日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 6 号
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  • 石井 義孝, 小林 守雄, 小西 仁, 尾中 利光, 奥村 弘一, 鈴木 正則
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 373-381
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石油精製工程に関連した環境負荷を低減させるために, 微生物を利用した石油製品の脱硫を検討した. 脱硫モデル化合物としてのジベンゾチオフェンを基質としたスクリーニングにより, 有機硫黄ヘテロ環化合物の硫黄原子を特異的に酸化することにより脱硫が可能な微生物として, 生育温度の異なる2種の細菌すなわち常温脱硫菌および高温脱硫菌を分離した. これらの脱硫菌は, 軽油の脱硫および石油製品に含まれる硫黄化合物成分の分解脱硫について検討した結果, 工業的に利用されている水素添加脱硫では除去が困難な硫黄化合物を選択的に分解除去することが可能であった. これらの脱硫菌を利用した場合, 硫黄原子を特異的に除去するため, 石油製品のエネルギー含量を低下させることなく, 脱硫が可能であることが確認された. とくに,高温脱硫菌では, 従来の脱硫菌に比べ, より広範囲な温度条件下で脱硫反応活性が確認された. 以上より, 物理化学的脱硫工程を補完する微生物脱硫の可能性が示唆された.
  • 菖蒲 明己, 太田 建, 加藤 晃, 本田 一規
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 382-389
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    η-およびγ-アルミナを塩素中高温で処理した際の構造と表面酸性質の変化をXRD, SEM, IR, XRF, XPSを用いて調べた. アルミナを塩素中, あるいは塩化物イオンを含む雰囲気中で処理すると,θ 相とα 相への著しい相転移が起こった. 特にHCl (93kPa) 中, 1273Kで処理すると2.0-2.5μmの立方体状α-アルミナ結晶粒子の形成が見られた. 相転移はバルク不純物のNaにより促進された.
    塩素 (11kPa) 中で高温処理したアルミナ上に吸着したピリジンの環振動のIR吸収バソドには, ルイス酸点に配位結合した4本のピークのみが, 約5cm-1高波数側ヘシフトして観察された. 773Kで30min排気後の19bモードピークの積分強度は, 973-1123Kの処理で極大値を示し, 同温度の真空排気処理試料の2倍以上であった. また, その積分強度と表面塩素量の間には相関が成立した. さらに, Al3+イオンに結合した塩素原子が最隣接 Al3+イオンのルイス酸強度を強め, バルク不純物のNa, Si, Tiの束縛エネルギー値から, これらは酸化物として存在し, その量はγ-アルミナのスピネル構造の欠損格子数を越えていないことを示唆した.
  • 犬丸 啓, 中島 仁, 橋本 正人, 御園生 誠
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 390-397
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高活性固体酸触媒として知られる12タソグストリン酸のアソモニウム酸性塩(NH4)xH3-xPW12O40を(NH2) 2COを用いた均一沈殿法により調製し, アンモニア水滴下法により調製したものとその構造を比較した. 特に, 合成法と組成がナノ結晶子の自己組織化および生成する多孔体の構造に与える効果に着目し, 構造を走査型電子顕微鏡 (SEM), 粉末X線回折 (XRD), N2吸着により調べた. x=3において, 383K均一沈殿法, 368K滴下法はともに菱形12面体の多孔質集合体を生成し, 炭酸水素アソモニウムを用いた既報 (文献21) 24) ) と同様, ナノ結晶子同士がエピタキシアルに連結した自己組織化集合体であることが確認された. 低温の298K滴下法, x=3では, エピタキシアル接合が発達せず, 緩く集合している状態になっている. xを減少させた場合, 383K均一沈殿法および368K滴下法ではNH4+ イオン供給時にまず12面体集合体が生成し, その後の蒸発乾固時にH3PW12O40・nH2Oが主に12面体の外表面に析出することがわかった. この場合, 蒸発乾固過程におけるH3PW12O40・nH2Oの析出によるミクロ孔閉そくはあまり起こらず,広いκの範囲で比較的高い表面積および触媒活性が得られることがわかった. 298K滴下法では, xを2.5から2に減少させると, 表面積が大幅に低下した. これは,Cs塩の場合と同様, ナノ結晶子間のミクロ細孔が蒸発乾固時のH3PW12O40・nH2O析出により閉そくしたものと推定される.
  • 今田 安紀, 北野 圭祐, 大北 博宣, 水嶋 生智, 角田 範義, 角屋 聡, 阿部 晃, 吉田 清英
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 398-405
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ディーゼルエソジンの排出ガスに含まれる粒子状物質 (パティキュレート: PM) の触媒による燃焼除去を試みた. 種々の酸化物を担持した酸化チタン (y) 触媒で行ったところ, 銅触媒がPM燃焼に対し高活性を示し, 特に塩化銅 (IV) から調製した触媒 (Cu/TiO2(Cl)) が有効であることが判明した. さらに, 塩化物から調製した他の触媒の活性も確認され, 塩素の共存がPM燃焼に重要であることが示唆された. X線回折の結果, 銅触媒のみハロゲン化水酸化物〔塩化水酸化銅 (II) (CuCl (OH)) 〕の生成が確認され, 塩素の活性点形成への寄与が明らかとなり, この構造が酸素の活性化の促進に寄与していると推定される. またこの触媒は, 模擬排ガス条件でも有効に作用し, NOx, SOxの活性への影響は少なかった. 反応機構については, PMの触媒燃焼がすす (soot) の外側に存在する有機物質 (SOF) の有無に影響されないこと, sootが無定型炭素状であることから, 反応は固一固反応で進行し, そのため, 触媒で活性化された酸素種のPMへの移動がかぎであると考えられる. この活性な酸素種が塩素の存在によって生成することから, 銅触媒のような塩素種を含む構造の生成が触媒を調製する上で重要となる.
  • 加藤 明, 松田 臣平
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 406-411
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化チタンに10種類の成分 (V, Mo, W, Fe, Mn, Cr, Ce, Co, Cu, Pt) を担持した触媒上でのNO2-NH3-O2反応特性を調べた. 250℃ における反応の活性序列は,
    Cr>Mn>Co>Pt>>Cu, Fe, Ce>V>Mo>Wであった. NO-NH3反応に活性の高いV2O5-TiO2触媒はNO2に対しては活性が低いことがわかった. V2O5-TiO2およびCr2O3-TiO2触媒を用いてNO2-NH3反応の20h連続試験を行ったところ, V2O5触媒では4h後に大きく活性が低下したが, Cr2O3触媒では20h, ほとんど活性が低下しないことがわかった. これらの触媒上でのNH4NO3生成を調べたところ, V2O5触媒では多量の析出が認められたが, Cr2O3触媒ではほとんど析出は認められなかった. V2O5触媒の活性低下の主原因はNH4NO3析出による活性点の被覆および細孔閉そくと考えられる. 一方, Cr2O3触媒はNH4NO3反応活性が高いため, NH4NO3の蓄積も起こりにくく, 耐久性が高いものと考えられる.
  • 大石 修治, 渋井 正智
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 412-416
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ化カリウム (KF) フラックスからペロブスカイト (CaTio3) 結晶を育成した. KFに対するCaTiO3の溶解度は, 1100℃ において約7.3mol%であった. その溶解度曲線は, 適度の温度係数を持っていた. 共晶温度は,835±5℃ であった. 4-15mol%の溶質を含む高温溶液 (1100℃) を5℃h-1で徐冷して, 淡青色透明ないし淡茶色透明で3.9mmに達するCaTio3結晶を育成した. 結晶の大きさは溶質濃度に依存し, 最適の溶質濃度は7mol%であった. 生成した結晶は, {100}, {010} および {001} 面が発達した六面体を基本的な形態とした. 細長い {110}, {101} および {011} 面が出現することもあった. 斜方晶系に属するこの結晶の格子定数は, 室温でa=5.445±0.002Å, b=7.649±0.002Å, c=5.383±0.002Åであった. 密度は, 4.02±0.02gcm-3であった. 室温から1100℃ の間に, 結晶の相転移はないと推定された. 結晶の色は,空気中で加熱すると, 淡青色ないし淡茶色から淡黄色ないし無色に変わった. 1100℃ の高温溶液 (溶質濃度: 8および10mol%) を50℃h-1で冷却しても, CaTiO3バタフライ双晶は生成しなかった.
  • 堀 友治, 林 潤一郎, 玉垣 誠三
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 417-424
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    堅固なαシクロデキストリン (α-CyD) をプラットフォームとする3回対称軸をもつ三方向性フェリクロムモデル (L1, L2) を合成し, それらの三価鉄との錯体の立体構造についてUVおよびCDスペクトルで検討した. 錯化部位のヒドロキサム酸残基 (MeCON (OH) (CH2) 2CONH-) のα-CyDへの結合 (L1) はFe3+周りの八面体構造のねじれをもたらし, 水中では右巻きのキラリティーのΔ-cis, cis配座が優先する. また, キラリティーは溶媒の極性の減少とともに減少する. なお,二核錯体L2についても検討し, 水中では右巻き構造を示すが, ピリジンやアセトニトリルのような非プロトン性極性溶媒中ではキラリティーが完全に逆転し左巻き構造になることを見いだした. このキラリティー変化の原因についても考察する.
  • 工藤 益男, 大谷 直, 増子 徹
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 425-432
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    バリウムフェライト磁性微粒子の表面へdioleoylphosphatidylcholineを主成分とする大豆レシチン, または [3- (methacryloyloxy) propyl] trimethoxysilane (MPS) が平衡吸着する状態を吸着母液の濃度変化測定により検討した. レシチンおよびMPSの吸着等温線の形状から, 両者ともLangmuir型の単分子層吸着を行うと物断した. 1分子当たりの吸着占有面積として, レシチンについては約70Å2, MPSに対して約22Å2が得られた. レシチンの吸着は, 磁性粒子表面上に多数存在するヒドロキシ基とレシチン分子中に存在する極性基の相互作用に基づくが, 飽和吸着したレシチン分子は吸着層内で最密充填に近い形で存在すると考えられる. また, X線光電子分光法 (XPS) により吸着レシチンが形成した表面層を調べたところ, XPSのP (2P) ピーク位置が高結合エネルギー側ヘシフトすることが観察された. これは, 吸着量の増加に伴って隣接するレシチン分子内の極性基が次第に近接し, 極性基間に静電的な双極子-双極子相互作用が著しくなるためと考察した. 一方, MPS吸着層のXPSデータでは, 飽和吸着する前後においてSi (2P) ピーク位置に顕著な変化が認められず, この分子の吸着基間相互作用は軽微と推定した.
  • 中村 明則, 坂井 悦郎, 熊田 哲也, 大場 陽子, 矢野 豊彦, 大門 正機
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 433-437
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    普通ボルトランドセメントの主要構成鉱物であるエーライトの水和や水和生成物に及ぼす塩化カリウムの添加による影響について検討した.
    初期水和について, 水和発熱を伝導熱量計により測定した. エーライトに塩化カリウムを塩素換算で10%まで添加したすべての場合で, エーライトの水和は促進された. その促進効果は, 2%(塩素換算) 添加の場合に最大となった. 塩化カリウムの添加によりエーライトの水和は促進されたが, 反応の誘導期は確保された. エーライトの反応率は反応時間7日まで, 2% (塩素換算) 添加の場合に最も大きい値を示した. 反応時間28日では, 無添加の場合に最大の83%を示し, 塩化カリウムの添加量の増加に伴い, エーライトの反応率は, 小さな値を示した. 生成するケイ酸カルシウム水和物のCaO/SiO2比は,反応時間7日まで,2% (塩素換算) 添加の場合に最も大きな値を示した. 反応時間28日では, 塩化カリウムの添加量の増加に伴い, 生成するケイ酸カルシウム水和物のCaO/SiO2比は, 大きな値を示した. 塩化カリウムを添加した場合に, 生成するケイ酸カルシウム水和物は, 一部塩素を含み, そのCl/SiO2比は, 塩化カリウムの添加量の増加に伴い大きな値を示し, 10% (塩素換算) 添加の場合, 0.29であった.
  • 鈴木 研志, 坂井 悦郎, 盛岡 実, 大場 陽子, 大門 正機
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 438-441
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究ではLi2O添加量を3mass%まで変化させた12CaO・7Al2O3ガラスを作製し, 恒温壁熱量計により初期水和の評価を行った. これから, 仕込み組成でLi2O添加量が0.5mass%の試料が水和発熱量および発熱速度が大きいことから水祁活性が高いと考えられた. 上記の実験で水和活性が高いと考えられるLi2O添加量0,5mass%の試料とモル比でほぼ等しい組成のNa2O, K2Oを添加させた試料を作製し比較を行い, Li2Oを添加させた試料の水和が促進されていることが示された.
  • 小林 雅晴, 三保 慶明, 柴崎 直之, 小倉 興太郎
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 442-446
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    河川や沼地の富栄養化対策として含窒素化合物の分解技術の確立が強く望まれている. 本研究では, 鎖式アミノ酸を電気化学的に分解する方法が提案されている. この過程において, アミノ酸は強アルカリ水溶液中においてCO2, アンモニア, 酸, アルコール (グリシンの場合には生成しない) に分解される. 定電位法で測定したアミノ酸の酸化反応の速度定数はグリシンで最も大きく8.94×10-3 min-1,イソロイシンで最も小さく4.13×10-3 min-1であった. 1.15mA cm-2の定電流で1mM (1M=1moldm-3) のグリシソとアルギニンを酸化すると60分以内で完全に分解したが, イソロイシンとロイシンを完全に分解するには120分以上の電解を必要とした.
  • 松下 康一, 植村 久美子, 川口 達也, 大井 秀一, 井上 祥雄
    1998 年 1998 巻 6 号 p. 447-449
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Carbonylation of 2-butyne-1, 4-diols was found to be catalyzed by cationic palladium (II) complexes such as [Pd (MeCN) 2 (PPh3) 2 ] (BF4) 2 to give fulgides in good yields under mild conditions. The reaction pathway is also discussed.
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