日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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1972 巻, 3 号
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  • 田中 甫, 藤郷 森
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 481-486
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    膠質土はシリカ-アルミナを主成分とするゲル状物質で,鉱物学的にはアロフェン(allophane)に属する粘土鉱物である。現在,膠質土は吸湿剤,触媒などとして利用されているが,天然物であるので,鉄分などの不純物を含有するため,利用範囲も限定されているのが現状である。この土のもつ表面特性をそこなうことなく鉄分を除くことを目的として,本実験はJacksonらの手法を適用し,膠質中に存在する鉄分の除去,および膠質土中にいかなる状態で鉄分が分布しているかを検討したものである。実験は撹押槽回分式反応器を使用し,分析法は一般粘土鉱物分析法に準じ,シリカ,アルミナ,酸化鉄,強熱減量について行なった。その結果,黄色系寺内土に対して90%,赤色系今市土に対して93%の鉄分は除去され,白色化され,しかも表面特性は失われなかった。最適処理条件は処理反応時間15分,処理反応温度60℃で,膠質土1gに対して,0.3molクエン酸ナトリウム40ml,ハイドロサルファイト1g使用したものであった。
  • 中川 敏男
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 486-490
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セレンにテルルおよびイオウを同時に加えたSe-Te-S結晶の挙動を調べるため,無定形のSe-Te-Sを120℃で結晶化し,電気伝導度の温度依存性を測定した。
    テルル5atom%含有した結晶セレンの電導度はイオウ量が2%付近までゆるやかに低下し,それ以上のイオウ量では急激な上昇が起こる。さらに10%以上になると逆に急激に低下した。テルル10%,15%の場合はイオウ量が多くなってもこの傾向はゆるやかであった。
    これらのイオウ量の多い部分における電導度の低下は,X線回折の結果からもセレン-テルル固溶体の回折線とは異なっていた。しかしこの回折線はセレン-テルル六方晶形構造の格子の一部にイオウが置換し,結晶軸の大きな単位格子をつくるためと考えられる。さらに示差熱分析では融点の近くに吸熱がみられた。したがって,この電導度の低下の原因はセレン-テルル固溶体をイオウが包んだ包晶のためと思われる。
  • 斎藤 博
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 491-495
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリオキシエチレン・アルキル(C6~C12)フェニルエーテルのシクロヘキサン溶液への水の可溶化について,温度と可溶化剤のオキシエチレン鎖長と炭化水素鎖長とを変えて調べた。最大可溶化量はその同じ最適温度において親水基部分と親油基部分が大きくなるにしたがい顕著に増加した。さらにポリオキシエチレン(平均鎖長=7.4)ノニルフェニルエーテルのシクロヘキサン溶液への水の可溶化におよぼすシュークローズ,ミリステートとソルピタン,モノラウレートの混合の効果を調べた。
  • 土肥 義治, 吉本 保文, 慶伊 富長
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 495-499
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    TiCl3-Al(C2H5)2Cl触媒系によるプロピレン無触媒気相重合の速度論的挙動を明らかにし,液相重合と比較検討した。無溶媒系での定常重合速度Rは,[Al]/[Ti]モル比の増加にともない一定値に近づき,[A1]/[Ti]モル比約4で液相重合の定常速度Rと一致した。Rは,[Al]/[Ti]モル比をA,プロピレン圧をP,速度定数をkpとすれば次式により整理できる。
    [Al]/[Ti]モル比0.5および1.0で,無溶媒気相重合系へ溶媒を添加していくと重合速度は上昇し,多量の溶媒添加により液相重合速度と一致した。
    これらの結果は無溶媒重合系における助触媒Al(C2H5)2Cl自体が溶媒と同一の効果をもつことを示しており,上式におけるAが小さいとき,すなわち助触媒が少量のとき,活性が小さい理由は重合活性点からのポリマー分子の不完全な除去のためであると推論した。
  • 越後谷 悦郎, 中村 隆一
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 500-506
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    担体付のMoO3,WO3触媒上でプロピレンの不均化反応を行ない,第三成分の添加による有効な触媒の探索および前処理ガスの影響,アルミナ,シリカなどの担体の影響を主としてMoO3触媒について検討し,活性点について考察することを目的とした。
    500℃で酸素または窒素処理した触媒上で100~200℃で反応を行なった結果,WO3-γ-Al2O3がもっとも高活性だったが選択性が低く,MoO3-γ-Al2O3は初期活性は高いがいちじるしい経時変化を示した。この経時変化はCoO,FeOなどの添加によりいちじるしく減少した。また活性は担体の種類により大きく異なり,α-Al2O3,SiO2担体の場合はまったく活性を示さないが,MoO3-SiO2,Al2O8の場合はMoO3-γ-Al2O3の約4倍の活性を示し,一般に担体の酸性と反応活性との間に関連があるように推察された。しかし触媒を水素還元すると活性がいちじるしく増加すること,SiO2-α-Al2O3担体の場合でもかなりの活性を示すようになること,また水素還元したMoO3-γ-Al2O3に酸素を吸着させることによりいちじるしく活性が低下することなどにより,活性点はある程度還元状態の酸化モリブデンで担体の酸性は反応に直接関係せず,活性点の生成に重要な役割をするものと推察された。
  • 藤元 薫, 吉野 浩樹, 功刀 泰碩
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 507-512
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性炭あるいはシリカゲル上に担持した金属パラジウムを触媒として水蒸気の存在下プロピレンを酸化するとアクロレインおよびアクリル酸が同時にかなり高収率で得られることを見いだした。従来の遷移金属酸化物を触媒とする場合と異なり,反応温度は160℃以下であった。
    生成物はアクロレイン,アクリル酸および二酸化炭素が大部分である。アクリル酸および二酸化炭素は温度上昇とともにその生成量が増大したが,アクロレインの生成は140℃前後で極大となった。反応系に水蒸気が共存しない場合にはアクロレイン,アクリル酸はまったく生成せず,またアクリル酸およびアクロレインの生成量は水蒸気分圧に比例した。上記生成物の生成速度は次式で近似された
    金属パラジウム上にπ-アリル型で吸着したプロピレンと水(または水酸イオン)との反応および解離吸着酸素による酸化脱水素を基礎とする反応機構を提案した。二酸化炭素の生成は水蒸気分圧に依存せず,またプロピレンによって抑制されることからアクロレインおよびアクリル酸とは別の径路によって生成するものと推定した。
  • 福田 安生, 田部 浩三, 岡崎 進
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 513-517
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ土類酸化物の触媒作用の特性を明らかにするため,標記反応を0~40℃で研究した。32℃における触媒活性の序列は,MgO<CaO=SrO=BaOであり,活性化エネルギーはそれぞれ11.1,11.5,20.3および20.3kcal/molであった。MgOとCaOの場合は,pKα≧12.2の塩基強度をもった塩基点の量と触媒活性との間にかなりよい相関関係があった。SrOおよびBaOの触媒作用はMgOおよびCaOの触媒作用といちじるしく異なり,前者の触媒では長い誘導期間が観測されたが,後者では見られなかった。O2,H2OおよびCO2の吸着実験によれば,誘導期間はCO2の吸着によって現われ,その脱離によって消失する。X線回折,示差熱分析および赤外吸収スペクトルの結果と塩基性および活性測定の結果から,触媒の活性点は脱水された酸化物の不安定結晶構造に関連することがわかった。CaOに残留するOHを重水素化したものにジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)を吸着させたものの赤外吸収スペクトルによれば,ジアセトンアルコールの吸着により2760cm-1のOD吸収は移動しないが,3650cm-1に新しいOH吸収が現われることがわかった。これらの結果からこの反応に対するCaOおよびMgOの活性点は不安定結晶構造のO2-イオンであり,OH基ではないと結論した。
  • 岡田 正秀, 浅見 幸雄, 草野 哲二
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 518-522
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Al2O3とK2Oで二重促進したFe2O3触媒のエチルベンゼン脱水素能におよぼす還元の効果について調べた。還元ガスは水素,CH3OH,HCHOおよびCOを用い,還元温度は400~530℃の範囲とした。触媒活性試験は常圧気相流通系において触媒量0.59を用い,触媒床温度460~500℃,エチルペンゼンのW/F比5.6~11.2g-cat,hr/molおよび水蒸気/エチルベンゼンのモル比5~15の範囲の条件下で行なった。
    調べた条件下では,これらガスを用いて還元することにより未還元触媒の活性,選択性はつねに増大した。還元ガスはCOがもっとも有効であった。X線回折分析により,未還元試料中の鉄はα-Fe2O3として,また還元試料中のそれは主としてFe3O4とγ-Fe2O3として存在することがわかった。
    還元触媒のスチレン生成能は試料中微結晶Fe3O4の含有量よりむしろ微結晶γ-Fe2O3のそれとほぼ平行関係を示した。
  • 加藤 博久, 小門 宏, 井上 英一
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 523-528
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ-N-ビニルカルパゾールは多ハロゲン化物との光化学処理を施すことにより高感度な電子写真材料とすることができる。ポリ-N-ビニルカルパゾール,多ハロゲン化物系は光化学的に色素を生成する。この色素はポリマー中に不純分として含まれているN-ビニルカルバゾールと多ハロゲン化物の混合系を光化学的に処理して得られる色素とは吸収スペクトル的に区別することができる。また,ポリ-N-ビニルカルバゾールの光電導性の増感効率を比較すると,前者の色素を含むものの方がすぐれた効果を示すことがわかった。
    光化学処理を施した試料では,可視域の光電流は正極側照射時より,負極側照射時の方が大きい。しかし,紫外域では正極側照射時の方が大きく,本来P型光電導体であるといわれるポリ-N-ビニルカルバゾールの性質を保持している。このような励起波長域による増感光電流の極性の差異は,ポリ-N-ビニルカルバゾール中でのキャリヤーの生成機構の違いを示しているものと考えられる。
  • 野村 実, 阿部 光雄, 伊藤 卓爾
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 529-533
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸タンタルは濃塩酸酸性塩化タンタル(V)溶液をリン酸水溶液中に添加してつくった。そのゲル状沈殿をそのまま溶液中に25時間放置したのち,分離し,水洗して乾燥した。その生成物の組成はTaO2,(H2PO4)0.88,6H20で示され,無定形であり,また化学的に安定であった。
    リン酸タンタルはそのpH滴定曲線から弱酸性の陽イナン交換性を示し,そのイオン交換容量はアルカリ溶液中で3.8meq/gであった。低濃度アルカリ金属イオンの吸着力の順序はイオン交換樹脂やリン酸ジルコニウムと同様で,Li+<Na+<<K+<Rb+<Cs+の順に増加した。また他方では,ナトリウムイオンとカリウムイオンの相互の分離係数は強酸性イオン交換樹脂にくらべるとより大きかった。
    リン酸タンタルによるイオン交換は,pH滴定曲線や赤外吸収スペクトルの測定結果から,比較的低いpH領域では二塩基リン酸基の解離によってつくられる水素イオンによって行なわれるものと考えられる。
  • 梶原 鳴雪, 斎藤 肇
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 534-538
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化ホスホニトリル三量体のα,α'-キシレンジオールのアルコキシド置換体P3N3Cl(6-x)(OCH2,C6H4,CH20H)x(X=3,6)およびP3N3Cl(6-2r)(OCH2,C6H4,CH20)y(Y=1~3)を用いて重合反応を行なった。P3N3(OCH2,C6H4,CH20H)6のオルト[1],メタ[2]およびパラ[3]置換体を25~150℃で加熱したとき,水が生成していることがガスクロマトグラフでわかった。
    さらに200℃の温度で加熱した結果,ホルムアルデヒドが生成していることが,ガスクロマトグラフでわかった。これはエーテル結合がメチレン結合へ変わったことを示している。一方,o-キシリレンのジアルコキシド,すなわち,P3N3Cl4(o-OCH2,C6H4,CH20)[4]とP3N3Cl2(o-OCH2,CsH4,CH20)2[5]を200℃の温度で加熱した結果,樹脂状重合体が得られた。けれどもP3N3(o-OCH2,C6He,CH20)3[6]置換体からは重合体は得られなかった。これらの重合体は水に安定であるが,塩素を含む重合体は希硫酸,硝酸あるいは水酸化ナトリウム溶液に不安定である。しかし熱に安定であった。重合体の熱分解をガスクロマトグラフで調べた結果,320℃の温度で多量のキシレン,少量の水とホルムアルデヒドが生成していることがわかった。
  • 岩瀬 政吉, 四ッ柳 隆夫, 後藤 克己
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 539-546
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルミニウム塩の凝集沈殿反応に対するアニオンの効果を明らかにするために,各種アニオンの存在する系のアルミニウムイオンの加水分解反応を,単核錯体定量法を用いて研究した。
    アニオンの影響は,(1)加水分解反応に影響を与えないもの,(2)凝集に対する最適pHを酸性側に移行させるもの,(3)凝集に対する最適pHを中性側に移行させるもの,の三つに分類できることが明らかとなった。この(2)と(3)のアニオンの効果の差異は多核錯体を安定化させるか,単核錯体を安定化させるかの違いによる。凝集反応に大きな影響を与えるのは(2)のグループのアニオンである。
    微アルカリ領域ではアニオンは加水分解反応に影響を与えない。
    実験結果からつぎの平衡定数を得た。多核アルミニウムイオンの硫酸塩の溶解度積として,[A13+][OH-]2.69±0.04,[SO42-]0.2±0.02=10-29.6±0.4(25℃,イオン強度0),また水酸化アルミニウムに対しては,[A13+][OH-]3=10ny32,9s±o,e6(23±2℃,イオン強度0,1)および[Al(OH)4-][H+]=10'-12.2s±0.07(12分,20℃イオン強度O.1)を得た。
  • 荒井 康夫, 安江 任, 三宅 久利
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 547-555
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水和物結晶のメカノケミカル脱水の例として,摩砕によるMg(OH)2結晶の徴細化および構造変化過程ecついて換討した。とくにシリカとの反応をさけるため,メノウ乳バチのかわりlcWC-Co系超硬合金乳バチを用いて摩砕を行なった。
    Mg(OH)2を空気中で摩砕するとすみやかにX線的に無定形化するが,大気中のH2O,CO2の影響によりいちtるしく増量する。そのDTA曲線は4MgCO2,Mg(OH)2,4H2Oの組成として報ぜられている塩基性炭酸マグネシウムのそれとよく類似している。空気中よりH2O,CO2をとりのぞいて摩砕を行なっても無定形化するが,その重量変化からはメカノケミカル脱水は認められない。そのDTA曲線における特徴は,Mg(OH)2の分解後引きつづいて起こるMgOの再結晶に基づく発熱ピークである。いずれの場合も比表面籏は最大値(60m2/9)に達するが,24時間以後は2次粒子の生成によりその値はしだいに低下する。,
    10-2mmHg程度の真空中で摩砕すると,Mg(OH)2のすみやかな無定形化とともにメカノケミカル脱水の結果として24時間後には,はっきりとMgO結晶が認められ,70時間後には,その量は55%iこ達する。綱分化Pt瞬界に近づくとともに不整化,膨張化したMgO結晶(格子定数4,2368A,結晶子の大きさ100A)は無定形Mg(OH)2とメカノケミカル平衡に達する。この場合,空気中摩砕物とくらべ比表面積はいちじるしく増大する(70時間後には200m2/g)。摩砕物の表面活性を塩基性点の数から討議した。
  • 山本 伸, 吉村 克己, 塗師 幸夫, 日比野 泰三
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 556-562
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリカとジルコニアからジルコンを合成する反応におよぼすフッ化ストロンチウムの影響をX線回折,高温X線回折,赤外吸収スペクトル,示差熱分析,錠剤による反応などを用いて調べた。
    試料は空気中,フッ化水素ガス中,四フッ化ケイ素ガス中などで加熱し,生成物を検討した。その結果,フッ化ストロンチウムは約1000℃付近でシリカおよびジルコニアと反応して,赤外吸収スペクトルにおいて950~1100cm僧霊に吸収が確認できるX線回折像をもたない無定形と考えられる生成物をいったん生じその状態をへてジルコンが生成していることを示した。またこの生成物は生成とほぼ同時に液相となりジルコニアの単斜晶系から正方晶系への転移を促進して活性化し,一層ジルコソの生成反応促進に寄与していることを認めた。
  • 野々山 松雄, 友本 由夫, 山崎 一雄
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 562-568
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N'-ジメチル-2,6-ピリジンジカルボンアミド(以下mdpH2と略記する)を配位した錯体は酸アミド基およびピリジン環に基づく赤外吸収スペク下ルからつぎの三つの型にわけられる。
    A型:MX2(mdpH2),nH20(M=Co,Ni,Cu,X=Cl,Br),M(mdpH2)2(CIO,)2,2H20(M=Ni,Cu)。B型:M(NCS)2(mdpH2)2,4H20(M=Co,Ni),Co(mdpH2)4(CIOs)2,10H20。C型:H[MCl(mdp)](M=Pd,Pt)。A型錯体中ではmdpH2はピリジン環の窒素と二つの酸アミド基の酸素とで配位している。これらのうちコパルト錯体は八面体と四面体との錯イオン[Co(mdp馬)2][CoX4],H20から構成されているが,他の金属の錯体は八面体である。B型錯体中ではmdpH2は金属に配位せずに金属塩の格子中に取り込まれているにすぎないが,加熱する'と脱水されてA型錯体と同様になる。C型錯体では酸アミド基は水素を失って窒素で配位している。このC型錯体の構造は塩化物イオンが配位した平面であり,白金およびパラジウム以外の金属についてはC型錯体は単離できなかった。
  • 野崎 亨, 春日 邦宣, 小柴 訓治
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 568-574
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH1.5~3,0,μ=O,1,20℃での水溶液中で,260mμでの吸光度の経時変化を測定して,EDTA類似のEDTA-OH,GEDTA,DTPAの鉄(III)錯体とインジウム(III)との置換反応速度を調べ,EDTA-OH,DTPA系の正,逆両反応速度式を,GEDTA系の正反応速度式をそれぞれ求めた。各反応径路の全反応速度に対する寄与率を計算した結果,EDTA--OH,GEDTA系正反応は錯体の解離段階が律速である解離径路を経て,DTPA系正反応は複核中間体生成過程を経て,EDTA-OH,DTPA系逆反応は両径路を経て進行することが推定された。また,In(III)--EDTA-OH,DTPA錯体の濃度安定度定数の対数は,平衡状態での吸光度測定により,それぞれ20,2,29.6の値が得られた。
  • 吉田 稔, 小沢 竹二郎, 小坂 丈予
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 575-583
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    薩摩硫黄島火山の高温噴気孔周辺に青色の火山昇華物が見られる。この鉱物は無定形で変質物上にごく薄く付着しているので常法による同定は困難である。著者らはおもにその化学的性質を検討することにより,本鉱物がモリブデンブルー(M。(V)とMo(斑)の混合水湘酸化物)であることを確認した。一方,低温噴気地帯にはモリブデナイトが見いだされ,X線回折法と化学分析により同定した。
    日本各地の火山の火山ガスと火山岩のMo含量を求めた。薩摩硫黄島の高温の噴気孔ガスは凝縮水1Z中0.3~7,hngMoを含む。低温のものや他の火山のガスにはMoは検出されなかった。火山岩のMo含量はo.5~3.4μ9/9であった。
    上記のデータと熱力学計算の結果から,これらの鉱物の生成機構をつぎのように推定した。水酸化物かオキシバ冒ゲン化物として高温の火山ガスにより運ばれたMoが出口での温度低下と酸素分圧の増加によりモリブデンブル_として沈積する。また,雨水に溶けて低温地域に運ばれたモリブデンブルーが硫化水素と反応してモリブデナイトを生じる。
  • 上田 穣一
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 584-587
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メチルキシレノールブルー(以下MXBと略記する)はジルコニウムと反応して赤褐色の水溶性錯体を生成する。この呈色溶液の最大吸収波長は572~574nmに存在し,pH1.5~1,9で-定の吸光度を示す。Beerの法則にはジルコニウム量1.4μg/mlまでしたがい,モル吸光係数は4.06×104,Sandellの表示法による感度は0.0022μg/cm2である。共存イオンについては,アルカリ金属,アルカリ土類金属,鉛,亜鉛,クロム(III),マンガン(III),コバルト,ニッケル,希土類元素など22種のイオンは妨害しないが,ヒ素(V),アンチモン(III),ビスマス(III),ハフニウム,トリウム,鉄(III)は妨害する。
  • 小沢 敏夫
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 587-590
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    バナジウム(IV)はスチルパゾと反応して水溶性の赤色錯体を生成する。この呈色溶液の最大吸収波長は510nmに存在し,pH6.2から6・7の間で最大かつ一定の吸光度を示す。感度は高く,モル吸光係数は5.4×102であり,吸光度0・001に対する感度は0・00093μgV/cm2である。本法を用いて50認中30μgまでのバナジウムの定量ができる。
    この錯体の呈色は時間と共に退色する傾向にあるが,アスコルピン酸を存在させることにより15分間呈色が安定する。
    アルミニウム・銅・鉄(III),インジウム,チタン,ジルコニウム,EDTA,クエン酸およびシュウ酸などが定量をいちじるしく妨害する。
  • 荒木 峻, 鈴木 繁喬, 北野 大
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 590-595
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩ビフィルム中に添加されているフタル酸系可塑剤(フタル酸ジ-n-ブチル,フタル酸ジ-n-オクチル)および有機スズ系安定剤(ジブチルスズマレイン酸塩,ジブチルスズラウリソ酸塩)の分析をフィルム面に紫外線(2500~4000A)を収束照射して光分解し,その光分解生成物を光分解装置に直結したガスクロマトグラフで分析することにより行なった。フタル酸ジ-n-ブチルおよびフタル酸ジ-n-オクチルは分子的解離反応により主たる光分解生成物として1-ブテンおよび1-オクテンを生成した。一方,ジブチルスズ化合物からはスズ-ブチル結合の解離により生成した。n-ブチル遊離基が水素を引き抜いて生成した循ブタンが主たる光分解生成物として得られた。そしてこれらの光分解生成物はフィルム中に添加されている量との間にほぼ比例関係が認められ,本法によりこれら可塑剤および安定剤の分析が可能であることを知った。
  • 国近 三吾, 岡 信三郎, 杉山 卓, 中村 薫, 福井 恵子
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 596-598
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸銅触媒を含む酢酸中でのマロン酸エステルとホルムアルデヒドとの反応が研究された。触媒を除いたのち,反応混合物を蒸留すると,メチレンマロン酸ジエチルは得られないで,メチロールマロン酸ジエチルが得られると報告されていたが,このメチロールマロン酸ジエチルと信じられていた生成物が,実は,ジメチロールマロン酸ジエチル,アセトキシメチルメチロールマロン酸ジエチルおよびビスアセトキシメチルマロン酸ジエチルからなる混合物であることを見いだした,また,ジメチロールマロン酸ジエチルおよびアセトキシメチルメチロールマロン酸ジエチルを酢酸銅の存在下で蒸留すると,メチレンマロン酸ジエチルが,それぞれ80,70%の収率で得られた。実験結果に基づいて反応径路を説明した。
  • 木藤 武利, 安野 弘, 平尾 一郎
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 599-601
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ε-カプラクタムの塩酸溶液に0℃以下で亜硝酸ナトリウムを作用させ,つづいて生成したニトロソ体を60℃で分解した。つぎに混合物をメチルエステルに変え,各成分をガスクロマトグラフで分取し,NMR,質量分析計などで分析した。その結果,5-および6-クロロカプロソ酸,5-ヘキセン酸,5,6-ジクロロカプロン酸,6-ヒドロキシカプロン酸カブロラクトンおよびCl(CH2)5COO(CH2)5COOHを主成分とする高沸点物が認められた。塩酸のかわりに臭化水素酸を用いると,相当するプロモ化物が生成した。またそれらの化合物の生成径路,収率,酸の影響などについても検討した。
  • 植田 昭男, 村松 広重, 犬飼 鑑
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 602-608
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリフルオロシクロアルケン類,(CF2)nCCl=CH[n=2[1],n=3[2]],(CF2)nCCl=CCl[n=2[3],n=3[4]],とヒドロシラソ類[HSiCl2C6H5(Ph),HSiCl3(C1),HSiCl2CH3(Me),HSiCl(CH3)2(Me2)およびHSi(C2H5)3(Et3)]とのγ線照射によるラジカル付加反応について研究した。
    [1]および[2]の場合には,1:1付加物とともにヒドロシランの塩素一水素交換反応による還元体が生成し,[3]および[4]の場合には,不飽和の1:1付加物および1:2付加物が得られた。ポリフルオ鐸シクロアルケン類およびヒドロシラン類の見かけ上の反応性は[1]>[2]>[3]>[4](Et3)>(Me2)>=(Me)>(Cl)>(Ph)の順に減小する。非対称二重結合へのシリルラジカルの配向性および反応機構について論じた。
  • 岡林 次男, 内藤 龍之介, 東崎 嘉博, 加藤 洋明
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 609-615
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    60kWおよび500kWのプラズマ発生装置を用いて行なった試験結果から,プラズマジェットによるアセチレンの製造を工業的に実施する場合に問題となるアークの安定性を検討するとともに,製造原価に影響をおよぼす因子について考察を加えた。
    アークの安定性は電源特性とアーク特性とを比較することにより理解することが可能であり
    (1)電極間隔の増加によるアークの不安定性
    (2)陽極ノズルの形状の相違によるアークの安定性の相違
    (3)作動ガス量の増加によるアークの安定性の向上などの現象をアーク特性曲線の傾斜によって説明することができる。また陰極炭素棒を適当量消耗させていくことによりアークの安定性を長時間持続できる。
    エネルギーの効率を左右する陽極部からの熱損失量はアーク電圧には無関係でアーク電流に比例して増加する。したがって熱損失の減少のためにはできるだけ高電圧一低電流の組み合わせを選ぶことが必要である。原料の消費量は反応の選択率とほぼ逆の関係で変化し,天然ガスを原料とした場合有効エネルギー量5kWh/kg-C付近の条件で原料原単位は最小値をとる。
    500kwの装置で求めた最適条件から工業規樺における電力消費量を推定すると8・5~9kwh/kg-C2H2程度の値が実現する見通しを得た。
  • 島田 恵造
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 616-620
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無水塩化アルミニウムおよび無水塩化アルミニウム-ニトロメタン系触媒を用いて各種イソプロピルベソゼンでトルエンをトランスイソプロピル化した場合と,臭化イソプロピルを用いてイソプロピル化した場合について比較検討した。
    臭化イソプロピルとトルエンの反応では生成物中のパラ異性体は32~34%である。トランスイソプロピル化反応がヒドリド引き抜き機構で進行する場合は生成物中のパラ異性体の割合は上記値より大きな値を示すことが推論された。
    塩化アルミニウムとイソプロピルm一キシレンを用いた場合,生成物中のパラ異性体の割合は50%以上となった。また塩化アルミニウムーニトロメタン系触媒ではイソプロピル化の選択性があらわれ,生成物中の異性体のパラ割合が増加した。その順位は
    p-ジイソプロピルベソゼソ>イソプロピル-o-キシレソ>イソプロピル-m-キシレン>クメン>イソプロピル-ρ-ギシシレソ=臭化イソプロピル
    であり,ρ-ジイソプロピルベンゼソを用いた場合,パラ異性体の割合は70%以上であった。このことから,これらのトランスイソプ探ピル化反応でもヒドリド引き抜き機構が関与し,その割合はトランスアルキル化剤の構造の相違によって変わることが明らかになった。
    イソプロピル-m-キシレンと塩化アルミニウムーニトロメタン系触媒を用いてベンゼンとトルエンの競争イソプ粋ピル化反応を行ない,相対速度kt/kb=5.oの値を得た。
  • 丹田 煕入, 方波見 忠, 藤井 修冶
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 621-624
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩基性安息香酸銅の芳香族溶媒中での熱分解反応について,溶媒との反応に注目して検討した。溶媒として用いたトルエンとの反応生成物として安息香酸トリル,クレゾールが得られた。一方,銅塩自身の反応生成物として安息香酸フェニルおよびフェノールが得られた。
    反応温度の影響について3時間反応で検討したところ,トルエンとの反応生成物収率は,本実験の温度範囲(220℃から280℃)では温度上昇とともに3・9mo1%から14.2mo1%へ増加した。一方,銅塩自身の反応生成物は260℃以上の温度ではじめて認められ,その収率は非常に低く280℃で1.1mol%にすぎなかった。反応時間の影響について280℃において検討したところ,トルエンとの反応生成物収率は時間が長くなるにつれて徐々に増加し5時間で17・2m◎1%となった。銅塩自身の反応生成物収率は,3時間まではほとんど増加せず5時間で急激に増加した。
    溶媒との反応と銅塩自身の反応との割合を示すエステル生成比(安息香酸トリル+クレゾール/安息香酸フェニル+フェノール,モル比)は,低温,短時間ほど高い値を示し,本反応は溶媒との反応にいちじるしく高い選択性をもっていることが明らかとなった。
  • 吉川 彰一, 林 隆俊, 柴原 直紀
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 625-629
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CuClを含むアルカリ金属塩化物の溶融塩中で,C6H5lとBr2とを反応させると,`主反応はハロゲン交換反応でおもにC2H2Brを生成するのに対し,ZnCl2を含む溶融塩の存在下で同様の反応を行なうと,C6H5Br以外に多量のC2H5Clが生成した。また,溶融塩存在下でC6HBrとCl2による同様のハロゲン交換反応を行なうと,主生成物としてC6H5l以外に核塩素化により少量のC6H4Cl2やC6H4BrC1も生成した。
    ラジカル禁止剤としてC6H5NO2を含むC6H5Brを350℃でCl2で塩素化すると,ZnC1露を含む溶融塩中ではハロゲン交換反応および核塩素化反応ともに禁止されなかったが,CuClを含む塩の存在下ではこの両反応は禁止された。約350℃以下の反応では,反応温度や塩組成により生成物分布にいちじるしい差異を示すことから考えると,著者らはZnCl2を含む溶融塩中ではハロゲン交換反応は主に求核的なイオン機構で進み,核ハロゲン化反応はFriedel-Crafts型の反応機構で進むと推察した。一方,CuCl系の塩の存在下では,CuClがイオン性であるため,反応はおもにラジカル機構で進行すると思われた。
  • 福島 良昭, 橋田 洋二, 松井 弘次
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 629-634
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    以下の一般式で示される1,3,5-トリアジソ誘導体〔A〕(Rは反応点,XおよびYは種々の置換基)の置換基効果を,トリアジン環に直結し反応性に富む活性塩素のナトリウムメトキシドに対する反応性,あるいはメチル-,メトキシルおよびジメチルアミノ基のプロトンのNMR化学シフトを測定することにより検討した。メトキシル基の13C-Hの結合定数におよぼす置換基効果も併わせ検討した。
    その結果,一般に置換基定数σmを用いることにより・良好なHammett式の成立が見いだされた。しかしながら,プロトンのNMR化学シフトにおいてフェニル基が,またいずれの場合もフェノキシ基が大きな偏差を示した。偏差の要因について,フェニル基の場合磁気異方性効果,およびフェノキシ基の場合置換基定数の不正確さという観点から考察した。
  • 松本 勲, 高松 翼, 太田 忠男
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 635-640
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然ワックスを構成する炭素数30付近の長鎖脂肪族アルコール,酸の炭素数決定のための迅速微量分析法について検討した。すなわち,パラジウムを触媒とする気相還元により,脂肪族アルコール,酸から炭化水素を誘導し,ガスクロマトグラフィーを用いて標準炭化水素の保持時間と比較する方法について諸条件を検討し,炭酸ナトリウムで中和した塩化パラジウムを酸洗処理したクロモソルブG(60~80メッシュ)に0・5%(パラジウムとして)付着させたものを触媒とし,反応温度400。c,水素流速70ml/minで,アルコールはそのまま,酸はメチルエステルとして反応を行なわせ,反応生成物は液体窒素で冷却したトラップに捕集した。得られた炭化水素はもとの炭素骨格から炭素を一つ減じたものが主成分であり,これらを利用して天然ワックス中に含まれる長鎖脂肪族アルコール,酸の炭素数を迅速に決定することができた。また分析に必要な試料は100μg程度であった。
  • 根来 健二, 斎田 健一
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 641-644
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジメチル(5-ニトロ-1-ナフチルメチル)アルキルアソモニウムクロリドのうちアルキル基としてドデシル,ヘキサデシルおよびオクタデシル基を有するものを合成しち得られた各試料水溶液の表面張力,粘度,電気伝導度,染料可溶化量および流動パラフィソ乳化力および濡れ力などの界面活性を主とする物理化学的性質ならびに抗菌性と防カビカの研究を行なった結果,試料のうち,長鎖アルキル基を有するものの方が界面活性に富み,それぞれオクタデシル基のもの0.01;ヘキサデシルのものo.0179/100mJのCMCを有していた。一方,抗細菌と防カビカの点から見ると試料のうち最短鎖のドデシル基のものがすぐれており,従来のベンザルコニウムクロリドと同程度の性能を示した。
  • 梅本 弘俊, 杉戸 善文, 北尾 悌次郎, 小西 謙三
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 644-649
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-(4'-アミノフェニル)-7-アミノクマリンおよびその関連化合物のDMF中におけるケイ光性とポリアミドフィルム上における光退色挙動が検討された。
    trans4,4-ジアミノスチルベン[1],3-フェニル-7-アミノクマリソ[3],3(4'-アミノフェニル)-クマリン[5],3-(4-アミノフェニル)-7-アミノクマリン[7]および3(4'-アミノフェニル)-4-メチル-7-アミノクマリン[9]のケイ光強度はアセチル化によって,約1.7,0.86,133,1.9および1.6倍それぞれ増大する。そして退色に対する光安定性は[7]>[5]>[9]>[3]>[1]の順序になる。また,[1],[7]および[9]の光安定性についてはアセチをアミノ誘導体の方がアミノ誘導体よりすぐれているが,[3]と[5]の場合にはまったく逆の挙動が認められた。一方,[5],[7]および[9]の光退色速度はその基質上における染着濃度の増大とともに減少する。これに対し,[3]と3-(4'-アセチルアミノフェユル)-クマリンの場合には,その染着濃度の増大につれて退色速度が増大する。これらの事実と以前の結果から,3-(4'-アミノフェニル)-7-アミノクマリンにおけるクマリンとtrans-ジアミノスチルベンのスーパーインポーズ構造の寄与について考察した。
  • 田中 善蔵
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 649-653
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    羊毛と有機溶媒の存在下で,メタクリル酸メチルの重合を行なった。重合は溶媒の種類と組成の影響をうけ,全重合率,重量増加率,グラフト効率などは異なっている。羊毛存在下では,熱重合量にくらべて全重合量は増加する。水を少量のアセトンやベンゼンで置換すると,全重合率は増加し,組成5%で最高(アセトン1.74%,ベンゼン2.0%)に達し,組成の増加につれて減少する。単独重合体量やグラフト量の増減は全重合量の増減に対応する。メタノールで置換すると,全重合率は組成の増大につれて増加し5%をこえるが,グラフト量は逆に減少する。四塩化炭素を用いると,組成1~5%でMMAはほとんど定量的に重合し,全重合率は組成の増大とともに減少する。水を全部四塩化炭素で置換すると重合はほとんど起こらない。羊毛が存在すると,重合は熱重合にくらべていちじるしく促進される。重量増加率は最高3500%にも達し,グラフト効率は80%近い値を示す。四塩化炭素量が一定の場合・重合速度は羊毛量に比例し,MMAや水の量には依存しない。反応系中に羊毛,水,四塩化炭素のうちの一つの成分を欠くと,重合率は非常に低い。
  • 犬飼 吉彦
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 654-658
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(マロン酸エチル・ビニル)〔1〕とアニリンとの,クロロベンゼン中,133℃での反応により,一部アニリド化されたポリマー〔3〕(これはIRによりマ#ンアニル酸ビニルとマロソ酸エチル・ビニルとビニルアル潔一ルとの三元共重合体になっていることが確認された)を合成した。ついで〔3〕と芳香族ジアゾニウム塩とのカップリングをDMF申,酢酸ナトリウムの存在下で行ない,新しい高分子アゾ色素(IRによりメゾキザルアニル酸ビニル・アリールヒドラゾンとメゾキザル酸エチル・ビニル・アリールヒドラゾンとビニルアル瓢一ルとの三元共重合体の形になっていることが確認された)を合成した・すなわち,アリール基がC6H5の物は黄,4-CH3C6H4は黄,3-CH3C6H4は榿,2-CH3C6H4は黄,2-CH30C6H4は橙黄,4-CIC6H4は榿,4-CH30-2-NO2C6H3は橙,2-CH3-5-NO2C6H3は茶,4-CH3-2-NO2C6H3は橙,α一C10H7は橙,β一C10H7は茶などである。
    これらポリ色素を〔1〕と芳香族ジアゾニウム塩とから合成したポリ色素と比較したところ,色は深色化しアニリド化の効果が認められたが,耐光性については,その効果はほとんど認められなかった。
  • 宮本 弘
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 659-661
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The solubilities in tetrahydrofuran-water mixtures have been determined iodometrically at 25C for iodates of Ca(II), Sran, Ba(II), Mn(II), Co(II), Cu(II), Zn(II), Cd(II), and Ag(I).
    The logarithm of the solubility of a sparing soluble salt decreased almost linearly with the reciprocal of dielectric constant of the solvent, as expected from Born's equation. Factors which cause the deviations from the linearity were discussed.
  • 竹中 浩司, 磯貝 浩司
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 662-664
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Hydrogenolysis of 6, 6-dichloro-1-methylbicyclo[3.1.0]hexane [1] catalyzed by Raney nickel in methanol solution has been studied under the ordinary pressure at 20C. Ring expansion took place during the reaction: 2-chloro-1-methylcyclohexene (3) was mainly obtained, together with small amount of 2-chloro-3-methoxy-3-methylcyclohexene [4] and 2-chloro-3-methoxy1--methylcyclohexene [5]. The ratio of [4] and [5] to [3] increased with increasing reaction temperature. exo-6-Chloro-1-methylbicyclo[3.1.0]hexane [2] was obtained in good yield without ring-expanded side product in the presence of ethylenediamine, whereas [2] was obtained with small amount of [3] in the presence of ethylamine and triethylenediamine. endoChloro isomer of [2] was not obtained under these conditions. These results were explained by two mechanisms, considering the adsorption strength of [I] and the effect of methyl group on the polarization of endo-chloro group.
  • 木村 敏正, 守永 健一, 中埜 邦夫
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 664-667
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Association constant of vanadium (III) with sulfate ion was determined by measuring absorbance of vanadium OE in sulfuric or perchloric acid of various concentrations. Kvs04, - CVSO4+NEV3[SO42-1] at 25C has been found to be 29 through the photometric measurement at 400 nm under the following conditions: [V(III)]ltotai=8.2 mmol/l, [H+]=0.85 moIll, [H2SO4]=0.083, ---0.664molg and /i (ionic strength)=1.0, and to be 28 through the photometric measurement at 250 nm under the following conditions: EV(II)itotal=0.93, mmol/l, [H+]=0.92, [H2SO4]=0.0126 0.0766 mol/l and, u=1.0, . Moreover, the molecular extinction coefficients of V3+ and VSO4+ have been estimated in the regions of 230-280 nm and 350-700 nm.
  • 小林 禧樹, 田中 英樹, 高田 亘啓, 橋詰 源蔵
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 667-668
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Samples are solidified with paraffin (mp 68-70C) to eliminate the effect of bubbles which decrease analytical precision. And the sulfur contents are analysed by the measurements of radiation intensity of sulfur.
    Standard samples are prepared by the dissolution of TTD (Tetraethyl Thiuram Disulfide) in melted paraffin and then solidified by cooling. Linear calibration curve is given for sulfur. The relative standard deviation of measurements for ten samples is about 1% and the coefficient of correlation for chemical analysis is 0.999.
    Solid samples are stable for repeated measurements.
    Time required for the analysis of one sample is about 20 minutes.
  • 松原 義治, 岸本 孝夫, 山本 裕行, 峰松 和作
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 669-671
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    When the reaction 2(10)-pinene with methyl acryrate [2] or acrolein [3] was carried out in an autoclave at 170 to 180C, the corresponding 8, e-unsaturated compounds were obtained in 25% and 35% yields respectively.
    The compounds, [4] and [7], were treated with lithium alminium hydride to give 2-pinene10-n-propanol[9].
    Further, when the tosylate [11] of 9 was treated wsth lithium alminium hydride, 10-npropyl-2-pinene [12] was obtained.
  • 新井 万之助, 安原 富士子, 山口 真守
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 672-674
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reaction of 2-chlorocyclohexanones [A] (2-chlorocyclohexanone and 2-chloro-5-metylcyclohexanone) and 2-chloro-2-alkyl-cyclohexanones [B] (2-chloro-2-metylcyclohexanone, (-) 4-chloromenthone and (±)-1-chlorocarvomenthone) with anhydrous aluminium chloride at 120C under nitrogen has been studied. In the case of CAD, the most quantity of starting material was recovered and a trace amount of the corresponding dechlorinated cyclohexanone was obtained. On the other hand, [B] afforded the corresponding tx, fi-unsaturated ketone in over 60% yield.2, 4-Dichloromenthone afforded thymol under the. same reaction conditions. These results are interpreted as involving formation of the aluminium chloride complex. When pyridine was used instead of aluminium chloride, the corresponding x, 8-unsaturated IratnrIP wprp. nlurnvc nhtninpri from rAi And tm.
  • 牧 保夫, 犬飼 鑑
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 675-677
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Three bis(trifluoromethyl) dinitrobiphenyls were prepared by heating chloro- or iodo-nitrobenzotrifluorides with copper in DMF. Three bis (trifluoromethyl)-dinitrodiphenyl ethers were obtained by the reactions of chloronitrobenzotrifluorides with alkali Metal carbonates in aprotic solvents.
    The dinitro compounds were reduced by tin and hydrochloric acid to give the corresponding diamino derivatives.
    The diisocyanates, 3, 3'-(CF0)2-4, 4'-(NCO)2- and 2, 2'-(CF0)2-4, 4'-(NCO)2-biphenyl, 3, 3'-(CF3)2- 4, 4'-(NC0)2-, 2, 2-(CF3)2-4, 4'-(NCO)2- and 4, 4'-(CF0)2-2, 2'-(NCO)2-diphenyl ether, were obtained by the reactions of the amine derivatives with phosgen in glyme.
  • 伊保内 賢, 倉持 智宏, 石上 健次, 黒田 忍
    1972 年 1972 巻 3 号 p. 678-680
    発行日: 1972/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The effects of stannic chloride and pyridine (0-0.2 mol/l) in the graft copolymerization of methyl acrylate onto ethylene-vinyl acetate copolymer initiated by benzoyl peroxide were studied. It was found that stannic chloride increased in the graft efficiency and in the graft yield, but pyridine decreased in the graft efficiency and the graft yield (Table 2). In the graft copolymerization with irradiation of ultraviolet (UV) light, stannic chloride increased in the graft efficiency but pyridine did not affect the graft efficiency (Table 3).
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