応用地質
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56 巻, 5 号
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論説
  • 千木良 雅弘
    2015 年 56 巻 5 号 p. 200-209
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/01/23
    ジャーナル フリー
    深層崩壊は,急激な動きと長距離移動を伴い,甚大な災害を引き起こすため,その災害軽減には,場所を予測することが第一に必要である.本論では,深層崩壊の実績に基づいて,発生場所の地質・地形的特徴,および発生危険度についてとりまとめ,最後に今後の研究について展望した.降雨による深層崩壊は,大抵の場合それに先行して重力斜面変形が生じていることから,重力斜面変形のタイプを分類し,これに斜面上部の小崖の有無,斜面下部の崩壊の有無などの地形的特徴を加味して発生危険度を4段階に区分した.地震による深層崩壊には,発生前の斜面不安定化過程がいくつか認められる.1つ目は化学的風化,2つ目は重力斜面変形,3つ目は事前に地すべりが対岸に衝突し,その後下部を侵食などによって切断され,不安定化している場合,4つ目は地震時に水が地下から噴出して発生する地すべりである.深層崩壊に関連して,今後次のような研究の展開が期待される.重力斜面変形の地震時不安定化,ハロイサイトに富む土の動的性質,さらに,粘土や岩石のせん断強度の速度依存性,降雨の高解像度計測とリンクした斜面内部の水の挙動と斜面の不安定化の解明である.
論文
  • 高見 智之
    2015 年 56 巻 5 号 p. 210-218
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/01/23
    ジャーナル フリー
    山体の重力変形は,深層崩壊や大規模な地すべりの発生のほか,岩盤の緩み,地山掘削時の斜面変動などに密接に関連している.山体の重力変形は,空中写真判読が普及し始めた頃から,二重山稜や山向き小崖など特異な地形をもとに指摘され,その地形地質環境の特徴の記載と成因の推定が進められてきた.近年普及した航空レーザ測量を用いることにより,斜面の段差や凹地などの微地形を高精度に把握することが可能となった.航空レーザ測量から構築される超細密DEMを用いて地形画像を作成し,微地形の解析を行うことにより,従来から記載されてきた地形的特徴をより高精度に記載することができる.微地形の斜面上の位置や形状,規模,微地形群の組み合わせなどから類型化し,重力変形の範囲や変形機構の推定を試みた.線状凹地などの微地形の成因を推定し,斜面上部と下部の地形の組み合わせと地質構造に基づいて変形のタイプ分類を行うことにより,変形の広がりや深さ,変形様式,安定度を定性的に推論することが可能である.
  • 小坂 英輝
    2015 年 56 巻 5 号 p. 219-229
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/01/23
    ジャーナル フリー
    著者は,重力変形が初生地すべりに至ることにより形成される地形について研究した.対象斜面は地すべりが最も発生しやすい流れ盤(柾目盤)斜面と逆目盤・受け盤斜面である.解析方法は,地質構造解析に用いられるバランス断面法を使用した.それによると,斜面の頭部と末端部に緩斜面が形成されたものは,初生地すべりと認定できる地形と解釈される.さらに,変形した斜面の変位率と傾斜を測定し,初生地すべりに至る変形の度合いや地質により初生地すべりが発生する変位率と斜面の傾斜が異なる傾向を得た.これらの知見を用いると,重力変形斜面での大規模土工の危険性や土工計画あるいは対策方法に関して,地すべり発達段階に応じた評価を示すことができると考える.
  • 小俣 新重郎
    2015 年 56 巻 5 号 p. 230-238
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/01/23
    ジャーナル フリー
    岩盤斜面の浸食の進行や重力変形の事例をもとに,ゆるみから地すべりの発生に至る機構を検討した.遷急線が発達しその上方に緩斜面が残存する斜面では,引張強度に依存する上部斜面での重力変形が顕在化し,山腹緩斜面や線状凹地,斜面内部でのゆるみや風化がみられる.ゆるんだ斜面は下部斜面の圧縮強度や支持構造で支えられ,浸食,湛水,豪雨,地震などを誘因として下部斜面が破壊すると,初生地すべりが発生することが推定される.ゆるみに伴う変形構造は,流れ盤斜面では不連続面沿いのずれ変位と斜面下端部の座屈褶曲が,受け盤斜面では岩体のキンク,折れ曲がり,ブロック転倒回転,不連続面を乗り移る階段状のせん断破壊などが特徴的である.ゆるみに伴う塑性変形量は,全体に延性の大きい岩から構成される斜面や,概ね脆性の岩で構成されていても応力集中する斜面下端部に延性の大きな岩が分布する斜面などでは大きい.岩盤斜面のゆるみは段丘面の形成等の河川浸食のステージに応じて進行し,ゆるんだ斜面では密度が小さく透水性が大きくなるため,地山弾性波速度が小さく,自然地下水位や岩盤強度が低下する.
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