日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1988 巻, 9 号
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  • 相田 卓三, 井上 祥平
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1513-1524
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属ポルフィルン錯体は, これまでもっぱら生物学的興味から研究されてきた。本研究では, アルミニウムのポルフィリン錯体を中心に, 金属ポルフィリン錯体をより一般的な合成反応の触媒として利用するという新しい合成法を試み, とくに, 高分子の分子量を規制できる重合開始剤としてのきわめて広い適用性を明らかにした。また, そこでの知見を基に, 可視光のエネルギーを利用する新しい合成反応, トランス効果やアート型錯体の形成反応を利用する二酸化炭素の新規な触媒的固定化反応, あるいは, かさ高い Lewis 酸性の反応サイトとして利用することによるカルボニル化合物の立体選択性の高い還元反応などが達成された。さらに, これらの展開の一環として, 水中で face-to-faee 型スタッキミング (会合体) を形成するポルフィリンの合成や分子不斉を有するポルフィリンの合成と光学分割など, 新しい観点からのポルフィリン類の分子設計も行なった。
  • 吉野 隆子, 馬場 宣良, 保田 宏一
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1525-1529
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン交換法を用いて種々のモル分率のタングステン酸-モリブデン酸コロイド溶液を作成した。コロイド溶液を電解液として, 青色の WO3-MoO3 混合薄膜を透明ガラス電極上に電析させた。皮膜を 200℃ 1時間熱処理してエレクトロクロミック素子とした。これは従来の蒸着法にかわる新しい成膜法である。薄膜は非晶質であった。
    コロイド電解液の WO3 と MoO3 の組成比を変化させることにより薄膜の組成比も制御できることが判明した。
    タングステン酸 : モリブデン酸の混合モル分率が 7 : 3 のとき, 光吸収スペクトルのピークが 780nm となり他の混合比の薄膜にくらべて短い波長の可視領域へ移動した。これは薄膜の色が鮮明に見えることを示している。WO3-MoO3 薄膜は 1mol・dm-3 過塩素酸リチウム/プロピレンカーボネート電解液中で ±1.5V の電圧印加により青色の着消色反応を示し, エレクトロクロミック素子としての可能性を示した。
  • 山崎 達也, 安倍 由貴, 綿貫 勲, 丁 同富, 小沢 泉太郎, 荻野 義定
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1530-1535
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ZSM-5 系ゼオライトの吸着特性を検討するため, 27℃, 0.05~1.OMPa の範囲で, 吸着したメタンおよび窒素の IR スペクトルを測定した。
    測定を行なった全領域において, 吸着種の赤外禁制帯の誘起が生じ, 吸着質は, ZSM-5 の強い細孔内電場を受けていることがわかった。電場強度 (E) は, 1.5~1.8×105esu で, 低温, 低圧下で得られた値より若干小さかった。また, SiO2/Al2O3 比の大きなゼオライトほど, Eは大きくなった。
    IR スペクトルのピーク位置, 半値幅, および電場強度の温度依存性から, 温度の上昇にともない, 吸着質の配向や秤動に対する陽イオンの束縛力が減少することがわかった。
  • 平田 豊, 出口 俊司, 山内 昭, 君塚 英夫
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1536-1541
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-メチルピリジニウム塩基とスルホン酸基を共有する両性イオン交換膜のイオン透過機構を明らかにするために, 陽イオンの荷電が異なる種々の電解質を用いて単一および二種電解質系における膜電位測定を行なった。さらに, 非平衡熱力学に基づいた膜理論式にしたがって, 測定結果からイオン間の膜透過係数の比を算出し, 透過機構について検討した。その結果, この両性イオン交換膜は, 電解質の陽イオンの価数によって透過性が大きく影響されることが認められた。また, 二種電解質系においては緬数の大きい方の陽イオンが, おもにその系のイオン透過性を支配制御することが認められた。さらに, 以前に電気透析から得た膜透過係数の比と比較したところ, 各系においてよい一致がみられた。電気透析と膜電位についてイオン透過の方向を考慮すると, 膜透過に関しては, 異種陽イオン間の相互作用が, 同種陽イオンおよび陰イオンとの相互作用とくらべ小さいことがわかった。
  • 水上 富士夫, 和田 充弘, 丹羽 修一, 鳥羽 誠, 清水 一男
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1542-1548
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    耐熱性の高い触媒担体を得ることを目的に, 種々のアルミナ複合酸化物を合成し, 耐熱性におよぼす合成方法, 原料および添加成分種とその量の影響を, 複合酸化物の比表面積や構造変化から調べた。金属アルコキシドから化学混合法と共沈法で合成したアルミナ複合酸化物の比表面積を比較すると, 焼成温度 1200℃ 以上では差はなく, それ以下ではいずれの試料も化学混合法のものが高い比表面積を示しちた。SrO, BaO, La2O3 および ZrO2 を Al2O3 にそれぞれ 10wt% 添加すると, アルミナ単味にくらべ焼結が抑制され高い比表面積を示した。しかし, 同じ重量の MgO, CaO および CeO2 の添加では比表面積は低下した。アルミナ複合酸化物原料に硝酸塩を用いると, 1000℃ 以下で非晶質から結晶質への変化が起こり低い比表面積をもつ複合酸化物が得られた。一方, アルコキシドからの複合酸化物はより高い温度まで相変化を起こさず高い比表面積を示した。合成した複合酸化物の中では BaO/Al2O3 がもっとも耐熱性が高いが, 高比表面積を示す BaO 添加量は 10~20wt% の範囲で焼成温度に依存し変化した。BaO 10wt% のものは 1000℃, 100 時間および 1200℃, 3時間の焼成でも, ともに非晶質で, それぞれ 139 および 96m2/g の高い比表面積を示した。
  • 田中 栄治, 内藤 龍之介, 阪田 祐作, 笠岡 成光
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1549-1555
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    半径 10nm 以下にシャープなミクロ孔分布を有し, かつ賦活度の異なる 10 種のフェノール樹脂系繊維状活牲炭を用い, 構造, 官能基の異なる 25 種の有機化合物について飽和蒸気圧下での吸着量を測定し, その凝縮容積と繊維状活性炭のミクロ孔容積の比較により, ミクロ孔における分子の吸着状態 (分子配向性, 変形状態) について検討を加えた。さらにミクロ孔における物質移動を明らかにするため, 吸着速度を測定し, Fick の拡散式の適用を試みた。得られたおもな結果はつぎのとおりである。
    (1)シクロヘキサンは吸着されないが, ベンゼンが吸着可能な細孔において, ブタン, イソオクタン(2,2,4-トリメチルペンタン), シクロペンテン, クロロホルムなどが吸着されたことから, これらの化合物は平板状に近い形状に変形して吸着されると結論した。
    (2)飽和蒸気圧下での吸着は半径 10nm 以下のミクロ孔をほぼ満たす程度に起こり, そのさいの凝縮密度は通常の液体状態の 0.8~1.0 倍であった。
    (3)ベンゼン, クロロホルム, 四塩化炭素がかろうじて移動し得るようなミクロ孔における拡散に対しては, Fick の拡散式の適合性がよく, 見かけの有効拡散係数は 10-1O~10-12[cm2/s] のオーダーであった。
  • 安江 任, 小嶋 芳行, 荒井 康夫
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1556-1564
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セッコウの湿式合成において, メタノールの存在は溶解度の低下による沈殿の微粒子化や結晶核へのアルキル基の吸着によりセッコウをゲル化するが, このゲルから急速にメタノールをとり去るとセッコウゲルは繊維状セッコウに結晶化する。本研究はそのゲル化条件, ゲルの結晶化条件, および得られた繊維状セッコウシートの性質などをX線回折, 熱分析 (TG-DTA), 走査型電子顕微鏡観察, 溶解速度の測定によって検討したものである。
    二水セッコウ飽和溶液にメタノールを添加すると不安定なオルガノゲルが生成する。このゲルをすみやかに吸引源過してオルガノゲルからメタノールを除去すると, 板状の二水セッコウまたは繊維状のβ型半水セッコウに結晶化する。この繊維状のβ型半水セッコウの生成領域は温度,メタノール添加量,熟成時間などのゲル化条件およびゲルの演過速度によって影響をうける。たとえば, 温度を 60℃, メタノール添加量を 67% (50cm3 飽和溶液+100cm3 メタノール), 熟成時間5分, 炉過速度を 3cm3/s において, アスペクト比 200(長さ 80μm×径0.4μm) 程度の繊維状のβ型半水セッコウがからみ合ったシートの合成が可能である。また, このシートを 800℃ で加熱脱水して得られた高結晶性のII型無水セッコウは繊維状を保持しており, 柔軟, かさ密度 0.3g/cm3 程度の軽量で, しかも耐水性の高いII型無水セッコウシートを得ることができる。
  • 井奥 洪二, 吉村 昌弘, 宗宮 重行
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1565-1570
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    湿式合成したヒドロキシアパタイト (Ca10(PO4)6(OH)2 以下, HAp と略記する) を水熱処理することにより, HAp 超微粒子を得た。200℃, 2MPa, 10 時間の条件で水熱合成した HAp は, 六角柱状の約 25nm×90nm の大きさをもつ微結晶であった。
    この HAp 微結晶の化学分析, 赤外吸収スペクトルおよび粉末X線回折などの測定から, HAp 中の OH- サイトにはごく微量の炭酸根が含まれ, 組成式では
    Ca10(PO4)6(OH)1.81±0.03(CO3)0.095±0.015
    として与えられることがわかった。
  • 斎藤 肇, 鈴木 久男, 林 宏明
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1571-1577
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジルコニウムテトラプロポキシドの加水分解により得られる生成物の形態に影響をおよぼす因子 (溶媒, 水/アルコキシド比, 熟成温度と時間, 加水分解水の pH) について検討した。溶媒のアルコールのアルキル基が高級であるほど組織が粗くなった。加水分解水の量が化学量論量 (水/Zr(OC3H7n)4 比=4) より大きくなるにしたがって粒径が大きくなった。熟成時間が長くなるにしたがって凝集が強くなり, 熟成温度を高くすると粒径が大きく, 球状に近くなった。また, 加水分解水が pH=2 で水/アルコキシド比≦4 の場合は, 加水分解ののちも溶液は透明で, 乾燥物はキセロゲル状となった。pH=10 の場合は生成物は等軸状粒子となった。
    これらの因子を綱御することにより単分散に近い球状粒子および透明な塊状物を得ることがきた。
  • 小俣 雅嗣, 伊藤 純一
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1578-1582
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5,10,15,20-テトラキス[4-(トリメチルアンモニオ)フェニル]ポルフィリン (ttmapp) とパラジウム(II) との錯形成反応について検討し, ttmapp の Soret 帯の減少を利用する吸光光度定量法を開発した。パラジウム(II)と ttmapp の反応は常温では非常に遅いが, pH を5として L-アスコルビン酸ナトリウムを加えることにより常温で定量的に反応した。pH 1.2 以下で ttmapp (λmax=432nm) およびパラジウム(II)錯体 (λmax=409nm) のモル吸光係数は, それぞれ 5.14×105dm3・mol-1・cm-1,3.06×105dm3・mol-1・cm-1 であった。サンデル感度は 0.205 ngPdcm-2, 70.6 ppb のパラジウム(II)を20 回測定したさいの相対標準偏差は 0.56% であった。28 種の金属イオンの妨害およびその除去法を検討し, 白金族のイオンに対しても選択的な定量法となった。銅イオンが共存する場合は触媒の選択によりパラジウム(II), 銅(II)の分別定量が可能となった。
  • 岡崎 重光, 鈴木 義仁
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1583-1586
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    静電場噴霧法を用いて, ミクロ液体クロマトグラフィーの炎光検出器を試作した。溶離液を静電場噴霧法で微粒化し燃焼させ, 還元炎中で硫黄の発光を利用して, 硫黄を含む化合物のクロマトグラムを炎光検出する。そのさい, 溶離液の有機溶媒による妨害をともなう。この妨害を除くためダブルフレーム型の燃焼装置とした。一段目のバーナーでは酸素過剃炎として有機物を完全燃焼させ, ついで二段目のバーナーの還元炎中で硫黄の発光を安定化させた。水やプロパノール類などの極性の大きい溶離液は容易に微粒化されるが, ベンゼン, トルエンなどの極性の小さい液体の微粒化は困難であった。プロパノール類の場合は水素と空気で安定に燃焼するが, 含水量の多い溶離液では不安定な燃焼となる。空気を酸素に変えて安定化をはかった。内径 0.5mm, 長さ 110mm の ODS カラムを使用し, 40% (v/v) 2-プロパノール/水, 流速 8μl/min で, 4種の alkyl phenylthiocarbamates それぞれ 0.5μg の混合物のクロマトグラムが得られた。
  • 佐竹 弘, 背川 浩明, 池田 早苗
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1587-1590
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    微量のシアン化物イオンをノンサプレッサー型イオンクロマトグラフィーにより声感度に定量する方法を開発した。
    すなわち, シアン化物イオンを多硫化物でチオシアン酸イオンとしたのち, 電気伝導農 (CD) 検出器および紫外分光光度計 (UV 検出器) を用いたイオンクロマトグラフにより間接的にシアン化物イオンを定量する方法である。UV 検出器ではシアン化物イオン濃度が 0.05~2.5ppm, CD 検出器では 25~2.5ppm の範囲で検量線は直線 (相関係数 0.9998 以上) となり, 検出限界 (S/N=2) はそれぞれ O.01ppm, 0.1ppm であった。分析用試料としてはシアン化物イオンに対して, 多硫化物溶液 (4倍当量以上の多硫化物型硫黄を含む) を添加して, 90℃ で 20 分間反応させたものが適当であった。ニッケルイオン, 鉄(III)イオン, 銀イオン, 鉛イオン, 亜鉛イオン, 水銀(II)イオンなどが1倍モル共存しても 93% 以上の回収率で定量でき, 陰イオンの影響はほとんど認められなかった。
    本法はシアン化物イオンを直接定量する方法にくらべて, 高感度で, 共存イオンの影響が少なく, 簡単に数十 ppb のシアン化物イオンが定量でぎるという特徴がある。
  • 高橋 一暢
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1591-1594
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電子捕獲型検出器付きガスクロマトグララフィー (以下, ECD-GC と略記する) による海水中の微量トリブチルスズ化合物およびトリフェニルスズ化合物の定量法について検討した。
    海水中のトリブチルスズ化合物およびトリフェニェニルスズ化合物を塩酸酸性下で塩化トリブチルスズ (以下, TBTCと略記する) および壇化トリフェニルスズ (以下, TPTC と略記する) としたのち, 水素化ホウ素ナトリウムでそれぞれの水素化物とし, それらをヘキサンにより抽出して, ECD-GC で定量した。GC のカラムとして 80~100 メッシュの Chromosorb W AW-DMCS に Silicone OV-1 を 10% コーティングした充填剤を内径 2.6mm, 長さ 1.6m のガラスカラムに充填して用いた。本法のトリブチルスズ化合物およびトリフェニルスズ化合物の検出限界は, それぞれ 0.5, 0.5ng であり,海水中の 1μg/ml 濃度の TBTC, TPTC の回収率はそれぞれ 96~100%, 95~98% の範囲を示した。
  • 田中 久雄, 向山 吉之
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1595-1600
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物を酸成分とし, エチレングリコールまたはプロピレングリコールをアルコール成分とするポリエステルを合成し, 1H-NMR スペクトルによって, 生成ポリエステルの化学構造を解析した。その結果, エステル化の過程でカルボキシル基が cis 構造から trans 構造にいちじるしく異性化していることが明らかとなった。この異性化はポリエステル化反応の初期段階におけるモノエステルの状態において顕著に起こった。逆 Diels-Alder 反応が起こることによって転位が起こる異性化機構を提案した。
  • 須郷 高信, 岡本 次郎
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1601-1606
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン膜を基材として, 放射線前照射法により, アクリロニトリルをグラフト重合し, さらに側鎖のシアノ基をアミドギシム基に変換する方法でキレート膜を合成した。
    得られた膜を用いて, Cu2+ と Mg2+ の混合溶液による選択透過性について検討した。
    金属イオンの透過速度は, 溶出液の pH の影響を大きく受け, 水素イオン濃度差が駆動力になるものと推論される。選択透過性は錯安定度定数に起因する膜内の吸着平衡の差によるものであり, 膜中のアミドキシム基がキャリヤーとしてイオンを選択輸送する過程において, その時点における pH の影響を大きく受けることが明らかになった。
  • 堀 隆博, 斎藤 恭一, 古崎 新太郎, 須郷 高信, 岡本 次郎
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1607-1611
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非多孔性の高密度ポリエチレン膜を基材として, 放射線グラフト重合法により海水ウラン採取用のアミドキシム樹脂を合成し, グラフト率 48.2%, 銅の飽和吸着量 4.4mol/kg-BP, 塩酸吸着量 2.1mol/kg-BP の樹脂を得た。このアミドキシム樹脂に対し, 前処理あるいは吸脱着操作のくり返しを行ない, 樹脂の寸法, 含水率, および銅イオンの吸着特性の変化を調べた。アミドキシム樹脂に対し, 塩酸, 水酸化カリウム, 塩化カリウムを用いて, それぞれ同じ濃度, 温度, 反応時間で前処理を行なった場合, 水酸化カリウムを使ったアルカリ処理においてもっとも樹脂が膨潤し, 含水率が増大した。前処理を行なわないアミドキシム樹脂について, 銅の吸着はほとんど起こらなかった。アルカリ処理を一度行なったアミドキシム樹脂は, 銅を十分に吸着した。また, その後, 脱着処理やアルカリ処理をくり返しても, 寸法, 含水率, 吸着特性, いずれの面においても変化があらわれなかった。
  • 笹本 忠, 目黒 竹司, 横山 隆, 林 宗和, 堀内 弘志, 阿部 喜昭, 鳥飼 直親
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1612-1616
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    サーミスター用 Mn-Fe-Co-Ni系 スピネル型酸化物 (モル比, Mn:Fe:Co:Ni=5.7:4.0:1.5:1.0) の電気伝導機構とアニーリング中における導電性におよぼす雰囲気の影響について検討を行なった。試料として, 硝酸塩熱分解法で得た混合酸化物の仮焼粉末を 1400℃ で1時間焼成したものを用いた。この試料を 310℃ で最長 700 時間アニール処理したところ, 酸素および空気中の酸化雰囲気中において立方晶スピネルから正方晶スピネルへの相変化が認められた。つぎに, 310 および 370℃ で導電率 (σ) と Seebeck 係数 (Qs) を種々の雰囲気中で測定した結果, アルゴン雰囲気ではσ, Qsともまったく経時変化が認められないのに対し, 酸化雰囲気中ではやや複雑な変化を示し, アニール初期ではホール (正電荷担体) の濃度増加による増大が, その後においてはホールの移動度の減少に基づく減少がみられた。空気中で測定された σ と Qs との温度依存性からアクセプター準位および移動度の活性化エネルギーの値としてそれぞれ 27.1 および 28.3kJ・mol-1 が得られた。これらのデータからジャンプ頻度の値として 5.4×1012s-1 が得られ, 伝導機構としてスモールポーラロンホッピング伝導を支持する結果が得られた。
  • 保利 一, 田中 勇武, 秋山 高
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1618-1622
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二成分系の混合有機溶剤を吸着した活性炭から, 溶剤を加熱脱着する場合の加熱脱着率を, 簡便に推算する方法について検討した。活性炭層内の吸着量および蒸気濃度は均一と仮定し, 吸着等温線は, 数本の直線で近似した純成分の式を, 二成分系に拡張して用いた。また, 溶剤の移動速度は無限大, 脱着温度は一定と仮定した。脱着曲線 (カラム出口における蒸気濃度の経時変化) の推算値は, 初期には実験値よりも高くなる傾向がみられたが, 全体的には実験値と良好な一致を示した。脱着率も推算値は, 一部の系を除いて, 実験値と比較的よい一致を示した。
  • 水崎 純一郎, 田川 博章, 常吉 紀久士, 森 一剛, 沢田 明宏
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1623-1629
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高温固体酸化物燃料電池の空気極の特性が何で決まるかを明らかにすることを目的とし, La0.6Ca0.4MO3(M=Mn,Co)/安定化ジルコニア系電極について, SEM による微細構造の観察, 複素インピーダンス測定, カソード定常分極測定を行なった。測定結果を, 電極材料 La0.6Ca0.4MO3 の塗布厚さの関数として整理し, 考察した結果, つぎのような結論を得た。(1) 1100℃ で焼成した La0.6Ca0.4Co3/安定化ジルコニア電極系の界面には CaZrO3 層が形成される。この層は電極として機能するので, La0.6Ca0.4Co3/安定化ジルコニア系電極の特性は CaZrO3/安定化ジルコニア界面の特性で決まる。(2) La0.6Ca0.4MO3/安定化ジルコニア系電極のカソード反応は気相酸素が La0.6Ca0.4MO3 表面へ吸着し, 表面拡散によって, 気相/電極/電解質三相界面へ移動する, という経路をとる。気相酸素の La0.6Ca0.4MO3 表面への解離吸着反応は比較的遅く, 大電流を流すためには, 多孔性電極の表面積ができるだけ広いことが必要になる。
  • 小俣 雅嗣, 伊藤 純一
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1630-1632
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A highly sensitive method for spectrophotometric determination of lead(II) by use of a water-soluble porphyrin was developed.5, 10, 15, 20-Tetrakis[4-(trimethylammonio)phenyl]porphyrin (ttmapp) formed a lead(II) complex by heating for 5 min in an alkaline solution.. A high and constant absorbance of the complex was obtained in a pH range 9.1-.11.8. The soret band maximum of the complex (ε=3×105) lies at 463 nm, separated substantially from that of free ttmapp (411nm). The tolerance limits of 22 metal ions are given. Lead(II) was separated from many metal ions by extraction with dithizone-carbon tetrachloride solution from alkaline solution followed by back extraction with 1 mol⋅dm-3 nitric acid. The recommended procedure is as follows. Take 20-40 ml of a sample solution containing 0-20 μg of lead (II) into a 100 ml beaker and adjust the pH to 9.5 with a borate buffer. Heat the solution to 90°C and add 1 ml of a 4×10-4 mol⋅dm-3 ttmapp solution, then allow it to stand for 5 min at 90°C. After cooling to room temperature dilute the solution to 50 ml. Measure the absorvance at 463 nm against water. A straight calibration line was obtained up to at least 400 ppb lead, and the sensitivity (Sandell index) was 0.835 ngPb cm-2. The relative standard deviation (n =10) was 1.7% for the spectrophotometry and 4.3% for the extractionspectrophotometry. This method was applied to the determination of lead in sewage water.
  • 盛 秀彦, 藤村 義和, 武上 善信, 大橋 二也
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1633-1635
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A chelating resin was prepared by the reaction of a diphenyl phosphonate-formaldehyde resin with trietylenetetramine for 4 h about 100°C. The adsorption capacity of the resin, for divalent metal ions was 1.8 Cu2+ mmol/g-R (dry resin) and for trivalent metal ions 0.80 Cr3+ mmol/g-R. Elution curves for Ca2+, Mg2+, Cu2+, Cd2+, Zn2+, Co2+, Ni2+ and Pb2+ were recorded by using 0.02 mol/l citric acid and 0.0 5 mol/l HCl. The separation, of metal ions. from each other and the recovery of Ca2+ and Mg2+ from large amounts of other, divalent metal ions are facilitated. The resin also showed goosl adsorption of. Cr(III) from buffer solutions of pH 5.0-7.0 and of Cr2O72- from buffer solutions of pH 2.0-7.0.
  • 菊池 康男
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1636-1638
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Formation of macromolecular complexes (MCs) of potassium metaphosphate (MPK) with [2-(diethylamino)ethyl]dextran hydrochloride (EA) or glycol chitosan (GC) has been studied. Phase diagrams in three-component system NaBr/acetone/H20 were achieved for M Cs prepared from the MPK-EA system at pH 1.0 and MPK-GC system at pH 1.0 to pH 5.0, but were not achieved in the other reaction systems.
    The MCs prepared from the, MPK-EA and MPK-GC systems consisted of phosphate and/or metaphosphate with EA and GC, respectively.
  • 畑田 清隆, 伊東 祥太, 生島 豊, 浅野 隆, 斎藤 功夫, 後藤 富雄
    1988 年 1988 巻 9 号 p. 1639-1640
    発行日: 1988/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The fatty acids in hexane extracts of the milt of Alaska pollack (Theragla chalcogramma)were palmitic acid (23%), oleic acid (24%), eicosapentaenoic acid (EPA) (20%) and docosahexaenoic acid (DHA) (24%). However, in the case of supercritical carbon dioxide (SC-CO2)extracts, the contents of these components were 11%, 20%, 32% and 25%, respectively, This is in sharp contrast to the reported results from extraction of fatty acids with SC-CO2. As a reson for the difficulty in extracting palmitic acid with SC-CO2, it was inferred that the palmitic acid in the milt of Alaska pollack exists as phospholipids in view of the results obtained by reextraction of a hexane extract with SC-CO2. Therefore, the milt seems to be a material suitable for extracting EPA and DHA in high contents with SC-CO2.
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