日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1984 巻, 10 号
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  • 大谷 弘之, 小林 孝嘉, 鈴木 薫, 長倉 三郎
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1479-1483
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルボニル化合物によるアミンからの水素引き抜き反応は電荷移動型の中間体を経て進むとされている。事実,ベンゾフェノン(BP)-トリエチルアミン(TEA)系のアセトニトリル溶液では励起後10psにアニオンラジカルの吸収がみえ,30ps後にはケチルラジカルに変化している(ShaeferとPeters,1980)。しかし,この報告では3BP*の減衰についての記述がなく,また電荷移動の速度が芳香族アミンからのそれらより速いことから1BP*からの反応を否定できない。著者らはTEAを溶媒とし3BP*による水素引き抜き反応をピコ秒分光によつて研究した。TEAは基底状態ではBPと錯体をつくらずまた極性もアセトニトリルより低いので1BP*からの反応(電荷移動)の効率は低く,3BP*からの拡散律速でない過程を見ることができる。ピコ秒分光はOMA二次元使用によるスペクトル測定およびエシエロンを用いた時間変化の測定の両面から行なった。その結果はじめに3BP*が生成し50psの寿命で減衰する。励起後150psの吸収スペクトルは完全にケチルラジカルの吸収スペクトルであった。1BP*および3BP*のいずれからのアニオンラジカルの生成も観測されなかった。これは電荷移動後1のプロトン移動がきわめて速いため,あるいは直接の水素移動(電子およびプロトンの移動が同時)によると考えられる。3BP*によるTEAからの水素引き抜きは50psの時定数で起きると結論される。
  • 川崎 昌博, 菊池 宏, 英 貢
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1484-1486
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シランガスからの無定形シリコン薄膜の生成が連続発振CO2赤外レーザー照射により促進された。この機構を解明するためラマン分光法の一種であるCARS(コヒーレント反ストークスラ々ン分光)法を用いて基板近傍の活性種の分析とその振動・回転状態の解析を行なった。CO2レーザーの波長はシランガスの室温のスペクトルにおいて吸収の強い10.220μmと弱い10.591μmの二つとし,光の方向は基板に垂直とした。基板との距離1を変えてCARSスペクトルをとったところ1=∞のとき,10.220μmではSiH4(ν1モード)の甲転励起したスペクトルが得られたが,10.591μmではその室温のスペクトルであった。lを小さくして1mmのとき10.220μm,10.591μmの両者ともにCARSスペクトルに二つのピークがみられた。一方はSiH4のν1バンドであったが,もう一つはそのホットバンドまたは反応生成物である2H6であろうと推定された。シランに窒素ガスを混入させてN2のCARSスペクトルをとることでガス温度が求まり,シランのCO2レーザーによる反応機構が検討された。
  • 真嶋 哲朗, 五十嵐 孝司, 荒井 重義
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1490-1497
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CO2パルスレーザーによるペルフルオロジメチルエーテルの赤外多光子解離反応の主生成物は,フッ化カルボニル(ペルフルオロジメチルェーテルの消費量に対する生成収率:54%),一酸化炭素(24%),ペルフルオロエタン(37%),およびペルフルオロメタン(5%)であり,ペルフルオロェチレンやペルフルオロアセチレンも少量(1%以下)生成した。レーザーパルス数,レーザー波長,フルエンス,およびエーテルの圧力の変化により,分解収率,生成収率そして生成物分布が変化した。この分解反応は,多光子吸収によって生成した高振動励起状態のエーテルにおけるC-O結合開裂によって開始され,トリフルオロメチルラジカルとトリフルオロメトキシルラジカルを初期的に生成し,引きつづくラジカルの分解反応およびラジカル同志の反応により生成物にいたることがわかった。また生成物である一酸化炭素中の(18O/16O)の同位体比を1測定した結果,適当な実験条件下で18Oを含むエーテルの選択的分解が起こることが判明した。エーテル3.5Torrの場合,18Oの分離の選択性はレーザー波長940.55cm-1で最高値(2.5)となったが,パルス数,フルェンスおよび圧力の増潴とともに低下した。
  • 関谷 博, 遠藤 実, 辻 正治, 西村 幸雄
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1498-1505
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱エネルギー領域におけるHe+++N2O電荷移動反応を,放電フロー装置を用いて発光法とレーザー誘起蛍光法によって研究し,生成物とその振動分布,およびN2Oのイオン化・解離過程について考察した。He+++N2O電荷移動反応から生じるN2O+(A2Σ+)状態の振動分布は,垂直イオン化で生じたと考えられるHe+(23S)+N2OPenningイオン化反応のN,O+(A)状態の振動分布よりも高振動励起されている。He++よりも電子再結合エネルギーの小さいHe+2+,Ne+とN2Oを反応させ,N2O+(A2Σ+-X21)発光の観測を試みたが,発光は認められなかった。この結果はHe++N2O電荷移動反応においてN2O+(A)状態は直接生成しているのではなく,N2O+の高励起状態からの輻射カスケードによって生成した可能性が高いことを示唆している。N2O+(A-X)発光とN2++(B2Σu+-X2Σg+)発光の全発光強度比の比較から,He+++N2O反応ではN2++は2%以下しかB状態に生成しないことが明らかとなった。基底電子状態に生成するN2++の振動分布をv''=Oからv''=3までレーザー誘起蛍光法により,N2++(B-X)遷移をモニターして測定した。その結果,N2++(X)の高振動準位への解離過程が重要であることが示唆された。
  • 奥山 徹, 西 信之
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1506-1516
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    広い照射面積をもつ紫外レーザー光あるいは低圧水銀灯からの紫外線を純アセトニトリルおよびアンモニアとアセトニトリルの二成分を含む低温固体に照射し,そこで起こる反応をレーザー光による表面分子の光脱離法および液体クロマトグラフィーや質量分析計を用いて調べた。アセトニトリルは二分子の不均化縮合反応により,シアン化水素二量体(C2H2N2),エチレンなどを生成した。一方,アンモニアとアセトニトリルの系では,アモトニトリルの不均化縮合反応のはかに,アンモニアとアセトニトリルの縮合反応および付加反応が起こり,アミノアセトニトリル,アセトアミジンが生成した。
    77~130Kで低圧水銀灯を照射して得られたものの生成物分析の結果,低温固体への紫外線照射,およびその後の昇温という過程を経ることにより,アンモニアとアセトニトルから物質進化上重要な化合物であるDAMN(ジアミノマレオニトリル)やAICN(5-アミノ-4-イミダゾールカルボニトリル)のような複素環化合物が多種生成することがわかった。
  • 渡辺 綱夫, 大山 俊之, 林 修身, 石川 洋一, 石井 忠浩, 荒井 重義
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1517-1521
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プロモトリフルオロメタン(CF3Br)にCO2レーザー光を照射すると赤外多光子解離反応によりペルフルオロエタン(C2F6)と臭素(Br2)が生成する。このさいC2F613Cが濃縮されるが,その分離効果を種々の実験条件,すなわち温度22,-78,-110℃,圧力は0.5Torr(1 Torr=133.322Pa)から10 Torrまで,照射波数は1035cm-1から1055cm-1までの範囲で調べた。その結果,一定温度において,炭素同位体選択性は圧力3 Torr以下では一定値を示し,3 Torr以上では圧力上昇とともに低下した。また一定圧力においては,温度の低いはど選択性は向上する。室温,2 Torrにおいて照射波数を変えた実験では,13Cの選択性および収率をともに考慮すると1040cm-1付近が最適であることがわかった。さらにC2F6とBr2の混合ガスにCO2レーザー光を照射して誘起される赤外多光子解離反応についても研究した。その結果,生成物であるCF3Brにも炭素同位体分離効果があることが判明した。波数1083.5cm-1,フルーエンス2J・cm-1において選択性35の値が得られ,フルーエンス増大とともに選択性は低下した。
  • 中田 宗隆, 田隅 三生
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1522-1528
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低温マトリックス中で分子に赤外光を照射したときにおこる配座異性化について調べた。2-クロロェタノールの場合,OH伸縮振動とC-Cl伸縮振動の解析から,アルゴンマトリックス中で赤外光を照射するとC-C結合軸に関してゴーシュ形の回転異性体がトランス形に変化することがわかった。しかし,窒素マトリックス中では赤外光による配座異性化は見いだされなかった。一方,試料を吹きつけるときのノズルの温度を750Kにするとアルゴンマトリックスでも窒素マトリックスでもトランス形の存在比が増加することがわかった。2-クロロエチルアミンの場合,NH2縦ゆれ振動とC-Cl伸縮振動の解析から,2-クロロエタノールと同様たアルゴンマトリックス中でゴーシュ形がトランス形に変化することがわかった。また,マトリックスの温度を20Kから28Kに上昇させると,トランス形のスペクトルが変化することを見いだした。アミノ基の重水素化物についても同様の結果を得た。
  • 阿知波 洋次, 木村 克美
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1529-1538
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紫外・可視レーザーによる多光子イオン化の方法とそれによって放出される光電子のエネルギー分析を組み合わせることによって,励起状態について新しい知見を得ることができる。この手法の特徴は励起状態の特定の準位(振動・回転)を選別できること,そしてその光電子スペクトルが測定しうることである。この方法は著者らが最近開発したもので,本研究ではおもにNO分子を例として取りあげ,そのRydbergA2Σ+,C2Π状態のv'=Oまたは4の振動準位を中間状態として選び,直接イオン化と自動化オン化の二つの機構をはじめて明らかにした。光電子スペクトルの解析によるイオン化状態の決定,それに基づく励起状態の同定はきわめて直接的である。本研究は分子の高い励起状態の動的過程の研究に多光子イオン化光電子分光がきわめて有用であることを示唆している。
  • 陶山 容子, J. S. HAGGERTY, H. K. BOWEN
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1539-1541
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Fine and uniform SiC(β-form) powders were synthesized by CO2 laser driven gas phase reactions of Sill, and C2H4. The powders were characterized with emphasis on the compositions and particle size. The chemical composition varied with the ratio of [C2H4]/[SiH4] and with reaction temperatures. The particle size was in the range of 17.0 nm to 48.5 nm, and it increased with increasing laser intensity and partial pressure of B-doped SiC powders were also synthesized.
  • 斎藤 修二, 川口 建太郎, 広田 栄治
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1542-1549
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2~6原子からなる短寿命分子,フリーラジカル約40種の生成の詳細を,放電法を中心に論じた。そのさいこれらの分子種を高分解能分光法で明確に同定することを念頭におき,用いる分光法に適した生成法の開発に力点をおいた。放電による生成を二つに分類した。第一はセル外でFやOなどの活性種をつくり,これをセル内で他の物質(固体をふくむ)と反応させて短寿命分子を生成するもので,他は2成分以上の混合物をセル内で直接放電により反応させる方法である。それぞれの利害得失を比較した。またこのはかエキシマーレーザーを用いた光分解法による短寿命分子の生成を,とくに光分解初期過程についてえられる情報に重点をおいて論じた。さらに具体的な例として,硫黄をふくむ短寿命分子,リンをふくむ短寿命分子の生成と反応を総合的に論じた。
  • 土屋 正彦, 桑原 裕史, 長谷川 彰
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1550-1557
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液体イオン化質量分析法は,大気圧中で液体試料をイオン化して質量分析することができ,試料の取扱いがきわめて容易という利点をもつ。本法では通常MH+イオンが生成し分子量推定が容易であり,MH+の相対強度が最大となる温度でCAD(衝突活性化開裂)を行なえば,MH+からの中性分子の脱離ならびに単純開裂によりフラグメントイオンが生成し,構造と対応のよい質量スペクトルが得られる。試料の温度(加熱電流)を変えることにより,イオン量や質量スペクトルの変化から,試料の安定性や融点などの熱的性質ならびに構造に関する知見が得られる。このとき添加物(マトリックス,溶媒,試薬)の利用が,プロトン親和力や分子間相互作用を知り,安定したスペクトルを得るのに有用である。質量スペクトルの測定中にヒドラジンなどの試薬(R)をイオン源内に微量(~数μl)導入すれば,付加イオンMH+Rの生成によって官能基の相対位置の異なる異性体の識別を明瞭に行なうことができる。またD2OやND3の作用で,H-D交換反応の起こり方や活性水素の数を知ることができる,など本法は有機化合物の化学の研究に有用で,新知見を提供する。
  • 穂積 啓一郎, 北村 桂介, 北出 達也
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1558-1566
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラフルオロエチレンのプラズマ重合膜を球形であるポラパックQと不規則な形体をもつ破砕形シリカゲルの粉体に静止状態および混合状態でコーティングし,その断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ,後者のコーティングを施したときのみ粒子表面全方向に均一なコーティングが可能であることがわかった。また,このプラズマ重合によって得られる高分子薄膜は,固体材料のコーティングに応用したとき,完全被覆が達成されたと考えられる場合でも水分子や低分子量物質の透過が認められるので,メンブランフィルターに重合膜をコーティングして加圧水を接したところ,膜厚と透永開始圧力がよい相関を示し,加圧水に分子径の異なる溶質を含ませ溶質の透過試験を行なった場合は,ある分子量以上では透過が起こらなかった。これから,この重合膜の高分子マトリックス中にはミクロボアが存在ゆし,その孔径は20~40Å と推定された。電解質溶液を重合膜に接して電気伝導度を測定した場合も,完全被覆状態でかなりの導通を示し,このことからプラズマ重合膜は生成時残留するラジカルが,空気中に取りだされたとき酸素と接触して極性基を膜内に点在させ,これを伝わって水や電解質がミクロポリア内に進入すると考えられる。また,実際に汎用される数千Å の膜厚では,曲げに対する耐性をかなりもっており,さらに有機溶媒で処理することにより微細孔の孔径が調節できる可能性が示唆された。
  • 穂積 啓一郎, 北村 桂介, 真野 秀幸
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1567-1574
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    親水性モノマーのグロー放電によって気相中に生成するラジカルから直接多孔性基材上に形成したプラズマ重合膜は,ピンホールなど膜欠陥の少ない特性を利用して高圧炉過の必要な逆浸透膜などに応用が試みられている。本研究ではすでに化学構造が解明されたプラズマ重合ピリジン膜をとり上げ,逆浸透膜としての塩類の炉過特性や限外炉過膜としての水溶性有機溶質の分離特性などについて検討した。その結果,逆浸透分離における塩除去率は濃度にほとんど依存しないことと,限外炉過膜として用いたウときの有機溶質の排除限界は分子径約10Åであることが判明した。ただしこれより小さい有機溶質でも解離性のものは,pHを調節することでイオン種にすれば,逆浸透膜としてのイオン排除効果が期待できることがわかった。また膜の成長速度は初期の高速区間のあと定常的な緩速区間に移行し,前者においてはやや粗後者においては密な高分子層が形成されていると結論された。
  • 井原 辰彦, 伊藤 征司郎, 桑原 利秀, 木卜 光夫
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1575-1581
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プラズマ処理によるカーボンブラックの酸化反応機構に関する知見を得るために,処理中の圧力の影響や発光分光分析法によるプラズマ診断について検討した。また,処理によって試料表面に生成した分解生成物について,その生成条件や分子量分布などを調べた。
    その結果,酸素流量を少なくし,処理中の圧力を低くして処理した場合や,酸素のかわりに空気を用いて処理した場合には酸化の進行は少ないが,酸素流量を多くし,圧力を高くして処理すると酸化の程度が大きくなり,試料のpHが低下し,それに対応して水に対する湿潤熱の値も大きくなり,水中での分散性も良好になった。水中で良好に分散する試料を得るためには1.8Torr以上の圧力としなければならないことがわかった。カーボンブラックの酸化は,主として,カーボンブラック表面に生成したラジカル活性点と酸素分子との反応に基づくラジカル自動酸化反応によって進行するものと結論した。水中における試料の分散性と試料表面に生成した分解生成物の生成量との間には良好な相関関係が見られた。
  • 下妻 光夫, 田頭 博昭, 長谷川 英機
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1582-1588
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    最近,半導体素子製造はドライプロセスが多くなってきている。このプロセスでプラズマを利用し低温で半導体薄膜を作製することが行なわれている。本研究は,プラズマプロセスで窒化ケイ素絶縁膜を室温程度の低温で製作することを試み,さらにプラズマ発光分光を行ない膜質と発光強度の関連について考察したものである。実験は,約60lの金属チェンバーに直径15cmの電極を配し,50Hz低周波電界を印加しプラズマを得て行なった。電流,ガス圧は,3mA,1.2Torrで一定とし,また堆積させる基板(GaAs)は非加熱である。SiH4+N2混合ガスにより堆積した薄膜の厚t,屈折率nは,N2混合率kに対してほぼ直線的に変化し,SiH4+N2(90%)での膜の抵抗率が1015Ωcm,破壊電界が5×106V/cmとよく室温においても良質な窒化ケイ素膜が得られることを示した。プラズマ発光強度測定で,Si,N2からの発光がk%でそれぞれ,極大値をもつ特性と指数的な変化を示すことを見いだし,tとのk%に対する特性と異なることを明らかにした。また,発光の複雑なふるまいを分子・原n子・電子間の衝突過程の面から検討を加えた。
  • 松本 修
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1589-1594
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリコンウェハーをrf放電によって発生した窒素または窒素一水素プラズマにより窒化した。圧力10Torr,rf電力300W ,の条件下でシリコンウエハーを電気炉により800℃ に加熱した。窒素プラズマによってはケイ素は窒化されず酸化された。窒素-水素プラズマによっては屈析率2.0±0.1の窒化膜が形成され,赤外吸収スペクトル測定によってはSi-N結合のみが認められた。窒化反応は反応の初期には直線則についで放物線則にしたがい進行し,8時間の窒化によって厚さ350Å の窒化膜が得られた。プラズマ診断により,窒素に水素を添加するとNHのような窒素一水素分子が形成され,N2+イオンの減少が認められ,酸化のおもな原因と考えられる石英放電管内壁のスパッタリングが抑制され窒化が進行することが推測された。
  • 大崎 恭, 畑 信太郎, 平本 興士, 加藤 克昭, 佐々木 和夫
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1595-1599
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    H2-CO気体混合物中で無声放電を行なったとき生成するHCHOにつき,選択率を向上させる要因を広汎に検討した。結果を要約すると,1.気体流速一定では,HCHOの収量は放電管長さに比例して増加する。2.管長一定では,気体の放電管内滞留時間との間にY=-klogτ の実験式が成立する。3.HCHO,CH4ともにH2/CO=2なる気体組成のとき,最大収量を与える。
    現段階では,HCHOの時空収率36mol・m-3・h-1が得られているが,この値は10倍には上げられそうである。
  • 三宅 秀治, 菅野 卓雄
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1600-1607
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プラズマ励起化学蒸着(PCVD)および酸化プロセスによる無定形シリコンおよび窒化ケイ素膜を用いて,低コスト,大面積の電気的に書換え可能な半導体ディスクメモリ覧を実現する目的で行なわれた,半導体不揮発性メモリーの試作について述べる。本実験では,PCVD装置内で無定形シリコンの堆積,酸化および窒化ケイ素膜の堆積を連続して行ない,MNOS不揮発性メモリーを試作した。無定形シリコンおよび窒化ケイ素膜の電気的特性の堆積条件に対する依存性を調べ,これらの条件の最適化をはかることにより応用上十分良好な特性を有する堆積膜が得られることを明らかにした。さらに,酸化条件の最適化を行なったのち試作したMNOSダイオードのメモリー特性を調べた結果,このダイオードの書き込みは幅0.1μsのパルスを用いて行なうことが可能であり,保持時間は短絡放置で約3年と期待され,106回の書き込み,消去サイクル後の劣化も比較的小さく,不揮発性メモリーとして十分満足できる特性をもつことが判明した。
  • 六倉 信喜, 大内 幹夫, 佐藤 伸, 町 好雄
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1608-1616
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ素化無定形シリコン(a-Si:F:H)膜の製膜技術向上を目的として,高周波(13.56MHz)放電SiF4プラズマの分析を行なった。プラズマ中の反応種の測定に発光分光分析法および質量分析法を用い,これによってSiF4ガス分子の基本的な四つの分解反応が確認された。また,ダブルプローブ法によるプラズマ中の電子の平均エネルギーの測定や質量分析結果から,著者らの使用した条件においては弱電離プラズマであることがわかり,プラズマ中では中性種が支配的であり製膜に重要な役割を果たすと考えられた。
    プラズマ中では,SiF4分子の分解反応のほかにさまざまな二次的な反応が発生していると思われるが,その中でも比較的重要と思われる反応について,発光分光分析および質量分析によって検討を行なった。100%,SiF4プラズマでは,分解反応によって生成されたフッ素ラジカルが活性であるため製膜は起こらない。しかし,このフッ素ラジカルの発生はごく少量のH2ガスの添加によってほぼ完全に搾えられることが発光分光分析によって確められた。また,SiF4分子の分解反応がH2の添加によって促進されることも確認された。
  • 坂本 雄一, 野村 興雄, 大山 等
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1617-1624
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低ガス圧力のプラズマを用いることにより,プラズマ中での化学反応が無視でき,純粋に壁面上で起こるプラズマ化学的反応を研究することができる。ここではプラズマとして電子サイクロ卜ロン共鳴(ECR)プラズマを使った2種類の実験を紹介する。ちなみに動作圧力はケタとして10-2Pa以下である。
    その一つは窒素と水素の混合ガスのプラズマによるアンモニア合成である。系は非平衡であり,壁表面を触媒として用いると反応の選択性が上がり,通常の熱力学的平衡にある系では考えられないくらいの高い収率(約70倍)が得られる。
    他の一つは水素プラズマによるカーバイドの浸食である。本報告ではTiCおよびSiCについて述べる。カーバイドに水素プラズマを照射すると炭素原子が炭化水素として脱離し,いわゆる化学的スパッタリングが起こる。このさい化学的スパッタリングを起こす水素イオンのエネルギーにはしきい値が存在することが見いだされた。その値はTiCでは約130eV,SiCでは80eVであった。この実験結果から,カーバイドを第一壁に用いる核融合装置を放電洗浄する場合,グロー放電洗浄法(イオンエネルギーは数百eV)を適用すると,化学的スパッタリングが起こり,壁表面が変質するが,ECR放電洗浄法(イオンエネルギーは数eV以下)では変質が起こらないと言うことができる。
  • 須藤 進, 生田 茂, 野村 興雄, 片桐 茂良
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1625-1636
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    GeH5+はGeH3+とH2がゆるく結合した錯体とみなせる。分子の対称性はCsであって,Hartmannらの言うD3hではない。
    GeH4の陽子親和力の値は7.12eVである。Lampeらが実験から推定した値が理論的に確認された。GeH4の陽子親和力の絶対値はSCF法による計算で十分なことがわかった。それに対する補正を行なっても,値が小さくなり無視できる。
    GeH5+の陽子親和力が大きいにもかかわらず,GeH4中ではGeH5+が今まで見いだされなかった。GeH5+の寿命が短く,すぐにGeH3+とH2に解離してしまうためである。分解に要するエネルギー0.31eVは,GeH4の陽子付加のエネルギーによって与えられる。それが緩和過程でGeH3+とH2の結合へ分配されたときに解離する。この理論的説明はGeH4がH-を与えてGeH3+になるという考えを排除する。
    計算はab initio LCAO-MO-SCF法で行なった。基底はダブルゼータに加えて,各殻に一つずつ広がったGauss型関数を入れた。さらに,分極関数としてGeにはf型,HにはP型を加えた。分極関数を入れた計算は今までなかったが,かなりの寄与をする。電子相関は直接CIで見積った。振動解析も行なった。さらに,フラグメント解析を行ない,結合の性質を明らかにした。
  • 鈎 三郎
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1637-1641
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱プラズマ中の粒子種とその濃度を知るために,統計熱力学的手法による熱平衡時の濃度の計算値と質量分析計による電離種の実測値との比較を,比較的熱平衡に近いとされているアークプラズマについて行なった。またその析由物の形態を他の析出法からのそれと比較した。
    実験は真空中においた中空円筒形の酸化ジルコニウム焼結体陽極とその中心においたタンタルフィラメントとの間にアークを生じさせて,酸化ジルコニウムのプラズマをつくり,その電離種を質量分析計により分析した。その結果,実測値と統計熱力学的計算値の間には差があることがわかった。これはプラズマ中の電子と中性種との衝突による電離の影響であると考えた。計算値は電子の作用を加味して実測値に近づけうることから,プラズマ中の粒子種の濃度の推算には熱的過程と電子などによる粒子衝突電離過程をあわせることが必要であることを述べた。
    陽極から蒸発してプラズマとなり陰極上に析出する酸化ジルコニウムの形態を走査型電子顕微鏡,X線回折で調べ,その結果を真空蒸着およびスパッター析出物の形態と比較,検討した。
  • 加茂 睦和, 佐藤 洋一郎, 瀬高 信雄
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1642-1647
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタンと水素の混合ガスのマイクロ波(2.45GHz)放電プラズマによって,気相からのダイヤモンド合成を行なった。基板としてシリコンウェハー,シリカガラス,天然ダイヤモンドを用いた。析出したダイヤモンドの形状や構造的特徴と,メタン濃度,マイクロ波電力,基板温度,ガス圧力など実験条件との関連について検討した。2%以上のメタン濃度ではいわゆる無定形炭素がダイヤモンドとともに析出した。メタン濃度が少なくなるにつれ自形面を有する微結晶が析出した。マイクロ波電力が大きくなるにつれ基板温度は上昇し,ダイヤモンド粒子は大きくなる煩向がみられた。ガス圧力の上昇によっても基板温度は上昇し析出速度は温度の上昇とともに早くなることがわかった。ダイヤモンドの生成は基板温度に依存し,基板上でのメタンの分解が律速になっていると考えられる。水素ガスはプラズマ中で解離して原子状となり,ダイヤモンドとともに析出する黒鉛状炭素と反応して揮発性炭化水素をつくって基板上から黒鉛状炭素を除去する作用と,析出したダイヤモンド表面の炭素原子と結合し,炭素のsp3携造を維持さ竜る働きを有するものと考えられる。
  • 天野 杲, 山田 宗慶, 進藤 隆世志, 赤倉 毅, 四衢 晋
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1648-1655
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水素原子と石炭(Yallourn炭,GoonyeHa炭,太平洋炭,三池炭)の反応を,Toplerポンプを備えた放電流通式反応装置を用いて130~250℃,1Torrで検討した。乾留物が留出しなくなるまで十分に加熱処理した石炭に水素原子を照射すると,乾留物とはまったく組成の異なる油分と水とが同時に生成した。油分の70%以上は炭素数6以上の常温で液状の成分で,このものについて元素分析,比重,屈折率,蒸留性状,NMRスペクトル,FIマススペクトル,ガスクロマトグラムを測定した。その結果,水素原子照射によって得られる油分は,石油の中間留分に匹敵する蒸留性状を有し,酸素,窒素,硫黄を含まず,炭素数5ないし25の範囲の単環ないし三環のシクロアルカンを主成分とすることがわかった。油分の性状は炭穂石炭の前処理,反応温度た依存しなしいことも見いだされた。マイクロ波放電による水素の解離率10%を用いると,本実験の油分組成から油分の生灘寄与するの醗生水素原子の約9%と求あられた。
    炭素数5以下の成分は油分の30%以下で,そのうち約50%がメタンであった。石炭のプラズマ分解生成物として知られるアセチレンは本実験では検出されなかった。
  • 永井 士郎, 新井 英彦, 畑田 元義
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1656-1660
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の組成からなるCO/H2混合気体をシリカゲル存在下および非存在下で電子線照射して生成物を分析した。シリカゲル存在下の反応では,CO含量1~90%の全組成領域で低級炭化水素とCO2が高収率で生成した。一方,H20の生成量は,シリカゲル非存在下の反応と異なり,CO含量が5%を超えるとCO含量の増加とともに減少し,電子線により水性ガスシフト反応が起こることが示唆された。炭化水素生成に対するシリカゲルの役割を明らかにするため,シリカゲルの存在下および非存在下におけるCOの電子線照射による生成物収量を比較し,COから生成する含炭素固体の構造を元素分析,IR法およびESR法により調べた。また,この含炭素固体をH2流通下で電子線照射して,生成する低級炭化水素の濃度の経時変化を追跡した。この結果,シリカゲルは,COの放射線化学反応および,その反応から生成する含炭素固体の電子線照射下における水素化分解に対して顕著な促進作用をもつことが明らかになった。
  • 相澤 浩一, 吉本 昌広, 冬木 隆, 松波 弘之
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1661-1669
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シランおよびエチレンを反応ガスに用い,容量結合型高周波グロー放電分解装置を使用して,炭素組成の大きなa-Si1-xCx:H(0.5<x<0.99)薄膜を低温(室温~250℃)で作製した。赤外吸収スペクトル,オージェ電子分光ならびに密度の測定により膜の物理的性質を評価し,プラズマ発光分光分析で得られたプラズマ中の活性種の解析結果と関連づけることによりグロー放電による膜の堆積機構を明らかにした。膜の堆積にはSiH,CHが関与しており,シランのガス組成比を小さくするとエチレンの分解が小さくなる。その結果,膜の堆積速度が減少し,膜中のC-Hn(n≧2)結合が増加するので,膜内水素量が70at%以上(室温で作製した場合)と非常に大きくなる。また,膜の密度は1.2~1.5とかなり小さい。このように多量の水素が膜内に含まれているので,オプティカルギャップはx=O.99で最大4.02eV・と非常に大きなものが得られる。このような大きなオプテイカルギャップと強いホトルミネセンスをもつために,この材料の可視発光デバイスへの応用が期待される。
  • 堀 勝, 服部 秀三, 森田 慎三, 石橋 新太郎
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1670-1674
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のキャリヤーガスプラズマ下流にメタクリル酸チルモノマーを混入して重合膜を基板上に形成した。重合速度やエッチング速度のキャリヤーガス依存性を調べるとともに,重合膜のIR,ESCA,NMR測定を行ない,分子構造,反応機構を検討した。さらに,この重合膜を電子線X線で描画し,その潜像をプラズマエッチングによって現嫁し,レジストとしての特性を評価した。この結果・不活性ガスをキャリヤーガスとしたときはラジカル性の反応が主要な反応機構であり,分子構造も通常の高分子に類似したものであることがわかった。他方,酸素などの反応性ガスの場合,イオン性反応が観測され,分子構造も通常の高分子とは異なっていることがわかった。レジストとしての特性は,ドライ現嫁する場合は,プラズマ重合したものが通常の高分子よりも高感度となり,描画パターンの現像ができた。しかし,実用的なレジスト感度を得るためには,さらに増感剤の混入などの対策が必要なことがわかった。
  • 矢島 龍彦, 土屋 敦彦, 手塚 還
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1677-1684
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゼンのプラズマ反応について速度論的な検討を行ない,その反応機構について考察した。プラズマは13.56MHzのラジオ波放電により発生させた。主生成物はアセチレンをはじめとする環の開裂に基づく低級炭化水素で,副次的にビフェニルビなどの環構造を保持した化合物および重合物が得られた。反応基質流速やラジオ波電力などの反応条件と基質の転化率や生成物の生成量との関係を調べた。また,ベンゼンーd6のプラズマ反応との比較を行なった。その結果,ベンゼンのプラズマ反応では,通常の有機化合物の場合とは異なり,電子衝突により生成した励起種が無放射遷移などによって失活するまえにさらに逐次的な電子衝突を受け単分子的に分解し,環の開裂を起こすという図式が主要な反応過程となっていることが推定された。また,プラズマ条件に対する各生成物の生成量の変化とペンゼン+ベンゼンーd6混合系のプラズマ反応で得られたビフェニルの生成におよぼす重水素効果から,ビフェニル生成の中間体としてフエニルカチオンの可能性が支持された。
  • 長田 義仁, 高瀬 三男, 水本 明
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1685-1692
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プラズマ開始乳化重合法によって,イソプレンを効率的に重合できることを見いだした。塊状のイソプレンは重合しなかった。生成したポリイソプレンは140万という大きな分子量を有し,その微細構造は,13C-NMRの解析から,cis-1,4-35%,trans-1,4-55%,3,4構造11%からなることが明らかになった。プラズマによって生成する長寿命活性種を用いて,イソプレンとアクリル酸ブチル,あるいはメタクリル酸ブチルとのブロック共重合が可能であることもわかった。また,逆乳化重合法によりメタクリル酸ナトリウムがきわめて効率よく重合し,水溶性微粒子状重合体が生成することができた。この方法によって,インベルターゼを橋かけ微粒子状高分子中に包括固定化し,ショ糖の加水分解活性を測定した。
  • 長田 義仁, 本田 克典, 高瀬 三男
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1693-1699
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高周波低温プラズマを照射することによって,ヨウ素,二クロム酸カリウム,ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムといった無機物質がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で効率的かつ定量的に還元できることを見いだした。反応はプラズマ中に含まれる高エネルギー電子が物質に直接付加して起こり,その生成物としてI2,Cr0,K4[Fe(CN)6]などが生成しているものと考えられる。反応は12のみジメチルスルポキシド(DMSO)中でも起こる以外,水,メタノール溶液および固体状態では起こらなかった。DMF溶液における12のプラズヤ還元速度の濃度およびプラズマ出力依存性を検討し,みかけの反応速度式はR=R=K[I2]-0.3[Plasmapower]0で表わされることがわかった。またK2Cr2O7については反応速度の濃度依存性を求めることができた。さらにプラズマ照射した12およびK2Cr2O7溶液は室温で放置することによって後還元反応が起こることも確認された。
  • 本多 卓也, 今林 秀樹, 神沢 淳
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1700-1706
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プラズマの応用の一例として,プラズマ処理による石炭のガス化がある。1960年代から始まり,いろいろな実験条件で行なわれてきた。その中で水素を加えると比較的容易に収率が上げられることがわかっている。しかしながら,その機構など詳細はよくわかちていない。そこで,本研究は収率(おもにアセチレン)を上げる目的で水素を添加した場合を実験,理論的解析を加え,検討した。
    アルゴンプラズマを用いて,石炭(太平洋炭)の処理を行ない,実験面でほ,永素,プラズマ流量と放電電力を変化させ生成ガス(アセチレン,メタン)流量の変化を測定した。理論的解析としては,伝熱律速,半径方向のプラズマ流の速度,温度を一定と仮定した一次元モデルで,さらに球形石炭粒子の温度も一様として,粒子温度,転化率を求めた。
    水素を加えるとその効果はアセチレンのみに現われ,メタンには現われない。また,その効果はプラスにでる実験結果を得た。計算結果から,水素は石炭粒子温度の立ち上がりをはやくし,反応開始時刻をはやくし,同時にプラズマ流の温度をはやく冷やすため,反応管内の滞留時間を長くする。これら二つの点から,水素を加えた方が転化率が高くなることがわかる。
  • 井村 健
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1707-1715
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水素雰囲気中でのケイ素(またはゲルマニウム)の化学スパッタリングにより微結晶ケイ素(μc-Siまたはμc-Ge)からなる膜が生成する。μc-Siは5~50nmの大きさの不規則な形状をしたダイヤモンド構造のケイ素単結晶で,粒子の表面が共有結合したHでおおわれている。Hの含有量は約30atom%である。μc-Si粒子は膜の成長(膜厚の増大)にともなって積み重なり,膜颪と垂直方向に柱状(ないしすじ状)構造が発達する。
    μc-SiのSi-H結合伸縮振動による赤外吸収帯(2100cm-1付近)は,水素化無定形ケイ素におけるものとは異なり,鋭い数本の吸収帯からなる。これらの帰属のためには,隣接置換基の電気陰性度,SiH・の全対称および逆対称振動,SiH単水素化物構造による吸収帯(無定形ケイ素では2000cm-1にあらわれる)の結晶表面に密集したことによる2100cm-1へのシフトという三つの要素を考慮する必要がある。
    μc-Si膜の光学吸収,ホトルミネセンススペクトルは結晶ケイ素的な特微を示す。
    SiH4のグロー放電で生成したμc-Si膜との組成,構造における違いが議論されている。
  • 杉山 和夫, 赤沢 潔, 大島 正明, 三浦 弘, 松田 常雄, 野村 興雄, 大山 等, 坂本 雄一
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1716-1718
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Synthesis of ammonia from H2 and N2 was examined at room temperature under the condition of glow discharge plasma in the presence of MgO. The rate of ammonia formation was significantly improved by MgO, although MgO was catalytically inactive in thermal ammonia synthesis. The amount of ammonia formed increased correspondingly with the increase of the surface area of MgO. The presence of considerable amount of ammonia on the MgO surface was observed by temperature programmed desorption. Trace of Mg2N3was detected on the MgO surface by ESCA. This was not an intermediate of the reaction, because ammonia formation was not observed by the reaction of Mg2N3 with hydrogen plasma.
  • 小駒 益弘, 高橋 和夫, 森脇 隆夫, 岡崎 幸子
    1984 年 1984 巻 10 号 p. 1719-1722
    発行日: 1984/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The surface fluorination of PET films under low pressure electric discharge was studied. The carbon tetrafluoride gas was used as fluorine source for fluorination in the discharge plasma. The contact angle of the water drop on the polymer surface was measured because it was related to the degree of surface fluorination. When the discharge began, the contact angles increase rapidly and reached 110° or more after a few minutes. The surface products were analysed by ESCA. We concluded that fluorine atoms were interpolated into the polymer molecules as -CF2-.
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