日本化学会誌(化学と工業化学)
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1983 巻, 3 号
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  • 遠藤 邦彦, 岡松 浩, 嘉村 祐一
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 327-331
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硝酸イソプロピルとその同位体種のマイクロ波スペクトルを8.5から32GHzの領域で帰属し,つぎの回転定数を得た。
    (CH3)2CHONO (CH3)2CDONO (CH3)2CHO15NO
    A 7545.40±0.48MHz 7337.70±0.51MHz 7531.47±0.42MHz
    B 2147.01±0.03 2125.72±0.03 2127.86±O.03
    C 1796.26±0.02 1793.26±0.02 1783.84±O.02得られた回転定数に対して最小二乗法を適用し,分子の構造パラメーターとしてつぎの値を得た。
    C-O=1.432±0.006Å, O-N=1.414±0.006Å, N=O=1.170±0.006Å,∧
    CON=113.2±0.6°, ∧ONO=111.2±0.6%°, ∧CCC=115.2±1.0°,
    ∧HC-ON=30, 0°±2.0°
    そのさい,C-H=1.09Å, C-C=1.524Å,∧HCC=109.5°,∧HCO=109.5°,および∧CCO=107.6°を仮定した。ここに帰属された回転異性体の構造は末端のN=O結合とC-O結合がたがいにトランス位,中央のO-N結合とH-C結合がたがいにゴーシュ位にあるものである。この構造をマイクロ波分光法によって決定された他のX-ONO分子と比較すると,結合角∠XONは下記に示す順に増加しておりONO基の末端窒素原子と結合基Xの間の立体効果の影響が顕著に示された。HONO < CH3ONO < CH3CH2ONO < (CH3)2CHONO < (CH3)3CONO.
  • 佐々木 幸夫, 石井 正, 渡辺 信一, 滝沢 正男
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 332-336
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)―水混合溶媒の誘電率(ε)は温度t(℃)の三次式で表わすことができる。また各温度の誘電率をDMFの含有量に対してプロットすると約10%(wt%)までは急激に減少し,その後DMF(H2O)2なる会合体の生成を示唆する約60%DMFに当量点をもつ曲線となる。そして,混合溶媒に対する(ε-1)(2ε+1)/9ε νs.1/T(Tは絶対温度)のプロット(Kirkwoodの式)は会合体の生成する組成の混合溶媒の場合にとくに直線関係を満足する温度範囲は狭くなる。一方,混合溶媒の粘性率および密度の変化はDMF(H2O)2の会合体の生成を支持すべく約60%DMFにおいていずれも当量点を有する曲線となる。また混合溶媒の対数値(logη)と1/Tとの間にはよい直線が得られたので,その直線の勾配から混合溶媒に対する粘性流動の活性化エネルギーを求めると約60%DMFにおいてもっとも大きくなる。したがって,活性化エネルギーの増加は会合体の生成と関係があると考えられる。
    混合溶媒の計算により求まる理想的な誘電率および粘性率とそれぞれの測定値との差(excess dielectric constant εE, excess viscosity ηE)を検討するとηEは約60%DMFにおいて最大となり,70-80%DMFで最大となるεEとは相違が見られた。
  • 鈴木 敏幸, 塘 久夫, 石田 篤郎
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 337-344
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    O/Wエルション中にある条件下で乳化粒子の凝集体(二次粒子)が形成された。この二次粒子は高級アルコールが存在するときに形成される傾向にあったので非イオン界面活性剤/高級アルコール/流動パラフィン/水からなる乳化系について二次粒子の形成条件,構造,形成機構および二次粒子形成がエマルション物性におよぼす影響について検討を行なった。その結果,二次粒子は界面活性剤/高級アルコール/水からなる閉じたラメラ型液晶により乳化粒子が取り囲まれた構造であり,二次粒子の形成には高級アルコール量および界面活性剤のHLBが特定の範囲にあることが必要であった。二次粒子の形成機構は乳化過程における高級アルコールの溶存状態により説明されることがわかった。また,エマルションの物性は二次粒子の形成により大きく変化した。たとえば系に降伏値が生じ,クリーミングや合―に対する安定性がいちじるしく向上し,エマルションからの水分蒸発も抑制された。
    これらの結果は,いずれも連続相中に液晶が形成されることにより,乳化粒子および水が固定された結果生じたものと考えられる。
  • 吉永 耕二, 木藤 武利, 大久保 捷敏
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 345-350
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ロジウムキラルジホスフィン錯体([Rh(C2H4)2Cl]2と(-)-2,3-O-イソプロピリデン-1,4-ビス(ジフェニルポスフィノ)-2,3-ブタンジオール(diop)および(+)-1,2-ビス(ジフェニルボスフィノ)プロパン(prophos)から混合調製)およびポリスチレン担持ロジウム-(-)-diop 錯体を触媒に用い,プロキラルケトンの不斉水素化反応を均一および不均一相で行なった。過剰のキラルジホスフィンの存在下で均一触媒は高い不斉選択性を示し,生成物の最大光学純度はロジウム-(+)-prophos触媒((+)-prophos/Rh=5/1)セこよるアセトフェノンの水素化において44%であった。不均一触媒の水素化活性および不斉選択性は担体ポリスチレンの細孔径および骨格構造の差異に依存し,均一触媒のそれらにくらべ低かった。ケトン水素化に対する両触媒系活性種の寄与は均一系および不均一系触媒で異なりが見られ,これはおそらく両触媒系の不斉環境の相違に基づくと考えられる。
  • 小早川 紘一, 山辺 武郎, 藤嶋 昭
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 351-357
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    半導体電極における競争反応の観点から,塩基性溶液中のP型リン化ガリウム光カソードにおけるニトロベンゼンの反応を回転リング・ディスク電極法によって調べた。一電子還元生成物であるアニオンラジカルC6H5NO2-(R-)と四電子還元生成物であるフェニルヒドロキシルアミン(PHA)が同時に生成した。R-とPHAとが生成した割合α(α=R-生成電流量/PHA生成電流量)は,電極の電位,電解液のニトロベンゼン濃度,照射光強度を変えると変化した。α の値は電極回転速度を変えても変わらなかった。実験結果は,電極表面を通過した電子の量に対する電極表面に供給されたニトロベンゼン分子の量(β)を大きくするほどα は大きくなると要約できた。この結果は,ニトロベンゼンの還元が光励起電子の供給律速下で起こり,β が大きくなるほどR-の生成量が増え,PHAの生成量が減るためであると解釈した。ニトロベンゼソの還元が水素発生と競争している条件下では,ニトロベンゼン濃度を増すと,R-とPHAの生成量はともに増加した。
  • 川本 博, 竹ノ内 敏一, 赤岩 英夫
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 358-362
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-(2-ピリジルアゾ)レソルシノール(PAR=H2par)およびメチルトリオクチルアンモニウムニクロリド(MTOA=R3R′N+Cl-)によるニッケル(II)のクロロホルムへのイオン対抽出平衡を検討し,MTOAが高次錯体形成能をもつことを示した。MTOA濃度が臨界ミセル濃度(CMC)以下で抽出される錯体の組成は,ニッケル(II)とPARの結合モル比が1:2であり,弱酸性水溶液からNi(Hpar)2,pH8で[R3R′N+]2[Ni(par)22-],pH9以上の領域で[R3R′N2+]2[Ni(par)22-]が抽出されると仮定して抽出挙動を説明できた。MTOA濃度がCMC以上の場合,連続変化法の結果,三次錯体の抽出が認められ,上記のpH条件に応じて,それぞれ[R3R′N+][Ni(Hpar)3-],[R3R′N+]2[Ni(Hpar)2(par)2-]および[R3R′N+]3[Ni(Hpar)(par)23-]が抽出化学種であることを推定した.
  • 横山 敏郎, 菊地 敦, 木村 哲雄, 鈴木 敏重
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 363-367
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モリブデン(VI)およびバナジウム(V)を含む水溶液から,成分金属イオンを分離・回収することを目的として,アミン-N-ポリ酢酸型側鎖と結合した一連のキレート樹脂の適用を試みた。使用したキレート樹脂は,配位子としてイミノ二酢酸(IDA),ジエチレントリアミン-N,N,N′,N′-四酢酸(DTTA)およびN-[2-(2ピリジル)エチル]エチレンジアミン-N,N′-二酢酸(PEDA)を側鎖とするものである。これらのキレート樹脂を用いてバッチ法でMo(VI)とV(V)の吸着特性を検討したところ,IDA樹脂ならびにPEDA樹脂は,Mo(VI)とV(V)の吸着に対して選択性を示した。すなわち両樹脂はpH1.5より低い領域でMo(VI)をもっとも良好に吸着するが,この領域におけるV(V)の吸着容量は小さい。一方,V(V)はpH2.0付近で最大吸着容量を示した。そこでMo(VI),V(V)の混合溶液をpHO.5~1.0に調整し,上記樹脂を充填したカラムに通したところ,Mo(VI)が選択的に吸着され,V(V)はカラムより漏出し,両イオン種の相互分離がほぼ定量的に達成された。樹脂に吸着したMo(VI)(ないしV(V))は1mol・dm-3の水酸化ナトリウム溶液により溶離され,濃縮回収することができた。同時に樹脂は再生されくり返し使用することが可能であった。同様の方法を使用済み触媒から浸出したMo(VI)とV(V)の分離に適用し,満足すべき結果を得た.
  • 河島 達郎, 山本 俊夫, 甲田 善生
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 368-379
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本邦周辺から採取した海藻(緑藻17,褐藻24,紅藻11,その他3試料)中の34元素の含有量を,非破壊法による熱中性子放射化分析で定量した。
    海藻中の元素含量は一般に主要元素,微量元素とも10倍以上の変動幅を示したが,緑藻と褐藻中のカルシウムおよびストロンチウム含量の変動帳は小さかった。緑藻に多い元素はマグネシウムおよびアルミニウムであり,褐藻に多い元素はカルシウム,マンガン,ヒ素,セレン,臭素,ストロンチウム,ヨウ素およびウランであった。ある種の紅藻はアルカリ土類元素がきわめて多く,逆にアルカリ元素含量のいちじるしく少ないものがあった。鉄-アルミニウム,スカンジウム-希土類元素-トリウムなどのように,海水中で類似の挙動をとる元素間に相関関係が認められた。海藻と海水との間の各元素の濃度比と,各元素の海水中での平均滞留時間とは,主成分元素のみでなく微量元素についても,負の対数的相関関係にあることが明らかとなった。
  • 石野 二三枝, 宗森 信
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 380-384
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉄(III)とビスマス(III)との混合水酸化物に酸性アミノ酸を選択吸着させ,低濃度の酸性アミノ酸を他のアミノ酸から分離濃縮する方法をアスパラギン酸(酸性アミノ酸)とチロシン(中性アミノ酸)の分離を例に選び検討した。試料液500mlを用いてpH3.5~4.0においてアミノ酸を混合水酸化物に捕集させたのち,沸騰水浴上で加熱しチロシンのみを脱着させた。過した混合水酸化物を70~80℃で1時間乾燥後,リン酸ナトリウム緩衝液(pH122)10mlを用いてアスパラギン酸を脱着し回収した。平均回収率(n=5)は94.4%,変動係数は1.94であった。酸性アミノ酸であるグルタミン酸は90%以上の回収率が得られた。シスチンとシスティンの回収率はとくに高く23.6%と17.0%であり,その他のアミノ酸の回収率は塩基性アミノ酸で6.1~10.2%,中性アミノ酸で2.3~7.2%であった。
  • 天野 杲, 山田 宗慶, 橋本 和信, 杉浦 啓之
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 385-393
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタンチオールと水素原子あるいは重水素原子との反応を放電流通式反応装置を用いて温度310~480K,圧力330~390Paで検討した。生成物として硫化水素,メタン,エタンと微量の硫化ジメチルおよび二硫化ジメチルが認められた。重水素原子を用いると,このほかに硫化水素とほ蔭同量のHDの生成が認められた。これらの生成物の分布とその反応時間依存性および反応温度依存性はつぎに示す並発反応とそれにつづく一連の素過程によって説明することができた。
  • 下茂 徹朗, 染川 賢一, 隈元 実忠
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 394-399
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4,6-ジメチル-2-ピン(DMP)とアクリロニトリル,アクリル酸メチルまたはエチルビニルエーテルとの光増感反応で4種の[2+2]環化付加物,exo-7-置換cis-2-オキサビシク質[4.2.0]オクト-4-エン-3-オンおよびそのendo体,exo-7-エトキシ-cis-3-オキサビシクロ[4.2.0]オクト-4-エン-2-オンおよびそendo 体と3-置換2-アセトニル-2-メチル-1-シクロブタンカルボン酸を得た。またアクリル酸メチルとの反応では光[4+2]付加反応を経たと思われる3,5-ジメチル安息香酸メチルも得た。DMPとの付加位置および配向にはエチレン置換体の種類により選択性がみられ,アクリロニトリルおよびアクリル酸メチルはおもにDMPの5,6-位に付加し置換基は7-位であり,エチルビニルエーテルはDMPの3,4-位で置換基は7-位であった。これらの生成には56kcal/mol以上の三重項エネルギーをもつ増感剤が必要であり,反応に関与するDMPの三重項エネルギーは56kcal/molと推定された。DMPとエチレン置換体との反応性はアクリロニトリル>アクリル酸メチル>エチルビニルエーテルの順に減少し,-般的なα,β-不飽和カルボニル化合物とエチレン置換体との反応の場合とは逆であった。
  • 高野 二郎, 北原 滝男, 白井 孝三
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 400-404
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アクリジン塩酸塩とアニリンを加熱溶融させると,9-(4-アミノフェニル)アクリジン(mp270~271℃,収率48%)を得た。また,N-メチルアニリン,N,N-ジメチルアニリンもアクリジン塩酸塩に対し,アニリンと同様に反応し,それぞれ9-(4-メチルアミノフェニル)アクリジン(mp260~261℃,収率35%)および9-(4-ジメチルアミノフェニル)アクリジン(mp281~282℃,収率46%)を得た。本反応の副生成物として,9,10-ジヒドロアクリジン〔2〕と9,9′,10,10′-テトラヒドロ-9,9′-ビアクリジン〔4〕を分離確認した。また,p-トルイジンなどのようにパラ位にアルキル基を有するアニリン類はオルト位でアクリジン塩酸塩と反応することがわかった。塩酸塩以外の数種のアクリジン塩とアニリンを上記と同様に反応させ,塩酸塩の場合と同様に9-置換アクリジン誘導体を得た。
    以上の結果から,本反応の機構はアクリジン塩の9-位にアニリンが求核的に攻撃して,9-(4-アミノフェニル)-9,10-ジヒドロアクリジン(未確認中間体)を生成し,これがアクリジンの水素引き抜き反応により9-(4一アミノフェニル)アクリジンを生成すると同時に,9,10-ジヒドロアクリジンを副生するものと思われる。アクリジンのかわりにアクリジン N-オキシドを用いると,アニリンと反応して,ほぼ定量的に9-(4-アミノフェニル)アクリジンを得ることがわかった。
  • 横山 晋, 続木 直英, 内野 洋之, 加藤 隆, 真田 雄三
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 405-413
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭液化油のオイル成分を化合物クラスごとに分別するため,化学結合型アルキルアミン系(μ-Bondapak-NH2)カラムによる高速液体クロマトグラフィーの分離特性について検討した。化学構造によるHPLC溶出挙動への影響を検討するために,液化油オイル成分を化合物クラスに分離し,かつこれらを分子量の大きさによって分別した化学構造の特性が解明されているLC-GPCフラクションを標準物質とみなして本研究に供した。これから脂肪族,芳香族各クラスについて,構造特性(パラフィン鎖長,芳香族環数,ナフテン環数,アルキル基炭素数)によるHPLCの溶出特性を明らかにした。飽和炭化水素(Fr-P)系列のHPLCは保持容量(Rv)3.13~3.40mlのほぼ一定の範囲に溶出ピークがある。これに対して芳香族炭化水素のRvはFr-Pより大きく,Fr-M(Rv=3.50~3.93ml),Fr-D(4.28~4.83ml),Fr-T系列(5.65~6.90ml)の順に段階的に大きな値をとる。さらに,芳香環に置換するナフテン環,アルキル基構造が大きくなると保持容量はわずかに減少するが,これらの影響は小さい。この結果,μ-Bondapak-NH2カラムは石炭液化油のオイル成分を飽和炭化水素,芳香族炭化水素を一環,二環,三,四環芳香族の各化合物クラスごとに,高い選択性で,かつ簡便,迅速に分離することができる。
  • 亀尾 貴, 平島 恒亮, 真鍋 修
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 414-419
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トルエンなどオルトーパラ配向性基を有する置換ベンゼン類の硝酸によるニトロ化における触媒酸として3種類のイオン交換樹脂―フッ素樹脂スルホン酸であるNafion501,スチレンとジビニルベンゼンの共重合体のスルホン化物であるAmberlyst15(多孔性型)およびDowex50W(ゲル型)―を使用するニトロ化方法について検討,比較した。その結果,いずれの樹脂を用いた場合にも混酸によるニトロ化の場合よりかなり大きな位置選択性を得ることができた。トルエンのニトロ化において,Amberlyst15を使用したときはNafion501およびDowex50Wの場合よりやや高いp-/0-値が得られたが,ジニトロ化などによる副反応物が生成し,また機械的強度が低く,くり返し使用により粉状化して反応後の分離再使用が困難となる。Nafion501やDowex50Wは連続15回のくり返し使用においても形状に変化は認められなかった。Dowex50wを用いた場合はP-/0-値,収率ともやや低く(P-/0-:1.3,収率51%),Nafion501の場合には15回の連続くり返し反応を通じて高いP-/0-値と高収率が得られた(P-/0-:1:4,収率:86%)。
    また,これらの樹脂をクロロベンゼン,色キシレンおよびm=キシレンの硝酸によるニトロ化に癒用した場合も,混酸によるニトロ化にくらべて高い位置選択性が得られた。たとえば,Nafion501の場合クロロベンゼン(p/o-:4.4,収率:75%)。o-キシレン(4-/3-:1.7,収率:64%),m-キシレン(4-/2-:10.3,収率:80%)の結果を得た。
  • 浜田 秀昭, 松崎 武彦, 若林 勝彦
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 420-427
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3種のアミノフェノールの液相アンモノリシスによるフェニレンジアミン合成反応について検討した。アミノフェノール類はフェノールにくらべて反応性は高かったが,縮合反応が併発するためフェニレンジアミソ選択率は低かった。触媒としては各種の金属塩化物が活性であり,塩化スズ(II)が高活性であることなどの点ではフェノールのアンモノリシスの場合と同じであった。反応の選択性を上げるため溶媒の使用を試みたところ,フェノールを溶媒として用いると選択率が大きく改善されることを見いだした。フェノールは原料の縮合を抑え,アンモニアとの反応を促進する効果を有していると考えられる。
    反応の経路としては,アミノフェノールと触媒から活性中間体が生成する第一段階(律速段階)とこの中間体がアンモニアで分解する第二段階が雄定された。副反応である縮合反応は,活性中間体が他の原料分子のアミノ基と反応することによって起きると考えられる。その他,フェノールおよび各アミノフェノール異性体の反応性の違いについても考察した。
  • 本田 終一, 楠本 直, 平山 忠一, 国武 豊喜, 本里 義明
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 428-433
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    極性基とアルキル鎖長の異なった合成二分子膜およびリン脂質二分子膜について,ゲルー液晶相転移温度での吸熱量,アルキル鎖部分の運動性および基質の取り込みの相違を示差走査熱量分析法とスピンプロ一ブ法を用いて検討した。またコレステロールを二分子膜に混入させた場合の物性変化についても検討した。示差走査熱量分析法により,アンモニウム塩,リン酸塩,コハク酸塩型の極性基をもつ合成二分子膜はホろプアチジルコリン型のグリセロリン脂質二分子膜にくらべて相転移熱転移エントロピ7が大きい。またスピンプローブ法によれば,基質の2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシルの二分子膜への取り込みはリン脂質膜では合成二分子膜のそれにくらべて最大8.7倍を示した。さらに脂肪酸型プローブ剤を用いて緩和時間の測定から活性化エネルギーを求めた結果,アルキル鎖長または不飽和結合の有無によって相違が認められた。コレステロールをこれらの二分子膜に混入すると相転移は消滅し,基質の二分子膜への取り込みは阻害され緩和時間は大きくなる。
  • 犬飼 吉彦, 山下 雄也
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 434-439
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピラゾロン系高分子アゾ色素の耐光性と樹脂への相溶性を改善するため,4-フェニルァゾ-3-メチル-1-[P-(メタクロイルアミノ)フェニル]-2-ピラゾリン-5-オン〔1〕とポリ(メタクリル酸メチル)マクロモノマーとの共重合により,色素含量が1.37,3.03,7.94,16.10,28.87,43.95wt%のグラフト共重合物をつくった。また対照物として,〔1〕とメタクリル酸メチルとの共重合により色素含量が2.23,4.54,8.65,19.80,26.51,41.11wt%のランダム共重合物もつくった。ついで,これら共重合物の耐光性をポリ(メタクリル酸メチル)のキャスティングフィルム中で調べたところ,色素含量が7.94wt%以下のグラフト共重合物および色素含量が19.80wt%以下のランダム共重合物はいずれも〔1〕と同じように良好な耐光性を示した。しかし残りの共重合物の耐光性はいずれも劣っていた。これら共重合物のすべては,耐ブリード性,ポリ(メタクリル酸メチル)への相溶性は良好であった。
  • 長田 義仁, 高瀬 三男
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 439-444
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-アクリロイルアミノ-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)およびアクリルアミドのプラズマ開始溶液重合を行なった。これらのモノマーは水溶液中で特異的に大きな重合速度を示し,得られる重合体の分子量もきわめて大きかった。プラズマ開始法によって水溶液中で調製したポリ(アクリルアミド)は,ベントナイトに対し大きな凝集速度を示した。また,橋かけ剤を共存させて合成したAMPS一アクリルアミド共重合体の橋かけゲルは,純水および人工尿に対しそれぞれ1750倍,120倍というきわめて大きな吸水性を示し,Cr3+事よびCo2+に対する吸着係数もラジカル重合開始剤によって合成したゲルより数倍大きかった。プラズマ開始重合法によって得た橋かけゲルの高い吸着性を「高分子性」と関連して議論した。
  • 坂井 徹, 大井 信一
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 445-449
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カチオン界面活性剤,エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム=プロミドを用い,連続泡沫分離操作によるフェノールの除去および濃縮におよぼす装置特性および操作変数,すなわち泡沫塔径,塔底液高さ,泡沫層高さ,液供給位置,液滞留時間,供給液量,ガス流量,気-液界面積および液温度などの影響を調べた。
    その結果,操作条件を塔径32mm,塔底液高さ50cm,泡沫層高さ50cm,供給液は塔底液中に導入する,液滞留時間20分とした場合にフェノールの除去効果がもっとも大きいと得られた。ガス流量の影響としては低流量で濃縮効果が大きく,高流量で塔底液の排出液濃度が大きく低下することが,また液温度(15~35℃)の影響はほとんど認められないことがわかった。
  • 真鍋 和夫, 小川 誠, 永塚 豊
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 450-453
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The thermal decomposition of praseodymium(III) acetate monohydrate has been studied by means of TG, DTA, X-ray diffraction, infrared spectroscopy, elementary analysis and chemical analysis. The monohydrate begins to lose its water of crystallization at 100°C, and one unknown lower hydrate is formed at 190°C. The course of dehydration completes at 230°C. The anhydrous praseodymium(III) acetate is a new polymorph of anhydride. The anhydrous praseodymium (III) acetate decomposes to praseodymium(III) carbonate oxide through two intermediate compounds in the temperature range of 270-500°C, and praseodymium(III) oxide produced is oxidized to Pr6O11 at 790°C. Presumably these new intermediate compounds have compositions of Pr8O3(CH3C00)18 and PrOCH3COO; the latter compound has structure of tetragonal system.
  • 酒井 鎮美, 重高 俊郎, 泉 和雄, 池谷 之良, 藤波 達雄
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 454-456
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N, O-Dimetal derivatives of 2-(alkylamino)ethanol [1], MOCH2CH2NRM, reacted with carbonyl sulfide at room temperature to afford thiocarbamic S-acid salt type adduct [2a] for M=Li, and a mixture of[2a]and [2b] for M=Me2Si/2 and BrMg. Organostannyl adduct [2a]was decomposed under reflux in toluene for about 10 h to give the oxazolidin-2-one [13a]in a moderate yield, while carbonylated product [2a] was not obtained from the reaction of silyl, boryl, and magnesio derivateves, which were presented as a mixture of [2a] and [2b]type adducts. In marked contrast to this, cyclic thiocarbamic S-acid ester [3c]was formed by thermolysis of lithio adduct [2b] (M=Li) having thiocarbamic O-acid salt structure. The effect of metallic moiety in [1]on the reactivity is briefly discussed.
  • 円満字 公衛, 山本 泰, 江藤 昌平, 草川 英昭
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 457-460
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Photopolymerization of N-vinyl-2-pyrrolidone in the presence of vitamin BB12 has been studied in an aqueous solution BB12 has been studied in an aqueous solution. Vitamin BB12 was found to initiate photopolymerization of N-vinyl-2-pyrrolidone only in the presence of oxygen. The polymerization rate was proportional to the square root of the concentration of vitamin BB12. On the basis of the kinetic- studies, the rate of polymerization (Rp) was expressed by the equation: Rp∞I1/2[Monomer] [Vitamin B12]1/2
    where I represents the incident light intensity. The relationship between the conversion of N-vinyl-2-pyrrolidon and pH of the aqueous solution was a downward bell-type (Max. pH 5-7). The apparent overall activation energy for the photopolymerization of N-viny1-2pyrrolidone with vitamin BB12 as an initiator was estimated to be 33.1 kJ/mol.
  • 神谷 国男, 富沢 敏, 河村 光隆
    1983 年 1983 巻 3 号 p. 461-463
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Chemical forms of such heavy metals as Pb, Cr, Mn, and Zn in the sludge from methane fermentation of municipal solid waste were analyzed, by the sequential extraction technique developed by Stover et al. Most(amount) of Cr6+ is unextracted and one third of Pb in the sludge remains unextracted in this method. A half amount of Pb and Zn seem to be bound to organics and the rest is distributed in the form of carbonate and sulfide. A small amount of Mn is present in adsorbates and ion-exchangeable form. The rest of the Mn is equally distributed among a form bound to organics, carbonate, and sulfide.
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