日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 11 号
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  • 大勝 靖一, 青島 知也, 山口 和男
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 711-720
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    油脂, 石油製品, プラスチックなどは, 有機化合物であるがゆえに自動酸化による劣化が起こり, その防止は重要な課題である. 普通そのために使用されるフェノール類はその作用が分子構造によって著しく左右されるが, 活性と構造, 特に核置換基との関係については古く1960年代にすでに確立されたため, それ以降新しいフェノール系酸化防止剤は開発されていない. 本論文では, これに対して過去の考え方, すなわち置換基効果に疑問を持ち, オレフィン基をο-位に持ったフェノール類 (ο-ヒドロキシケイ皮酸誘導体) を分子設計した. これは過去に例を見ないほど高活性な酸化防止剤であった. ついでこの高活性は, 共役オレフィン基の, (1) フェノキシルラジカルの共鳴安定化によるラジカル捕捉速度の向上, (2) フェノキシルラジカル電子の局在化によるフェノキシルラジカルのカップリソグの防止, および(3) ペルオキシルラジカルの捕捉, などに基づいていることを明らかにした. さらに他の核置換基の効果についても検討し, ヒドロキシ基に対してο-, ρ-位の両方に置換基を導入することでさらに高活性な酸化防止剤を得ることに成功した. これについて, 半経験的分子軌道法により検討を加え, その高活性の起源と酸化防止作用機構を推察した.
  • 長野 哲雄, 小島 宏建
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 721-729
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素 (NO) は近年, 生命科学の分野で注目されている生理活性種であるが, 著者らはこのNOを培養細胞, 生体組織切片あるいはin vivo系から捕らえる新規蛍光プローブ:ジアミノフルオレセイン (DAF) 類を開発した. 本プローブは生体系から刺激に対応して生成するNOをリアルタイムで測定できるもので, バイオイメージング (生体画像化) も可能である. 本論文ではDAF開発の分子設計法について未発表のデータも含め紹介する.
  • 宮田 義一, 朝倉 祝治
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 730-736
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH緩衝剤を含まない中性NaCl水溶液中の鋼上で生じる酸素還元反塔を調べた. 腐食生成物の堆積の影響を極力抑えるため, 金属光沢が失われない間に電位規制でカソード分極曲線を測定した.
    その結果, (1) O.5-10mVs-1の電位走査速度で定常電流を測定でき, カソード電流に顕著なヒステリシスは見られないこと, (2) 酸素還元反応は0.01M-1Mの範囲でNaCl濃度に依存しないこと, (3) カソードターフェル勾配は. -130mV/decadeで, 物質移動の効果を補正したカソード電流は酸素分圧の平方根に比例することが明らかとなった. また鋼上で生じる酸素還元反応機構を議論した.
  • 平野 博人, 平沼 充安, 向井田 健一
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 737-744
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリカアルミナゲルをケイ酸ナトリウムと硝酸アルミニウムの水溶液から瞬時混合共ゲル化法により調製した. 洗浄工程では, ヒドロゲルのイオン交換水への高速かきまぜによる分散および游過による洗浄を0-5回繰り返したもの, さらに, アンモニア水による洗浄を1回行ったものまで調製した. 洗浄回数の異なるゲルのナトリウム残存量から, 洗浄によるナトリウム除去過程について考察した. また,残存ナトリウムが固体酸量, 1-ブテン異性化に対する触媒活性および比表面積に及ぼす影響についても考察した.
    シリカ成分の多い試料では, ナトリウムは一次粒子バルク固相に多く存在し, 洗浄により除去できないため, ナトリウム残存量が多くなった. ナトリウムは酸点を中和する作用があるため, ナトリウムの除去は, 潜在的酸点の回復をもたらし, 固体酸量, 1-ブテン異性化反応の速度定数の増加につながった. また, 強酸点の発現は, 表面電荷による粒子間の反発を引き起こし, 焼結が抑制され, 比表面積が増加すると考えた. 比表面積の増加は, 強酸領域の固体酸量の増加に一致した.
  • 相原 正孝, 伊藤 雅彦, 五十嵐 香, 清水 紀夫, 王 福平
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 745-749
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    層状構造を有する繊維状水和二酸化チタンの陽イオン交換の性質を利用して, アンモニウムイオン交換を行った. イオン交換量と表面吸着量の合計量は浸漬時間とともに増加し, 24h以内に一定値3.7mmol/9に達した. その層間内の交換イオンとアンモニウムイオンの反応における表面吸着量と層間へのイオン交換反応の違いを明確にした. 結果, そのイオン交換生成物の組成は (NH4) 1.0H1.0Ti4O9・nH2O, n≅1であることがわかった. その化学的性質も調べた.
  • 萩原 俊紀, 石塚 実, 渕上 高正
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 750-756
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    従来, 進行しにくいとされている, α-位にトリフルオロメチル基を有するアルコール誘導体の官能基変換反応について検討したところ, アルコールをトリフルオロメタンスルホン酸エステルにすることによって, 一般的な求核試薬であるカルボン酸の塩類を用いても求核置換反応が進行することを見いだした. この反応は立体配置の完全な反転を伴うSN2型で進行していることが明らかになった. 加えてこの反応はアルカリ金属塩を用いた場合に効率よく進行し, 重金属塩では進行しない. また求核試薬としてカルボン酸塩だけでなくジチオカルボン酸塩, さらにはハロゲン化物などの無機塩類も利用できる.
  • 畑中 研一, 太田 早苗, 粕谷 マリア, 菅野 憲一
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 757-760
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分枝多糖を合成することを目的として, 2種類の保護基を有する1, 6-無水-2-デオキシグルコース誘導体の重合および共重合を行った. これら無水糖モノマーの重合反応性を調べるとともに, 得られた多糖誘導体の選択的脱保護, グルコシル化反応を行って, C-3位にグルコースの枝を有する(1→6) -α型多糖を合成した. 本研究は, 枝の導入率100%の分枝多糖を, 多糖誘導体のグリコシル化反応によって合成した最初の例である.
  • 角田 勝, 小林 龍彦
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 761-766
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    医療用材料 (特に創傷被覆材) として有用なポリウレタンフィルムの作製と物性測定を行った. ポリウレタンの合成は, ジイソシアナートとして毒性がより低いと考えられるbis(4-isocyanatocyclohexy1) methaneを用い, 触媒の存在下ポリオールを反応させ, イソシアナート基を末端に持つプレポリマーとした後, ジアミンと反応させ, ソフトセグメントとハードセグメントを併せ持つセグメント化ポリウレタンを得た. 工業的スケールアップ時でも, 実験室レベルで作製したポリウレタンフィルムと同様の物性を持つフィルムが得られた. ポリウレタンのポリマー構造式中に, ポリオール部をできるだけ多く含有させることにより, 極めて高い水蒸気透過性を持つポリウレタンフィルムが得られた.
    このフィルムは, 高水蒸気透過性以外に, 吸水時の寸法安定性が高いこと, 耐光性のあること, 機械的強度が高いこと, 伸展性のあること, 安全性の高いことなどの特徴があった.
    Lamkeらの「熱傷受傷時の皮膚創部表面から蒸散される水蒸気量」と,「適切なポリウレタンフィルムの厚さ」の二つの因子から, 創傷被覆材として使用し得るフィルムの選択を行った.
  • 角田 勝, 佐藤 弘, 山田 継, 野口 浩
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 767-773
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高透湿性ポリウレタンフィルムと高保水性不織布とから, 新規な創傷被覆材を作製した. ポリウレタンフィルム中には, 抗菌剤N- (1, 3-ジアジン-2-イル) スルファニルアミド銀塩 (シルバーサルファーダイアジン, SSD) を均一に分散化させた. 分散化は二つの方法で行い, 分散後, 蛍光X線分析ないしは原子吸光分析により, 抗菌剤分子中の銀 (Ag) ないしは硫黄 (S) がポリウレタンフィルム中に均一に分散していることが判明した.
    不織布に高保水性を付与するために, コンジュゲイト化ポリエステル糸とレーヨン糸の適切な混合比を選択し, これを160℃ の熱風で処理することにより, 自重の20倍の保水性を持つ不織布を作製した.
    次いで, コーター機を使用して, 抗菌剤入りポリウレタンフィルムと上記の不織布とから創傷被覆材用シートを製造した. 製造上重要な以下の数工程の製造条件を検討し, 最終的にすべての工程の最適条件下で, シートを作成した.
    製造条件 : a)ポリウレタンのイソプロピルアルコール溶液の調製, b) 抗菌剤の分散条件, c) 離型紙の選択, d) 乾燥 (溶媒留去) 条件, e) ラミネート時のローラー圧, f) スリッター圧
  • 竹中 敦司, 菊井 聖士, 本岡 達, 成相 裕之
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 774-777
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Mixtures of sodium dihydrogenphosphate (NaH2PO4) with biuret, cyanuric acid, or melamine were heated in a stream of nitrogen gas. Crystalline sodium polyphosphate of high-temperature type of Maddrell's salt was produced at above 300 °C in the NaH2PO4-cyanuric acid or NaH2PO4-melamine mixtures. Sodium cyclo-triphosphate was produced in the NaH2PO4-biuret mixture in a similar manner to the thermal reaction of NaH2PO4-urea mixture reported previously, which was considered to be responsible for the enhanced water-vapor pressure in samples caused by the the formation of a kind of “shell. ” An increase in amount of biuret added was available for the formation of cyclo-triphosphate.
  • 三上 直子, 本間 正男
    1998 年 1998 巻 11 号 p. 778-781
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ABA block copolymers of DL-amino acids and alkylene oxide were studied as alignment films for ferroelectric liquid lciqryusitda ls (FLC). When the equal amount of D-NCA (N-carboxyamino acid anhydride) and L-NCA was mixed at first and polymerized as an ABA block copolymer with α- (3-aminopropy1) ω-aminoethylpoly (oxyethylene) [poly (ethylene oxide) diamine], uniform alignment of FLC was observed on the copolymer. When D-NCA and L-NCA were added one by one, uniform alignment of FLC was not observed. Furthermore, block copolymer of DL-γ-methyl glutamate and alkyleneoxide aligned FLC normal to the rubbing direction of the thin film. In the case of block copolymer of ethylene oxide and DL-leucine, FLC was aligned in parallel to the rubbing direction.
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