やかな変換を “internal carotid-external carotid (IC-EC) conversion” と呼んでいる. この代償機構に破綻が生じ脳虚血病態を呈した場合に血行再建術の適応となる一方, 代償機構が治療介入なく完遂される場合も少なからず認められる. 本疾患の本態を解明するにあたっては, もやもや病の生理学的代償機構としての “IC-EC conversion” の制御システムとその破綻の機序解明, という動的視点からのアプローチが必要であると考えられる.
原著
症例報告
  • 富永 貴志, 花北 順哉, 高橋 敏行, 渡邊 水樹, 河岡 大悟, 新井 大輔, 森本 貴昭, 堀川 恭平
    2013 年 22 巻 9 号 p. 707-712
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
     症例は68歳男性. 転落により第1腰椎圧迫骨折をきたした. 受傷約2カ月後, 重量物を挙上した際に腰痛が出現した. 数日後より両側臀部から大腿裏面への痺れも出現し, 入院時には脊髄円錐症候群の状態であった. 第1腰椎の椎体破裂と椎体後面の嚢腫性病変を認め, 脊髄造影で同レベルでの完全ブロックを認めた. 手術では, 表面平滑で白色調の嚢腫壁が確認され, 切開により内部から淡血性で漿液性の液体が流出した. 除圧確認後, 椎体形成と後方固定を行った. 術後, 神経脱落症状は完全消失した.
     本症例は, 第1腰椎椎体内に貯留していた液体が急激な圧負荷により脊柱管内に脱出した結果, 嚢腫性病変を形成したと考えた.
  • 寺田 行範, 波多野 武人, 早瀬 睦, 織田 雅, 中村 威彦
    2013 年 22 巻 9 号 p. 713-718
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
     CVカテーテルによる損傷で生じた頚部仮性動脈瘤に対して, 外科的治療を行った1例を報告する. 73歳男性, S状結腸穿孔による腹膜炎で前医にて緊急開腹術が行われた. その際, CVカテーテルの左内頚動脈への誤挿入があった. 術後, 嗄声が出現し, 精査で左内頚動脈に仮性動脈瘤を認め, 当院紹介となった. 血管撮影検査で, 内頚動脈起始部に外向き最大径18mmの動脈瘤を認めた. 直達手術による動脈瘤の切除と瘤開口部の縫合を試みたが, 周囲との癒着が強く困難であった. 同病変を正常血管とともに切除し, ePTFEリング付きグラフトに置換した. 術後経過は良好であった. ePTFEリング付きグラフトは, 頚動脈の再建材料として有用と考えられる.
神経放射線診断
feedback
Top