セッコウの湿式合成において, メタノールの存在は溶解度の低下による沈殿の微粒子化や結晶核へのアルキル基の吸着によりセッコウをゲル化するが, このゲルから急速にメタノールをとり去るとセッコウゲルは繊維状セッコウに結晶化する。本研究はそのゲル化条件, ゲルの結晶化条件, および得られた繊維状セッコウシートの性質などをX線回折, 熱分析 (TG-DTA), 走査型電子顕微鏡観察, 溶解速度の測定によって検討したものである。
二水セッコウ飽和溶液にメタノールを添加すると不安定なオルガノゲルが生成する。このゲルをすみやかに吸引源過してオルガノゲルからメタノールを除去すると, 板状の二水セッコウまたは繊維状のβ型半水セッコウに結晶化する。この繊維状のβ型半水セッコウの生成領域は温度,メタノール添加量,熟成時間などのゲル化条件およびゲルの演過速度によって影響をうける。たとえば, 温度を 60℃, メタノール添加量を 67% (50cm
3 飽和溶液+100cm
3 メタノール), 熟成時間5分, 炉過速度を 3cm
3/s において, アスペクト比 200(長さ 80μm×径0.4μm) 程度の繊維状のβ型半水セッコウがからみ合ったシートの合成が可能である。また, このシートを 800℃ で加熱脱水して得られた高結晶性のII型無水セッコウは繊維状を保持しており, 柔軟, かさ密度 0.3g/cm
3 程度の軽量で, しかも耐水性の高いII型無水セッコウシートを得ることができる。
抄録全体を表示