日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1978 巻, 10 号
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  • 円満字 公衛
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1317-1321
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅クロロフィリン(Cu-chln)はアデノシン-5'-リン酸(5-AMP)の存在下でその吸収極大が変化する。この変化を5'-AMP濃度によってHillプロヅトすることにより,25℃において結合数πは1,結合定数Kは11.3l/molであることがわかった。水のプロトンのT1に与えるCu-chlnの影響から,1mmol/l以上でCu-chinは二量体を形成していることが示唆された。Cu-chlnと5'-AMPの低温ESRスペクトルは窒素核に起因する超微細構造を示さないことから,5'-AMPによってCu-chlnの二量体は解離しないと考えられる。5'-AMPの各プロトンのT1,T2におよぼすCu-chlnの効果を調べた。12の温度変化からH(1')は双極子-双極子相互作用による緩和と考えられるが,H(8)とH(2)はおもにスカラー項による緩和と考えられる。τc=1.6×10-9secとなるT1の極小値から,各プロトンと電子スピンとの見かけの距離はおのおの,H(8) 7.1A,H(2) 6.9A H(1') 7.4Aと求められた。5'-AMPの各炭素についても同様にして電子スピンとの距離が求められた。
  • 田中 正子, 長坂 重男, 沢村 貞史, 片山 明石
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1322-1326
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販の回折格子型赤外分光器を改造して高速走査赤外分光器を試作し,テスト反応としてCO-02混合ガスの爆発友応に応用した。分光器はPbSe検出器と高速振動鏡をそなえたもので,走査時間は10msec,走査速度は3000cm-1で125cm-1msec,500cm-1で12cm-1/msecである。くり返し時間間隔は20'msecである。分解能は3000cm-1でスリット幅500μmのとき7cm-1であった。HCIガスの吸収スペクトルの振動回転バンドが完全に分離されることが確かめられた。円筒状反応管内の火花放電による,,爆発反応後のCO2の赤外発光ペクトルには001→000および011→010遷移に基づくバンドのバンドヘヅドが見られた。CO-02に少量の水を添加した場合に得られる発光スペクトルおよびその減衰曲線を無水の場合と比較した。
  • 茅根 忠利, 岡崎 進
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1327-1331
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N20の水素還元反応に対する触媒活性と硫酸イオン含有率との間によい対応が認められた。また,硫酸イオンを含む担体は,水素処理によって硫化水素を発生することが認められ,硫化水素の発生と触媒活性の間にもよい対応が認められた。さらに,酸化モリブデン(VI)を担持したhの触媒を硫化水素処理すると,すべて高活性を示した。したがって,触媒中の硫酸イオンは,水素処理によって硫化水素に変化して触媒を硫化し,硫化された触媒が活性を示すということが示唆される。
    硫化水素で処理したM。03-Ti傷触媒では,硫黄とモリブデンの原子比(S/Mo)がほぼ2であった。また,この触媒と市販の硫化モリブデン(VI)を触媒としたときの,それぞれの場合の反応の活性化エネルギーはほぼ等しい値を示した。したがって,酸化モリブデン(VI)系触媒の活性種は,水素処理あるいは硫化水素処理によって新たに生成した硫化モリブデン(VI)であると推察される。
    さらに,硫化水素で処理した。触媒を用いて,NOの水素あるはアンモニアによる還元反応についても比較検討したところ,触媒はN20-H2NO-H2NO-NH3の各反応の頂に活性を示した。
  • 小原 英明, 三浦 米吉, 藤谷 義保
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1332-1337
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ロジウムおよびルテニウム触媒上におけるNO還元時のNH3生成と水性ガスシフト反応とについて2種のモデルガスを用いて検討した。触媒は酸化型と還元型のものとを使用し,連続流通式反応器で反応速度を測定した。
    ロジウムとルテニウム触媒上のNH3生成に関しては,二つの反応経路があることがわかった。一つはNOとモデルガスに添加された水素との反応であり,もう-,つはNOと水性ガスシフト反応によって生する活性水素との反応である。しかしながら,高温域においては前者が優勢であった。
    ロジウム触媒上では大部分のNOがNH3に転換した。酸化型Rh触媒は還元型のものにくらべて,NHS生成に対しても,水性ガスシフト反応に対してもより活性であった。高温域において,前者はNO還元時に生成したNH3を分解したが,後者は分解しなかった。
    -方,Ru触媒はRh触媒にくらべてNH3生成量がはるかに少なく,酸化型と還元型Ru触媒との活性の差はわずかであった。酸化型および還元型Ru触媒はともに触媒上でいったん生成したNH3をさらに分解することはなかった。このことはNH3がガス相の中間生成物ではないことを示唆している。
  • 田中 勝己, 田中 虔一, 宮原 孝四郎
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1338-1343
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属硫化物の触媒活性研究の-環として,脱硫触媒の主要成分の-つである硫化コバルトをとりあげた。市販のCoS2,CoSは450℃で誹気してもブタジエンの水素化反応に対しほとんど活性を示さない。金属コパルトを少量の硫化水素で硫化して得た硫化処理コバルトを用いて,ブタジエンの水素化反応,および種々のオレブィンの異性化反応,水素交換反応を行なった。その結果,つぎのことがわかった。(1)直鎖ブテン類の異性化反広ならびにエチレン-4,および-孟間の水素交換反応は,水素存在下でのみ進行し,水素化反応は非常に遅い。(2)ブタジエンの水素化生成物である1-ブテン,2-ブテンは,それぞれ水のL,2-付加,1,4-付加生成物である,(3)硫化処理コバルトには,活性の低い残存水素が多量存在する。この残存水素はブタジエン水素化反応の経路にゆっくりと混入し,ブタジエンの重水素化反応生成物の重水素濃度を減少させる。
  • 大野 信
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1344-1350
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル系マトリックス中にベンゾスピラン誘導体を分散したフィルム(有機層)上に銅薄膜を積層した試料を電子線衝撃(12kV,7×10-7 C/cm2)と窒素中加熱(150℃)の連続処理すると,衝撃部の有機層には明白な変化が生じないのに対して表面銅層は疎水性物質で被覆される。この結果,試料表面は見かけの金属特性が変化し,酸に対する溶解性が低下する。電子線衝撃によると有機層中ではべンゾスピランの開環とマトリヅクスからの塩化水素の遊離が生する。そして後加熱により表面銅が塩化銅(1)に変換されたのち,ベンゾスピラン開環体が吸着することによって被膜が形成されると考えられた。
    この現象は後加熱の温度を160℃とすると,不衝撃部表面においても発生する。この場合は2×10-6C/cm2以上の強度で衝撃した部分に被覆現象がみられない反転した結果が得られた。不衝撃部表面の被覆は有機層中でベンゾスピランが熱開環するとともに塩化水素の熱的遊離によって生すると考えられた。一方,高強度衝撃部では有機層中のマトリヅクスポリマーが橋かけ重合し,遊離物などの拡散が阻害されて被覆が搾制されるものと見積れた。
  • 小早川 紘一, 山辺 武郎, 藤嶋 昭, 本多 健一
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1351-1356
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸イオンおよび硫酸水素イオンは,光照射下の二酸化チタン半導体電極において,白金電極におけるより約2.7Vも負の電位において,価電子帯の正孔がこれらのイオンへ直接移動することによって光増感電解酸化された。硫酸アンモニウムー硫酸混合溶液では,硫酸イオンと硫酸水素イオンの酸化反応が同時に起こっているが,この二つの電極反応速度は電解液の組成に依存した。二つの硫酸種イオンの合計濃度を2mol/lとした溶液では,硫酸のモル分率が大きくなり,溶液の水素イオン濃度が濃くなるにしたがってペルオキソニ硫酸イオンの生成電流効率は増加した。このことは溶液の水素イオン濃度が増すにしたがって,電極の価電子帯のエネルギー位置が溶液側の電子占有状態密度の分布と大きく重なり合う方向に移動する結果であると推定できる。
  • 有岡 雅行, 小久保 正, 田代 仁
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1357-1362
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Lip,2SiO2組成および,この組成11に対し,3molのB203,Na20,MgO,Al203,SiO2あるいはP202を添加した組成の融液を,底にLi20,2SiOガラスセラミック薄層を種子結晶として形残させておいた粘土ルツボ中で下部から上方に向け1.3mm/hrの速度で凝固させた。得られた凝固物はいずれも,ルツボ底面に垂直に伸びたLi,0,2SiO2柱状晶からなり,その伸長方向は同結晶のy2/i一致していた。凝固物の柱状晶の平均径はLi20,2SiO2組成の場合に560μmであるのに対し,添加物を含む場合は,いずれもこれより小さく170~440μmであった。凝固物の真気孔率はLi20,2SiO露組成の場合に3.4%であるのに射し,Na20およびB202を添加した場合には,それぞれ1.1および1.7%で小さく,AI202およびP203を添加した場合には,それぞれ9.1および7.6%で大きかった。Na20およびrを添加した場合に,凝固物の真気孔率が減少したおもな原因は,柱状晶間に5~7wt%のガラス相が形成され,このガラス相が柱状結晶析出後の冷却時に流動することによって結晶中に生じる熱応力を緩和し,結晶粒間に亀裂が発生するのを抑剃するためと考えられる。
  • 日下 譲, 辻 治雄, 森本 明夫, 一山 秀樹, 犬飼 修三, 根來 義章, 竹原 明雄, 天王寺谷 裕子
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1363-1368
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    黒雲母花コウ岩地域をおもな集水域にし,人為的因子の影響の少ない住吉川について観測点を選定し,その定点における水質の経時変化を調査した。
    夏期の濃度が冬期にくらべて高いのは,Mg,K,F,PO4NO2,Fe,Mn,Cu,Znであり,Ca,Na,HCO3,Cl,SO4,SiO2はあまり変動がない。本流水質への降雨の影響については,Ca,Mg,Na,HCO3,Cl,F濃度の変動は流水量とは逆相関を示すが,変動幅は比較的狭く,しかもたがいに類似している。K,SO4,SiO2の濃度の変動は複雑であり,他成分との相関性は見いだし難い。これらの成分は,約100mmの降雨ののちでも4日目頃には平常値にもどる。Fe,Mn,Cu,Zn,PO4,NO2の変動幅は比較的広く,他成分との相関も見いだし難い。上記のことは,集中的降雨時においても同様である。本流定点におけるCa,Mg,Na,HCO3,Clの濃度比は常時比較的-定値を示し,各成分濃度はHCO3値を用いて変動係数20%以下で推定できるが,K,PO4,NO2,Fe,Mn,Cu,Znは変動が大きく,推定できない。
  • 相沢 省一, 赤岩 英夫
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1369-1374
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    北海道夕張炭田地方に分布する古第三紀堆積岩のフッ素含量を定量し,同堆積岩の平均フッ素含量を求めるとともに,堆積岩の堆積環境を推定する指示元素としてのフッ素の有効性について検討した。
    その結果,構成成分が比較的一定している海成と淡水成起源の泥質堆積岩の間に,フッ素含量の顕著な差異は認められず,フッ素はこの種の指示元素として不適当との結論を得た。また今回分析したシェールの平均フヅ素含量は360PPm,砂岩の平均フッ素含量は200PPm,であった。
  • 吉田 稔, 横原 頼子, 桂 敬
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1375-1379
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Tavesが見いだし, Saraらが発展させたヘキサメチルジシロキサン(HMDS)を用いるフッ素の拡散分析法を,より広範囲な対象 天然試料,環境試料 に適用するため検討した。
    アクリル樹脂製拡散III中で試料溶液5mlとHMDS飽禰2.7molμ過塩素酸2。5mZ,リン酸2m1を混合し,発生するフルオロトリメチルシランを0.1molμ水酸化ナトリウム溶液5mlに吸収させる。1夜~1日放置後,吸収液を硝酸で中和し,一定体積にしてイオン強度調整緩衝液を加え,イオン選択性電極によりフッ化物イオンを定量する。本法により5~500μgFを100±2%で回収できた。 アルミニウムイオンは約20mg(A1/Fモル比二300)共存しても,リン酸でマスキングされる。ケイ酸カルシウム,鉄(III),チタン(IV),ホウ酸,水銀(II)はモル比で100倍,マグネシウムは50倍まで共存しても影響しない。また,海水程度の濃度で堪化物イオンが共存しても差し支えない。本法を海水,酸性温泉水,火山ガス凝縮水のような高塩濃度の天然水,鉱物,岩石試料中のフッ素の定量に応用し,好結果を得た。
  • 野村 毅, 中川 元吉
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1380-1384
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸(ANS)はpH4では溶存酸素による酸化はほとんど無視できるが,微量の亜硝酸イオンの共存により急速に酸化され,生成する酸化生成物が+0.02Vvs.SCE(pH2.0)に非常に感度の高いテンサンメトリー波を示すので,0.03~0.3μg/mlの亜硝酸イオンの定量に応用した。ANSの酸化生成物の交流波は電気毛管曲線,交流波高の温度依存性,交流波に対応して現われる小さな直流波が濃度依存性を示さないことなどから,酸化生成物の吸着に基づくテンサンメトリー波であることが明らかになった。他方,酸化生成物のIRスペクトル,NMRスペクトル,元素分析などの測定結果からアミノ基を含むナフトキノン構造の酸化物を生成し吸着活性になったものと予想した。0.03~0.3μg/ml濃度の亜硝酸イオンを0.025mol/lフタル酸水素カリウムー過塩素酸緩衝溶液中(pH2.0)で2×10-4mol/lANSを加え,50℃で40分間静置したのちに得られる交流ポーラログラムから精度よく定量することができた。共存イオンの検討の結果,Griess-Romijin試薬法で妨害となるAl(III),Bi(III),Cu(II),CIO4-,NH4+およびアミノ酸,デンプン,アルコール類などの妨害が少なかった。
  • 鈴木 輝一, 杉山 明美, 中里 賢一
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1385-1389
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アクリルアミドとN,N'-メチレンジアクリルアミドの混合水溶液をトルエン-クロロベンゼン中で懸濁重合して球状の多孔性ゲルを得た。引きつづき加熱処理をすることによってイミド化度の異なる多孔性の親水性ゲルを得た。得られたゲルカラムでアセトン,分子量の異なるエチレングリコールのオリゴマー,ブルーデキストランなどの水溶性物質を溶離して補正曲線が得られた。ゲルのイミド化度の増加は補正曲線を平行に低分子領域に移動させ,勾配の変化はなく,排除分子量を極端に小さくした。
    橋かけ剤が4.87mol%のゲルの誹除分子量,膨潤度,含水量がそれぞれ14000,4.81(wet-ml-dry-ml),4.67(g/dry-g)のものを245℃,2時間イミド化して63.03 mol%であった。その排除分子量,膨潤度,含水量はそれぞれ150,1.33,1.41となった。
    橋かけ剤量が4.87,9.29,13.29mol%のゲルで,4.87 mol%のものが孔径をせばめる上にもっとも効果的にイミド化された。
  • 中山 充, 堀江 徳愛, 牧野 三津子, 林 修一, 雁野 重威, 成田 彰
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1390-1393
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カラム充てん剤にスチレンージビニルベンゼン共重合体であるポーラスポリマーを,検出器に紫外部吸収338nmを使用して,42種の5,6,7-三置換フラボン誘導体の分離を検討した。移動相液体としてメタノール-水にエチルメチルケトンを加えることにより,テーリングを減少し分離を大幅に改善することができた。この場合,保持時間は減少した。5,6,7,4'-および5,7,8,4'-テトラメトキシフラボンを無水塩化アルミニウムおよびヨウ化水素酸を用いて脱メチル反応し,反応条件の検討ならびに生成物の分離に利用した。
  • 小原 和子
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1394-1398
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グアイアズレンとメチルアルキルケトン(CH3COR)との二酸化セレンによる縮合で得られたビス(3-グアイアズレニル)アシルメタン[(Gu)2CHCOR(2)](Gu:3-グアイアズレニル基)[1a]:R=CH3[1b]:R=C2H5,[1c]:R=i-Bu,[1d]:R=t-Bu)は,強酸に溶け,この溶液を水で回収すると原物質[1]が定量的に回収されるが,溶液中ではグアイァズレニウムイオン[2]と3-(アシルメチレン)グアイアズレニウムイオン[3]とにフラグメンテーションを起こすことが,そのNMRスペクトルの解析から明らかになった。
    このフラグメンテーションの反応を実証するために,交差実験を行なった。すなわち[1d]の強酸溶液に4,6,8-トリメチルアズレン[4]を加え,そのカチオン[5]を[2]と共存させたのち水で回収すると,期待したグアイアズレンとトリメチルアズレンの両成分を含む交差生成物,1-(3-グアイアズレニル)-1-(4,6,8-トリメチルー1-アズレニル)-3,3-ジメチル-2-ブタノン[7d]が[1d]とともに得られた。[7d]は強酸溶液中でプロトン付加の経路によって二通りのフラグメンテーションを起こし,4種のアズレニウムイオンを生成する。このような[1]の強酸溶液中でのフラグメンテーションおよびリゼネレーションの反応機構を検討した。
  • 久住 真
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1399-1405
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロロジフルオロメタン(R22)の熱分解によるテトラフルオロエチレン(TFE)の合成に関し,R22と過熱水蒸気または過熱窒素とを急速に混合させ断熱的に反応温度にさせる槽型石英製反応器を用いる常圧気相流通法により,反応温度640~850℃,滞留時間0.01~1秒,希釈ガス/R22モル比0,2~9.0の範囲でおもに生成物組成に与える希釈の影響について検討し,つぎの関係が見いだされた。
    (1)R22反応率は希釈ガスが共存すると向上した。とくに,水蒸気共存下では,R22反応率は反応温度とR22空間速度で決まり,全空間速度には無関係であった。
    (2)TFE生成の選択率は反応温度と全空間速度で決まり,希釈ガスの種類と濃度には無関係であった。
    本法によりR22反応率とTFE選択率とは希釈ガスの種類と濃度との選択によって同時に独立的に調節できることが明らかとなった。水蒸気希釈下で適当な条件を選択するとR22反応率73%におけるTFE選択率90%が得られた。また, TFE生成速度を100 mol/l,hrにさせることも容易であることを認めた。
  • 久住 真
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1406-1410
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラフルオロエチレン合成に関するクロロジフルオロメタン(R22)の常圧気相流通熱分解における希釈剤の反応促進作用について,水蒸気または窒素を希釈剤として速度論的に調べて,希釈剤の作用について考察した。反応器として透明石英製槽型反応器を用い,640~850℃,滞留時間0.01~1秒,希釈剤R22モル比0.2~9.0の範囲で検討した。
    希釈剤非共存では総括速度の温度依存性は(1)式で表わされた。活性化エネルギー値は希釈剤の種類
    k0=109.82,exp{-46700土1500/R(ca1)T}sec-1(1)
    および濃度に無関係であった。窒素希釈における反応速度増加は(2)式で表わされ,従来の文献にみられるヘリウム希釈や減圧分解における速度増加の割合も(2)式に統-して整理できることが見いだされ
    k=k0exp{0.92pD/(pR)}(2)
    た。水蒸気希釈では(3)式で表わされる特有の促進効果が認められた。窒素による反応促進は主として
    k=k0(1+pW/pR)0.82(3)
    ここで,:希釈剤非共存における-次反応速度定数,ん:希釈剤共存下の-次反応速度定数,
    pD:希釈剤分圧,pW:水蒸気分圧,pR:R22分圧,である。
    反応器壁の接触作用によって起こり,水蒸気による反応促進は生成HClと水分子との気相における会合のような作用によって起こっていると推定された。
  • 加藤 清二郎, 井上 晴夫, 飛田 満彦
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1411-1414
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α位にアミノ基,ヒドロキシル基などの電子供与性置換基をもつアントラキノン誘導体は,水酸化物イオン共存下,空気飽和溶媒中で可視光照射により効率よく光分解を受け,無置換フタル酸を与える。しかし,β位にこれらの置換基をもつアントラキノン誘導体および電子供与性置換基をもたない誘導体は,同条件下でまったく分解しない.反応の波長効果および溶媒効果などの検討から反応にはα-アミノ-およびα-ヒドロキシアントラキノン誘導体の分子内CTレベルのみが関与しており,nπレベルからの光還元反応は関与していないものと結論される。
  • 横井 勝美, 松原 義治
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1415-1420
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ロイヤルゼリー酸(10-ヒドロキシーtrans-2-デセン酸),女王物質(9-オキソ-trans-2-デセン酸)およびそれらの関連化合物の合成法について検討した。
    1,5-ペンタンジオール[1],1,6-ヘキサンジオール[2],1,8-オクタンジオール[3]および1,10-デカンジオール[4]ならびに[1]~[4]のモノアセタート[5]~[8]を出発原料として銅-亜鉛系触媒による減圧下気相脱水素反応でジオール[1]~[4]から対応する5-ヒドロキシペンタナール[9],6-ヒドロキシヘキサナール[10],8-ヒドロキシオクタナール[11],およびそれらのモノアセタート[12]~[16]に転換した。それらのアルデヒドとマロン酸との縮合をピリジン中で行ない,[9]~[16]からそれぞれ炭素数が2個増加したヒドロキシおよびアセトキシtI,β-不飽和カルボン酸[17]~[24]が得られた。[19]および[23]がロイヤルゼリー酸とそのアセタートである。上記のように[17]~[24]は好収率で2段階で合成でき,しかも反応操作も簡単で経済的な合成法と考えられる。
    つぎに[17]~[24]をメタノル中硫酸を触媒としてメチルエステル化を行なうと[17]~[20]のメチルエステル体[25]~[28]が,また[21]~[24]ではアセトキシル基が加水解されて[17]~[20]のメチルエステル体と同-の化合物[25]~[28]が得られた。[25]~[28]を三臭化リンで臭素化してプロモ-trans-α,β-不飽和カルボン酸メチル[29]~[32]に変え,アセト酢酸エステルとの縮合を行なうと[29]から女王物質である9-オキン-trans-2-デセン酸[33]が,[30]~[32]からオキンーtrans-α,β-不飽和カルボン酸[34]~[36]が好収率で得られた。
  • 田中 竜雄, 大田 正樹
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1421-1425
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種の2,6-ピペラジンジオン誘導体[1]をニトロベンゼンとともに加熱して,3,5-ジデヒドロ-2,6-ピペラジンジオンの環状二量体[2]が得られた。1,4-ジフェニル-,または4-メチル-1-フェニル-2,6-ピペラジンジオンから得られた[2a]および[2b]をアルカリ水溶液中で加水分解して,相当するビス(フェニルカルバモイル)ジカルボン酸[3a]と[3b]が得られた。無水酢酸による[3a]および[3b]の脱水環化は立体特異的に起こり,前者からは[2a]が,後者からは[2b]の異性体で,2個のスクシンィミド環をもつ化合物[4]が得られた。上記の連係した反応に含まれる各生成物の構造解析により[2a]はexo形,他方[2b]はendo形構造であることが判明した。
  • 宮田 敏行, 石野 義夫, 青木 昌彦, 平島 恒亮
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1426-1430
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    芳香族ニトロ化合物の活性炭-塩化鉄を用いたヒドラジン還元の機構を解明するために種々の状態のものが調製できる酸化鉄,水酸化鉄を触媒としてp-ニトロトルエンのかトルイジンへのヒドラジン還元を研究した。その結果,無定形水酸化鉄がもっともすぐれた触媒効果を示し,その量もかニトロトルェン0.1mol(13,7g)に対して1g程度で十分であるばかりか,多数回反復使用が可能であった。
    酸化鉄-水酸化鉄の粒度,結晶度とp-トルイジン収率との関係を検討した結果,無定形水酸化鉄あるいは酸化鉄で結晶構造を有しないものほど収率が高いことが判明した。
  • 中島 利誠, 牛腸 ヒロミ
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1431-1436
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    官能基の分布状態の異なるVAc-VA共重合体を調製し,その平衡吸湿等温線を得た。密度測定から,不均一アセチル化物の密度-ポリマー組成プロットは直線性を示し,VA部分がPVAの微細構造とほぼ同じであることを示唆した。平衡吸湿実験から,低相対湿度領域では両ポリマーは同程度の吸湿量であったが,相対湿度の増大につれ,均一アセチル化物の方が不均-アセチル化物より吸湿量がより増大した。吸湿等温線にBET式とFlory-Huggins式を適用した結果,不均一アセチル化物はBET式にしたがったが,均一,アセチル化物はどちらにしたがうか断定できなかった。そこでさらに検討するためにクラスター関数G11/V1を用いて解析した。不均一アセチル化物のG11/V1値は低梱対圧領域で大きく負の値を示し,水分子の吸着を示唆した。一方,均-アセチル化物のG11/V1値は全相対圧領域で理想溶液を表わす-1近辺であった。
    以上の結果から,ブロック性の強い不均一アセチル化物では吸着型の吸湿挙動を示すのに対し,ランダム性の強い均一アセチル化物は溶解型の吸湿挙動を示すことがわかった。
  • 綿本 春枝, 砺波 宏明
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1437-1440
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Pad-Cure法により木綿ヘアクリルアミドをグラフト共重合させた。その結果,短時間で良好なグラフト率およびグラフト効率を得た。グラフト共重合はモノマーの溶媒の沸点近傍で反応が起こり,急激にグラフト率が増大するということがわかった。またモノマーの布への付加量を変化することにより種々のグラフト率の共重合物が得られることがわかった。
  • 村松 茂登彦, 梅村 節子, 岡田 隆
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1441-1448
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紙巻たばこの燃焼は,燻焼を呈する不完全燃焼であるために,O2消費量や燃焼熱量を求めることは完全燃焼の場合のように容易でない。そこで雰囲気O2濃度を調整した閉鎖循環系のチャンパー内で自然燃焼させ,O2消費量を実測し,同時に測定したCO,CO2などの生成量から燃焼熱量を推算した。雰囲気傷濃度がこれらの値や燃焼速度,温度に与える影響についても実験的に検討した。
    その結果,雰囲気O2露濃度が大気中のそれに等しい条件下でのO2消費量,燃焼熱量は,試料問に若干差があったが,それぞれ紙巻たばこ1gあたり14~19×103mol,1.2~1.6kcal程度であり,両者とも完全燃焼の場合の約1/3であることを明らかにした。雰囲気O2黛濃度の上昇にともなって,紙巻たばこの単位重量あたりの燃焼熱量は低下したが,消費O21molあたりのそれは,試料,雰囲気02濃度に依存せず,ほぼ-定の値,84kcalを示すことがわかった。また雰囲気O2濃度の上昇につれて,CO生成量,燃焼速度および温度は増大し,逆に0,消費量,CO2生成量は減少したが,これらの結果は,円錐形の燃焼帯における平衡反応,CO2+C-2COを想定することにより定性的に説明された。
  • 境野 芳子, 柿沢 寛
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1449-1451
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The longest wavelength electronic absorption bands (Table 1) of 2-aryl-4, 5-diphenylimidazoles show bathochromic shifts when more electron-attractive substituents are introduced in the 2-phenyl group. The substituept effect is closely related to that in the intramolecular charge-transfer bands of 1-(p-isubst4uted phenyl)pyrroles. Therefore, the longest wavelength absorption band of 2-[p- (4, 5-dipheny1-2-imidazolyl)phenyl]-4-ethoxyl-4, 5-dipheny1-4H-imidazole is considered as, mtramolecular charge-transfer band. The solvent and temperature effects are consistent. With this'interpretation.
  • 伊保内 賢, 倉持 智宏, 本間 尉, 竹沢 力也
    1978 年 1978 巻 10 号 p. 1452-1454
    発行日: 1978/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Styrene copolymerizes with alkyl maleates alternately via a radical mechanism. Addition of zinc chloride accerelated the rate of this radical copolymerization initiated by azobisisobutyronitrile (10-2 mol/l) as in Table 1.
    A possible mechanism in which the one to one complex of styrene and alkyl maleates plays an important role is presented (Fig.2).
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