脳神経外科ジャーナル
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25 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集 小児脳神経外科
  • —病態概念の変遷と治療—
    刈部 博, 林 俊哲, 成澤 あゆみ, 亀山 元信, 冨永 悌二
    2016 年 25 巻 4 号 p. 300-306
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
     小児水頭症の病態概念の変遷と治療について概説する. 古くは水頭症は脳内に髄液が貯留した状態と考えられていた. 20世紀に髄液循環の概念が確立し水頭症は髄液循環障害と考えられるようになった. 最近, 髄液は広く毛細血管から分泌・吸収されることが明らかになり, また, 小児の髄液循環は成人とは異なるとする説が唱えられている. 水頭症治療は髄液ドレナージに始まり, 髄液循環の概念が確立するとともに交通性・非交通性に分けて考えられるようになった. 近年, 非交通性水頭症治療の第1選択は内視鏡的第三脳室底開窓術である. シャント手術は, さまざまな試みを経て脳室腹腔短絡術が定着した後, シャントバルブにさまざまな改良がなされている.
  • 金村 米博
    2016 年 25 巻 4 号 p. 307-314
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
     従来, 髄芽腫の治療は年齢, 転移状態, 術後残存腫瘍量から高リスク群と標準リスク群に大別し, 標準治療法が開発されてきた. 一方, 近年の研究は, 髄芽腫は臨床的および分子遺伝学的特徴が異なる複数亜群に分類可能であることを示し, 基本4分子亜群 (WNT, SHH, Group 3, Group 4) の国際的コンセンサスが形成された. 分子亜群分類は新規の予後予測指標であると同時に, 転移状態, 遺伝子/体細胞コピー数異常と組み合わせて, より詳細なリスク層別化法に応用されつつある. 分子亜群に応じた治療法の検討が始まり, 今後は分子遺伝学的診断が髄芽腫の臨床診断に組み込まれ, 新規治療戦略の開発に貢献すると予測される.
  • 西川 亮
    2016 年 25 巻 4 号 p. 315-318
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
     2013年に英国で開催された第3回国際中枢神経胚細胞腫シンポジウムにおいて発案された中枢神経胚細胞腫の診断・治療に関するコンセンサスが, 国際的な専門家のパネルによって討論され, その結果が2015年にわが国で開催された第4回シンポジウムにおいて発表された. Delphi法により38コンセンサスに対して投票が行われ, 改良され, 最終的に34のコンセンサスが採用されている.
     本稿ではそのパネルの1人である著者が, 採用されたコンセンサスの内容, 同意レベルについて, さらに不採用となった命題について解説を加える. 不採用命題のいくつかは宿題とされ, 2017年に米国で開催が予定されている第5回シンポジウムにおいて討議される予定である.
  • —その腰仙椎部皮膚所見—
    田代 弦
    2016 年 25 巻 4 号 p. 319-329
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
     潜在性二分脊椎は, 一般の脳神経外科医にとってなかなかなじみのない疾患である. 多様に分類されている本症について, 発生段階からそれらの病態や相違を理解することは, 神経学的諸症状や多臓器合併症との関連, また外科的治療においての要点を把握する重要な手がかりとなる. 本稿では当院で経験した代表的症例を, 可能なかぎり多く供覧し, 本症をどのような皮膚外表所見で疑うべきか, どのように処置・治療すべきかについて, 文献的考察を加えながら解説する.
  • 栗原 まな
    2016 年 25 巻 4 号 p. 330-337
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
     当センターでは後天性脳損傷児のリハビリテーションに力を入れており, 脳損傷回復期の小児を長期にわたり診療している. われわれは「神経回復」を「機能回復」ととらえて評価していく. 小児において機能回復は成人になるまで続いていくが, それは小児の脳がもつ可塑性と発達の2つの要素に依っている.
     小児の後天性脳損傷の代表は脳外傷 (TBI), 急性脳症, 低酸素性脳症, 脳血管障害 (CVA) であるが, 今回は当センターで入院リハビリテーションを行った小児期発症の脳神経外科疾患として, TBI 210例とCVA 71例 (出血42例, 梗塞29例) の実態を報告した. TBIの原因は交通事故151例, 虐待29例などであり, 身体障害109例, 知的障害100例, 高次脳機能障害167例, てんかん54例などを後遺していた. TBI全体の機能予後は中等度であったが, 交通事故の予後が中等度であるのに比べ, 虐待の予後は非常に悪かった. CVAの原因は脳出血では脳動静脈奇形破裂が32例と大半を占め, 脳梗塞では脳外傷に伴う場合, 脳血管異常, 周術期がそれぞれ1/3であった. CVA全体の後遺症は, 身体障害64例, 知的障害22例, 高次脳機能障害57例, てんかん11例などであった. 脳出血に比べ, 脳梗塞のほうが障害がやや重度であった. CVA全体の予後は比較的良好であった. 10年以上経過を追っているTBI例の神経心理学的検査の変化などを提示し, リハビリテーションの有用性についても述べた.
  • 宇都宮 英綱, 山崎 麻美
    2016 年 25 巻 4 号 p. 338-345
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
     遺伝子解析法の発展とともに中枢神経先天奇形の画像診断の臨床的意義はますます重要性を増している. 一方で, 今日のMRIの進歩は胎児期からの中枢神経の形成過程や, その異常をある程度正確に把握することを可能にした. 本稿では胎児期に診断できる代表的中枢神経奇形の中で, 形態発生がまったく異なるにもかかわらず, MRI所見が類似する奇形を取り上げ, その診断および鑑別診断のポイントを発生学的知見に基づいて概説する.
温故創新
症例報告
  • 佐々木 貴史, 村上 謙介, 安達 章子, 野下 展生, 高橋 俊栄, 金子 宇一
    2016 年 25 巻 4 号 p. 349-354
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
     再疎通を伴う瘤内血栓化を認めた前大脳動脈末梢部小型動脈瘤の1例を経験した. 症例は突然の頭痛で発症した62歳女性のくも膜下出血. 急性期の脳血管造影では動脈瘤を認めず, 第33病日に施行した3回目の血管造影で前大脳動脈瘤を診断し直達手術を行った. しかしながら動脈瘤は血栓化しており, ICG蛍光血管造影では血流を認めなかった. 動脈瘤を切開して血栓を除去し, ネッククリッピングを行った. 摘出した血栓は器質化し, 新生血管による再疎通の所見を認めた. これは亜急性期ないしは慢性期になって描出される破裂動脈瘤の病態を説明する興味深い所見と考え報告した.
治療戦略と戦術を中心とした症例報告
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