六塩化タングステンの気相中での分解平衡および五塩化タングステンの二三の熱力学的性質に関して研究した。六塩化タングステンおよび五塩化タングステンの昇華,蒸発および分解により生成した気体の電子スペクトルを測定した。五塩化タングステンの蒸気圧はBourdon型マノメーターを用いて測定した。
気相中で,六塩化タングステンは39.2,30.8,27.0および23.2kKに,五塩化タングステンは42.6,36.4,28.2および12.1kKに,W
2Cl
10は31.7kKにそれぞれ吸収帯が認められた。六塩化タングステンを加熱したさいの電子スペクトルの変化から,六塩化タングステンは約240℃以上でWCl
6(g)=WCl
5(g)+1/2Cl
2(g)なる分解反応を起こすことがわかった。この反応に対する平衡定数は,log K=-4.46×10
3/T+5.66(240~450℃)で表わされる。五塩化タングステンの昇華圧(P
sub)および蒸発圧(P
evap)はつぎの式で表わされる;logP
sub(atm)=-4.11×10
3/T+7.41(150~251℃),logP
evap(atm)=-2.77×10
3/T+4.85(251~287℃),W
2Cl
10(g)=2WCl
5(g)なる反応に対する平衡定数は,log K=-1.35×10
3/T+3.47(256~480℃)で表わされる。
これらの結果から,熱力学的数値を求めるとつぎのようになる。WCl
6(g)=WCl
5(g)+1/2Cl
2(g)なる反応に対しては,ΔG
0dec=20.4×10
3-25.9Tcal/mol,ΔH
dec-20.4kcal/molおよびΔS
dec-25.9cal/deg・mol;WCl
5(g)=WCl
5(g)なる反応に対してはΔG
0sub=18.8×10
3-33.9Tcal/mol,ΔH
sub=18.8kcal/molおよびΔSsub=33.9cal/deg・mol;WCl
5(1)-WCl
5(g)なる反応に対しては,ΔG
0evap=12.7×10
3-22.2Tcal/mol,ΔH
evap-12.7kcal/molおよびΔS
evap=22.2cal/deg・mol,およびW
2Cl
10(g)=2WCl
5(g)なる反応に対しては,ΔG
0diss=6.18×10
3-15.9Tcal/mol,ΔH
diss=6.18kcal/molおよびΔS
diss=15.9cal/deg・mol。
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