日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1972 巻, 5 号
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  • 綱島 真, 堤 和男, 高橋 浩
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 817-821
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報においてカドミウム系顔料の分散性は表面構造および結晶形によって影響を受けることが示された。本報告ではさらに浸潰熱とプラスチックスへの分散との相関関係について報告する。すべてのCdS-ZnS系顔料に関して,4型(六方晶)試料の浸漬熱は,水に対して900~960erg/cm2であり,ペンゼンに対しては220~330er9/cm2であった。またβ型(立方晶)試料の浸漬熱は,水に対して420~500erg/cm2であり,ベンゼンに対しては320~440erg/cm2であった。これらの結果はβ型結晶はプラスチックスに対して分散がよいという事実と一致した。
  • 坂井 徹, 温井 和夫, 大井 信一
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 821-829
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販のパラジウム-活性炭触媒をシクロヘキサン中に懸濁したガス吹き込みかきまぜ槽を用いてフェノールのシクロヘキサノールへの液相水素化反応の速度論的研究を行なった。その結果,シクロヘキサノンを生成物および出発物とする二つの反応にわけて考察することができた。
    それぞれの反応において水素分圧変化に対する初期速度値およびフェノール濃度の経時変化値から非線型最小二乗法によって最適速度式はLangmuir-Hinshelwood型の次式となった。
  • 池舘 和江, 鈴木 貞雄
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 830-836
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活性炭に担持したRu-PdおよびRu-Pt合金触媒によるアニリンの水素化について,常圧水素,30℃から60℃の温度範囲で研究した。純RuやPd触媒は,実験条件下で非常に低活性であったが,両者の合金系ではかなり高い活性が示された。Ru含量25atom%あたりに活性極大が認められ,その活性は,合金触媒と同じ方法によって調製した純金属触媒の活性の約15倍であった。Ruを約25atom%含んだRu-Pd触媒で,シクロヘキシルアミンへの選択性は純Pd触媒より15%高かった。他の芳香族化合物の核水素化に対する合金触媒の活性変化を検討するためベンゼンの水素化を行なった。ベンゼン水素化の場合は,約75atom%Ruのところに活性極大が認められた。Ru-Pt系において,アニリン水素化活性は極大を示さず,PtへのRuの添加は,活性をいちじるしく低下した。この合金系におけるシクロヘキシルアミンへの選択性は両金属の間でほぼ直線的に変化した。ベンゼンの水素化は,反応温度30℃のとき合金系で純金属より高い活性を示した。アニリンの水素化反応に関し,両合金系とも純Ruの点を除いて補償効果が成立した。Ruの少量をPdやPtの表面上に水素還元によって析出させた触媒についてもその活性と選択性を検討した。
  • 田中 竜雄
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 837-841
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水素気流中,Co-MgO(1:2.8)触媒を用いた280~380℃におけるα-ピコリンの反応は,アンモニア,ピリジン,2,6-ルチジンを生成する。これらの生成の相関性を,反応温度,接触時間,水素分圧につき検討し,その反応機構を追求した。その結果,(1)反応温度300~360℃で2,6-ルチジンの生成率(y)はアンモニアの生成率(x)の一次式としてつぎの式により表現できた。y=0.706x+1.5(mol%)。(2)300℃においてアンモニア,2,6-ルチジンおよびピリジンの初期生成速度は,それぞれ8.8×10-3,9.9×10-3,6.2×10-3mo1/g-cat・hrであった。(3)反応温度300℃,水素分圧0.33~0.97atmの条件下,2,6-ルチジン生成速度とアンモニア生成速度の間には,ほぼつぎのような関係が成立した。γ2,6-L=γNH3-8.0×10-4(mol/g-cat・hr)。以上の諸結果から,2,6-ルチジンの生成反応は,ピリジン核の水素化分解によるアンモニア生成反応を第1段とする逐次反応機構で進むことが判明した。
  • 野崎 文男, 岡田 寛
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 842-849
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ウラン-アソチモン酸化物触媒によるC3H6のCH2CHCHOへの接触酸化反応を350~470℃で検討し,触媒の選択的酸化能と触媒構造との関係を考察した。その結果つぎのことがわかった。すなわち適当な条件のもとでは選択率70~80%でCH2CHCHOを生成させることができる。このとき触媒組成および触媒焼成温度が触媒の選択性に重要な関係があって,U/Sb(原子比)を4/6以下のU低濃度域に選び触媒焼成処理を700℃以上で行なうことが要件である。また触媒調製過程中に620℃付近においてDTA-TGAに大きな発熱変化と約2wt%の重量増加が見いだされ,X線回折および赤外吸収スペクトルなどの知見とあわせて,この変化はUSb3O10複合酸化物の生成によるものと推考され,これがCH2CHCHO生成の触媒活性種と考えられた。またパルス法によって触媒のC3H6による還元および還元触媒のO2による再酸化過程を検討した結果,触媒の機能について若干の知見が得られた。
  • 永山 政一, 高橋 英明
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 850-855
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH1.7~6.4の領域のシュウ酸-シュウ酸塩溶液中でアルミニウムの定電位アノード酸化を行ない,そのさいの電流,皮膜構造,溶出アルミニウムイオンの経時変化を調べた。電流-時間曲線を皮膜の表面構造に関して四つの領域にわけた。アノード酸化の始めの期間(a領域)では,barrier層の成長にともない電流は時間とともにほぼ指数関数的に減少する。ある時間の経過ののち電流の減少は止まり(b領域),逆に増加し始める(c領域)。そして最終的には電流は定常値に到達する(d領域)が,これは孔の発生および多孔質層の発達によるためである。a領域においてさえも皮膜のかなりの量が溶け出すことがわかった。すなわち(a領域における)溶出速度は溶液のアニオン種によって大きく影響され,溶液のpHにはほとんど影響されない。cおよびd領域では溶出速度は大きいが,この速度はアノード電位が高いほど,またpHが低いほど大きい。これらの挙動をbarrier層の外表面部におけるカチオン格子欠陥と,溶液中のプロトンとの相互作用を考えて説明した。また多孔質皮膜のbarrier層の厚さを決定する新しい方法を提出した。
  • 本間 興, 本間 興二
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 856-864
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リン酸二水素ナトリウムとホウ酸の種々の割合の混合物を,400~750℃に加熱脱水して得られる生成物を化学分析,IRスペクトル,X線回析,DTAなどから検討した。
    3molのリン酸二水素ナトリウムと2molのホウ酸の混合物を400~600℃に加熱すると,B-O-P結合の骨格からなる長鎖状の新化合物が生成した。その化合物はかさばった形状で微粉末の難溶性物質であり,その融点は約700℃であった。ホウ酸に対するリン酸二水素ナトリウムのモル比が2:3でない場合は,反応生成物はB-O-P結合生成により特徴づけられる複雑なポリマーになった。n(2molのホウ酸と混合したリン酸二水素ナトリウムのモル数を示す)の値が9~18のガラス状生成物の場合は,水に溶出した各種リン酸のオルト:ピロ:トリ:ハイポリの比は,ほぼ1:4:2:2(n-6)であった。リン酸二水素ナトリウムにホウ酸を少し添加するとNaPO3(II)からトリメタリン酸ナトリウムへの熱変化がかなり妨害された。
  • 詫間 貴, 川久保 正一郎
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 865-873
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    六塩化タングステンの気相中での分解平衡および五塩化タングステンの二三の熱力学的性質に関して研究した。六塩化タングステンおよび五塩化タングステンの昇華,蒸発および分解により生成した気体の電子スペクトルを測定した。五塩化タングステンの蒸気圧はBourdon型マノメーターを用いて測定した。
    気相中で,六塩化タングステンは39.2,30.8,27.0および23.2kKに,五塩化タングステンは42.6,36.4,28.2および12.1kKに,W2Cl10は31.7kKにそれぞれ吸収帯が認められた。六塩化タングステンを加熱したさいの電子スペクトルの変化から,六塩化タングステンは約240℃以上でWCl6(g)=WCl5(g)+1/2Cl2(g)なる分解反応を起こすことがわかった。この反応に対する平衡定数は,log K=-4.46×103/T+5.66(240~450℃)で表わされる。五塩化タングステンの昇華圧(Psub)および蒸発圧(Pevap)はつぎの式で表わされる;logPsub(atm)=-4.11×103/T+7.41(150~251℃),logPevap(atm)=-2.77×103/T+4.85(251~287℃),W2Cl10(g)=2WCl5(g)なる反応に対する平衡定数は,log K=-1.35×103/T+3.47(256~480℃)で表わされる。
    これらの結果から,熱力学的数値を求めるとつぎのようになる。WCl6(g)=WCl5(g)+1/2Cl2(g)なる反応に対しては,ΔG0dec=20.4×103-25.9Tcal/mol,ΔHdec-20.4kcal/molおよびΔSdec-25.9cal/deg・mol;WCl5(g)=WCl5(g)なる反応に対してはΔG0sub=18.8×103-33.9Tcal/mol,ΔHsub=18.8kcal/molおよびΔSsub=33.9cal/deg・mol;WCl5(1)-WCl5(g)なる反応に対しては,ΔG0evap=12.7×103-22.2Tcal/mol,ΔHevap-12.7kcal/molおよびΔSevap=22.2cal/deg・mol,およびW2Cl10(g)=2WCl5(g)なる反応に対しては,ΔG0diss=6.18×103-15.9Tcal/mol,ΔHdiss=6.18kcal/molおよびΔSdiss=15.9cal/deg・mol。
  • 近沢 正敏, 海保 守, 金沢 孝文
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 874-879
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ハロゲン化アルカリの表面に水蒸気が多分子層吸着し,水和イオンあるいは飽和溶液膜が形成されるにいたった状態下での,表面構造変化を,X線回折の手法で検討した。KI,KBr,KCI3種の塩の蒸着膜,微結晶物,200メッシュ全通粉体を使用し,X線回折強度に対する試料の形状,表面状態などの違いの影響を調べた。
    試料表面に水和イオンが形成されると表面状態が変化し,その結果,X線回折強度が変動し,同時に固結が発現することを見いだした。X線回折強度の水蒸気圧による変化は,KI,KBrの蒸着膜のような非常に結晶性の悪いものでは,水和イオンを形成する水蒸気圧以上になると表面イオンは再配列するため増大し,結晶性がそれほど悪くない場合は減少することが認められた。また水和イオンを形成する水蒸気圧は,その物質個有の値を有し,KI,KBr,KCIについてそれぞれ40,51,55%rHである。X線回折法は,水和イオンを形成する時点の決定とか,固結防結の研究に有効であることがわかった。
  • 松下 徹, 関谷 忠, 山井 巌
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 880-885
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    用いた酸化スズ-酸化アンチモン系薄膜の生成法はつぎのとおりである。ジイソアミロキシエトキシアンチモンを含んだカプリル酸スズ(II)のブタノール溶液をガラス基板上に塗布し室内で30分間自然乾燥し,110℃の乾燥器中で30分乾燥し,200~600℃の電気炉中で20分間焼成した。薄膜の生成過程は,熱重量分析,赤外吸収スペクトル,X線および電子線回折などによって調べ,さらに酸化アンチモンの含有量および塗布-焼成のくり返しなどが薄膜の電気抵抗におよぼす影響も調べた。有機スズ化合物膜は110℃で乾燥した段階で干渉色を示すようになり,薄膜中には非晶質のSnO相が析出した。Sb203を含まない場合には,350℃の焼成で非晶質のSnOは結晶質のSnO2に変化した。Sb203を添加した場合には,添加量が多いほどSnOからSnO2に変化する温度が高くなり,薄膜は青色が濃くなった。また400℃以上の温度で焼成すると薄膜はさらに強固になった。Sb203を含まないSn02薄膜の表面比抵抗は室温で約6MΩであり,半導体的伝導を示した。しかし,Sb203を含んだSnO2薄膜は室温で5~50kΩであり,金属的電気伝導特性を示した。その抵抗値は塗布-焼成のくり返しによっていちじるしく低下した。
  • 馬場 政孝, 川久保 正一郎
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 886-892
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    くすべカワラの銀灰色の輝きは,表面に沈着した炭素がすぐれて良質な黒鉛であることに基づくという考えが従来からあった。このことを検討する目的で,くすべカワラ表面の沈着炭素の表面固有抵抗の測定,X線回折,電子線回折,電子顕微鏡による表面,断面の観察の各実験を行なった。くすべカワラ表面の沈着炭素の表面固有抵抗値は,約3000℃で得た通常の人工黒鉛の値にくらべてきわめて大であり,この沈着炭素が良質な黒鉛であるという従来からの考えを裏づけることができず,逆に良質なものではないのではないかという示唆を得た。つぎに,くすべカワラ表面の沈着炭素を化学的方法によって薄膜としてとり出し,これをX線回折に供した結果,この炭素はLcが10A前後の無定形炭素ともいうべきものであることがわかった。電子線回折によって沈着炭素の表面薄層の構造を調べた結果,この部分も乱層構造(turbostraticstructure)をもった無定形なものであることが認められた。さらに,電子顕微鏡による沈着表面,断面の観察によって,この沈着炭素が,熱分解黒鉛に特有な微視的形状を有することが確認された。以上の実験結果により,くすべカワラ表面の沈着炭素は,良質な黒鉛ではなく,普通に1000℃前後の焼成で得られる,乱層構造をもった熱分解黒鉛であると考えられる。
  • 山谷 和久, 吉田 稔, 小沢 竹二郎, 岩崎 岩次
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 893-898
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    試料粉砕中に放出される微量の水の定量が可能なパイレックス製特殊ボールミルを設計作製した。試料とステンレス製ボールの一組を球体部に入れ,セットしたのち,回転架台にのせ,2時間以上回転(120rpm)して試料を粉砕する。このボールミルの粉砕能は非常によく,粒径が1.0~0.84mmの試料10gが2時間で,99,2%が0.044mm(325メッシュ)以下に粉砕できた。また粉砕時に外気の湿度の影響はまったくなかった。均一粒径にした試料を入れてセットしたボールミルを,粉砕前にKari-Fischer滴定槽に接続し,乾燥窒素ガスを通してボールミル中の水分を完全に取り除いたのち,粉砕し,ふたたび接続して粉砕時に放出された水を,一定流速の乾燥窒素ガスをキャリヤーとして,滴定槽中のメチルアルコール・エチレングリコール(1:1)混合溶媒中に吸収させ,Kari-Fischer試薬を用いて定量した。その精度は±0.02mgH2Oであった。もっとも普通の新鮮な火山岩やガラス質岩石などから放出した水は0.0001%以下であり,粉砕中放出される水は無視できる。一方,いわゆる残留マグマ水を含む岩石や水和したガラス質岩石などは粉砕時に多量の水を放出し,本質的な水を正確に表わすには粉砕時に放出した水を定量しなければならない。新島産と神津島産の流紋岩は粉砕中や分析操作中に乾燥窒素ガス中に残っているごく微量の水さえも吸着した。
  • 三宅 良一, 矢島 尚
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 899-907
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    最安定樋の鯉数(4)は搬に原子番号(Z)が3,以下の難では帷子,陽子-帥-の,また3,Z以上の核種では(卸-η)の加算により求められる。船エネルギ(b.e.)も同様にして求められる。たと燃翌諮脇鷺講躍冨2諮講占。猛謝ら旙ま撫旱ζ欝農ll蟄1馳麟望糖諏1鰍りのb,e,(b,e,P,n,)は25Z寸近鵬値をもつ-らhe-鉱e,この他中性子増加にはつぎの鰍がある,2,Z~4,Z鞭糊ではp-鷲の,,個の籟ごとに2鷲が加わり,また10核種生成中にp-η以外に集積された難がつぎの10Z核種に持ち込まれるのは50Z核種完成後である以上の諸様式は魔法数その他の核種を安定化する因子に乱される。以上の事柄を見ればα粒子説は受け入れ難く,また8ethe式中の表面張力項の係数は大きく見積り過ぎているように思われる。
  • 秋葉 文正, 結田 康一, 油井 多丸, 野崎 正, 村上 悠紀雄
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 908-913
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然クロムに44MeVまでのα粒子または3He粒子照射を行ない種々の生成核種の励起曲線,厚いターゲット収率曲線を求めた。すなわち励起曲線によるとその極大は30MeVα粒子で490mbにあり,3He粒子の80mb(18MeV)よりいちじるしく大きい。したがって40Mevα粒子照射を行なうとき6μCi/μAhrで3He照射の1.1μCi/μAhrよりいちじるしく大きく従来の重陽子照射による製法より収率の点ですぐれている。生成した54Mnを多量にある非放射性クロム,副生成核種の48V,48Cr,49Cr,51Crより無担体に分離する方法を検討した。すなわち照射ずみターゲットの塩酸分解溶液にHClガスを吹き込み飽和し(12mol/l),これを陰イオン交換樹脂柱にチャージする。12mol/l塩酸でCr3+,V4を溶離し,Cr3+の緑色が認められなくなったら6mol/l塩酸でMn2+を溶離する。これに濃硫酸を加えて蒸発乾固し,残留物は硫酸に溶かしヨウ素酸カリウムを加えて蒸発する。そのさい酸性度を10mol/lにたもつ必要があるので硝酸の共沸点混合組成のガスをたえず吹き込むと無担体に54Mnを100mlの留出液中に90%回収できることがわかった。留出液は過酸化水素を含む塩酸溶液中で捕集しMn2+とした。γ線スペクトル的にきわめて純粋であることを認めた。
  • 山尾 正義, 貫井 繁雄, 田中 誠之
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 914-919
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    赤外吸収スペクトル法により,レゾール型フェノール樹脂の酸硬化機構について検討を行なった。試料としては,モル比(F/P)1.0,1.5,2.0の水酸化ナトリウム触媒により調製したレゾール型フェノール樹脂を用い,硬化剤の酸としては,塩酸を使用した。各試料間,加熱条件間の比較を定量的に行なうため,ベンゼン環の1610cm-1の吸収を基準とした吸収強度比法を用いて,各吸収帯の強度変化を追跡した。加熱温度は60,120℃の2段階とした。その結果はつぎのとおりであった。(1)60℃反応においては,各試料ともメチロール基同志の反応によるメチレンエーテル結合の生成,パラ位とメチロール基の反応によるメチレン基の生成が主である。メチレン基の酸化によるカルボニル基の生成も見られる。(2)120℃反応においては,モル比1.5と2.0の試料においては加熱初期のジメチレンエーテル基の生成,つぎの段階の分解が特徴的である。この分解にさいして,フェノール性水酸基の減少も起こり,キノン型,キノンメチド型などの生成が考えられる。1650cm-1の吸収の増加が顕著である。モル比1.0の試料においては,初期にメチロール基,ジメチレンエーテル基が消失し,ベンゼン環の置換様式は以後ほとんど変化しない。カルボニル基の生成はメチレン基の酸化によるものが主と考えられる。このモル比1.0の試料は,アルカリ側で120℃加熱を行なった場合の結果と異なった挙動を示した。
  • 神原 富民, 石井 節, 長谷部 清
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 920-925
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水銀(II)は塩化物イオンおよびピリジンの存在で,pH5.5~6.5においてジクロロジピリジン水銀(II)錯体(HgCl2py2)の形でクロロホルムに抽出される。この三元錯体は滴下水銀電極において還元され,その還元波は水銀(II)の定量に利用できる。
    本研究では水銀(II)をHgCl2py2の形でクロロホルムに抽出したのち,抽出液に電解質水溶液として6N硝酸,混和性溶媒としてメチルセロソルブを加えてポーラログラフ供試液とし,水銀(II)の定量のための基礎的条件および電極における還元反応過程の検討を行なった。三元錯体HgCl2py2の還元は次式で表わされ,この還元波の半波電位は約+0.18Vvs.SCEである。HgCl2py22e-+Hg↓十2Cl-+2py加電圧Eとlog{i2/(id-i)}との間には直線関係がなり立ち,その傾きは30mVである。限界電流idは水銀柱の高さの平方根に比例する。ゆえにこの電極反応は可逆系でかつ拡散律速であり,2電子反応と考えられる。拡散電流の相対温度係数は,20℃において1.44%deg-1である。
    本法によれば20mlの水相中,5x10-5~3×10-4mol/l(絶対量として0.2~1.2mg)の水銀(II)の定量が可能である。銅(II),少量の鉄(II),鉄(III)は妨害しないが,臭化物イオン,ヨウ化物イオンおよびチオシアン酸イオンは妨害する。
    なお1試料についての分析時間は約30分である。
  • 黒川 一夫, 垣花 秀武
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 925-929
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは陰イオン交換樹脂Amberlys-A29によるガドリニウム,ユーロピウム,サマリウム,ネオジムおよびプラセオジムの分離に関する一連の研究を行なった。これらの金属の硝酸塩をMeOH-HOAc-HNO3の混合液に溶かして試料を調製し,Amberlyst-A29のNo,3形樹脂に吸着させ溶離液としてMeOH-17mol/lHOAc-7mol/lHNO3(溶液比:90:5:5),MeOH-10mol/lHOAc-7mol/lHNO3(8:15:5),MeOH-8mol/lHOAc-7mol/lHNO,3-H2O(75:15:5:5)およびH2Oをつぎつぎに通じ各金属イオンを分離した。また金属イオンの各量が,0.007mmolまでカラムφ1.1cm×21cmにより分離できることがわかった。
  • 高嶋 巌, 黒住 忠夫, 斎田 治, 久原 豊
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 929-934
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の温度における実験をくり返すかわりに一度の実験から反応速度の温度依存性と反応熱を求めることを目的と融し,三ツ子型熱量計を昇温操作して液相における新しい反応解析法を開発した。
    熱量計は完全に同等な3個のジャケット付き反応槽からなり,各槽はいずれもカキマゼ機,熱電対,槽内ヒーターを有している。第1槽は基準槽,第2槽は反応槽,第3槽は装置特性取得のために用いられ,反応の進行中に槽内ヒーターにより周期的なステヅプ応答を求める。熱媒ヒーターと各槽のジャケット間に熱媒を循環させ,槽の温度上昇を行なう。70%酢酸溶液における無水酢酸の水和反応に本法を適用したところ,反応温度20~60℃の範囲でQ=13.60±1.5kcal/mol,n=1でk=7.98×107exp(-15.8×103/RT)(sec-1)が得られた。
  • 大滝 俊武, 尾崎 博己, 矢田 直樹, 伊藤 光臣, 鈴木 章
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 934-939
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ハイドロボレーションを利用した直鎖パラフィン,オレフィンおよびα-オレフィン混合物の分析法について報告した。すなわちパラフィンおよびオレフィンの混合物をジボランを用いてハイドロボレーションし,さらにアルカリ性過酸化水素酸化をすることによりオレフィンのみをアルコールに変換した。このアルコールとパラフィンの混合物をガスクロマトグラフ法により分析し,その定量値から試料中のパラフィンとオレフィンの含有量を求めた。一方,生成したアルコールのうち1-アルコールと内部アルコールの比からα-オレフィン量を決定した。この方法はオゾン分解法により求めた値とよく一致することが示された。
    最後に本方法を用いてクエート原油系重質油を熱分解して得られる留出油を尿素アダクト処理して得た直鎖体混合物を分析し,直鎖パラフィン,直鎖オレフィンおよびα-オレフィンの含有量を定量した。
  • 湯本 高在, 松田 龍夫
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 940-944
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサノンと塩素化炭化水素との混合物をγ線照射し,反応生成物の構造と反応におよぼす諸条件および反応機構について検討した。照射試料から〔1〕,〔2〕の留分を得,〔1〕は2(1-シクロヘキセニル)シクロヘキサノンであり,〔2〕は2,6-ジシクロヘキセニル・シクロヘキサノンであると確認した。
    生成物〔1〕,〔2〕の生成は,線量率の0.98,1.14乗に比例し,ほぼ1乗に比例した。〔1〕の収率は最高47・5%で,〔2〕はその約1/10であった。
    塩素化炭化水素の生成物〔1〕,〔2〕の収率におよぼす影響はつぎのとおり,塩素含有量の大きいほど収率が大であった。
    テトラクロロエチレン>トリクロロエチレン>cis-ジクロロエチレン;四塩化炭素>クロロホルム>塩化メチレン>1,1-ジクロロエタン
  • 西岡 肇, 和田 昭三
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 945-950
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニッケル-ケイソウ土系触媒を用いて2-エチルヘキサナールの液相水素化反応を行なった場合,反応過程において生成する2-エチルヘキサナール(ジ-2-エチルヘキシル)アセタールは原料2-エチルヘキサナールおよび水素化生成物である2-エチルヘキサノールと平衡状態にあることを見いだし,反応温度を変化させた場合の平衡定数の値から生成エンタルピーが-10.6kcal/molであることを認めた。また2-エチルヘキサナール(ジ-2-エチルヘキシル)アセタールの水素化分解反応を検討した結果,反応は一次反応として進行し,反応の活性化エネルギーは10.2kcal/molであることを認めた。また2-エチルヘキサナールの水素化反応速度および副反応速度におよぼす添加物の効果についても検討を行なった。
  • 松本 勲, 太田 忠男, 高松 翼, 中野 幹清
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 951-957
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種の原ロウ,カルナバワックス(パラナイパ産),キャンデリラワックス(メキシコ産),ピースワックス(高酸価…タンザニア産,低酸価…中共産)の成分組成(炭化水素,遊離ワックス酸,エステルおよびそれらに結合するアルコール,酸,ヒドロオキシ酸)について,系統的な成分分離法を検討した。
    方法は,約45℃に保温したシリカゲルカラムクロマトグラフィーとMR型アニオン交換樹脂(Amberlyst-A27)を用いた非水系アニオン交換カラムクロマトグラフィーを併用した。分離した各成分はIR,TLCなどで確認した。炭素数分布は,脂肪酸はメチルエステル,アルコールはアセテート,ヒドロオキシ酸についてはメチルエステルアセテートとし,SE-52を固定相とした昇温ガスクロマトグラフィーで求め,これらの炭素数の決定は前報の方法にしたがって行ない,得られた各成分の炭素数パターン解析を行なった。
    その結果,原ロウの成分を系統的に分離することができ,また,これらの原ロウの各成分は特異性のある炭素数分布を有することがわかった。
  • 森田 全三, T. M. Abul HOSSAIN, 飯島 俊郎
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 958-962
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モデルカチオン染料として,ビス(m-ニトロベンジル)アミン(BNB)を用い,アクリル繊維の種々のpHにおける染着機構をフィルム巻層法によって調べた。BNBの酸解離定数pKaは7.4(25℃)であり,強酸性領域では陽イオン形〔1〕として存在し,弱酸性または中性領域では〔1〕と非イオン形[2]が共存する。一方,アクリル繊維中には染着座席として強弱両酸性基が存在し,pHによって解離度が変化するので,有効染着座席量が変化する。したがって染料と繊維の両方の影響により,アクリル繊維の染着機構はpHによって変化する。ここでは〔1〕と〔2〕の吸着等温線をpH1.5,4.2および6.8で測定し,〔1〕と〔2〕の吸着のpH依存性をpHO.2~6.8で調べ,繊維中における〔1〕と〔2〕の濃度分布をpH5.0,6.0および6.8で求めた。42よりも低いpHでは,もっぱら〔1〕の分布だけが得られた。これらの結果から,種々の染着機構の寄与について検討した。アクリル繊維中ではBNBの酸解離反応は起こらない。
  • 大須賀 昭夫, 楠本 正一, 小竹 無二雄
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 963-967
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セイタカアワダチソウの根茎に含まれる酸性苦味成分として,あらたに3種のジテルペンカルボン酸をメチルエステルとして単離した。そのうち油状の2種はたがいに異性体であり,LiAlH4還元で同じ6-ヒドロキシコラベノール〔5〕と,それぞれ幾何異性体の2-メチル-2-ブテノール-1〔8〕と〔7〕を与えることから,6-ヒドロキシコラベン酸メチルのアンゲリカ酸エステル〔3〕とチグリン酸エステル〔4〕であることがわかった。残る結晶性のアルティシム酸メチル16(mp108~109℃)はコラベン酸メチル〔1〕のクロム酸酸化で得られ,スペクトルデータから2-ケトコラベン酸メチルと決定した。
  • 平井 英史, 藤原 真人
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 968-974
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    γ線照射によって,固相の酢酸ビニルに生じるラジカル種およびその可視光照射による変化をESRを用いて研究した。酢酸ビニルを-117℃(結晶相)または-196℃(ガラス相)でアルミニウム棒の周囲に凝固させて配向試料を調製し,-196℃でγ線照射する。結晶相の配向試料は青色に着色し,暗黒中で一重線とそれに付随した小さな吸収を与えるが,10分間光照射すると試料の磁場内の回転によって異方性を示すスペクトルが得られる。それらを解析して,CH3COO・,CH2COOCH=CH2,CH=CHのラジカルが生成したと結論した。この試料に,さらに300分光照射すると,スペクトルが変化する。これらの薪しいラジカルは・CH2-CH=O,・CH2COOCH=CH2に帰属される。一方,ガラス相の配向試料は褐色に着色し,暗黒中で幅広で非対称な4本の吸収を与え,異方性は示さない。この試料に光照射すると,CH3・の吸収が現われ,これはCH3COO・の光分解から生じると考えられる。昇温変度で安定な三重線は・CH2COOCH=CH2に帰属され,さらに,120Gの大きな分離を与えるCH2=CHも存在する。したがって,γ線照射した酢酸ビニルの結晶相とガラス相に生成するラジカルは同一であると結論される。
  • 浦野 紘平
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 975-981
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    下水を活性炭によって浄化し,再利用する技術の確立に役立てるため,活性汚泥処理後の下水の浄化に使用された2種類の粒状活性炭を熱テソビン型再生装置によって,純窒素または1~10%の酸素を混合したガス中で加熱再生し,温度,時間,ガス組成などと重量変化および再生炭の吸着能力との関係を検討した。吸着された汚染物質はガス組成によらず100℃付近から脱離しはじめ,550℃付近までにほぼ完全に脱離し,その脱離速度は非常に速いことが認められた。また550℃で5~10分間加熱再生した活性炭のメチレンブルーおよびドデシルベンスルホン酸ナトリウムの水溶液の吸着速度および平衡吸着量は新活性炭の場合と等しかった。しかし,酸素混合ガス中では活性炭自身が酸化分解され,その酸化分解の速度は酸素濃度の約0.5~1.3乗に比例して変化し,その変化は使用済活性炭のほうが小さかった。また酸素濃度が10%以下では,使用済活性炭のほうが新活性炭より酸化分解されやすいが,両者の分解反応の活性化エネルギーは大差ないことなどが認められた。
  • 大久保 捷敏, 北川 太
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 981-983
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The muscarine-like activity of acetylcholine(Ach) and 2-aminoethanol(ETA) derivatives and the acute toxicity of tropolone(TRP) derivatives were discussed on the basis of the molecular orbital theory. The order of the activity of Ach and ETA derivatives is in agreement with that of the nucleophilic reactivity index, fr(N) of the nonbonding, vacant p2-orbital of the central atom (N+, P+, or As+) in the onium group. The activity in the acute toxicity of TRP derivatives is explained in terms of the nucleophilic reactivity index, DR(N)= _??_ _??_ fr(N4), of the vacant π -orbitals.
  • 竹野 昇, 高野 信弘, 森田 睦夫
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 983-985
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The half wave potentials of 6-phenylfulvene, 6-methyl-6-phenylfulvene, 1-benzylideneindene, 9-benzylidenefluorene, and their derivatives with p-methyl, p-methoxy, and p-N, N-dimethylamino substituents on the phenyl group were studied in relation to the lowest vacant molecular orbital energies which were calculated on the basis of the LCAO-MO methods. The parameters of coulomb and resonance integrals for hetero atoms which were proposed by Streitwieser and Zweig were adopted. The linear relationship between the halfwave potentials and the lowest vacant molecular orbital energies by HMO method gave the correlation coefficient of 0.959. Furthermore, the results using 0.9β and 1.1β as resonance integrals for essential single bonds and essential bouble bonds, respectively, in HMO calculations gave better linear relationship with correlation coefficient of 0.992.
  • 安達 和郎
    1972 年 1972 巻 5 号 p. 985-987
    発行日: 1972/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セスキテルペン化合物の脱水素で得られるカダレンは種々な方法で合成されている。著者は今回ニトリルとGrignard試薬との反応でケトンを得,これを利用して新しい径路でカダレンおよび1,4,6-トリメチルナフタレンを合成した。p-メチルアセトフェノソ〔1〕から新化合物2-(1-pトリルエチル)マロン酸ジエチル〔4〕および2-(1-pトリルエチル)マロン酸〔5〕を経て4-(p-トリル)バレロニトリル〔9〕を導き,〔9〕とヨウ化メチルマグネシウムとの反応で5-(p-トリル)-2-ヘキサノン〔12a〕を得た。臭化イソプロピルマグネシウムとの反応では新化合物2-メチル-6-(p-トリル)-3-ヘプタノン〔12b〕を生じた。〔12a〕および〔12b〕から対応するアルコール,テトラリン誘導体を経てそれぞれ1,4,6-トリメチルナフタレンおよびカダレンを得た。また〔9〕から4,7-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン〔11〕を経てカダレンを合成した。
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