日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1979 巻, 5 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • 国枝 博信, 般林 宗寛
    1979 年1979 巻5 号 p. 561-567
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    油火災用消火剤への応用を考慮に入れて,炭化フッ素系界面活性剤を中心に,界面活性剤の親水性,親油性バランス(HLB)を最適にすることにより,気-水,油-水の界面張力をできるかぎり小さくすることを試みた。炭化フッ素系イオン性界面活性剤とcosurfactantのフッ素化アルコールを混合して用いると,適切な混合比のとき水溶液の表面張力が対イオンの種類に関係なく,14~15dyn/cmと,期待できる最小値まで低下することがわかった。一方,油-水の界面張力を十分低下させるためには,炭化水素系界面活性剤を加える必要がある。その場合,適当な非イオン性界面活性剤や,エーロゾルOTなど単独でHLBが適度なものを使うと有効である。通常の炭化水素系イオン性界面活性剤と長鎖アルコールの混合系水溶液を用いると,表面張力は十分低下するが,油-水界面張力に関しては,casur-factantが油相に溶け出すらしく,加えない場合とあまり変わらなかった。これらの知見から得られた。
  • 野沢 勲
    1979 年1979 巻5 号 p. 568-572
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルミナおよびシリカに担持した含浸法酸化ニッケル触媒の還元性状を熱分析的手法により検討した。還元曲線の形状とX線分析結果から判断すると,担持ニッケル成分は遊離酸化ニッケル状態および担体と相互作用状態にある2種の異なる状態で担持されていることが結論づけられた。触媒焼成前後の形状を走査電子顕微鏡により観察した。焼成前の硝酸ニッケルはほぼ一様な厚さで担体をおおっている。焼成後の触媒には酸化ニッケルの正八面体結晶群が確認された。この結果は還元曲線およびX線分析によって得られた結論を支持している。遊離酸化ニッケルの存在は含浸触媒の担持状態の特徴を示す。Ni/Sio2触媒の露出ニッケル表面積が還元温度によりどのように変化するかをCOガスの化学吸着量および触媒の還元率の測定結果から検討した。その結果,酸化ニッケル11.7%担持触媒は400℃以下では表面層のニッケル酸化物が主として還元され,400℃より高温では結晶成長や固体内拡散が進行すると考察された。
  • 曾我 和雄, 佐野 庸治, 佐藤 優, 池田 朔次
    1979 年1979 巻5 号 p. 573-585
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはLaCo5が約250℃以上の温度で多量の窒素を原子状で吸蔵することをさきに見いだした。この吸蔵窒素は350℃以下ではほとんど脱離しない。本研究においては,いくつかのLaCo5Nn(n=0,0.06,0.10,0.18と0.24)を調製し,これらを触媒にして-65~-40℃の温度範囲で1,3-ブタジエンの水素化反応を行なった。nの増加にともない水素化速度はいちじるしく増大し,また生成物の組成は1-ブテンに富むものから2-ブテン(trans-2-ブテン cis-2-ブテン)に富むものへと移行した。
    一方,これらの触媒を用いて1-ブテンの異性化および水素化反応を同様の条件下で行なったところ,異性化反応の速度はnに依存せず一定値を示したが,水素化速度はhの増加にともないいちじるしく増大した。これらの反応中にH2-D2交換反応が進行しなかったこと,さらに1,3-ブタジエンのD2による水素化反応生成物の分析,反応速度の同位体効果の結果などからこれらの水素化反応はいずれも気相水素の解離吸着を律速として進行していること,またnの増加にともなう水素化速度の増大は主として水素の解離吸着がいちじるしく促進されるためであると結論した。一方,nによる生成物の組成変化は吸蔵窒素による活性点への電気的分極効果により説明した。
  • 秋元 正道, I. G. DALLA LANA
    1979 年1979 巻5 号 p. 579-585
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルミナ触媒上の230℃におけるCS2の気相加水分解反応において, COSへの選択率は接触時間の増大につれて急激に減少し,反応はCOSを中間体として進行することが判明した。CS2の加水分解系にペンテン異性体を供給すると触媒は被毒され,その被毒速度は同異性体の塩基性に比例して増大したがH20の濃度を増大するといちじるしく減少し,またCS2の濃度には関係なく一定であった。アルミナ触媒の加水分解活性は,あらかじめ気相酸素と高温で接触するといちじるしく低下したが触媒上の塩墓量は必ずしも減少せず,むしろCS2-として見積られた還元点の濃度が無視し得る程度にまで減少した。
    さらにCS2の転化率はCO2やSO2を供給すると減少し,その効果はSO2 CO2とそれらの酸性ガスの電子親和力に比例した。これらの結果と還元点をもたないシリカ触媒がCS2の加水分解活性を有しない結果から,アルミナ触媒上の塩基点というよりむしろ還元点が加水分解反応に関与していると考えられた。CS2とCOSは還元点上に吸着して負に帯電し,酸点おそらくAI8+上に吸着した水と反応して加水分解される機構が提出された。
  • 馬渕 久夫, 野津 憲治, 西松 重義, 不破 敬一郎, 井山 弘幸, 富永 健
    1979 年1979 巻5 号 p. 586-590
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    誘導結合プラズマ発光分光分析法と機器放射化分析法とを併用して,中国や日本の古代貨幣中に含まれる主成分,副成分,微量成分13元素(Cu, Pb, Sn, Zn, Fe, As, Sb, Co, Mn, Ni, Au, Ag,Se)の定量を行なった。中国貨幣,日本貨幣とも主成分元素組成は,Cu-P-Sa系からCu-Zn系へと移行しており,移行年代は中国貨幣で15~16世紀,日本貨幣で18世紀であった。Cu-Zn系の貨幣におけるCu/Zn比は,中国貨幣でほぼ1,日本貨幣でほぼ4であった。日本貨幣では概してAs, Sbが多いが,これらの元素が他の主成分金属の不純物に由来するのか,あるいは故意に加えられているのかは,興味ある問題である。中国貨幣の中に微量元素組成が特徴的なものが数種あったが,とくにこのような貨幣は,原料物質の推定,鋳造技術の推定,流通当時の交易関係の推定に役立つと思われる。
  • 高 英昌, 川村 和史, 石井 一
    1979 年1979 巻5 号 p. 591-596
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    陰イオン性ポルフィリンであるα,β,γ,δ-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィン[T(4-CP)P]およびα,β,γ,δ-テトラキス(4-スルホフェニル)ポルフィン[T(4-SP)P]とカドミウム(ll)との錯形成反応に対しピリジン塩基やイミダゾールがいちじるしい反応促進作用を呈することを見いだし,これをppbレベルのカドミウムの吸光光度定量に応用して二つの定量方法を開発した。ピリジンの共存下でT(4-CP)Pを用いる方法ではカドミウム(ll)との錯形成はpH9,室温でほぼ瞬時に完結し,検量線は少なくともカドミウム濃度240ppbまでは原点を通る直線となり,見かけのモル吸光係数は4.58x105l・mol-1cm-1,カドミウム1.83μ9をくり返し14回定量した場合の変動係数は0.24%であった。またT(4-SP)Pを用いる方法では見かけのモル吸光係数は4.37x105l・mol-1;・cm-1であった。T(4-CP)P法につき共存成分の影響を検討したところ,この方法は種々の金属イオンの影響を受けるが,マスキング剤として酒石酸ナトリウム,クエン酸ナトリウム,チオ硫酸ナトリウム,あるいはジメチルグリオキシムを適宜添加することにより亜鉛(ll)以外のイオンによる妨害は除去することができた。亜鉛(ll)はカドミウムと同量でも妨害した。塩類はかなりの量共存しても妨害しなかった。
  • 土屋 正臣
    1979 年1979 巻5 号 p. 597-601
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピリミジン環の置換基を種々変えて金属イオンとの反応性を研究した結果,これらの中で4-ヒドロキシ-2-ジメチルアミノ-5-ニトロソ-6-アミノピリミジン(HDNA)はコバルト(III)および鉄(II)ともっとも鋭敏迅速に反応して,それぞれ黄色および青色の安定な水溶性錯体を生成した。この結果に基づきHDNA-金属錯体の生成につき基礎的な諸条件を検討してコバルトおよび鉄の定量方法を確立した。Beerの法則にはコバルト最終濃度1.4ppm,鉄最終濃度2.Oppmまでしたがい,吸光度0.001に対する感度はコバルト(III)9.34×10-4μg・cm-2,鉄(II)1.85×10-3μg・cm-3であった。コバルト(III)および鉄(II)錯体の組成を検討した結果,それぞれ金属:HDNA=1:3と推定した。共存イオンについてはコバルトの定量に対し,銅(II),ニッケル(II)が妨害したが,1%シアン化カリウムを加えることによりしゃへいできた。鉄の定量では共存イオンとして24種のイオンの影響を調べたところ,いずれのものも妨害せず,コバルト(II)50倍量までの共存が許容できた。本法をコバルト(III),鉄(II)の逐次定量,硫酸亜鉛中の鉄の定量およびアルミニウム合金中の鉄の定量に広用したところ好結果が得られた。
  • 五十嵐 淑郎, 小林 淳一郎, 四ッ柳 隆夫, 青村 和夫
    1979 年1979 巻5 号 p. 602-606
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α,β,γ,δ-テトラキス(1-メチルピリジニウム-4-イル)ポルフィン(TMPyP,H2L4+)は,pH9.2~10.8の範囲において,反応時間1分間以内で定量的に亜鉛(II)と反応し,水溶性の錯体,ZnL4+を生成する。試薬(H2L4+,λmax=422.8nm)とその亜鉛錯体(λmax=437.2nm)の吸収スペクトルは,かなりの程度重なり合っているが,遊離の試薬を鉛錯体(PbL4+,λmax=476.4nm)に変換することにより,試薬ブランクの吸光度を減少させることができた。437.2nmにおける亜鉛錯体のモル吸光係数は,2.28×105l・mol-1・cm-1であり,吸光度0.001に対する感度は,3.66×10-4μgZn2+cm-2(ジチゾン法の4.4倍)であった。TMPyP-Zn系の呈色反応は,種々の金属イオンの影響をうけるため,前処理法として亜鉛(II)のジチゾン抽出分離と共存金属のマスキングを併用する方法について検討した。本法を水道水中の亜鉛(II)の定量に応用し,満足すべき結果を得た。
  • 沢本 博道, 藤永 太一郎
    1979 年1979 巻5 号 p. 607-611
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,2'-ビピリジン(bpy)および1,10-フェナントロリン(phen)の錯体の滴下水銀電極への吸着を主として交流ポーラログラフを用いて検討した。錯体としては,[Fn(bpy)3]2+,[Ni(bpy)3]2+,[Ni(bpy)3]2+,[Fe(phen)3]2+,[Zn(phen)3]2+,[Ni(phen)3]2+を選び,それらが還元波を示さない電位領域で検討した。錯体の生成度に関しては,平衡定数を用いる計算により推定した。
    2,2'-ビピリジン錯体の交流ポーラログラムは-0.4Vvs.SCE付近にピークがあり,それより負電位に錯体の吸着電位領域がある。これに対して1,10-フェナントロリン錯体の場合は,すべての錯体に吸着電位領域が存在するが,ピークは[Fe(phen)3]2+のみにみられる。これらのピークの性質は,吸着-脱着ピークであることが明らかになった。有機試薬とその錯体の競争吸着を検討した。2,2'-ビピリジンとその錯体の場合は,錯体の吸着が強く,錯体が2,2'-ビピリジンの吸着を排除すると考えられる。1,10-フェナントロリンとその錯体の場合は,両者がともに吸着していると考えられる。錯体の交流ポーラログラムに対するpHの影響が錯体の解離のためであるとして説明された。
  • 赤岩 英夫, 川本 博, 松村 敏之
    1979 年1979 巻5 号 p. 612-618
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-テノイルトリフルオロアセトン(TTA)による鉄(III)の抽出速度がトリオクチルメチルアンモニウムロクロリド(R3R'NCl;商品名カプリコート)の添加によって増大する現象を見いだし,その抽出機構を速度論的に解明した。カプリコートによる抽出速度増大効果は塩化物イオンが共存した場合にとくに大きいことがわかった。抽出反応の律速段階はTTA濃度に応じて変化し,
    FeCl3 + R3R'N+
    R3R'NFeCl3 (OH)+H+
    R3R'NFeCl4 + OH-R3R'NFeC13 (OH)RaR'NFeC18E+OH-R3R'NFeC18E E- R3UNFeC12E2+C1-
    であると推定した。なお,いずれの場合にも最終生成物はFeE3であった。
  • 星 座, 四ツ柳 隆夫, 青村 和夫
    1979 年1979 巻5 号 p. 619-623
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アセトン中でのジチゾン(H2dz)とクロム(III)との反応および10%アセトン-水混合溶液中でのジフェニルチオカルバジドとクロム(VI)との反応を検討し,両反応により生成する錯体がいずれの場合ともクロム(III)とジチゾンの錯体,Cr(Hdz)2+であることを明らかにした。この錯体は,アセトン中で525nm(モル吸光係数ε=2.95×104dm3・mo1-1・cm-1)および水溶液中で530nm(ε=2.85×104)に吸収極大を示した。
    さらに,この水溶性陽イオン錯体は,硫酸ドデシルイオン(ds-)と1:2イオン対(Cr(Hdz)(ds)2)を生成し,酢酸ブチルのような配位性溶媒に抽出された。このイオン対抽出平衡を解析し,錯体の酢酸ブチルに対する分配定数を100-54と決定した。
  • 大藪 又茂, 氏平 祐輔
    1979 年1979 巻5 号 p. 624-630
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH1.5~1.8の鉄(III)水溶液を加熱すると,鉄(III)イオンの加水分解と重合が進行し,加水分解生成物としてFeOOH,Fe2O3などが生成する。溶液中に存在する陰イオンの種類および濃度と生成物の種類や結晶形との関連を検討し,これらは陰イオンを配位した鉄(III)錯体の安定度および陰イオンの濃度に依存することが明らかになった。またβ-FeOOHに含まれる塩素あるいはフッ素,α-FeOOHに含まれる臭素量と鉄(III)の原子数比を測定し,それぞれ,O.15,0.55および0.012であることを示した。水洗による塩素のβ-FeOOHからの脱離の挙動をα-FeOOHからの臭素の脱離の挙動と比較し,塩素は強く結晶中に取り込まれているのに対し,臭素は結晶の表面に単に吸着していることが明らかになった。
  • 鈴木 敏信, 三橋 啓了
    1979 年1979 巻5 号 p. 631-634
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アニリンをクロロホルム中,加熱還流下,ピリジンとトリエチルアミンの共存下で過剰の塩化ベンゾイルと反応させると,N-フェニルジベンズアミドがほぼ90%の高収率で生成した。ピリジンまたはトリエチルアミンのどちらか一方の存在では,ベンズアニリドを得たのみでジベンゾイル化物は得られなかった。このことから,アニリンのジベンゾイル化には,ピリジンとトリエチルアミンの両者の共存が必要であることが明らかとなった。
    つぎに,本反応におよぼすピリジンとトリエチルアミンの影響を究明するため,両者のモル比を種々変え,高速液体クロマトグラフィーを用いて追跡したところ,その最適モル比は,ピリジン:トリエチルアミン=1:3~1:4であることを見いだした。さらに,ベンズアニリドのベンゾイル化を同様にして追跡した結果,ジペンゾイル化反応はベンズアニリドを中間体として進むことが明らかとなり,反応機構を考察した。
  • 川端 康治郎, 田中 正人, 林 輝幸, 織方 郁映
    1979 年1979 巻5 号 p. 635-640
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    コバルトカルボニルを触媒とするオキシランのヒドロエステル化では,異性化,アルコール付加,重合,脱酸素などの副反応が併発し,β-ヒドロキシカルボン酸エステルの収率はきわめて低いことが知られている。本研究ではアルコールとしてメタノールを用い,メチルオキシラン[1],1,1-ジメチルオキシラン[2],フェニルオキシラン[3]についてコバルトカルボニル触媒,溶媒,添加物の種類,反応温度,-酸化炭素圧などと反応の選択性の関係を詳細に検討した。エステルの収率を高めるための最適条件はオキシランの種類によって非常に異なり,[1]からはKCo(CO)4触媒,60℃,24時間で3-ヒドロキシ酪酸メチルが76%の収率で,[2]からはCo2(CO)9ベンゼン溶媒,130℃,3時間で3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチルが63%の収率で,また[3]からはCo2(Co)8/ピリジン=1(モル比)60℃,24時間で3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピオン酸メチル,その脱水物である2-フェニルアクリル酸メチル,および3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピオン酸メチルの3種のエステルがそれぞれ32,5および8%の収率で得られた。エステル基の付加位置は,それぞれのオキシランについて立体的または電子的によく説明できた。
  • 横井 勝美, 松原 義治
    1979 年1979 巻5 号 p. 641-645
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2(10)-ピネン[1]の四酢酸鉛酸化で1(7),4(8)-p-メンタジエン-2-イル=アセタート[6],trans-1(7)-p-メンテン-2,8-ジイル=ジアセタート[9],1-p-メンテン-7,8-ジイル=ジアセタート[10]が生成することを見いだした。また[6]の加水分解生成物,1(7),4(8)-p-メンタジエン-2-オール[6a]の水素添加でtrans-4(8)-p-メンテン-2-オール[12]および相当するシス異性体[13]が1:1の割合で得られた。さらに[9]の加水分解生成物,1(7)-p-メンテン-2,8-ジオール[9a]からは1(7),8-p-メンタジエン-2-オール[11]が得られた。
  • 二木 鋭雄, 山本 順寛, 塩川 浩世, 神谷 佳男
    1979 年1979 巻5 号 p. 646-650
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコールの中性およびアルカリ性水溶液中の70℃におけるオゾン化反応の速度と生成物を検討した。また,2,4-ペンタンジオール,4-メチル-4-ヒドロキシ-2-ペンタノン,4-メチル-3-ペンテン-2-オンなどのモデル化合物のオゾン化も同一反応条件下で行なった。中性水溶液中においては,まずヒドロキシル基が酸化されてβ-ヒドロキシケトンとなり,それから図3に示した図式で主鎖が切断され,重合度がいちじるしく低下することが認められた。主生成物はケトン,カルボン酸,アルデヒドであり,カルボン酸としてはギ酸が主であった。カルボニル基と共役している二重結合のオゾン化では,正常オゾン分解に加えて,いわゆる異常分解も重要な寄与をし,その結果,二重結合に隣接するシグマ結合も切断することが認められた。一方,アルカリ水溶液中でのオゾン化反応はよりすみやかに進行し,ギ酸に加えて酢酸も主生成物として得られた。酢酸はβ-ヒドロキシケトンの逆アルドール反応によるアセトアルデヒドの生成と,それにつづく酸化により生成し,その生成量は統計的主鎖の切断数よりも多かった。
  • 猪熊 精一, 亀山 栄一, 大前 寛美, 桑村 常彦
    1979 年1979 巻5 号 p. 651-655
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    表題の化合物[3]は,2-アシルアミノピリジン[1]とハロゲン化アルキルとから得た1-アルキル-2-(アシルアミノ)ピリジニウム=ハロゲン化物[2]のアルカリ処理により合成した。[3]のカルボニル基のIR特性吸収は,[1]あるいは[2]のそれよりも低波数側に移動しており,ピリジン環窒素に結合するメチルあるいはメチレンプロトンの化学シフトは,1-アルキル-2-イミノピリジン[4]のそれよりも低磁場にある。また,[3]の水溶性は相当する[1]のそれよりも高い。水溶液の性質や挙動はアミンイミドのそれと類似しており,適当なアルキルあるいはアシル基をもつ[3]は,すぐれた表面張力低下能を示す。これらの事実から,とくに極性溶媒中において[3]の分子内双性イオン構造の寄与は,かなり大きいものと推測される。
  • 吉川 彰一, 清水 保美, 福井 俊晴
    1979 年1979 巻5 号 p. 656-661
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    170または180℃での流動パラフィンの空気による自動酸化反応に対し,ジフェネチルスルフィドやジドデシル=チオジプロピオナートなどのスルフィドは,1,2,4-トリクロロフェノチアジン-3-オン(HPA),またはその酸化中間体である1,2,4-トリクロロ-3H-フェノチアジン-3-オン(PTO)との組み合わせにおいて酸化防止剤としての相乗効果を示した。後者ではPTOがHPAに還元されていることがUVスペクトルで観測され,HPAの再生反応が相乗効果に寄与していることがわかった。PTOに対する還元剤はスルフィドから生成したスルホキシドの熱分解生成物中に含まれていると考えた。相乗剤としての効果はスルホキシドではいちじるしく低いこと,[3c]は[3a],[3b]より効果が高いことなどの結果から,スルポキシドを経て生成する不安定な還元剤の生成に対する律速段階はスルフィドからスルホキシドへの酸化段階であり,相乗効果の大きさを決定する-要因はスルフィドの酸化的な安定性であると結論した。
    各種添加濃度でのフェノチアジンとスルフィド,およびHPAとスルフィドとの相乗効果には共通点が認められ,前者での相乗効果についてもレドックス反応機構の立場から考察した。
  • 越智 光一, 高浜 隆, 新保 正樹
    1979 年1979 巻5 号 p. 662-667
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂硬化物では-70~-40℃領域にβ緩和と呼ばれる緩和挙動が観察される。この緩和は在来はビスフェノール骨格の運動によるともいわれ,ヒドロキシエーテル鎖の運動によるともいわれてきた。本報ではビスフェノール型,α,ω-ジオール型およびグリコール型エポキシ樹脂の3種を,構造を異にする2種の第一級アミンおよび2種の第三級アミンによって硬化し,構造上明らかにヒドロキシエーテル鎖の部分を生ずる系と,これを生じない系の緩和挙動を比較した。その結果,ヒドロキシエーテル鎖のような可動構造部分を含む硬化系のβ挙動は,それを含まない硬化系のβ緩和たとえば局所モード緩和などにこの可動構造部分の運動の影響が加わった複合緩和挙動と考えるべきことが明らかにされた。さらにヒドロキシエーテル構造を形成する硬化系と,これを形成しない硬化系の損失正接曲線の差から,ヒドロキシエーテル鎖のみの運動と考えられる新たな緩和ピークが推定された。この緩和ピークの高さとその位置はヒドロキシエーテル部分の濃度に依存することが明らかにされた。
  • 笠岡 成光, 笹岡 英司, 長広 盛彦
    1979 年1979 巻5 号 p. 668-674
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    NH3-H2混合ガスによる無触媒還元脱硝における入ロガス組成・温度・滞留時間などの操作条件と脱硝率の関係を明確にし,さらに低O2濃度域におけるNO還元のほかに,H2NH5,H2-NO,H2-NH3-NOなどの混合ガスのO2による酸化反応について詳細に検討し,H2共存下のNH3による脱硝機構をかなり明らかにすることができた。実験は温度や滞留時間の正しく規定できる等温帯反応部分の内径を大きくした(13.0~26.Omm)特殊形状の石英製反応管を用い常圧流通法で行なった。反応条件は,600~1000℃で,入ロガス組成0~1500ppmNO-O~1500ppmNH3-0~5000ppmH2-0~5%O2-0~13%H2O-N2,全ガス流速500および1000Ncm3/minである。得られたおもな結果はつぎのとおりである。
    (1)NOのNH3還元およびNH3のO2酸化は,H2濃度の増大とともに,より低温から進行した。しかし,H2濃度によって,それぞれ最大脱硝率を与える温度が存在し,この温度以上になると,共存H2はNH3のNOへの酸化をいちじるしく促進するようになり,脱硝率は低下し,H2共存下では高脱硝率を得る条件は見あたらない。
    (2)見かけの量論脱硝反応式は,H2非共存系の場合と同じように,No+NH3+(1/4)O2→N2+(3/2)H2Oで表わされる。
    (3)H2の02酸化(H2+O→OH+H,OH+H2→H+H2O,H+02→O+OH)が600℃付近の低温から起こるため,生成するH,OH,OOラジカル(主としてOHラジカル)によってNH3→NH2→NHの反応経路も低温から起こり,生成するNHラジカルがNOと反応(NO+NH→N2+OH)し,NOはN2まで還元され,生成したOHラジカルが連鎖キャリヤーとして反応に寄与する。しかし,上記最大脱硝率を与える温度以上では,NH+O2→NO+OHなどのNOの逆生成反応が優勢になる。
  • 桑原 豊, 加藤 朋子, 高橋 三視
    1979 年1979 巻5 号 p. 675-678
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The hydrogenation of sorbic acid catalyzed with cyanocobalt(II) complexes in the range of the CN/Co ratio from 2 to 8 has been studied at 30° C and 1 atm. Main products obtained were 2-hexenoic acid at CN/Co> 5 and 3-hexenoic acid at CN/Co < 4. Addition of potassium chloride to the complex increased the rate of hydrogenation remarkably. Analysis of the products -showed- that in the range of CN/Co from 2 to 4, 2-hexenoic acid was obtained in nearly the same amount as 3-hexenoic acid. However, for CN/Co> 4, the selectivity for 2- hexenoic acid increased with an increase in CN/Co ratio. Potassium hydroxide showed a different effect on the hydrogenation from the effect by potassium chloride. In this case, composition of the products remained constant in the range of CN/Co from 2 to 8. The effect of various neutral salts and bases on the hydrogenation has been studied.
  • 渡部 正利, 黒須 勝美, 吉川 貞雄
    1979 年1979 巻5 号 p. 679-681
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The isomerization of [Co (L- or D-asp) (L-his)] (asp =aspartate ion and his= histidinate ion) in water without catalyst has been studied. The changes in equilibrium mole fractions and rate constants of isomerization at various temperatures have been measured. The avarage activation energy of isomerization for [Co (L-asp) (L-his)] is about 250 kJ/mol and that for [Co(D-asp) (Lhis)] 180 kJ/mol. The rate of isomerization decreased at lower pH of solution, increased at higher pH, and decreased in D20 solution. The isomerization did not occur in any other organic solvents. The CMR spectra of five isomers have been obtained and suggested that all the carboxyl groups of asp and his have coordinated to Co(III), because the lower field shifts of carboxyl carbon signals are observed in comparison with those for the free ligands in basic solution.
  • 池田 嘉一, 萬田 栄一郎
    1979 年1979 巻5 号 p. 682-683
    発行日: 1979/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Rose Bengal has a catalytic activity for the nuclear bromination of toluene. Thus, 10 ml of toluene containing 100 mg of Rose Bengal was treated with 0.98 ml of bromine at 30°C for 5 hr to give p- and o-bromotoluenes (p-/o-=1.5) in ca.90% yield. Without Rose Benga4l p- and o-bromotoluenes (p-/o-=1.6) and benzyl bromide were produced in yields of 17% and 74%, respectively.
feedback
Top