日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1977 巻, 4 号
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  • 近沢 正敏, 金沢 孝文
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 445-450
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ハロゲン化アルカリ(LiCl,NaCl,NaBr,KCl,KBr)表面へのアセトンの吸着機構を,吸着量,等量吸着熱,吸着アセトンのエントロピー,格子間距離の各相互関係から総合的に検討し,表面陽イオンが吸着現象に果たしている役割を明らかにした。吸着熱の結果から,アセトン分子はカルボニル基中の酸素原子を表面陽イオンに向けて吸着している,と判定された。また吸着熱の大きさの順は,低被覆率における同-吸着量で比較するとNaBr>KBr>NaCI>KCI>LiClであった。アセトンは,NaClやNaBrにおいて表面陽イオン2個に対し1個の割合で,格子間距離がNaBrより長いKCI,KBrではそれよりアセトンが多い割合で,また格子間距離がNaClより小さいLiClではそれよりアセトンが少ない割合で,おのおの吸着していることがわかった。これらの点については,アセトンの分子断面積と各塩類の格子間距離との関係から,都合よく説明される。KCl,LiClを除いた試料の低被覆率における吸着熱はアセトンの液化熱より大きいことから,アセトン分子と陽イオンとの間の相互作用はかなり強いものである,といえる。したがってハロゲン化アルカリへの極性物質の吸着において,露出した陽イオンとくに(111)面や摩砕物の表面の吸着性は十分大きいものと考えられるので,この点を念頭におく必要があろう。
  • 岩島 聰, 本多 等, 澤田 忠信, 青木 淳治
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 451-456
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販カルバゾールを無水マレィン酸とクロラニルとともに処理後,1-ペンタノールと金属ナトリウムで処理し,活性アルミナカラムを通して,混入する不純物を除去後,さらに帯域融解して精製したカルバゾールの純度を検討するために,アントラセンおよびフェナントレンを,それぞれこのカルづゾール中に10-3~10-8mol/mol混入した混晶の蒸着薄膜を石英ガラス板につくり,その蛍光スペクトル,蛍光寿命および時間分解スペクトルを室温と液体窒素温度で測定した。
    その結果,カルバゾール中に混入するアントラセンは,蛍光スペクトルでは10-7mol/mol,蛍光寿命の時間分解スペクトルでは10-9mol/molまで検出された。また,蛍光寿命では,カルバゾルとアントラセンの蛍光寿命が近いため測定困難であった。
    一方,カルバゾール中に混入するフェナントレシは,蛍光スペクトルでは,10-4mol/molまで,蛍光寿命の時間分解スペクトルでは10-6molまで検出された。また,蛍光寿命では10-7mol/molまで,その影響を観測することができた。したがって,上記の精製法で得たカルバゾール中には不純物としてのアントラセンやフェナントレンの混入濃度は,それぞれ,10-9mol/mol以下,10-7mol/mol以下であると考えられる。
  • 工藤 清, 杉田 信之, 竹崎 嘉翼
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 457-465
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メタノールと加圧一酸化炭素からギ酸メチルを合成する反応が1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク-7-エン(DBU)の触媒下で容易に進行することを見いだし,この反応をメチルセロンルブ溶液中で速度論的に検討した。
    反応速度は一酸化炭素圧,メタノールおよびDBUの初濃度にそれぞれr次であり,また生成ギ酸メチルは反応条件下でメタノールと一酸化炭素とに分解し平衡状態が成立することがわかった。
    DBU,メタノール初濃度 :生成ギ酸メチルおよび平衡時のギ酸メチル濃度
    :一酸化炭素の溶液中への溶解度定数 およびフガシテズゴ(atm)。
    このようにして導かれた速度式ぽ反応諸因子の影響を満足に説明しており,これから求めた見かけの速度定数は,k'=1.83×15-8(80℃),4.27×10-3(100℃),7.53×10-8(120℃)である。また見かけの平衡定数は,K'=0.662(80℃),0.842(100℃)1.0121(120℃)である。
    本反応の反応熱として約27kcal(吸熱),見かけの活性化エネルギーとして約12kcalを得た。
  • 内本 勤, 梅田 正, 川田 敏彦, 千先 久矩
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 466-469
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-ヒドロキシイミノ-2-オキン吉草酸エチル[1]のインオキサゾールへの閉環反応は酸触媒反応であり,ヒドゴキシルアミンの存在しない場合,そのまま閉環して3-メチル-5-インオキサゾールカルボン酸エチル[2]が生成するが,ヒドロキシノセアミンが共存していると上記インオキザゾールならびにその異性体である5-メチル-3-インオキサゾールカルボン酸エチル[3]が生成し,それらの生成割合は硫酸濃度により異なる。
    反応速度論的考察ならびに中間体の分析から,ヒドロキシルアミン存在下の閉環反応の機構を推定した。
  • 茂原 禎子
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 470-474
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    窒化モリブデン上でエチレンの水素化を行ない,その活性および特性を調べた。-78℃で活性があった。反応速度は水素圧に0.6次,エチレン圧に0次で依存した。また,軽水素と重水素の間に同位体効果が見られた。さらに,触媒表面上でのエチレンと水素の挙動を調べるためにH2とC2CH4+C2CD4の反応およびH2+D2とC2H4の反応を行なった。エチレン間の水素交換反応は水素の有無にかかわらずはやく起こっている。水素間の水素交換反応はエチレンの共存により遅くなり,また生成エタンの同位体組成(d,d,d)は気相水素の組成(H2,HD,D2)に近いことから,エチレンに付加した水素も付加前にほとんど交換反応を起こしていないと考えられた。これらの事実から,窒化モリブデン上におけるエチレンの水素化反応について若干考察した。
  • 上松 敬禧, 鈴木 喬, 小林 広行
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 475-480
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン交換樹脂触媒に関する研究の一環として,遷移金属イオンを主とした金属イオン置換型スルホン酸樹脂における,水,アンモニア,およびオレフィンの気相吸着を60~130℃の範囲で測定した,その結果,まず前処理の効果として,吸着活性は加熱排気による脱水とともに出現すること,吸着量はブタジエンく水くアンモニアと塩基性の強いものほど大きく,また樹脂上の金属イオンの電気陰性度と強い相関関係がみられたことから,この種の吸着は金属イオンの酸性に起因することを明らかにした。また,34-遷移金属イオンで系統的に置換した樹脂触媒における各種の吸着量,アンモニア吸着熱,水の浸潤熱の測定結果はMn2+<Co2+,Ni2+,Ni2+>Zn2+の序列となり,結晶場安定化エネルギーの寄与が推察された。また,単位金属イオンあたりのアンモニアとブテンの吸着量が樹脂上金属イオン濃度の増加とともに急増することに関連して吸着サイトの性質について考察した。
  • 山田 裕憲, 黒沼 春雄, 今井 久雄
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    異なる吸着特性をもつCOとNOの選択的化学吸着により,NiHY型ゼオライトの陽イオンサイトにおけるニッケルイオンの分布とくにサイトIIおよびII'への分布を測定する方法を研究した。COおよびNOの化学吸着が交換率の異なる-連のNiHY型ゼオライトについて研究され,COはザィトIIに配位しているニッケルイオンに化学吸着するが,NOはサイトIIおよびII,に配位しているニッケルイオンに化学吸着すると結論された。したがって,サイトIIおよびII'を占めているニッケルイオンの量はこれらのガスの選択的化学吸着により別々に測定できる。COの化学吸着における最適条件は25℃および100Torr以下の圧力であった。一方,NOについてはそれは0℃および同じ圧力範囲であった。NiHY型ゼオライトにおけるニッケルイオンの分布はニッケル交換率および前処理温度にいちじるしく依存していることも示された。
  • 箕浦 秀樹, 丹羽 勝, 沖 猛雄, 立木 正泰
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    S2-イオンを含む硫酸ナトリウム水溶液中における光照射下の焼結CdS電極の分極挙動を研究した。その結果,S2-イオンを含む溶液中においては,それを含まない溶液の場合にくらべて,光電流の立ち上がり電位が約0.7V卑方向にシフトし,約-1.45V(vs.SCE)となること,しかもその光電極反応としては
    S2- + 2 P →S
    が優先的に起こるため,CdSの光溶解反応が抑えられ得ること,また十分高濃度のS2-イオンを含む水溶液中では,光電極反応により析出した単体SがSS2-イオンに溶解してポリ硫化物イオン(S22-)となって電解にともなう光電流の減少がみられないことがわかった。これらのことから,十分高濃度のS2-イオンを含む水溶液を用いてCdSを不溶性アノードとする電気化学光電池をつくることが可能であると結論された。
  • 武藤 文夫, 滝 貞男
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 492-499
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化チタンと水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムの水熱反応により,新しい結晶Na2Li2Ti6O14,Li2Na4-2Ti2O7およびLi2Na4-2Ti6O14が生成することを見つけ,その生成過程,生成領域を検討し,結晶構造を明らかにした。
    これらの結晶の生成範囲は繊維状チタン酸ナトリウムの生成領域と重なっている。Na2Li2Ti6O14はK2Li2Ti6O14と同一構造で斜方晶系に属し,格子定数はa=16.38Å,b=5.76Å,c=11.30Å でz=4である。Li2Na4-2Ti2O7もNa2Ti307と同-構造で単斜晶系に属し,格子定数はa=8.55Å,b=3.78Å,c=9.11Å,β=101.5°でZ=2である。Li2Na4-2Ti6O14は斜方晶系に属し,空間群はC-P2,mn,格子定数はa=37.28Å,b=9.32Å,c=2.90ÅでZ=4である。この結晶はゆがんだTiO6八面体が稜で結合して,a軸に直角な層をつくり,この層と層の間の隙間にアルカリ原子が位置する構造をなしている。
  • 菅野 竹雄, 久保 一彦
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 500-503
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    縮合リン酸(n=6 および8,n:平均重合度)とアルカリ土類金属(金属:マグネシウム,カルシウムおよびストロンチウム)との錯体の熱力学的安定度定数をpH滴定法によって求めるとともに,熱量測定によって25℃における1:1錯体の反応熱を求め,それらの結果から1:1錯体形成反応にとも なう熱力学的諸量の変化(ΔG0,ΔH0 および,ΔS0)の値を算出した。
    その結果,(1)いずれの場合もΔH0の値は正(吸熱)できわめて小さいのに対し,ΔS0は非常に大きな正の値を示すこと,すなわち,以上の錯体の安定性は,その大きなエントロピーの増加に基づくこと,(2)ΔS0,の値は金属イオンの半径の逆数(1/r)の増大とともに大きくなること,(3)既報の結果とも合わせて比較すると,縮合リン酸の平均重合度宛が長くなるにつれてΔS0の値が増大するが,n=4以上になるとその増大の割合は比較的ゆるやかになること,(4)ΔH0の値もわずかながら1/rおよびnの増大とともに大きくなる傾向のあること,とくにn=4以上になるとほとんどnに依存しなくなること,などを認めた。以上の結果を縮合リン酸イオンがその錯体中においてキレート環を形成することに基づくものとして説明するとともに,縮合リン酸のキレート構造についても考察した。
  • 土屋 正臣, 佐々木 洋興
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 504-507
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-チオキン-5-ニトロン-1,3-ジメチルペルヒドロピリミジン-4,6-ジオン(TNDP)を新しく合成し,各種金属イオゾとの反応性を検討した。pH6.1とした場合,23種の金属イオンの中で波長380nm以上の長波長側に吸収を示すのは鉄(III)の630nmのみであった。鉄(II)は微量のイナンでも容易に青色の水溶性錯体を形成し,呈色も安定である。鉄(III)-TNDP錯体の生成につき基礎的な諸条件を検討して鉄の定量方法を完成した。鉄(III)-TNDP錯体はpH範囲5,5~6,8で最高の発色を示した。鉄濃度と吸光度の間には良餅な直線関係が認められ,モル吸光係数および吸光度0.001に対する感度はそれぞれ2.23×10cm-1,moP,1および2.49×10-8μg,cm-2であった。錯体の組成を連続変化法により検討した結果,金属:TNDP=1:3と推定された。
  • 新井 五郎
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 508-513
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    p-ベンゾキノンおよびp-ベンゾキノンスルホン酸カリウムと亜硫酸ナトリウムとの反応での付加反応および酸化還元反応を,両者の酸化還元電位の関係から検討した,その結果,両者の酸化還元電位の差が大きいところで酸化還元反応が進行し,酸化還元電位の差が小さいところで,付加反応が進行することが確認された。p-ベンゾキノンスルホン酸カリウムと亜硫酸ナトリウムとゐ反応では,酸化還元反応と付加反応との境界電位差域において,酸化還元反応の中間体的性質をもつ反応生成物がポーラログラフ法により確認され,その推測される構造について検討した。
  • 田中 清文, 松原 義治
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 514-517
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    インプレン[1]をリチウムナフタレニドおよびナトリウムナフタレニドを用いて二量化し,得られた4種のインプレンニ量体,2,6-ジメチル-2,6-オクタジエン[2],2,6-ジメチル-1,6-オクタジエン[3],2,7-ジメチル-2,6-オクタジエン[4]および2,3,6-トリメチル-1,5-ヘプタジエン[5]をそれぞれクロ潔酢酸類(モノ,ジおよびトリクロロ酢酸)を用いて水和反応を行なった。その結果,[2]からは,2,6-ジメチル-6-オクテン-2-オ-ル[6]および2,6-ジメチル-2-オクテン-6-オール[7]を,[3]からは,[6]および2,6-ジメチル-1-オクテン-6-オール[8]を,また[4]からは,2,1,7-ジメチル-6-オクテン-2-オ-ル[9]を,さらに[5]からは,2,3,6-トリメチル-5-ヘプテン-2-オール[10]および2,3,6-トリメチル-1-ヘプテン-6-オ-ル[11]をそれぞれ主生成物として得た。本水和反応は,それぞれ特定の条件下ほぼ定量的に進行した。
  • 目黒 竹司, 鳥飼 直親, 西村 丈夫, 栗田 彰
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 518-522
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オーストラリアのYallourn褐炭をNaOH水溶液で処理し,アルカリ処理炭を試作して,その製造条件を確立するとともに,この吸着剤を廃水中に含まれる金属イオンなどの除去に利用するための基礎的な知見を得る目的で本研突を行なった。
    実験は,8~16メヅシュのYalloum炭100gにNaOH10gを水60mlに溶かして加え,90分間反応させ,十分に水洗してアルカリ処理炭を調製した。このアルカリ処理炭は水中でフミン酸を溶出するため,Ca2+を10mg/g吸着させることにより,この欠点を防止した。微粉状のアルカリ処理炭を酢酸ビニル系の結合剤で固めたのち,破砕したもの(8~16メッシュ,水分45%)を吸着剤試料とした。試料-粒の破壊強度は800~1200gであった。この粒状アルカリ処理炭について重金属イオンおよび染料の吸着実験を行ない,交換容量を近似的に求めたところ,Pb,Zn,Cu,Ni,Cd,メチレンブルーにっいてそれぞれ1.38,1.25,1.24,1.21,1.15,0.96meq/gを得た。また,酸性染料のC.I,acid blue62の吸着はきわめて小さく,陰イオン交換能はないものと考えられた。
  • 藤元 薫, 山田 潤, 功刀 泰碩
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 523-528
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ハロゲン修飾金属パラジウム触媒上で,エチルベンゼンの酸化脱水素反応が,200~300℃で選択的に進行することを見いだした。添加ハ群ゲンィオンとして臭素イオンを用いた場合に,活性ならびに選択性がすぐれていたので,これを安定な臭化ナトリウムの形で添加して用いた。反応の見かけ活性化エネルギーはエチレンの生成に関して7.8kca1/mol,二酸化炭素生成のそれに関して16.1kca1/molであった,スチレン生成の反応速度はエチルペンゼン分圧について-次であったが,酸素分圧に関しては非解離型のLangmuir吸着式で近似された。プロピルおよびブチルベンゼン類でもおのおの酸化脱水素反応が進行し,ベンゼン環に対してβ-位に二重結合を右するアルケニルペンゼン類を与えた。その反応性は,一般にアルキル側鎖の炭素原子数が多くなるにしたがって低下した。直鎖アルキルペンゼンのアルキル基が大きいほど酸化脱水素反応の見かけ活挫化エネルギーが大きく,競争反応におけるエチルペンゼンの反応抑制の程度も大であった。これはアルキル鎖が長くなるほど触媒上に多鍛に吸着し,エチルペンゼンの吸着を阻害するためと考えられた。
  • 長谷 綱男, 内尾 康人, 久保田 尚志
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 529-531
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニセアカシヤの葉の一成分であるアカセチン三糖類配糖体[1]について構造を検討した。[1]は塩酸で加水分解すると糖部分としてD-グルコース,レラムノース,かキシロースを与えた。また酢酸による部分的加水分解でリナリン(アカセチン-7-β-ルチノシド)とD-キシ鐸-スが得られた。[1]のノナメチル化物[2]の加水分解で5,4'-ジメチルアピゲニンと2,3,4-トリ-0-メチル-L-ラムノース,2,3,4-トリ-0-メチル-D-キシロース,3,4-ジ-0-メチル-D-グルコースが得られる。[2]のNMRの検討でD-キシロースのClプ覆トンの立体配置を明らかにした。以上の結果,[1]に対し,7-0-{0-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-0-[β-D-キシロピラノシル-(1→,2)]β-D-グルコピラノシル}-アカセチンの構造を与えた。
  • 鎌田 薩男, 郷原 道雄
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 532-536
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非水溶媒中におけるスルホン酸型イオン交換樹脂の溶媒収着性を非スルポン化樹脂の溶媒収蒼性と比較検討した。溶媒ひごは極性および無極性の有機溶媒17種を用い,樹脂にはゲル型および巨大網状型(MR型と略す)を用いた。イオン交換樹脂(ゲル型Dowex 50 WX8 およびMR型Amberlyst 15)の溶媒収着量は細孔構造をもつMR型がゲル型より多量であるが膨潤度は小さいこと,この膨潤度は溶媒の溶解性パラメーター(δ1)に関係しH形ではδ1≧10,Na形ではδ1≧12の溶媒中でδ1値の増加とともに増加し,この値以下の溶媒中ではほとんど膨潤しないこと,これらは溶媒と樹脂スルホン酸基との相互作用によると考えられることを示した。また膨潤度と溶媒の誘電率,双極子モーメント,ドナー数などとの相関性も調べたが良好ではなかった。-方,非スルホン化樹脂の溶媒収着はスルホン酸型樹脂とは異なり,1%および8%ジビニルベンゼン含量のゲル型ポリスチレン樹脂ではδ王自9の溶媒中で最大膨潤するが,MR型AmberliteXAD樹脂では樹脂内細孔にどの溶媒も同量程度を吸収しほとんど膨潤しない。
  • 飯田 昌造, 坂見 宏
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 537-543
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレンの押し出しフィルムを常温で延伸し,応力,延伸比関係におよぼす押し出し成形時のドラフトにともなう配向結晶化の影響を検討した。
    押し出しフィルムは延伸初期にネッキングが観察され,ドラフト比の増加によって,ネッキング応力は増加し,ネック延伸比は低下することがわかった。この応力と延伸比の関係は熱力学的に導かれる理論式とよく-致した。ネック延伸後に起こる-様延伸では応力は延伸比とともに増加した。実測した応力,延伸比関係にこれに関する理論式を適用し,最大延伸比(分子鎖が完全に伸長された状態における延伸比)が計算され,それがドラフト比の増加に対して減少することがわかった。
    延伸により配向結晶化物中のラメラ晶がtiemolecu1ざまたはtielinkへの遮力集中により小さな結晶プロヅクに破壊されるとするとき,最大延伸比は結晶プロヅクの大きさと関係づけられる。検討の結果ドラフト比の増加により結晶プロヅクは微細化し,tieが増加することが定量的に確かめられた。
  • 万木 正, 岩田 ひろ
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 544-548
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セルロース物質の光崩壊におけるセルロースの微細構造の影響を明らかにするため,天然および再生セルロースから得た結晶,無定形(非晶)試粒こついて紫外光照射による変化を,主として赤外吸収スペクトル,および粘度法による重合度測定により比較,検討した。得られた結果は,(1)天然,再生セルロースともに,結晶部分は波長200nm以上の光には変化を受けず,無定形セルロースのみが主として253.7nmの光で変化を受け,カルボニル基を生成,1,4-グルコシド結合が開裂し,ランダムな一次反応にしたがって重合度を低下する,(2)光照射のさいに水が存在するとセルロースの講造に影響を与え,無定形部分における光あ作用を抑鋼する。(3)セルロースのモデル化合物セロビオースの光照射実験により,上記の光分解反応は,結晶のままでは起こらず,溶解状態(無定形に対応する)でのみ起こることを確かめた。
  • 結城 康夫, 木之下 光男
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 549-555
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3種の2,4-ジアニリノ-6-置換-1,3,5-トリアジンのニトロ化により相当する2,4-ビス(p-ニトロアニリノ)-6-置換-1,3,5-トリアジンを得た。また3種の2-アニリノ-4-(m-ニトロアニリノ)-6-置換-1,3,5-トリアジンのニトロ化により2-(p-ニトロアニリノ)-4-(m-ニトロアニリノ)-6-置換-1,3,5-トリアジンを得た。ついで還元により6種の2,4-ビス(アミノアニリノ)-6-置換-1,3,5-トリアジンを得た。6-位は無置換,メチル置換,およびフェニル置換である。このジアミンと二塩化テレフタロイルおよび二塩化インフタロイルとの反応によりポリ(アミドグアナシン)[A]を得た。またピロメリト酸無水物との反応によりポリ(ピロメリトアミド酸グアナミン)[B]を得た。ついで[B]を減圧下で加熱してポリ(ピロメリトイミドグアナミン)[C]を得た。TGA測定の結果[A]は355~454。Cで分解するが,[C]は非対称ジアミンからのものは450~480℃で分解し,対称ジアミンからのものは480~510℃で分解する熱安定性のよいポリマーであることがわかった。
  • 長久保 国治, 阿久津 文彦, 河村 信夫, 三浦 正敏
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 556-560
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    圭鎖にα-ジケトン結合を含むジカルボン酸クロリド(4,4'-ビス(クロロホルミル)ベンジル)を合成し,種々の芳香族ジアミンとの反応によっセポリブミドを合成した。重合は5wt%LiClを含むN-メまドまチルピロリドンを溶媒とし,トリエチルアミンを脱塩酸剤として用い,窒素雰囲気下,室温で行なった。つぎに,得られたポリアミドにo-フェニレンジアミンを反応させ,キノキサリン環を導入したボリアミドを合成した。これら得られた2種のポリアミドめ熱的性質をDTA,DSC,TGを用いて測定したのち,比較検討した。老の結果,p-フェニレンジアミンおよびベンジジンからのポリアミドではキノキサリン導入の影響は見られなかったが,m-フェニレンジアミンおよびジアミノジフェニルエーテルからのポリアミドでは,耐熱性がいちじるしく向上することが認められた。
  • 小佐井 興-, 東野 剛, 西岡 昇
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 561-564
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化カルシウム-メタノール溶液中の6-ナイロンへのラジカルグラフト重合について,その開始機構を調べた。モノマーはアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルとメタクリル酸(MAA)(9:1)で行なった。開始剤はBPOでは異常に小さいモノマー変化率しか得られなかったので,AIBN,またα,α需ジメチルベンジルヒドロペルオキシドとレアスコルピン酸とで行なった。開始剤の量が多くなると,グラフト効率は少し低下した。塩化カノkシウム濃度またMAAの量が大きい方がグラフト効率が高かった。反応時間について調べると,MAAが多い反応初期に非常に大きいグラフト効率を与え,あとは約23%の一定値となった。これらのことから,グラフト開始は開始剤ラジカルによるのではなく,MAAから生じたラジカルに欲るナイロンの水素の引き抜きであると推論した。
  • 沢口 孝志, 黒木 健, 磯野 達男, 池村 糺
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 565-569
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プラスチック廃棄物の有効利用の観点から,熱媒体として過熱水蒸気を用いた固定床流通系常圧装置で,ポリエチレンの熱分解ガス化反応を行ない,強度関数を誘導することによって生成物収率の予測の可能性を検討した。
    分解条件は反応温度590~800℃,滞留時間0.6~6.5秒,水蒸気希釈比2,5~7,5である。
    ガス化は比較的低温度領域で容易に進行し,エチレンを第-成分とする多量のオレフィンを生成する。滞留時間3.2~3.4秒,希釈比2.5~2.7の条件下でエチレンは700℃付近に極大値約32wt%を示し,650℃でエチレン,プロピレン,1-ブテンの合量は約58wt%,総ガス収率は約75wt%に達した。水蒸気希釈比はあまり重要でなく,分解因子は反応温度および滞留時間に限定され,それぞれはよい互換性を示した。
    強度関数(1F)は反応温度と滞留時間によって表わされ,特定成分のメタン収率を指標として,実験式1F=Tθ を得た。
    1Fと生成物収率はよい相関性を示し,反応条件の選択によって生成物収率の予測が十分に可能になった。
  • 片岡 健, 西機 忠昭, 岡本 雅美, 上山 惟恒
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 570-574
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリオクチルアミンによるウランの抽出機溝を明らかにするために,6mol/l以下の硝酸水溶液中からの硝酸ウラニル(VI)の抽出平衡関係を調べた。また,3mol/l硝酸水溶液中からの硝酸ウラニル(VI)の抽出速度を液液平面接触カキマゼ槽を用いて実測した。その結果,本実験範囲においてつぎのことが明らかになった。
    抽出平衡は,水相におけるウラニル化合物の生成平衡およびUO2(NO2)2分子がアミン硝酸塩(R3NHNO3)2分子と会合して抽出される抽串反応を考慮した平衡関係でまとめられた。
    3mol/l硝酸水溶液中において,UO2NO2+がウラニル化合物の94%を占めることが平衡関係から計算された。
    抽出速度は,水相の拡散種としてUO2NO3+,H+,NO3-の各種イオンを考え,電場を考慮したモデルでほぼ説明できることがわかった。
  • 山田 仁穂, 小出 善文, 古賀 文敏, 湘泉 謙三, 本郷 章
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 575-580
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    界面活性なN-アルキルエチレンジアミン(R-en)を合成し,それを用いて,各種金属塩の希薄な混合溶液から,Hg2+を選択的に除去することを試みた。
    捕集剤としての性能の目安を知るため,まずR-en金属錯体の生成定数を測定した。生成定数の順序は,金属イオンに関してFe3+>Cu2+>Hg2+>Pb2+>Zn2+>Cd2+>CA2+であった。
    つぎにこれら金属イオン溶液についてイオン浮選を行なった。Hg2+についてはpH4.0以上で,またFe3+についてはpH6.5以上で除去が認められ,Cu2+,Pb2+や,Zn2+,Cd2+およびCA2+については,ほとんど除去が認められなかった。
    これらの金属イオンの混合溶液から,pH4.5ではR14-enまたはR16-enを用いて,pH5.7ではR10-enまたはR12-enを用いて,Hg2+を選択的に除去できた。
    生じたスカムのR-enとHg2+との結合モル比は,pH5.6では1:1であった。炭素数の多いR16-enがもっともHg2+除去に効果的で,pH4.6では,Hg2+を1.2ppmまで除去できた。Fe3+共存下ではR12-enが効果的で,pH8.0では,Hg2+を0.031ppmまで除去できた。
  • 伊藤 福蔵, 佐藤 実
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 581-583
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An anomalous increase in coercive force and stability of the acicular iron oxide powder (Fe2+ /Fe3+: 1.1) treated with (NaP03)n was investigated at a room temperature∼300°C under the pressure of 0.4 mmHg in an air. The maximum coercive force was observed upon heating at 150°C. This increased coerive force decreased linearly with treating time. The coercive force of the sample treated at 150°C for 40 minutes was approximately constant. An anomalous increase in coercive force was observed when some water was present during the process of treatment. The experiments suggested that water may play an important role to form a chemical bond between iron and phosphorous ions.
  • 植田 昭男, 村松 広重, 犬飼 鑑
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 584-587
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Various diols, containing 3, 3, 4, 4-tetrafluoro-1, 2-cyclobutylene and 3, 3, 4, 4, 5, 5-hexafluoro1, 2-cyclopentylene group, HOIVIVCCH(CF2)HCCR3R4OH (n: 2 or 3;: H or CHs), have been synthesized by the addition reaction of alconols, e. g., methyl, ethyl, and isopropyl alcohol, with (polyfluorocyclobutenyl) or (polyfluorocyclopentenyl)alkanols under the irradiation of r-ray.
    The apparent reactivity of alcohols observed in this addition reaction is in the following order:
    C2H50H> CH3OH>(CH2) 2CHOH
    The reverse was found for the effect of substituents in polyfluorocycloalkenes on the reactivity; and the reactivity of cycloalkenes having -C(CHs)20H group is the most and that of -those having -CH2OH group is the least.
    The (tetrafluorocyclobutenyl)alkanols are generally more reactive than the (hexafluorocyclopentenyl) alkanols.
  • 西 久夫, 久保 正雄, 時田 澄男, 江島 明男, 村山 正敏
    1977 年 1977 巻 4 号 p. 588-591
    発行日: 1977/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Dehalogenation with excess tin powder in polyphosphoric acid was used for the synthesis of triphenodioxazine (5, 12-dioxa-7, 14-diazapentacene) [5 a] and its analogues. For example, 6, 13-dichlorotriphenodioxazine [4 a] was converted to [5 a] in 55.8% yield. Similarly, 3, 10- dibromo- [4 b], 3, 10-dichloro- [4 c], and 1, 2: 8, 9-dibenzo- [4 d] derivatives of [4 a] were reduced to the corresponding halogen free compounds.
    A facile route to triphenodithiazine (5, 12-dithia-7, 14-diazapentacene) [9] was also established with these reagents. Replacement of halogenes by hydrogens in these heterocycles brought about a decrease in melting point and strong hypsochromic shifts in electronic spectrum.
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