当センターでは後天性脳損傷児のリハビリテーションに力を入れており, 脳損傷回復期の小児を長期にわたり診療している. われわれは「神経回復」を「機能回復」ととらえて評価していく. 小児において機能回復は成人になるまで続いていくが, それは小児の脳がもつ可塑性と発達の2つの要素に依っている.
小児の後天性脳損傷の代表は脳外傷 (TBI), 急性脳症, 低酸素性脳症, 脳血管障害 (CVA) であるが, 今回は当センターで入院リハビリテーションを行った小児期発症の脳神経外科疾患として, TBI 210例とCVA 71例 (出血42例, 梗塞29例) の実態を報告した. TBIの原因は交通事故151例, 虐待29例などであり, 身体障害109例, 知的障害100例, 高次脳機能障害167例, てんかん54例などを後遺していた. TBI全体の機能予後は中等度であったが, 交通事故の予後が中等度であるのに比べ, 虐待の予後は非常に悪かった. CVAの原因は脳出血では脳動静脈奇形破裂が32例と大半を占め, 脳梗塞では脳外傷に伴う場合, 脳血管異常, 周術期がそれぞれ1/3であった. CVA全体の後遺症は, 身体障害64例, 知的障害22例, 高次脳機能障害57例, てんかん11例などであった. 脳出血に比べ, 脳梗塞のほうが障害がやや重度であった. CVA全体の予後は比較的良好であった. 10年以上経過を追っているTBI例の神経心理学的検査の変化などを提示し, リハビリテーションの有用性についても述べた.
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