日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1988 巻, 12 号
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  • 新海 征治, 真鍋 修
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1917-1924
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェノールとホルムアルデヒドから合成される環状オリゴマー, カリックスアレーンを基体として, 種々の新機能性ホスト化合物が分子設計され, かつ合成された。環の下端のヒドロキシル基に親イオン性基を導入すると, クラウンエーテル類似の性質をもつ環状イオノホアとして作用した。とくにカルボキシル基をもつカリックスアレーンの五量体, 六量体は, ウラニルイオンに対し 1018.4~19.2 M-1 におよぶ高い安定度定数と, 1010.6~1017という記録的なウラニルイオン選択性を示した。有機分子を取り込むホスト化合物としての応用は, カリックスアレーンを水溶性化することにより初めて達成された。光学活性基を導入した水溶性カリックスアレーンは, ゲスト分子を包接するさいに円偏光二色性 (CD) スペクトルの変化を起こし, これをもとにホスト・ゲスト錯体の形成様式に関する興味ある知見が得られた。以上の結果を通して, カリックスアレーンがホスト化合物として機能するさいには, 適度の環の硬さと未だ残存する立体配座の自由度が重要な役割を演じることが明らかとなった。
  • 遠藤 邦彦, 古橋 昭子
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1925-1928
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硝酸プロパルギル, HC≡記号CCH20NO, とその 15N 同位体種のマイクロ波スペクトルを 18~32GHz の領域で測定し, cis, trans形 (sp, ap形) {τ1(CO-NO)=O°, τ2(CC-ON)=180°} の振動基底状態におけるa型R枝およびb型Q枝遷移のスペクトルを帰属した。得られた回転定数 A, B, C を下記に示す。
    ABC
    HC≡CCH20NO 19631.05±0.25MHz 1794.50±0.01MHz 1661.97±O.01MHz
    HC≡CCH2015NO 19419.78±O.20MHz 1774.87±0.01MHz 1643.61±0.01MHz
    このcis, trans形回転異性体のγ0構造として, 得られた回転定数を再現するように C-C,C-O, ∠CCO および ∠CON の構造パラメーターを求めた (表4)。
  • 谷原 紘一
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1929-1937
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Mn+ イオン交換体 (使用量: Wg) による外部溶液 (液量: Lcm3) からの Cs+のイオン交換吸着を例にとり, Cs+の分希係数 Kd におよぼすバッチファクター, β(=L/W) (cm3/g) と Cs+吸着量, Q(meq/g) の影響を示す理論式を導き, 実験結果と比較した。
    (∂KCs+Mn+β/∂)Q=0(KCs+Mn+:選択係数) と仮定すると, Kd と β の間には一定の Q のもとでつぎの関係がある。まず, 多量の Mn+ 含有溶液からの吸着の場合には Kd は β に依存しないが, Cs+ 単独溶液からの吸着の場合には, Kd は n√β に比例する。また, 共存イオンとして Mn+ 以外の1価の陽イオンを多量に含むときには, Kd は一般に β に依存し, n≦2 の場合には β に対して増加関数となるが, 条件によっては β に対して近似的に一定となる。これらの Kd-β 関係は, イオン交換系についてその理想性とは無関係に成立し, 実験結果とも矛盾しないことがわかった。
    一方, 一定の β のもとでは Kd は Q に対して減少関数であることが dKCs+Ms+/dQ≦0 の条件を満たす通常のイオン交換体 (n≦2) について導かれ, Zn2Fe(CN)6(ZFC) を除いて実験結果と一致した。ZFC は, Kd が Q の増大とともに上昇する特異な性質があり, 両者を同時に高く設定できることがわかったので, 高濃度NaNO3溶液からの Cs 吸着剤としてとくにバッチ処理に適していると考えられる。
  • 神谷 信行, 星野 謙一, 太田 健一郎
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1938-1943
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    貴金族金属被覆電極を熱分解法で作製するための基礎的知見を得るため, イリジウムの塩化物である三塩化イリジウム, 四塩化イリジウム, ヘキサクロロイリジウム酸またルテニウムの塩化物である三塩化ルテニウムおよびそれらのアルコール溶液の熱分解挙動を TG, DTA, X 線回折などによって調べた。ヘキサクロロイリジウム酸は H2IrCl6・6H2O→IrCl4→IrCl3→Ir→IrO2→Ir と反応が進むが, 別途用意した IrCl4 を熱分解すると H2IrCl6・6H2O からの IrCl4 と異なった分解過程を示し, わずかな結晶状態の違いも分解に影響を与えることがわかった。
    1-ブタノール (n-BuOH) のようなアルコールを加えると H2IrCl6 の分解温度はいちじるしく低下し, 500℃ 以下で Ir に, また 500℃ 以上で IrO2となった。空気中で RuCl3 からはアルコールのある,なしにかかわらず Ru は得られずに 500℃ 以上で直接 RuO2が生成した。Ar 中で RuCl3 のアルコール溶液を加熱すると容易に Ru が得られた。
  • 神谷 信行, 星野 謙一, 太田 健一郎
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1944-1948
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    貴金族金属被覆電極を熱分解法で作製するための基礎的知見を得るため, 塩化ロジウム RhCl3, 塩化パラジウム PdCl2 およびそれらのアルコール溶液の熱分解過程を調べた。RhCl3そのものを加熱すると 700℃ 以上ではじめて分解し, Rh203を与えた。Rh2O3 は電極触媒としても有用であるが, そのような高温で作製するのは得策ではない。溶媒として 1-ブタノール (n-BuOH) を加えたところ, 分解温度はさがり, Rhをへて 500℃ で Rh203 が得られた。このアルコール溶液を Ar 中で加熱すると 300℃ でも Rh を得ることができた。
    一方, PdCl2は 600℃ 以上の高温にしないと分解しないがアルコールを加えることにより分解温度をさげることができ, また 400℃ 以上で PdO を得ることができた。
  • 神谷 信行, 星野 謙一, 太田 健一郎
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1949-1953
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    それぞれの触媒の特徴をあわせもつ二元系触媒電極をつくる目的で Pt-Ir, Pt-Ru, Pt-Rh 系の塩化物の 1-ブタノール (n-BuOH) 溶液の熱分解挙動を調べた。それぞれの組成割合を変えたときの金属への分解温度は Pt-Ir 系では Pt, Ir 単独の場合よりもさがり, Pt-Ru, Pt-Rh 系ではそれぞれ単独の場合の中間的な値をとることがわかった。金属への分解温度以上にさらに昇温すると, Ir, Ru,Rh ともそれぞれ IrO2, RuO2, Rh2O3まで酸化されるが, 表面の部分にかぎられ, 基体上にこれら二元系触媒を担持させた電極をつくり, 電極特性を調べたところ, 固溶体となっている部分の Rh, Ru は電位走査でしだいに溶解し, Raney ニッケル型の表面粗度の高い Pt 電極となった。
  • 三浦 則雄, 小澤 芳弘, 山添 舞
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1954-1959
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アンチモン酸のプロトン導電性を, 複素インピーダンスおよび水の吸脱着等温線の測定結果をもとにして検討した。未交換試料についての 60℃, 低水蒸気分圧下における Cole-Cole プロット解析から, 粒子間成分と外表面および粒内成分抵抗を分離することができた。また, Cs+ イオン交換試料についての解析から, 外表面抵抗と粒内抵抗との割合を求め, アンチモン酸の粒内はつねに良好な伝導経路であることを確認した。水の吸脱着挙動の検討から, アンチモン酸では外表面よりも結晶構造 (チャネル) 内への水の吸着量がかなり多く, その吸着量の増加とともに導電牲が大きく向毒することがわかった。ただし, チャネルに水が凝縮しはじめると導電性の向上は見られなかった。伝導の活性化エネルギーの測定から, プロトンの俵導機構は水の吸着量の増加にともない, ホッピング伝導から Grotthus 型伝導に変化することを確かめた。
  • 尾崎 正孝, 高松 宏一
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1960-1963
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    希薄電解質水溶液中におけるヘマタイトコロイドの磁気粘性効果について検討した。ヘマタイトコロイドでは, 磁場によって粘性の増加が認められたが, 強い磁場中においても直径 200nm 以下の粒子では, 磁気的相互作用による凝集体の形成は認められなかった。すなわち, ヘマタイトの粒子は, 外部磁場に対して配向するには十分の大きさの磁気モーメントをもっているが, ヘマタイトの磁化は弱いためその磁気モーメントは, 凝集をもたらすには小さすぎるのである。ヘマタイトコロイドの磁気粘性効果は, 凝集によってではなく, 磁気トルクによって粒子の自由な回転が束縛され磁性コロイドの粘性が増大するとする Hall や Shliomis らの理論によって説明することができる。
  • 内藤 龍之介, 田中 栄治, 吉田 寛
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1964-1970
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固体触媒反応によるイソブテンと硫化水素からの 2-メチル-2-プロパンチオール合成について検討を行ない, 高収率で選択的に 2-メチル-2-プロパンチオールを合成し得る触媒を見いだした。反応におけるイソブテン転化率と触媒の酸量はほぼ比例関係にあり, ブチルアミン滴定法 (指示薬: ジメチルイエロー, pKa=+3.3) による酸量が O.8mg・eq/g-cat 以上のの触媒が高活性を示した。
    触媒活性に触媒中に含まれ水分により大きく変化し, 活性アルミナ触媒 (水沢化学製ネオビード) では 500~700℃ で熱処理した場合にもっとも高い活性を示した。最適条件で前処理した活性アルミナ触媒ネオビードを用い, 低 SV (120~480h-1), 低温 (80~100℃) で反応させることにより, 高活性 (転化率95%以上, 選択率93%以上) で目的物が得られる。ネオピード触媒を用い移動床で触媒を連続的に供給しながら反応を行なわせることにより, 収率 88% で長時間にわたって, 2-メチル-2-プロパンチオールを得ることができた。
  • 福永 二郎, 大田 陸夫, 城山 正樹, 吉田 直次郎
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1971-1976
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    MgO-Al203-B203 系のガラス化領域を溶融法により決定し, 作製したガラスのラマンスペクトル・赤外スペクトルおよび化学シフトを測定した。B203 に當む組成では, ポロキソール環が存在するが, MgO の導入によって, 四配位ホウ素を含むダイボレート群が生成した。MgO 量の増加とともに, ピロボレート群およびオルトポレート群が生成した。また Al203 の導入によって, 四配位ホウ素を含むダイボレート群の濃度が減少し, 代わって AlO4四面体が生成した。この系には CaO-Al203-B203 系と異なり AlO4 四面体からなる六員環構造の連続網目は形成されないと結論した。ピロポレート群やオルトボレート群に関与するラマンスペクトルのピークのシフトからアルミニウムイオンがこれらの構造群に結合している可能性があることを指摘した。ガラスの密度と屈折率の測定を行ない, その滑らかな組成依存性からガラス構造も組成とともに連続的に変化するものと推察した。
  • 玉野 美智子, 永井 行雄, 纐纈 銃吾
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1977-1983
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化チタン (IV) の存在下, 9H-キサンテン-9-オン, 9H-チオキサンテン-9-オン, 9H-フルオレン-9-オン, 9(10H)-アクリジノン, アントラキノン, アントロンとアンモニア, 第一級アミン, 第二級アミンとの反応を検討した。9H-キサンテン-9-オン, 9H-チオキサンテン-9-オン, 9H-フルオレン-9-オンとアンモニアの反応においては 9-位のカルボニル基がイミノ基となった化合物が得られ, 第二級アミンとの反応では相当する置換アミノ化合物が得られた。9(10H)-アクリジノンと第二級アミンとの反応では N,N-ジアルキル-9-アクリジンアミンが得られ, アントラキノンとアンモニアとの反応では 9,10-アントラセンジオールが, 第二級アミンではジアミノ化合物が得られた。アントロンとアンモニアの反応では 10-アミノアントロンが,第二級アミンとの反応は 9,10-二置換生成物が得られた。
  • 下茂 徹朗, 吉村 浩幸, 水主 高昭, 染川 賢一
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1984-1990
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-ピロンおよびその置換体の [4+2] 付加反応性および付加体の安定性を明らかにする目的で, 4種の 2-ピロン類と N-置換マレイミドとの反応を行ない 1:1 endo 付加体 [1], および/または 1:1 付加体の脱炭酸を経てさらにもう1分子のマレイミドが付加した 1:2 endo-endo 付加体 [2] を得, 反応を解析した。すなわち, 2-ピロン-5-カルボン酸メチル (MP) の場合は [1] のみが得られ, 2-ピロン (P) および 4, 6-ジメチル-2-ピロン-5-カルボン酸エチル (EP) の場合は [1] と [2] が得られ, 4,6-ジメチル-2-ピロン (DMP) の場合は [2] のみが得られた。これらのマレイミド類との反応性は DMP>P≧EP>MP の傾向にあるので, 電子求引性な 5-エトキシカルボニル基の反応抑制効果は逆の盤質の 4,6-ジメチル基の反慈促進効果より大きいのであろう。しかし, 電子不足の MP の反応性は, -アリールマレイミドの p-位に, 電子求引性の基よりも電子供与性の基がつくとき大きかった。このことは 2-ピロンの 5-位メトキシカルボニル基はマレイミド類との反応でさえ逆電子要求型 [4+2] 環状付加反応を行なわせていることを示し, 分子軌道計算からも支持された。[1] の熱安定性は 2-ピロン環につく電子求引性基により増加するがメチル置換基により大きく減少することがわかった。
  • 森本 孝, 田沢 茂樹, 小池 敏夫, 平野 正雄
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1991-1997
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酢酸中酢酸コバルト (III) によりデオキシベンゾインを酸化すると, 主生成物としてベンゾインの酢酸エステルとベンジルが得られ, 同時に少量のベンゾイン, ベンズアルデヒドおよび安息香酸が生じた。酢酸ベンゾイン対ベンジルの生成比は酢酸コバルト (III) 対デオキシベンゾインの初濃度比が高いほど大であった。反応速度は酢酸コバルト (III) に二次, 酢酸コバルト (II) に -1次, 基質に一次であった。ベンゾイル基側に置換基をもつデオキシベンゾインの反応速度の対数は Hammett の置換基定数σとよい相関関係を示し, 酢酸中ではρ=0.60, 0.098mol/dm3の酢酸ナトリウムを含む酢酸中ではρ=1.03 であった。一方, ベンジル基側に置換基をもつデオキシベンゾインの場合には電子供与基も電子求引基も速度を捉進した。ベンジル水素の直接引抜き (またはラジカルカチオン経由) と金属のエノール塩経由の反応が競争的に起きる機構を提案した。
  • 岡田 豊, 林 隆俊
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 1998-2002
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,1'-ビス(4-クロロフェニル)-, 1,1'-ビス(4-クロロ-2-メチルフェニル)- および 1,1'-ビス(3,5-ジクロロフェニル)フェロセンの双極子モーメントを測定した。その結果, 4-クロロ誘導体は五つのアンチプリズム形回転異性体の等量混合物であるが, 他の二つの誘導体では, シクロペンタジエニル基の回転は束縛されていると推定された。すなわち, 1,1'-ビス(4-クロロ-2-メチルフェニル)フェロセンでは, 置換基が分予内で相互反発しており, 1,1'ビス(3,5-ジクロロフェニル)フェロセンでは, 置換基が分子内で相互に求引していると判断された。また, 1H-NMRを測定し,これらの立体配座と化学シフトの関係を考察した。
  • 太田 道也, 大谷 杉郎, 宮本 文一, 小堀 浩美, 小島 昭
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2003-2009
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重縮合体 (COPNA) 樹脂を濃硫酸で加熱処理することによってスルホン化し, イオン交換樹脂として利用することを計画した。使用した樹脂は, 橋かけ剤として1,4-ベンゼンジメタノール (PXG) を加えたピレンとフェナントレン混合物から調製した。そのさいのスルホン化の最適条件を決定し, その条件下で作成した樹脂の交換容量と耐熱性について調べた。
    200℃ で1時間の後硬化処理した樹脂を 105μm 以下に粉砕したのち, これを濃硫酸中でかきまぜなまがら, 120℃ で2時間スルホン化させたところ, 約3.5meq/g のイオン交換容量が得られた。樹脂の粒子表面や断面の観察によると, スルホン化は, 時間の経過にともなって粒子表面から内部にむかって進行し, その結果, 年輪状の亀裂が発生している。このイオン交換性樹脂は, 水に対するぬれ性に優れ, 水溶液中で膨潤しない。このためイオン交換速度が大きい。煮沸による熱安定性試験では, 1時間後においても, 10%交換容量が減少したにすぎなかった。
  • 町田 正人, 川崎 秀夫, 江口 浩一, 荒井 弘通
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2010-2015
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高流速 (空間速度410000h-1) 条件下における複合酸化物ハニカム触媒のメタン燃焼特性を検討した。コーディエライトハニカムに担持したペロブスカイト系酸化物 (LaCoO3, La0.8Sr0.2CoO3, La0.6, Sr0.4MnO3) は高い初期活性を有するが, 耐熱性が低いため 1000℃ 以上の燃焼温度を維持できない。ペロブスカイト粒子は焼結にともなう表面積の低下や, コーディエライト担体との固相反応によって活憐劣化を受ける。置換型層状アルミネート (Ba0.8K0.2MnAl11O19-a) 単一栢からなるハニカム触媒を用いた場合, 熱的な劣化はまったく認められず, 安定に 1200℃ 以上の高温が得られた。層状アルミネートは 1300℃ 焼成後も 20m2/g 以上の表面積を維持し, 耐熱性に優れている。また, 単独でハニカム化が可能なため高温下でも触媒相の変質を受けず高い触媒活牲を持続した。この結果,気相における希薄され良好な発熱特性を示すと同時に窒素酸化物発生量も低く抑えられた。
  • 男成 妥夫
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2016-2020
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    同一母体構造からなる 1-(4-スルホ-1-ナフチルアゾ)-2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸 (SNND) および 1-(2-ヒドロキシ-4-スルホ-1-ナフチルアゾ)-2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸 (HSNND) の二つの染料を取り上げ, これらの染料が, Cu (II), Ca (II), Mg (II) などの二価の金属イオン (M(II)) と錯生成を行なうことにより, その水溶液におけるオゾン脱色反応が, どのような影響を受けるか調べた。HSNNDのオゾン脱色速度は,M(II)との錯生成により抑制され,その抑制効果は,同一pHの溶液中においては, HSNND-M(II) 錯体の生成定数の大きなものほど, 大きくなる傾向を示した。SNND の場合, そのオゾン脱色速度は, Cu (II) との錯生成により, 促進された。HSNND-Cu (II) の錯生成の効果と, SNND-Cu (II) の錯生成の効果との間の相違は, 主として, これらの錯体分子のオゾンによる攻撃に対する, 立体的障害の存否に基づくものと思われる。
  • 奥 彬, 中川 繁, 加藤 浩司, 田口 裕之
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2021-2025
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    環境汚染物質の一つである有機ハロゲン系化学物質の迅速無害化処理法として, 還元的手法 (ナフタレニド法ならびに Birch 法) により有機ハロゲンを無機ハロゲン化物イオンとして脱離除去する技術を, 固体有機ハロゲン化合物のポリ (塩化ビニル) (PVC) ならびにフッ素樹脂のポリ (クロロトリフルエチレン) (PCTFE) に適用し, 検討を行なった。PVC からは溶媒可溶性の完全脱塩素化した処理ポリマーが得られ, PCTFE も完全脱塩素化するとともに, 脱フッ素化も 96% に達することを見いだした。
  • 内山 征洋, 中島 右, 赤岩 英夫
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2026-2030
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グルコースおよびフェノールの好気性生分解の中間生成物中のアミノ酸およびタンパク質濃度の変化と銅 (II) 錯化容量 (CuCC) の変化は,よく一致し, しかも両者の間には非常によい相醐係が認められた。また, 実際の下水処理場における流入水および流出水中のアミノ酸およびタンパク質濃度と CuCC との間にも非常によい相関関係が認められた。以上の結果から, 好気性生分解における中間生成物の CuCCを評価する場合, アミノ酸およびタンパク質がきわめて重要であることが明らかとなった。
  • 相原 雅彦, 海田 博之, 山口 勝洋, 堤 敦司, 吉田 邦夫
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2031-2036
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水の熱化学分解サイクル UT-3 の酸化カルシウムの臭素化および臭化カルシウムの加水分解反応について, くり返し反応に最適な固体反応物の調製法を検討し, 熱重量分析法を用いて速度論的研究を行なった。カルシウム系の反応に関しては酸化チタン (IV) をバインダーとしたペレットが強度とくり返しの反応性がよく, 焼成時にできる不活性な三酸化チタン (IV) カルシウム CaTio8 がペレットの立体構造を支え固体反慾物を保持していることを確認した。くり返し反応において, 固体反慈物と生成物のモル容積が異なるためペレットの構造変化が起こり, これが反応速度に大きな影響をおよぼすことがわかった。臭化カルシウムの加水分解は均一反応モデルを適用することができて, 速度式は体積塞準の反応速度 rv(moll/s・m3), 水蒸気モル濃度 CH2O(2mol/m3), 酸化カルシウム初期モル密度 CoCaO(mol/m3)とその反応転化率 X として以下のように得られた。
  • 阪口 恵藏, 福谷 征史郎, 神野 博
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2037-2044
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタン-空気同軸拡散火炎の各部の温度および安定化学種の濃度を測定し, その結果を基にして, 25種の化学種の間に82組の素反応を仮定した詳細な化学反応モデルを用いて計算機シミュレーションを行ない, その燃焼反応機講を解析した。
    火炎基部では, 燃料と空気とが巻き込みによってすみやかに混合し予混合燃焼が生じている。この領域でメタンは CH4→CH3→CH30→HCHO→CHO→CO→CO2 と酸化される。これらの反応は速度が大きく,火炎の温度もすみやかに 1140K にまで上昇し, ここで生成した活性化学種と熱エネルギーとが火炎をノズル口に保持しているものと考えられる。
    輝炎領域では, 90%以上の燃料は CH4→CH3→C2H4→C2H3→C2H2 と熱分解し, 一旦アセチレンを経由してそののち酸化される。火炎基部において巻き込まれた酸素は, OH ラジカルとなってこの領域でメタンの脱水素反応に消費される。酸素の量を実測値から変化させて化学反応を計算すると, メタンの消費反応の速度が大きな影響を受けるので, 火炎の内部に巻き込まれた空気がメタンの熱分解反応を促進すると考えられる。
  • 杉岡 正敏, 土門 稔, 金塚 高次
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2045-2047
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The catalytic activities of ultramarine blue, violet and pink for the dehydration of 2-propanol were examined at 473 K using a closed circulation system. The order of the activity of these ultramarines was as follows; ultramarine pink>ultramarine violet>>ultramarine blue. Infrared spectra of these ultramarines indicated that there existed the acidic hydroxyl groups and ammonium ions on the surface of ultramarine pink and violet. It was concluded that high activities of ultramarine pink and violet for the dehydration of 2-propanol were attributed to the existence of the Bronsted acid sites on the surface of these ultramarines.
  • 飯泉 清賢, 望月 充, 久高 克也
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2048-2050
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Synthesis of BaSn(B03)2 by solid-state reactions among BaCO3, B203 and SnO2 during 500-1150°C and sintering of the synthetic powders over 1000-1150°C have been st udied. The reaction seems to proceed as follows: (1) formation of BaB204 by a reaction between BaCO3 and B203 between 500 and 800°C, (2) formation of BaSn(B03)2 by a reaction between SnO2 and BaB204 between 800 and 1900°C and (3) increase of SnO2 content due to a decomposition of BaSn(B03)2 beyond 1000°C. Dense specimens were obtained by calcination at 950°C and sintering between 1100 and 1150°C. The maximum electric resistivity of sintered BaSn(B03)2 was 7.3×1014Ω.⋅cm for the present experimental conditions.
  • 木村 一郎, 池田 嘉一, 萬田 栄一郎
    1988 年 1988 巻 12 号 p. 2051-2052
    発行日: 1988/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2, 3, 5 -Trimethyibenzoquinone (TMBQ) was prepared in about 90% yield through anodic oxidation of.2, 3, 6-trimethylphenol-4-sulfonic acid (TMPS) using 3.2 F/mol of electricity under a constant current density (8 mA/cm2) with a graphite plate as an anode in 40% aqueous acetone containing sulfuric acid [0.42 mol/l] in a divided cell, or in a two-phase reaction.
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