Yallourn炭(C66.8% d.a.f.)の濃厚水酸化ナトリウム溶液中における酸素酸化生成物(シュウ酸ナトリウム,炭酸ナトリウム,ベンゼンポリカルボン酸ナトリウムなどの混合物)から,水酸化ナトリウム溶液への溶解度差を利用したシュウ酸ナトリウムの分離に関して,1,4-, 1,2-, 1,2,4-, 1,2,4,5-, および1,2,3,4,5-ベンゼンポリカルボン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム溶液への溶解度を測定した。1,4-ベンゼンジカルボン酸ナトリウムの溶解度から,Debye-Hückelの拡張式を用いて,溶解度積(K
0sp)を算出し,また実際のYallourn炭酸化生成物からシュウ酸ナトリウムの分離試験をした。
約10%水酸化ナトリウム溶液においては,1,4-ベンゼンジカルボン酸ナトリウムを除いたベソゼンポリカルボン酸ナトリウムは,かなり(7.0~58.7g/100g-NaOH溶液)溶解し,その溶解度は水酸化ナトリウム濃度の増加とともに急激に低下した。25%水酸化ナトリウム溶液中では,1,4-ベンゼンジカルボン酸ナトリウムはほとんど溶解せず,他の濃度でも0.63~2.53g/100g-NaOH溶液であった。1,4-ジカルボン酸およびペンタカルボン酸ナトリウム以外は温度の上昇とともに溶解度は増加したが,これらの溶解度の温度依存性はきわめて小さかった。25%水酸化ナトリウム溶液中における溶解度を比較すると,1,2,4->1,2->1,2,4,5->1,2,3,4,5->1,4-の順であった。
1,4-ベンゼンジカルボン酸ナトリウムの塩化ナトリウム溶液(0.1~6mol/kg-H
2O)への溶解度から計算すると,イオン強度0における溶解度積(K
0sp)は48×10
-4であった。
Yallourn炭酸化生成物113gを25%水酸化ナトリウム溶液150gで洗浄し,ついで10%水酸化ナトリウム溶液100gずつで2回洗浄したのちの沈殿物を水洗乾燥し,粗シュ酸ナトリウム10.6gを得た。酸化生成物中のシュウ酸ナトリウムは95%回奴され,またその純度は約90%であった。
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