日本化学会誌(化学と工業化学)
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1996 巻, 12 号
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  • 亀田 徳幸, 三五 令子
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1014-1018
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジヒドリド(1,3-ジフェニルトリアゼニド)ビス(トリフェニルポスフィン)ロジウム(III)(ジヒドリドロジウム錯体)-ジメチルスルポキシド系による 1-ヘキセンの異性化反応を水素雰囲気中あるいは窒素雰囲気中, 30℃ , 1atm で行った。反応生成物の量は,水素雰囲気中では trans-2-ヘキセン > cis-2-ヘキセン > ヘキサンの順に低下したのに対して,窒素雰囲気中では反慈の初期において cis-2-ヘキセン-2-ヘキセンの順に低く,その生成量は水素雰囲気中よりも低下した。また水素雰囲気中では,> trans2-ヘキセンの異性化反応は 1-ヘキセンより起こりにくいことがわかった。さらに 1-ヘキセンの異性化反応の反応機構についても検討した。
  • 佐藤 眞
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1019-1028
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モンモリロナイトーポリアミド複合多孔体(PMPC)と金属塩化物(CoCl2,CuCl2,NiCl2,MgCl2,CaCl2,NaCl)水溶液との相互作用について,赤外吸収測定および洗浄過程での残留金属塩量の定量,底面間隔(d001)の測定により検討した。
    PMPC と 0.5M 金属塩水溶液との反応に際し,イオン交換のみならず,金属塩が Mont 層間へ侵入する現象が生じた。層間に侵入した塩は洗浄の繰り返しにより離脱するが,洗浄過程での保持され易さはポリアミド複合量(R)の増加とともに段階的に増した。
    洗浄過程における層間での金属塩の保持には, 2 分子層と 3 分子層とのランダム混合層構造に含まれる,シリケート層と直接に相互作用していないポリアミドと金属塩との相互作用が主に寄与すると推測された。また,本実験条件下では,層外に存在するポリアミドによる金属塩の吸着は少なく,金属塩の残留に対する寄与は小さいと考えられた。
    金属塩との反応後,十分に洗浄したイオン交換 -PMPC (50回洗浄物)および 5 回洗浄した PMPC (5回洗浄物)の IR スペクトルから,層間陽イオンあるいは金属塩と PMPC との相互作用は,金属イオン種により, A グループ(CoCl2,CuCl2,NiCl2), B グループ(MgCl2,CaCl2)および Cグループ(NaCl)の 3グループに分かれることが示された
    Aグループの場合,試料中の水分の有無により, IR スペクトルは大きく異なった。乾燥された試料においては,層間陽イオンおよび金属塩化物のいずれも,アミド基の C=O との間に配位結合を生じた。しかし,水分存在下ではこの配位結合は阻害された。
    Bグループの場合には,乾燥状態によらず,配位結合は生じないで水和金属イオンとアミド基との相互作用が生じた。また,層間陽イオンとアミド基との相互作用と,金属塩化物とアミド基とのそれとは異なるものであった。後者では,ハロゲン化物イオンとアミド基の N-H との相互作用が含まれることが示唆された。
    また,Cグループの場合のアミド基との相互作用は,A,Bグループの場合よりはるかに少なかった。
  • 田上 保博, 寺田 晃, 坂田 一矩, 橋本 守, 森下 晋一, 濱田 盛承, 甲斐 徳久, 永井 毅
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1029-1032
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフトキノン誘導体合成の一環として,ナフタザリン(4)(5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)とエチルビニルエー-テル類の反応を検討した。 4 を酢酸溶媒中,三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル存在下,6モル量のエチルビニルエーテルと室温で反応させるとエチリデン基を持ったナフタザリン化合物(5)が得られた。この化合物は主として, 1HNMR よりエチリデンソ基がキノン環に結合した 5a の構造をとっていることがわかった。この反応で,大過剰のエチルビニルエーテルを用いると 5a の代わりにキニザリン(6)が得られた。ジクロロナフタザリン(8)とエチルビニルエーテルの反応では相当するエチリデンジナフタザリン化合物は得られずに,ジクロロキニザリンが得られた。さらにユグロン(10)とエチルビニルエーテルの反応では,エチリデン基を持つたユグロン化合物(11)が得られた。
  • 堀家 静子, 赤星 亮一
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1033-1037
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    cis-3-ヘキセノールおよび酢酸メンチルなどの香料をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ミセルに溶解し,その可溶化機構と香料の蒸気圧について研究を行った。香料を溶解した SDS ミセル分散系の電気俵導度,浸透圧を測定し,ミセル数,ミセル構成の因子などを求めた。 cis-3-ヘキセノールは SDS ミセル中に溶解する際まず多量の cis-3-ヘキセノールがミセルの柵層中に入り, SDS と複合ミセルを形成してミセルの数を増加させるが,溶解限界に達するとミセル親油基層中への溶解はわずかであることが明らかとなった。このことはアルコール性香料であるゲラニオールやシトロネロールのミセル親油基層への溶解とは異なる。また,酢酸メンチルは SDS ミセル親油基層中にのみ溶解するものと推定された。
    分散系試料の香気を窒素ガスを用いて掃引法により補集し,その補集量から分散系における香料の蒸気分圧を求めた。cis-3-ヘキセノールがミセルの柵層へ溶解し,複合ミセルを形成する領域では, cis-3-ヘキセノールの蒸気分圧は大きな負の偏差を示し,香気が著しく弱められる。酢酸メソチルが SDSミセルの親油基層に溶解した蒸気分圧は,酢酸メンチルの分子間力が弱められるので純粋液体の蒸気圧から算出した蒸気分圧に比べて著しく大きい。このため酢酸メンチルはミセル中に溶解しても,その香気はさして弱められないことが明らかとなった。
  • 齋藤 信宏, 山藤 茂夫, 今城 康隆, 山延 健, 甲本 忠史
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1038-1044
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    精密部晶の洗浄に関して,回路パターンに搭載部品をフラックス,はんだ付けされているプリント基板の洗浄において,著者らはフラックスの成分であるロジンと活性剤を同時に溶解洗浄しうる溶剤の条件,さらに,洗浄溶剤をすすぎ落とし,最後に蒸気乾燥する系を検討した。フラックス洗浄の条件に関して,ロジンの良溶媒と同程度の溶解度パラメーターを有し,しかも,極性の活性剤を溶解しうる誘電率が高い溶剤系として,ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGB)/オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)混合溶剤系が,すすぎ溶剤として D4 が,また,蒸気乾燥剤としてペルフルオロオクタン(PFO)が有効と考え検討した結果,この洗浄系が準水系,炭化水素系ならびに CFC113/エタノール系のいずれよりも優れた性能を有することを見いだした。また,フラックス洗浄におけるプリント基板上のイオン残さについても定量分析を行い,プリント基板洗浄における一考察を行った。
  • 羽賀 史浩, 中島 剛, 三島 彰司, 平井 誠
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1045-1050
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水道での赤水防止の目的で,貯水槽および給水管にエポキシ樹脂塗料がコーティングされているが,エポキシ樹脂硬化剤として使用されるアミンの水道水への溶出が環境衛生上問題となってきている。ここでは各種アミンにより硬化させたエポキシ樹脂の性質と硬化剤の水道水への溶出との関係を解明した。
    ビスフェノール A-エビクロロヒドリン型エポキシモノマーを用い,毒性の低いことがわかっている 4 種類の硬化剤とそれぞれ混合し試料を作成した。溶出試験は日本水道協会規格に準じた分析法により,過マンガン酸カリウム消費量およびアミン類溶出量を測定した。硬化物の性質は FT-IR を用いて測定したエポキシ基反応率と日本工業規格に準じた方法より求めた水の拡散係数から評価した。その結果,硬化剤の溶出量の序列はジエチレントリアミン(DTA) > エチレンジアミン(EDA) > イソホロンジアミン(IPD) > m-キシリレンジアミン(XDA)であり,水の拡散係数の序列と同じであった。またエポキシ基反応率の序列の逆であることから,拡散係数が小さく反応率が高い性質を有する硬化物は,水道水への溶出が少ないことがわかった。
  • 高橋 信行, 中井 敏博, 佐藤 芳夫
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1051-1057
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紙パルプ工場排水中の主成分であり着色要因物質であるリグニソスルホン酸ナトリウムを対象として,分子量,色度,生物分解性,活性炭吸着性,有害性に及ぼすオゾン分解の影響について検討した。
    総括的水質指標の変化から,無機化の程度は少ないが分子内の構造変化は確実に起こることが示唆された。限外炉過により低分子化が確認され,低分子有機酸類であるグリオキシル酸やシュウ酸が初期 TOC に対して 1~2% 検出された。低分子化にともなつて脱色が効果的に起こり,脱色過程はオゾ ン投与速度を考慮に入れた擬一次反応速度式で表された。 BOD5/TOC で表される生物分解性は消費オゾン量の増加とともに初め増加するもののその後いったん低下し,再度増加した。活性炭吸着性は消費オゾン量および活性炭添加量に依存して変化した。全有機ハロゲン化合物およびトリハロメタン類の各生成能で表される有害性は反応初期にいったん増加するがその後しだいに低下し,オゾン酸化後に活性炭吸着を行うとさらに低下した。
  • 佐々木 昭夫, 木村 良晴
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1058-1063
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スルホナト基含有トリアジン誘導体をジアミン類と溶融重縮合さぜて,スルホナト基を側鎖に有する直鎖状ポリアミドを合成した。このポリアミドはイオン架橋のために高い溶融粘度を示すが,水に可溶であった。この反応を空気中で行っても生成物はほとんど着色せず,重合度は固相重合によって上昇した。また,この重縮合系に ε-カプロラクタムやナイロン 6 ポリマーを添加して加熱反応させると,共重合が進行し,側鎖にスルホナト基を有するポリアミド共重合体が生成した。この共重合体は熱可塑性を保持し,低温ではイオン架橋を生じて鰯性を増す。トリアジン組成が約 10mol% の共重合体は木綿と同等以上の吸湿性を有することを確認した。出発のトリアジン誘導体を二価のマグネシウム塩に変換して重合すると分解を生じたが,ナトリウム塩を重合後マグネシウム壇にイオン交換することが可能であった。
  • 原田 久志, 直井 俊秀
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1064-1066
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Solid-solid photocatalytic reaction was carried out using copper or copper oxide loaded titanium dioxide. Effect of loaded metal on reaction activity in the solid-solid system was observed for malonic acid. Copper loaded photocatalyst showed lower activity than platinum loaded one, although the activity for copper loaded one was similar to that for platinum loaded one in the suspension system. Reaction selectivity in the solid-solid system was compared with that in the suspension one. There were some differences in product distribution between the two systems; e.g. the ratio of hydrocarbon to CO2 in the solid-solid system was higher than that in the suspension one. Also the difference of the photocatalytic reaction products depending on the loaded metal was reported. Interestingly, alkene was produced in the case loading copper; i.e. ethylene and propylene were produced from succinic acid and glutaric acid, respectively.
  • 坂倉 俊康, Ronan Le LAGADEC, 田中 正人
    1996 年 1996 巻 12 号 p. 1067-1068
    発行日: 1996/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Oligo (monosubstituted silanediyl)s have attracted much interest as a component of advanced materials and also as a source of silylenes. Ti (O-i-Pr)4, which is cheap and easily available, selectively catalyzes dehydrogenative coupling of aryl- or alkylsilanes to give oligo (alkyl or arylsilanediyl) s up to tetrasilanes. This indicates the possibilities of developing new catalysts for the dehydrogenative coupling based on non-metallocene complexes. Although MeTi (O-i-Pr)3 exhibits catalytic activities similar to Ti (O-i-Pr)4, many other group 3 or 4 metal alkoxides are inactive for the reaction. Ti (O-iPr)4 also catalyzes hydrosilylation of alkenes with monosubstituted silanes under similar conditions suggestive of the intermediacy of Ti-H or Ti-Si species in both catalytic cycles.
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