黒リン単結晶を,温度840~1760℃,圧力4~10kbar,時間3~10分の条件下で処理し,その後その融液を冷却・固化することにより合成した。高温加圧処理にはピストン・シリンダー型高圧装置を用い,また出発原料に大体5μm程度の大きさの赤リンを用いた。カーボン発熱体(直径6.2mm,長さ20mm)に出発原料を充てんした。温度測定のとき,大体800℃以下では白金-白金13%ロジウム熱電対を用い,それ以上では温度-入力電力曲線を利用した。黒リンが生成すると,その導電性のために入力電力が急激に変化した。
本研究で得られた概略のリンの安定領域はつぎのとおりである。
赤リンは,6kbarでは大体700℃以下,10kbarでは500℃以下で安定であった。黒リン(粉末状)は,赤リンからの固相反応の結果として,6kbarでは720~900℃,10kbarでは550~1000℃程度の温度範囲内で生成した。また生成黒リンの大きさは大体5μmであった。液相領域は,6kbarでは大体900~1400℃,10kbarでは1050~1600℃程度の温度範囲内で認められた。一方,気相領域が,6kbarでは大体1500℃以上,10kbarでは大体1700℃以上で,また3kbarでは大体700℃以上で認められた。
黒リン単結晶の最大のものは4.5×2.0×0.23mmであり,金属光沢を有し,〈100〉がよく発達していた。光学顕微鏡で表面観察をすると,C軸に垂直な面上に円型の成長丘が認められた。その最大のものは大体3.5μmであり,平均1μm程度であった。X線回折結巣から,黒リン単結晶の結晶性は良好であった。
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