日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 8 号
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  • 城所 忠彦, 安岡 高志, 光澤 舜明
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 519-524
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    SO2の土壌への影響は, SO2と土壌およびSO2と土壌水の挙動に反映されることから, 系内における相対湿度に対する除去率の変化について検討した. 土壌は代表的な関東ローム, 火山灰系土壌, 多オリン系土壌, モンモリロン石系土壌, 標準砂 (山口県豊浦標準砂) の5種類を用いた. これらの土壌が50-270メッシュの広い範囲の粒度分布を示す場合, SO2の除去率は標準砂を除き相対湿度50%で極大値を示し, 土壌中の保水すなわち土壌表面における水分子の構造と密接に関係していることがわかった.
    5種類の土壌のうち, 関東ローム土壌は粒径50-100, 150-170, 250-270メッシュの3種類に分類し, 相対湿度を変えてSO2の除去率を測定した. 分別した土壌は分別しない土壌に比べて, 相対湿度50%を除きSO2の除去率が相対的に高くSO2の除去率が下に凸型を示した. これらの5種類の土壌におけるSO2の除去率は, 相対湿度50%のとき, 比表面積が増大するとSO2の除去率が増す傾向にあった.
    土壌中に含まれる粘土鉱物のベントナイト, Na型モンモリロン石, カオリンのSO2除去率は相対湿度95%では60%以上の除去率を示し, 土壌中に含まれる粘土鉱物が除去率に対して大きく寄与していることがわかった.
  • 矢田 智, 冷水 真, 高木 弦
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 525-529
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    8-10遷移金属 (白金族金属) 触媒上で2-, 3-および5-ノナノンの還元アミノ化を検討した. 2-ノナノンでは, Raney Niの場合を除き主生成物は第一級アミンで, 先に報告したノナナールの場合と異なり, 第三級アミンの生成は全く認められず, また第二級アミンがわずか生成したPt, Ir触媒以外, Pd, Ru, Rh, Raney Ni, Raney Co触媒上では第二級アミンの生成は認められなかった. しかし, Pd, Rh, Ir以外の触媒上では, ノナナールの場合に比べて相当するアルコールが多く生成し, 特にRaney Niではアルコールの生成が54%と, 第一級アミンよりもむしろ多く生成した. PdとRh触媒ではアルコールは生成せず, 第一級アミンがそれぞれ100および98%の高選択率で生成した. 酢酸アンモニウムを添加すると触媒により反応率は若干低下したが, 第二級アミンやアルコールの生成が抑制され, 第一級アミン生成の選択率が増大した. 特にRaney NiとRaney Coではアルコールの生成が完全に抑制され, それぞれ100および98%の収率で第一級アミンが得られた. 3-および5-ノナノンは2-ノナノンより反応性が小さく, 2->3->5-ノナノソの順に反応性は低下した. 逆に, アルコール生成の選択性は2-<3-<5-ノナノンの順に増加した. 以上の結果および先に報告したノナナールの結果との相違を, 第一級アミン, 第二級アミンおよびアルコールの生成経路に基づき, 中間体の生成とその反応性に対するカルボニル基に関する立体障害の影響を考慮して考察した. 炭素担持白金族金属触媒による2-, 3-, 5-ノナノンの還元アミノ化は, いずれも無担持金属黒触媒よりも容易に進行し, 異性体間における反応性およびアルコール生成率の相違が金属黒触媒の場合より小さく, 担持触媒では立体障害の影響を受けることが少ないことが示唆された.
  • 加藤 隆二, 横井 裕之, 薄葉 州, 角舘 洋三, 藤原 修三
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 530-534
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    超音波化学反応を用いた液体ベンゼンの黒鉛化反応を研究した. 超音波化学反応では, 音圧によって生じた気泡が, その後, 圧壊することで高温・高圧状態が発生し, 分子の分解が起こり, 固体生成物が生成する. 液体ベンゼンの炭素化をすすめるために, 四塩化炭素の分解によって生じる塩素原子でベンゼンの水素を引き抜く反応を検討した. そして, 黒鉛微粒子が生成したことをラマン分光の測定により確認した.
  • 田中 龍彦, 黒岡 和巳, 池田 幸太郎, 小倉 郁史
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 535-538
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電量ヨウ素滴定法により三酸化二ヒ素の定量を行い, ヒ素 (斑) 標準溶液の調製方法と保存・安定性について検討した. 大気中または不活性雰囲気中, 三酸化二ヒ素標準物質を2mol dm-3水酸化ナトリウム溶液に溶解したときの純度測定値は認証値より約0.1%低かった. しかし, 除酸素した同濃度の水酸化ナトリウム溶液で溶解すると, 得られた純度は認証値に近い値になった. 一方, 2mol dm-3炭酸ナトリウム溶液に溶解した場合には, 認証値にほぼ一致した純度値と十分な精度が得られた. 純度低下の主因は高い塩基性度と溶存酸素によるヒ素 (III) の酸化であり, 三酸化二ヒ素の溶解には炭酸ナトリウム溶液を使用するべきである. テフロンと高密度ポリエチレン容器に2か月間保存した1000μgcm-3ヒ素 (III) の2mol dm-3水酸化ナトリウム溶液中では数%, 1μgcm-3ヒ素 (III) 溶液中では20%以上のヒ素 (III) 濃度の減少がみられた. 2mol dm-3炭酸ナトリウム溶液およびpH約12.5に調整した水酸化ナトリウム溶液中では, いずれのヒ素 (III) 濃度でも少なくともそれぞれ2か月および1か月間は安定であり, 塩基性溶液中ヒ素 (III) の空気酸化の反麻速度は溶液のpHに大きく依存することがわかった.
  • 伊藤 正義, 岩田 健二, 小林 峰生, 武内 亮, 壁谷 俊彦
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 539-545
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビニルシラン (CH2=CH-SiH3) の重合を, (1) ラジカル重合用触媒, (2) アニオン重合用触媒, および (3) 配位アニオン重合用触媒 (Ziegler-Natta触媒) を用いて行い, 得られたポリマーの構造解析とそれらの特性を調べた. 重合様式によって主鎖構造の異なる3種類のポリカルボシランが得られた. ラジカル重合では低分子量 (Mn500-1500) で無色透明の液状ポリマー [-CH2-CH (SiH3)-, -CH2-CH2SiH2-] が, またアニオン重合では構造の異なる液状ポリマー [-CH (CH3) -SiH2-, Mn500-1500] がそれぞれ高収率で得られた. 配位アニオン重合では白色固体で, 溶媒には不溶のポリマー[-CH2-CH (SiH3)-]が得られた. シリル基の特異的な反応性からそれぞれの重合機構を提案した. これらはSi-H結合を有する反応性のポリマーであるが, 空気中, 常温では安定である. また不活性ガス中, 高温で焼成することによって炭化ケイ素が得られた.
  • 辻 俊郎, 池本 英夫, 酒井 伸子, 入田 伸介, 柴田 俊春, 上牧 修, 伊藤 博徳
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 546-550
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニルの熱分解および接触分解における昇温速度と触媒の効果を調べた. 生成油の性状は脱塩化水素段階における加熱速度にはほとんど影響されなかったが, ポリエン熱分解段階の加熱速度には強く影響された. ポリエン熱分解の加熱速度が小さい方が生成油の収率は少なくなるが, 低分子化合物の収率は増加した. ポリエン熱分解において触媒を用いることにより, 生成油の収率は低下したが, BTX (ベソゼン, トルエン, キシレン) やナフタレンの収率が大きく増大した. 本実験で最も良い収率を示した触媒はHZSM5で, 試料ポリエン基準で最大で約7%のBTX+ナフタレン収率であった.
  • 杉山 一男, 谷川 将行, 白石 浩平
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 551-557
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリジメチルシロキサン (PDMS) 系アゾ開始剤VPSを用いてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル (HEMA) , メタクリル酸2, 2-ジメチル-1, 3-ジオキソラン-4-イルメチル (DMM) あるいはメタクリル酸5- (5-ヒドロキシメチル-2, 2-ジメチル-1, 3-ジオキソラン-4-イル)-2, 2-ジメチル-1, 3-ジオキソラン-4-イルメチル (MDID) のラジカル重合を行い, HEMA, DMMあるいはMDIDのポリマーをそれぞれ親水性セグメントとしPDMSを疎水性セグメントとする一連のブロックコポリマーPHEMA-b-PDMS, PDMM-b-PDMSとPMDID-b-PDMSを合成した. さらに, PDMM-b-PDMSとPMDID-b-PDMSのフィルムは希塩酸で処理して, それぞれPDMMとPMDIDセグメントをポリ (メタクリル酸2, 3-ジヒドロキシプロピル) (PDHPMA) とポリ (メタクリル酸2, 3, 4, 5, 6-ペンタヒドロキシヘキシル) (PMDul) に変換し, 対応するPDHPM-b-PDMSとPMDul-b-PDMSとした. ポリマーフィルムのXPS測定から, 水中では親水性セグメソトが表面付近に配向しており, 水の接触角は親水性セグメソトの増加とともに低下した. これらブロックコポリマーはポリジメチルシロキサンよりもアルブミンとグロブリンの吸着を抑制し, かつ血小板の粘着と活性化を抑制した.
  • 真鍋 礼男, 川村 健一, 高木 英男, 豊田 毅, 水野 孝之
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 558-562
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    温度, 湿度を変えてオートクレープ中で促進劣化させたpoly(butyleneterephthalate)[PBT]の劣化過程における引張強さの低下と末端COOH基量あるいは分子量との関係について検討した. 劣化条件に関係なく, 引張強さと末端COOH基量あるいは分子量とは一義的に関係付けられた. 引張強さが急速に低下し始める変曲点における末端COOH基量は初期値の約1.7倍に増加し, また数平均分子量砥は約70%に, 重量平均分子量MWは約60%に低下した.また,末端COOH基量と分子量の関係も劣化条件に関係なく一義的に表され, 上述の傾向と同じような挙動を示した. 材料の劣化過程を評価する上で機械的特性は重要であるが, 少量のサンプリソグで末端COOH基量あるいは分子量を測定することにより精度よくPBTの劣化過程を評価できることがわかった.
  • 豊田 昌宏, 相澤 淳一, 稲垣 道夫
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 563-565
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Sorption of a large amount of heavy oil by an exfoliated graphite was found. The maximum sorption capacity of the exfoliated graphite reached more than 80 g/g for grade-A oil with a viscosity of 4 poise and 75 g/g for grade-C heavy oil with 350 poise. Sorption for grade-A oil was completed: within 1 min a characteristic brown color of the oil disappeared. High performance of the exfoliated graphite for sorption of heavy oil, particularly for the collection of heavy oil was expected.
  • 藤田 雅也, 山崎 友紀, 山崎 仲道
    1998 年 1998 巻 8 号 p. 566-568
    発行日: 1998/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Effect of some kinds of alcohol addition to alkali solvent on hydrothermal decompositions of various kind of halogenated carbons such as chlorofluorocarbons (CFCs) with 1-4 carbons was investigated. We have already reported the perfect decomposition of the CFCs under methanolic alkaline hydrothermal treatment at lower temperature compared to supercritical water oxidation (SCWO) process. Here, in order to clarify the effect of a lcohol addition to solvent, the relation of concentration of halogenide ion and organic ions were investigated. Furthermore the organic carbons were analyzed by 13C-NMR to confirm the origin of the carbon whether from the oxidation of added alcohol or from the transformation of starting CFCs. It was revealed that the carbon-halogen bondings can be completely dehalogenated and the halogenide ions were released into the aqueous solution and can neutralize with alkali therefore, the perfect process for the elimination of the toxicity should be possible in the hydrothermal treatment.
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