日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 3 号
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  • 犬塚 功三
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 149-156
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    基底状態ならびに最低励起一重項状態における2-ピリドンおよび1-メチル-2-ピリドンの最適構造を知るために, これらの分子の各原子は分子面からずれていると仮定して, 構造最適化を含めた6-31+G (d) 基底関数を用いた非経験的分子軌道法による計算を行った. その結果, 次のような結論を得た. (1) 基底状態では用いた計算法の精度内でこれらの分子は平面構造が安定である. (2) 最低励起一重項状態においてはC=0基の炭素原子C3と, その反対側の炭素原子C7を結ぶ線を軸として, 環をねじったような構造が平面構造より安定である. 骨格原子の中ではN1原子の面外へのずれが最も大きい. (3) 2-ビリドンにおいては環の結合角C3-N1-C4を含む面と, 結合N1-C2のなす角度は30.4°である. (4)1-メチル-2-ピリドンにおいては環の結合角C3-N1-C4を含む面と, 結合NrC2のなす角度は22.6°である. (5) 最低励起一重項状態において, 2-ピリドンは平面構造と非平面構造のエネルギー差は4.30kJmol-1である. これに対し, 1-メチル-2-ピリドンの対応するエネルギー差は6.72kJmol-1である. (6) 2-ピリドンが最低励起一重項状態で二量体の形成ならびにカルボン酸と複合体を形成するときは, 非平面構造より平面構造をとる方が有利と考えられる. (7) 非平面性のために最低励起一重項状態は純粋なπ,π*性を失いn,π*性が混じった状態となるために, 隣接する一重項や三重項状態とのカップリングが容易になる. このために最低励起一重項状態の失活が促進され, 平面構造の場合と比ぺて, 蛍光量子収率が非常に小さくなると考えられる.
  • 大前 貴之
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 157-166
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トポロジカル参照系 (TRS) の方法を, 複素環式共役系に対しても適用できるようにするために, 摂動論的手法を用いて再検討した. またこの再検討の過程でTRSのプロパゲーターの非対角要素の定義を修正し, 化学結合の強さを表す量子化学的指数を新たに定義した. ただしここでTRSとは, 環状共役系からすべての環状の相互作用伝搬の効果を消去した, 仮想的参照系を意味する. この再検討によって, TRSの種々の量子化学的指数に対してヘテロ原子の及ぼす影響を考察することが可能になった.
    ここで得られた方法をいくつかの具体的な複素環状共役系に対して適用し, 簡易計算法を用いて複素環状共役系のTRSのさまざまな量子化学的指数を計算した.
  • 宮本 栞
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 167-173
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン (PS) ラテックス粒子に対する臨界ミセル濃度以下の硫酸ドデシル (DS) イオンの吸・脱着の動力学を伝導度ストップトフロー法を用いて25℃, pH5.9の条件下で検討した. 固/液界面における界面活性剤イオンの吸着速度を測定するために, 試料混合装置の不感時間は従来用いたものより短縮した. 試料混合装置により, 吸着速度漏定の場合は懸濁液と硫酸ドデシルナトリウム (SDS) 水溶液を高速混合し, 脱離の場合はSDSを含む懸濁液と脱イオン蒸留水を高速混合した. 伝導度は, 吸着過程では時間の経過とともに減少し, 脱離過程では増加した. これらの変化をデータ記憶装置を用いて追跡した. 得られたPSラテックス粒子に対するDSイオンの吸・脱着速度定数は, それぞれ4.29×105mol-1dm3 s-1であった. 一方, 本研究の装置によりDSイオンのナイロン12粒子に対する吸・脱着速度定数を求め, これと文献値を比較して本装置の有用性を確認した. また, 実験で求めた脱離速度定数と平衡定数から吸着速度定数を見積もることにより, 実験で得られた吸着速度定数の正当性を確証した.
  • 三田村 崇之, 篠原 祐治, 中島 剛
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 174-180
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5種類の酸化物 (SiO2, Al2O3, MgO, ZnO, CdO) について, その酸点上および塩基点上でのプロピレソオキシド (PO) のプロピオンアルデヒド (PA) , アセトン (AC) およびアリルアルコール (AA) への異性化機構および反応選択性の支配因子を半経験的分子軌道計算法により検討した. 計算により求めたPOの電子状態が触媒による反応選択性の違いを説明できることを必要条件として, 妥当な反応機構を考察した. さらに反応選択性の支配因子について検討した結果, PA選択性は触媒表面の形式電荷が1+の金属イオンの正味電荷に, AC選択性は形式電荷が1-の表面酸化物イオンの正味電荷に相関することを見いだした. しかし, AA選択性については, 正味電荷との間に相関性は見いだせなかった. 結論として, 触媒表面の酸性の尺度としてPAの選択性を, 塩基性の尺度としてACの選択性を用いることが可能であることを計算化学的に裏付けた. また以上の結果から, 触媒の種類を変えて行った半経験的分子軌道計算の結果と実験結果との比較から反応機構を推定する手法が有効であることも示唆された.
  • 山本 嘉則, 金澤 朋子, 栗田 誠也, 青木 茂男, 関口 伸雄, 板東 剛
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 181-186
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-アセチル-8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸 (1) と2, 4-ジアセチル-8-ヒドロキシキノリン-5-スルポソ酸 (2) が新規に合成され, どちらもスルホン酸のナトリウム塩として単離された. 25℃ の水溶液中, 紫外・可視吸収スペクトルの測定により, その酸解離定数とCa (II), Mg (II) との錯形成を調べた. フェノール部分のpKa (イオン強度0.1) は1が7.81, 2は7.45であり, 環窒素のpKa (Hammettの酸度関数を使用) は1が-0.31, 2は-1.40であった. 1:1錯体の生成定数 (イオン強度0.1) の対数は1-Ca (II) は3.87, 1-Mg (II) は1.48, 2-Ca (II) は3.60, 2-Mg (II) は1.42であった. ここでCa (II) は1, 2の吸収極大波長の位置を明確に長波長側に移動させるのに対し, Mg (II) は全く移動させない. 以上から, Mg(II)-1, 2錯体は水溶液中キレート構造を形成していない; 1, 2はMgに対して弱い単座配位子として作用していると推定した.
  • 一色 富彌, 内藤 豊晃, 紅露 孝明, 佐々木 英人, 山本 二郎
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 187-195
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-ジメチルアミノ-OMN-アゾキシベンゼン (1α) と4-ジメチルアミノ-NNO-アゾキシベンゼン (1β) は, 硫酸との反応で4-ジメチルアミノアゾベンゼン (3) と4-(4-ジメチルアミノフェニルアゾ)フェノール (4) を与えた. この反応で1β は1α に異性体変換したと推定される. 4-ジメチルニトロリルアゾベンゼン (2) と硫酸との反応では, 1α と1β の混合物の反応と比べると3より高い収率で4が得られた.
    1α と1β の混合物 (α: β=3.0: 1.0) をベンゼンに溶解してUV照射すると, β/α 比は一定に保たれ, 転位生成物として5-(ジメチルアミノ)-2-フェニルアゾフェノール (6) が得られた. この反応で, 6から1α に異性化することが認められた. この反応にトリクロロ酢酸が存在すると, 6の収率はトリクロロ酢酸無添加のときより向上した.
  • 井上 智実, 安吉 孝明, 森下 信彦, 佐山 三千雄, 井上 正美
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 196-200
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Bacillus cereus野生株を用い, 多環芳香族化合物のヒドロキシル化反応を行った.
    菌体を培養後, 遠心分離で菌体を集め, 基質(720μM)を加えpH7, 30℃ で酸化を行った.
    ナフタレン, メチルナフタレン, ジメチルナフタレン, ビフェニルのような基質は位置選択的に反応し, それぞれナフトール, ナフチルメタノール, (メチルナフチル) メタノール, ビフェニロールを5-26%の収率で得た. 生成物の毒性で収率が飽和した. アニオソ交換樹脂の添加で1-ナフトール収率が増加した. また, 1-ナフトールは膜による透析システムにより自動的に分離することができた.
  • 西山 太一郎, 柚木 邦博, 本田 孝善, 矢沢 久豊
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    医薬品製造工程は, 粉砕, 混合, 空気輸送など, 粉粒体を取り扱う操作が多く, 静電気に起因する粉粒体の付着, 凝集などの製造トラブルにしばしば遭遇する. このトラブルの原因究明のため, 粉粒体の輸送状態における帯電量と粉体特性の変化を測定評価する帯電特性評緬装置の開発を行った, この評価装置は, 粉粒体を空気輸送によって帯電させ, 経時的に帯電量を測定できるもので, いろいろな物理化学的特性を有する原薬や造粒物質について評価検討を行った.
    その結果, 空気輸送によって変化する帯電量と粉体特性値から粉粒体のパイプ輸送や回転型混合容器等で発生する帯電, 付着が予想できるようになり, 原薬製造における晶析操作条件の最適化, 粉粒体の取扱い操作ならびにプラソトの安全運転に必要なデータの提供が可能となった.
  • 豊田 昌宏, 太田 泰雄
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 207-210
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Some of the world heritage were made mainly of dried clay and exposed to rain and wind. Deterioration by weathering is remarkable, and the protections are necessary immediately.
    In this work, hydrolysis product sprepared from silicon alkoxide and titanium alkoxide with aqueous HCI solution were used as the coating materials for the dried clay. These hydrolyzed alkoxide solutions permeate into pore of relics to strengthen the particle-particle binding. Protection effects of these solutions were clarified.
  • 古澤 源久, 橘 正樹, 杉目 聡, 櫻井 新之介
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 211-214
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Since ordinarily available phenanthrene contains impurities such as phenanthrenequinone and fluoranthene, it is difficult to determine anthracene by spectrofluorimetry directly. Trace amounts of anthracene in phenanthrene can, however, be selectively determined by using the 4th-derivative synchronous fluorescence intensity without interference of these impurities. In 5 mL of cyclohexane, 25 mg of the sample is dissolved. The synchronous fluorescence spectrum of the solution is measured with wavelength interval (Δλ) of 24 nm in the range of 360-395 nm. Trace amounts of anthracene in phenanthrene can be determined from the 4th-derivative intensity at 376 nm, which is obtained by computation of the synchronous fluorescence spectrum. By this method, anthracene can be determined simply and rapidly. The determination limit is 0.5 ppm.
  • 鈴木 雅美, 蓮実 文彦, 下田 昌弘, 濱松 一弘, 内山 明彦, 大倉 一郎
    1998 年 1998 巻 3 号 p. 215-216
    発行日: 1998/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    With the objective to prevent moth-eating damage caused by insects, the system containing baker's yeast adsorbed by a water-absorbing polymer, Diawet US60, was prepared. The moth-eating damage caused by Attagenus unicolor japonicus was evaluated by use of a woolen cloth (2 cm2, 40 mg) with or without the system in 1 L glass vessel at 25 °C for 7 days. The moth-eating damage rates with and without the system were 3.3% and 54%, respectively, and the death rate of insect reached 100% with the system due to the respiration of yeasts.
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