日本化学会誌(化学と工業化学)
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2001 巻, 12 号
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総合論文
  • 中村 秀, 杉山 徳英, 江藤 恵男, 青崎 耕, 遠藤 淳二
    2001 年 2001 巻 12 号 p. 659-668
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    ペルフルオロ(ω-ビニルオキシ-1-アルケン)(CF2=CF–O–(CF2)x–CF=CF2) (x = 1,2)をラジカル環化重合することで非晶質なペルフルオロ透明樹脂が得られる.その樹脂は光学的に透明で溶媒に可溶であり,既存の商業生産されているフッ素樹脂の特徴,すなわち傑出した耐熱性,薬品耐性や低屈折率,低誘電率を兼ね備えている.とくにペルフルオロ(4-ビニルオキシ-1-ブテン) (x = 2)からなるポリマーはガラス転移点が高く,先端的電子 · 光学向け材料として有用である.重合挙動は一般のラジカル重合と同様であり,環化は五員環の生成が優先する.末端基のフッ素化により波長200 nmから1500 nmにおいて現在知られている有機光学材料の中で最も透明な材料が得られる.また,末端基のアミノシラン変性により各種基材への密着性を付与した.これらの変性により本ペルフルオロ樹脂をペリクル,光ファイバー,反射防止コーティング,LSI用の低誘電率材料等の用途へ応用することが可能となった.
一般論文
  • 山岸 俊秀, 成田 榮一
    2001 年 2001 巻 12 号 p. 669-676
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    M2+–Al3+系炭酸型層状複水酸化物(M2+ = Mg2+, Cu2+, Ni2+, Zn2+)の熱分解-再水和反応(再構築法)によりヒノキチオール型LDHの合成を試み,得られたLDHの性状ならびに抗菌性能の検討を行った.その結果,Mg2+–Al3+系およびZn2+–Al3+系熱分解物がLDH構造を再構築し,ヒノキチオールのような溶解度の低い物質でもその相対溶液量を増加させることにより,LDH層間への取り込み量を増加させることができた.固体生成物のX線回折から,ヒノキチオールの取り込み量が少ない場合には水酸化物基本層に対してヒノキチオールは水平に取り込まれ,多くなるにしたがって重なり合って取り込まれることがわかった.また,LDH層間に取り込まれたヒノキチオールは徐放性であることが確認された.LDH層間のヒノキチオールの熱分解開始温度はヒノキチオール単独に比べ約200 °C高くなり,耐熱性を著しく向上させることができた.大腸菌を用いた抗菌性能試験の結果,Mg2+–Al3+系およびZn2+–Al3+系ヒノキチオール型LDHの場合,ヒノキチオール換算濃度800 mg dm−3でそれぞれMIC(最小発育阻止濃度)が見られた.
  • 柘植 乙彦, 八田 泰三, 大戸 朋子, 染川 賢一
    2001 年 2001 巻 12 号 p. 677-683
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    非安定型ジ置換アゾメチンイリド1aと不飽和化合物(24)との1,3-双極付加環化反応は,各々唯一の付加配向の生成物を与える.その配向選択性はフロンティア分子軌道(FMO)法では説明できず,遷移状態(TS)解析を行いその活性化エネルギーの差からはじめて説明できた.FMO法では1aの置換サイトと24の電子不足サイトとの結合による配向が示唆されるが,そのTSでは二つの反応点間距離は等しく,一方実験結果に一致する配向のTSでは二つの反応点間距離は大きく異なり,反応が段階的で,非置換サイトの関与する距離は1.9から2.1 Å程度と短く,したがってより小さい活性化エネルギーとなったと判断される.この現象は,1aにおいてかさ高い2個の置換基がお互いに同一平面に存在しえない立体的な効果に帰因するものと思われる.すなわち1,3-双極子の置換基の立体障害がTSを非対称にし,反応を二段階的に変化させ,活性化エネルギーが低くなったと推定される.
  • 渡邉 健太郎, 石原 達也, 山中 雅彦
    2001 年 2001 巻 12 号 p. 685-690
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    メラミン硬化型塗膜の白化に及ぼす無機酸および光安定剤の影響について検討した.
     暴露後に水滴跡が白化した塗膜を赤外分光光度計で分析した結果,エーテル結合,トリアジン環の吸収の減少および第二級アミンの吸収の増加が認められメラミン樹脂の加水分解の発生が推定された.また,同様に白化した塗膜をガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果,ポリプロピレン基材中に含まれる光安定剤が白化部分から検出された.
     塗膜の組成や製膜条件と白化が生じるまでの硫酸水溶液への浸漬時間との関係について検討した結果,その白化が生じるまでの浸漬時間は橋かけ密度が高くなる組成/条件の場合ほど長く,光安定剤が含まれている場合には短いことがわかった.また,同じ橋かけ密度であっても光安定剤が含まれている方が白化が容易に生じた.
     塗膜の白化は,低温での強制乾燥および光安定剤による架橋反応阻害により,塗膜形成時の橋かけ密度が小さいこと,暴露中の酸性雨による加水分解により橋かけ密度が低下したこと,および無機酸と光安定剤との反応により生成したアミン塩により塗膜の浸透圧が増大したことなどの理由により水分の浸透が容易になることで生じると推定できる.
  • 高橋 正博
    2001 年 2001 巻 12 号 p. 691-695
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    強塩基性陰イオン交換樹脂(Amberlite IRA-401B)ならびに弱塩基性陰イオン交換樹脂(Duolite A-7)による7種類のアミノ酸の吸着平衡に関する研究を行った.
     Cl型の陰イオン交換樹脂によるアミノ酸(A)および水酸化物イオンの吸着平衡は,&nikkashi_2001_691; (A + RCl RA + Cl,OH + RCl ROH + Cl) で表される.Amberlite IRA-401B樹脂によるアミノ酸の吸着平衡定数KAの値として,Trp : 14.3, Phe : 4.76, Leu : 1.52, Ala : 0.909, Gly : 0.833, Glu : 1.00, Asp : 0.909が,Duolite A-7樹脂によるアミノ酸の吸着平衡定数KAの値として,Trp : 3.57, Phe : 2.00, Leu : 0.714, Ala : 2.50, Gly : 0.714, Glu : 0.357, Asp : 0.333が得られた.また,水酸化物イオンの吸着平衡定数KOHの値として,Amberlite IRA-401B樹脂を用いた場合には4.00が,Duolite A-7樹脂を用いた場合には1.10が得られた.最も大きいTrpのKAの値は,最も小さいAspの値よりもAmberlite IRA-401Bを用いた場合で約16倍,Duolite A-7を用いた場合で約11倍大きく,これらの吸着平衡定数はDuolite A-7樹脂によるAlaとGlyの場合を除いて,アミノ酸の疎水性の値が大きくなるとともに増大した.
  • 佐野 洋一, 小林 繁夫, 津留 壽昭, 松本 勝, 永石 俊幸, 吉永 俊一
    2001 年 2001 巻 12 号 p. 697-703
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    環境汚染物質であり着色性のある6種類のニトロフェノール類を含む廃液の湿式酸化処理について検討した.酸化方法としては電気分解法,光触媒法およびこれらを組み合わせた方法(電解光触媒法)により行った.
     いずれの処理方法でもニトロ基が脱離し,硝酸イオンを生成すること,およびTOCが減少していることから原料物質は分解されていることがわかった.これらの生成物は脂肪酸類であった.
     電気分解法はTOCの除去率がほかの方法より低く,脂肪酸類の分解は遅いことがわかった.光触媒法はTOCの除去率が電気分解法に比べて時間の経過とともに減少することから脂肪酸類は徐々に酸化されることがわかった.
     電解光触媒法は電気分解法,光触媒法に比べて原料物質を速やかに分解し,TOCの除去率が90%以上であり,比例してニトロ基もすべて硝酸イオンとなった.
     酸化促進が得られたのは電気分解法によって生成される活性種が光触媒法によって触媒上に生成される電子(e)や正孔(h+)の反応に関与したため,種々の活性種の働きを促進させたことであると考察した.
  • 菊地 憲次, 岡谷 卓司, 武田 信生, 里内 勝, 中村 敏博, 平田 慎二
    2001 年 2001 巻 12 号 p. 705-713
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    有機物をわずかしか含んでいないゴミの堆積地である安定型最終処分地から10000 ppmを越える高濃度の硫化水素が発生した.この発生機構を解析した.高濃度の硫化水素が発生している地点の強熱減量は,9%程度で,有機物の量は多くなかった.雨水によって運ばれた溶存酸素と好気性菌によって,地中の固形有機物は嫌気性菌の利用しやすい脂肪酸等に分解される.さらに,雨水によってこの脂肪酸等は嫌気性雰囲気の地中に運ばれ蓄積される.この蓄積された脂肪酸等の量が硫化水素の発生に関係していることを明らかにした.さらに木くずからの生物分解物は,嫌気性菌の活動を抑えるので,嫌気性菌が利用しやすい有機物であるピルビン酸が地中に認められた.また,高濃度硫化水素の発生に必要な硫酸イオンの供給源は,主にセッコウボードであることを明らかにした.高濃度硫化水素が発生している地点でも,地表付近の硫化物の含有率は0.2 mg/g (乾燥土)程度で小さく,硫化水素が地表付近まで上昇していなかったことを明らかにした.
技術論文
  • 柘植 弘安, 西 保夫, 久米 道之, 小野 さとみ
    2001 年 2001 巻 12 号 p. 715-720
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/03/01
    ジャーナル フリー
    アルミニウム合金(ADC12)表面上に,出発原料としてそれぞれに対応する金属アルコキシドとポリ(ビニルブチラール)を用いてシリカ,ジルコニアおよびシリカ-ジルコニア二層コーティング膜を作製し,その硬度と耐腐食性を検討した.まず,適度な膜厚を有するシリカ膜を得るために前駆物質溶液の組成の最適化を行った.その結果,1 wt%のポリ(ビニルブチラール)を含み,テトラエトキシシラン,酢酸,水を1 : 3 : 2のモル比で混合した後,加熱濃縮することにより調製した0.5 mol dm−3テトラエトキシシランのエタノール溶液がコーティングにおいて最も適していることを見いだした.この前駆物質溶液を用いてシリカ,ジルコニアおよびシリカ-ジルコニア二層膜を作製した.コーティングされた合金のビッカース硬度を測定したところ,シリカコーティングされたADC12ではコーティングされていないものより約3倍,ジルコニアおよびシリカ-ジルコニアコーティングされたものでは約10倍の硬度の向上が見られた.さらに,硫酸銅水溶液を用いた耐腐食性試験において,ADC12の腐食はシリカ-ジルコニアコーティングにより効果的に抑制されることが示された.
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