日本化学会誌(化学と工業化学)
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1994 巻, 12 号
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  • 松崎 徳雄
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1051-1059
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プロペンで部分還元されたγ-モリブデン酸ビスマス(γ-Bi2MoO6)には約160℃ 及び約350℃ に再酸化過程が見られるが,この二つの再酸化過程を昇温再酸化法,XPS測定,ラマンスペクトル測定によって検討した。1
    60℃ の再酸化過程は主にBi0種のBi3+への酸化に係わるものであり,(Bi2O22+)n層でのBi-0結合の形成であることがラマンスペクトルでの286cm-1の吸収ピークの増大より明らかになった。この再酸化過程の見かけの活性化エネルギーは92kJ/molであった。この約160℃ の再酸化過程には一部,還元状態の(MoO42-)n層の再酸化も含まれる。
    約350℃ の再酸化過程はMo4+種のMo6+への酸化に係わるものであり,(MoO42-)n層のMo-0結合が形成されることがラマンスペクトルでの720cm-1,855cm-1の吸収ピークの増大より明らかになった。この再酸化過程の見かけの活性化エネルギーは167kJ/molであった。
    また,(MoO42-)n層が還元状態にある場合,酸化された(Bi2O22+)n層の酸化物イオンが(MoO42-).層へ拡散する事が示唆された。
  • 川村 吉成, 河野 保男, 神徳 泰彦, 佐野 庸治, 高谷 晴生
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1060-1066
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の結晶化調整剤を用いてアルミノシリケートおよびアルミノフェリシリケートを合成し,鉄,結晶化調整剤が触媒の物性およびメタノール転化性能におよぼす影響を調べた.1-ブタノールを用いた時に,ゼオライト中のAl,Fe含有量は他のゼオライトに比べて多くなった。また,その他の結晶化調整剤を用いた場合と異なり,鉄を添加しても結晶は4×9μmと大きく,格子欠陥の少ない結晶化度の高いゼオライトが得られることがわかった。
    次に,メタノールからの低級オレフイン合成反応を行った結果,合成したすべてのアルミノフェリシリケートにおいても,鉄を添加すると活性は低下し,その形成される酸点のメタノール転化活性はA1単独の約1/5となった。また,1-ブタノールを用いた時には,他の結晶化調整剤に比べて(C2H4+C3H6)選択率が高く,鉄を添加しても(C2H4+C3H6)選択率の減少はわずかであったが,その他の結晶化調整剤を用いたゼオライトでは,(C2H4+C3H6)選択率,特にC2H4選択率がいちじるしく減少し,BTXを除くC6+炭化水素選択率が増加した。これらの理由について,酸性質,結晶化度,結晶の大きさ,結晶構造および反応温度の観点から考察した。
  • 佐藤 幸久, 四宮 一総, 椛澤 洋三
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1067-1071
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水性二層分配法の特徴と回転多段向流クロマトグラフ(RLCC)及び移動相・固定相交互変換向流クロマトグラフ(CACC)の利点を組み合わせた分離手法の確立を目的として,調製レベルでの医薬品の光学分割を検討した。分割剤にウシ血清アルブミン(BSA)を選び,10%ポリエチレングリコール8000,5%リン酸水素ニナトリウム及び6%BSAを含む水性二層溶媒を用いてD,L-キヌレニンの光学分割を検討したところ,CACCにミキサーセトラ方式(かきまぜ3分間,静置10分間,送液1分間)を採用して市販試料200mgのD-及びL-体を良好に分離できた。この結果から,水性二層溶媒に高分子量タンパク質の分割剤を溶かして充填するだけで分取レベルの光学分割能を持つカラム調製の可能性が示唆された。本装置は水性二層溶媒の使用に際しても煩雑な操作を必要としないため,今後,水性二層分配法の応用に利用されることが期待される。
  • 碓井 正雄, 進藤 良夫
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1072-1080
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    橋かけ鎖に異なる置換基を有する8種のジアザアントラセノファン(1b~1i)を新規に合成し,光照射および加熱による分子内付加環化反応について検討した.1a~1iはすべて分子内光付加環化反応を起こし2となったが,これらの熱反応性には相違があり次の3種のタイプに分類できた。タイプI)分子内付加環化物2から1へ熱的逆反応を起こす.タイプII)熱的逆反応と熱付加環化反応の両方を起こす。タイプIII)熱的逆反応は起こさず,熱付加環化反応を起こす。1a~1dにおけるこのような熱反応性の違いは,主にジアザアントラセノパラシクロファンと同様の立体効果(かさ高い置換基によってC-N-C結合角が狭まることによる両芳香環の接近)によるものと考えられる。DSC測定から求めた1と2のエンタルピー差はこれらの反応性とよい相関を示した。
  • 川名 修
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1081-1086
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のシアノグアニジン誘導体を合成し,これらを架橋剤として用いたエポキシ樹脂の硬化反応と,その硬化物の物性について検討した。その結果,いずれのシアノグアニジン化合物も塩基性が強いにもかかわらず熱潜在性を有する温度域で硬化反応が進行することが判明した。また,その塩基性の強さは置換基の電子供与性に依存し,塩基性が強いほど硬化反応が速く進行した。さらに,硬化物の物性はシアノグアニジン化合物の置換基に大きく影響され,1,1'-(p-フェニレン)ビス[3-シアノグアニジン](3e)および1,1'-(メチレンジ-p-フェニレン)ビス[3-シアノグアニジン](3d)では芳香族置換基により硬質でガラス転移温度(Tg)が高く,3,9-ビス[3-(3-シアノグアニジノ)プロピル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(3a)ではスピロアセタール骨格により軟質でTgの低い硬化物を与えた。また,置換基のない1,1'-ビ(3-シアノグアニジン)(3b)では3cおよび3dと同様に硬質でTgの高い硬化物を与えた。
  • 奥山 和雄, 西川 文茂
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1087-1090
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固体高分子型燃料電池用電解質膜として有用であるペルフルオロカーボンスルホン酸膜の1種であるAciplex 膜とNafion 117膜を取り上げ,動的粘弾性温度特性の測定により膜の転移点について検討した。その結果,-60℃ 付近,40℃ 付近,130℃ 付近に転移点が存在した。40℃ 付近の転移点は膜中に含まれる水の関与したものであり,130℃ 付近の転移点はスルホン酸基を持つ側鎖の状態を反映した転移点あることが明らかになった。さらに,両転移点共に,膜の交換容量の増加に伴ない低温側にシフトした。
  • 奥山 和雄, 西川 文茂
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1091-1096
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固体高分子型燃料電池用電解質膜として有用なペルフルオロカーボンスルホン酸膜であるAciplexe膜(交換容量の異なる3種の膜)とNafion 117を取り上げ,水中及び加湿ガス中での含水率,ガス透過性を測定した。その結果,Aciplexe膜において加湿ガス中での含水率はガス温度が高いほど小さく,膜の交換容量が大きいほど大きい。加湿酸素ガス中での酸素ガス透過性は,膜の交換容量が大きいほど大きく,一方,膜の含水率依存性が小さい。ガスの透過は,膜中水部と非晶部との境界領域で生じると推定している。
  • 野中 敬正, 上村 康子, 栗原 清二
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1097-1106
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    樹脂の抗菌能は,Escherichia coli (E coli)およびStaPhylococcus aureus(S.aurescs)に対して検討した。RCG-Qの抗菌能はその窒素導入量の増加に大きく依存した。樹脂添加量を増やすことにより,残存生菌数を1/10000以下にすることができた。RCG-QはE coli(グラム陰性菌)およびS.aureus(グラム陽性菌)いずれにも抗菌能を示した。
    樹脂の抗菌能は導入した瓦酔ジメチルアルキルアミン中のアルキル鎖長にはあまり影響されなかったが,樹脂母体の違いにより,抗菌能に差が認められた。抗菌能を示したRCG-DMDAが,樹脂表面にE.coliおよびS.aureusを吸着していることを走査型電子顕微鏡写真観察より確認した。
  • 金谷 冨士雄, 榊原 徳, 根来 健二
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1107-1111
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミノ酸型両性界面活性剤R-(NHCH2CH2)2-NHCH2-COOH・3HCl([1]・3HCl;R=n-C10H21,n-C12H25,n-C14H29,n-C16H33)をはじめて純品として合成した。化合物[1]は明確な融点を持つ無色の結晶で,水およびエタノールに溶け,エーテル,アセトン,酢酸エチル,ベンゼン,ヘキサンおよびクロロホルムに不溶であった。化合物[1]・3HCl水溶液の30℃ における表面張力と電気伝導度を測定し,ミセル形成臨界濃度(CMC)を決定した。ドデシル体C12-[1]・3HCl,テトラデシル体C14-[1]3HClおよびヘキサデシル体C16-[1]3HClは良好な界面活性物質で,CMCにおける表面張力は29.9-33.7dyn/cmであった。C14-[1]・3HClおよびC16-[1]3HClはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)および硫酸ドデシルナトリウム(SDS)に匹敵する起泡力と泡安定性を示し,水不溶色素,オレンジOTに対してDBSに匹敵あるいは勝る可溶化力を示した。C12-[1]・3HClおよびC14-[1]3HClはグラム陽性菌Staphylococcus aecreusおよびグラム陰性菌Escherichia coliに対して,またC14[1]3HClは日本こうじかびAsPergillus oryzaeに対して強い抗菌活性を示した。
  • 小川 博靖, 島崎 賢司
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1112-1117
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    レドックスフロー型電池の電極材として優れた炭素繊維を製造することを目的として,前駆体ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維から得た酸化繊維フェルトを,300~1000℃の水蒸気中で活性炭素繊維にした場合,および酸化繊維を1000~2600℃で炭素繊維としたのち加熱水蒸気中処理により活性化炭素繊維とし,さらに電解表面処理して得た表面処理活性化炭素繊維とした場合の処理条件の影響を検討した。これらの炭素繊維について,セル抵抗,クーロン効率などの電池特性とBET比表面積,SEM観察,ESCAを測定した。その結果,炭素繊維の電気抵抗,繊維表面積,繊維表面のO/C,Cl/Cがフロー電池特性に関係し,炭素化温度1300℃の炭素繊維を活性化した後,次亜塩素酸中で電解表面処理することによって得た炭素繊維が電極材として優れた特性を持つことがわかった。
  • 豊田 昌宏, 浜地 幸生, 伴野 国三郎
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1118-1126
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ゾル-ゲル法によりチタン酸鉛繊維めえい糸を試みた。PbTiO3のモル比に対応した酢酸鉛(II)三水和物と,チタンテトラ(イソプロポキシド)溶液をそれぞれ,2-メトキシエタノールの存在下で還流・精製を行い,得られた鉛ジ(アルコキシド),および,チタンテトラ(アルコキシド)を混合し,さらに,還流・精製を行うことによって,鉛チタン複アルコキシド溶液を得た.得られた鉛チタン複アルコキシド溶液を部分加水分解し,ゲル化時間,粘度などの溶液特性とえい糸性を観察した。
    本手法により,均一な鉛チタン複アルコキシド溶液が調製できた.得られた鉛チタン複アルコキシド溶液に触媒として酸,塩基,水を添加した場合,酸触媒の場合にゲル化時間が長い,すなわち液の安定性が高かった。また,水の添加による加水分解により粘度調整を行ったところえい糸可能な安定なゾルが得られ,粘度が10ポイズ程度に達したとき,直径10-100μmの薄い黄色の透明PbTiO3ゲル繊維が得られた。このアルコキシド溶液は連続えい糸性を示し,一次元重合体を形成していることが推測された。そしてこの繊維を焼成したところペロブスカイト単一相のPbTiO3繊維となった。
  • 山下 敏広, 佐久川 弘, 藤原 祺多夫
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1127-1133
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気中二酸化硫黄の硫酸への酸化剤として重要な過酸化水素(H2O2)の測定例は少なく,その地域的分布はあまり明らかにされていない。そこで広島市と東広島市で大気及び雨水中のH2O2を測定し,その時間的,地域的変動と生成起源について考察した。広島では大気中H2O2は0~3ppbvの範囲で測定され,日変化,季節変化を示した。東広島でも日変化,季節変化を示したがその濃度は広島に比べて約50%小さい値であった.一方,雨水中H2O2は初期降雨に高く,wash out, rain out効果があることが示唆され,また季節変化が存在する可能性が考えられる。大気中H2O2の光化学反応以外の直接の発生源の可能性として,焼却炉と自動車の排ガスを測定し,そのH2O2濃度を用いて広島と東広島でのH2O2発生量を算出した。どちらの発生量も広島では東広島より高い値を示し,広島では自動車による発生量がばい煙施設の発生量より約9倍大きいことが明らかになった。また人為起源のH2O2の大気中濃度への寄与度を大まかに算出したところ,大気中濃度の百分の一程度と予想された。
  • 中島 剛, 松岡 正晃, 三島 彰司, 松崎 五三男
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1134-1136
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Silanols are thought to be key intermediates of chemical vapor deposition of silica film from tetraethoxysilane (TEOS). To get information on the formation of silanols from TEOS, compositions of mixtures of gaseous products and surface concentrations of hydroxyl and alkyl groups were traced by GC and FT-IR in isothermal reactions of TEOS on silica gel. It is observed that formation of both ethylene and acetaldehyde from TEOS on silica gel decreases with decreasing amount of surface hydroxyls. It is concluded that the formation of silanols is accelerated by silanols themselves (i. e., autocatalytic for mation of silanols from TEOS).
  • 小泊 満生, 島田 剛, 茂木 勝利
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1137-1139
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Alumina-supported copper (II) chloride efficiently catalyzed Friedel-Crafts benzylation of aromatic hydrocabons and phenols with benzyl chloride under mild conditions. The recovered catalyst can be readily regenerated and reused without a decrease in catalytic activity. The reaction of benzene with bis (chloromethyl) benzenes gave dibenzylbenzenes in high yields, and the formation of by-products such as polybenzylbenzenes was depressed in contrast to that in the reaction catalyzed by AlCl3, AlCl3CH.NO2 or FeCl3.
  • 宮下 喜好, 小沢 達樹, 辻 理
    1994 年 1994 巻 12 号 p. 1140-1142
    発行日: 1994/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A specific freon (chlorofluorocarbon) was converted to a solid state substance. Experiments were performed by means of copolymerization from trichlorotrifluoroethane (CFC113) and ethylene mixtures by cold plasma. The copolymer films have a yellow brown color and a smooth surface. Maximum deposition rate of films from CFC113 and ethylene mixtures is 38 times as large as that from ethylene itself. The results of XPS and IR measurements show the existence of C-Cl and C-F bonds in copolymer films. Measurement of electric resistance shows that the electric resistivity of the copolymer films is higher than 5×106Ω⋅cm.
  • 1994 年 1994 巻 12 号 p. 1143
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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