アンチモン化合物は高分子難燃剤として,また,抗菌性医薬の原料として有用な化合物である。種々のアツチモン化合物の合成原料として利用しうるトリイソシアナトアンチモン[Sb(NCO)
3]を安価でしかも温和な条件下で合成する方法を開発する目的で,種々の添加剤の存在下での塩化アンチモン(III)と(SbCl
3)とシアン酸ナトリウム(NaOCN)との反応を検討し,さらに得られたSb(NCO)
3のアミンやアルコールおよびフエノールに対する反応性についても検討した。
13種の添加剤について検討したが,NaOCNの有機溶媒に対する可溶化を促進すると同時にSbCl
3にも作用し,Sb-Cl結合を活性化しうる添加剤(THF,CH
3CN,ジオキサン)がとくに顕著な効果を示した。
Sb(NCO)
3とアミン(RR'NH)との反応では,いずれのアミンも容易にSb(NCO)
3のイソシアナト基に挿入付加反応を起こし,相当するトリウレイドアンチモン[Sb(NHCONRR')
3]を与えた。
一方,アルコール(ROH)やフェノール(PhOH)との反応では,いずれも容易に置換反応を起こし,根当するアルコキソまたはフエノキソアンチモン[Sb(OR)
3またはSb(OPh)
3]とカルバミド酸エステルを与えた。
分子内にジエチルアミノ基を有すエタノールとSb(NCO)
3との反応ではイソシアヌル酸の生成が確認されたことから,アルコールやフエノールとの反応と同様に置換反応のみが起こっているものと考えられる。
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